見た目も噛み心地も天然歯にそっくりなインプラントは、失った歯を歯根から回復できる治療法です。治療したことさえ忘れてしまう程、優れた補綴装置ですが、何も気にせずに使っていると上部構造が外れることがあります。
上部構造が外れてしまうと、インプラントで噛むことができなかったり、審美面にも障害が現れたりするため、早急な対処が求められます。
この記事では、インプラントの上部構造が外れる原因と外れた場合の対応方法について気になる疑問にお答えします。
インプラントの上部構造が外れる主な原因
インプラントの上部構造が外れる主な原因を確認しておきましょう。
- インプラントの上部構造が外れる主な原因はなんですか?
- インプラントの上部構造が外れる原因としては、以下の4つが挙げられます。
【原因1】極端に硬い食べ物を噛んだ
インプラントの上部構造は、セラミック素材で作られるのが一般的です。
セラミック素材のなかには、金属に匹敵する硬さを備えたジルコニアから、強い衝撃が加わると割れることがあるオールセラミックなど、その種類はいくつかに分けられます。
セラミックの種類によっては、極端に硬い食べ物を噛んだときに割れたり、外れたりすることがあります。ナッツ類やおせんべい、フランスパンなどをよく食べる習慣があると、上部構造の固定部分に負荷がかかり続けてしまいます。
【原因2】固定のためのセメントが劣化した
インプラントの上部構造の接着方法にセメント固定があります。長期間使用するなかで、セメントが劣化してしまうと、接着機能が低下して上部構造が外れてしまうことがあります。
【原因3】固定のためのネジが緩んだ
インプラントの上部構造の接着方法にスクリュー固定している場合は、ネジが緩んで外れてしまうことがあります。
【原因4】歯ぎしり・食いしばりの習慣がある
歯ぎしりや食いしばりが原因で上部構造が外れることもあります。
成人男性の男性が噛む力は、60〜100kgに及ぶといわれています。歯と歯がダイレクトに接触することから、インプラントの上部構造にも負荷がかかってしまいます。噛む力の程度によっては、セラミック製の上部構造も割れてしまうため注意が必要です。
- 上部構造が外れるメカニズムを教えてください
- 上部構造が外れるメカニズムは、上部構造の固定方法によって異なります。
◎セメント固定
強い負荷がかかることでセラミックの部分が欠けたり、セメントが剥がれたりすることで脱離を招きます。
◎スクリュー固定
ネジが緩んで外れるのが一般的です。スクリュー固定の場合も上部構造が欠けることで脱離する可能性も十分に考えられます。
インプラント上部構造が外れた場合の対処方法
インプラントの上部構造が外れた場合の対処方法を解説します。
- 上部構造が外れたとき、まずはどのような対処をすべきですか?
- 外れた上部構造を誤飲するようなことだけは避けるべきです。外れた上部構造は捨てずに保管しておきましょう。上部構造の状態によっては、そのまま元の位置に戻せることがあります。
また、周りの歯や歯周組織にケガを負っていないか確認しましょう。出血している場合は、清潔なガーゼを使って止血し、口腔内は清潔に保つようにしてください。
上部構造が外れた状態はとても不安定であることから、舌や指で触らないようにしましょう。アバットメントまで外れて飲み込んでしまうかもしれません。
- 上部構造が外れたまま放置してよいのでしょうか?
- インプラントの上部構造が外れたまま放置するのはやめてください。
放置していると残ったパーツまで破損するリスクが高まってしまいますし、インプラント周囲の感染リスクも高まります。
- 歯科医院に行くまでに気をつけるべきことを教えてください
- 歯科医院に行くまでは以下の点に気を付けてください。
・外れた上部構造を自分で付け直すことはしない
・上部構造をなくなさないように保管
・食事をする場合はインプラントのない部分で噛む
上部構造はティッシュに包んで机の上に置いておくのではなく、ジップロックなどで保管してください。上部構造を誤って捨てたり、新たに破損させたりすると、歯科医院での処置が難しくなります。歯科医院に行くまでに時間があり、食事をする場合は、上部構造が外れた部分以外で噛むようにしましょう。上部構造が外れた部分で噛むと、アバットメントやインプラント体に不適切な力が加わって破損を招きます。
- 歯科医院ではどのような処置が受けられますか?
- 上部構造が外れた状態によって処置の内容は変わります。外れた上部構造をもとに戻すだけの処置で済めばいいですが、セラミックの破損やアバットメントの変形などが見られた場合は、再治療が必要となります。
上部構造が外れるのを防ぐためにできるケア方法
インプラントの上部構造の脱離を防ぐケア方法について解説します。
- 上部構造が外れるのを防ぐには、日常生活で何に気をつけるべきですか?
- 上部構造に負荷がかかるような行為を控えてください。極端に硬い食べ物は噛まない、歯ぎしり・食いしばりを改善する、上部構造に異常が認められたらすぐに歯科を受診するなどが挙げられます。
- 定期的な歯科検診を受けることで上部構造が外れるのを防ぐことができますか?
- 100%防ぐことはできませんが、外れるのを未然に防ぐことはしやすくなります。
歯科検診では上部構造を固定しているセメントやスクリューの状態をチェックしたり、必要に応じてネジを締め直したりしてもらえます。
定期的な受診で、歯ぎしりや食いしばりによる影響、噛み合わせの異常なども早期に発見、対処できるようになります。
- 食べ物や飲み物で避けた方がいいものがあれば教えてください
- ナッツ類やフランスパン、おせんべいなどは、インプラントのあるところで噛まない方がよいでしょう。このような硬い食べ物を噛むことは、上部構造やインプラント体に負荷がかかってしまいます。
飲み物の種類によって上部構造が外れやすくなることはありません。ただし、清涼飲料水やお酒は口腔衛生状態の悪化によるインプラント周囲炎のリスクも高まるので、摂取量は控えた方がよいでしょう。
編集部まとめ
今回は、インプラントの上部構造が外れる原因と外れた場合の対応方法について解説しました。インプラントの上部構造が外れる原因としては、極端に硬い食べ物を噛んだ、固定しているセメントの劣化、ネジが緩んだり、歯ぎしり・食いしばりによって大きな負荷がかかったなどが挙げられます。
上部構造が外れた場合は、早急に主治医へ連絡するようにしてください。そのまま放置していると、アバットメントやインプラント体、周りの組織にダメージが加わって、より深刻なトラブルを引き起こしかねません。また、主治医に連絡する際には、インプラントが外れた部位や状況なども細かく伝えることで、受け入れ体制も整えやすくなります。
参考文献