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ソケットリフトの手順とは?特徴やサイナスリフトとの違いも解説!

ソケットリフトの手順とは?特徴やサイナスリフトとの違いも解説!

ソケットリフトは、インプラント治療を受ける際に必要となる場合がある手術の一つで、上顎の骨の高さが不十分な患者さんに対して行われます。上顎の骨の一部を持ち上げるため、インプラントを支えるための十分な骨の厚みを確保できます。

本記事ではソケットリフトの手順について以下の点を中心にご紹介します。

  • ソケットリフトとサイナスリフトの違い
  • ソケットリフトの手順
  • サイナスリフトの手順

ソケットリフトの手順について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

骨造成の概要

骨造成の概要

骨造成とは一体どういうものなのでしょうか?ここでは骨造成を解説します。

骨造成とは

骨造成とは、インプラント治療を進める際に、骨量が不足している部位に骨を追加する手術のことです。特に上顎のインプラント治療では、上顎洞と呼ばれる空洞部分のすぐ近くにインプラントを埋める必要があり、十分な骨の高さや厚みが求められます。

しかし、長期間にわたる歯の欠損や加齢による骨の痩せが原因で、十分な骨量が確保できないケースがあります。このような場合、骨造成を行って骨の高さや厚みを補い、インプラントを安定させるための土台を作ります。

上顎にインプラントを埋入する際に骨量が不足していると、そのままインプラントを埋めることができません。そのため、上顎洞挙上術という骨造成が行われます。上顎洞挙上術には、サイナスリフトとソケットリフトの2つの方法があり、いずれもシュナイダー膜という重要な組織を慎重に扱いながら進められます。

次に、サイナスリフトとソケットリフトについて詳しく解説します。

ソケットリフト

ソケットリフトとは、上顎洞挙上術の一種で、上顎の骨の厚みが少ない場合に行われる骨造成手術のことです。ソケットリフトは、インプラントの埋入と骨の増量処置を同時に行えるため、治療期間を短縮しながら効率よく進めることができます。

ソケットリフトは、骨の厚さが5mm以上あり、処置範囲が限られているケースに用いられています。インプラントを埋入する際に開ける小さな穴から骨補填材を挿入し、上顎洞の粘膜を持ち上げて骨の再生を図ります。このため、治療中の傷口が小さく、患者さんへの負担が少ないのが特徴です。

主に抜歯後にできたソケット(穴)から、上顎洞の粘膜を挙上して骨補填材を充填する方法です。この手法は、ある程度の骨量が残っている場合に選択されるため、すべての患者さんに適用できるわけではありません。しかし、サイナスリフトと比較して、治療期間の短縮が可能とされているため、骨量が少ないケースでは有用です。

サイナスリフト

サイナスリフトは、上顎にインプラントを埋入するために必要な骨の高さが不足している場合に行われる骨造成手術です。サイナスリフトでは、上顎の小鼻の脇に位置する上顎洞の底部に骨補填材を挿入し、骨再生を促進させます。特に骨の厚みが8mm未満の場合や、広範囲にわたる骨再生が必要な場合に適用されます。

サイナスリフトは、骨造成とインプラント埋入を別々に行う治療法ですが、上顎骨が著しく薄く、インプラント埋入が困難なケースでは、最初に骨造成を行い、治癒後にインプラントを埋入する方法が行われます。半年〜1年程の期間を必要とし、その間に移植した骨が定着するのを待つ必要があります。治療後は、歯科用CTやレントゲンで骨の定着具合を確認し、その後インプラント治療が進められます。

ソケットリフトとサイナスリフトの違い

ソケットリフトとサイナスリフトの違い

ソケットリフトとサイナスリフトにはどのような違いがあるのでしょうか?
以下で解説します。

治療期間と費用目安

サイナスリフトとソケットリフトは、それぞれ異なる治療法であるため、費用や治療期間にも差があります。両者の治療費用と期間について以下で解説します。

【サイナスリフト】
サイナスリフトの治療費用は、20万〜40万円程度が相場となっています。治療期間は6ヶ月〜1年程度です。サイナスリフトは広範囲にわたる骨造成を行うため、費用が高めですが、より多くの骨を再生することができます。また、治療期間が長く、骨造成後にインプラントを埋入する場合は、合計で1年〜1年4ヶ月程度かかることもあります。

【ソケットリフト】
ソケットリフトは、費用が3万〜15万円程度が相場となっています。治療期間は4ヶ月〜半年程度で、サイナスリフトよりも短期間で治療を終えることが可能とされています。ソケットリフトでは、骨造成とインプラントの埋入を同時に行うことができるため、治療全体の期間が短縮されます。さらに、歯周組織への負担が少ないため、患者さんにとっては身体的な負担が軽減されます。

適応症例

ソケットリフトはすべての症例に適応できるわけではありません。ソケットリフトが用いられるのは、主に上顎の奥歯部分で、骨の厚みが約5mm以上残っている場合に限られます。上顎の顎骨は、下顎に比べてもともと薄いため、歯を失うと骨吸収が進み、さらに薄くなりやすい特徴があります。このため、インプラント治療を行う際に骨量が不足しているケースが多く見られます。

骨量が不足していたり広範囲に及んだりする場合や、複数本のインプラントを埋入する必要がある場合には、サイナスリフトが選択されます。サイナスリフトは、上顎洞と呼ばれる空洞部分に骨補填材を追加し、十分な骨量を確保する手術です。

ソケットリフトの手順

ソケットリフトの手順

ソケットリフトはどのような手順で進められるのでしょうか。
以下で詳しく解説します。

①局所麻酔を行う

ソケットリフトでは、手術中に痛みが生じないように、最初にしっかりと局所麻酔を施します。麻酔を行うことで、治療中に感じる不快感や痛みを防ぎ、患者さんがリラックスした状態で手術を受けられるように配慮します。

麻酔後、手術が始まる前に再度痛みの確認を行います。麻酔が効いていることを確認してから、次のステップへ進むことで、治療がスムーズに進行し、患者さんの負担が抑えられます。

②埋入のための穴を開ける

麻酔が十分に効いた状態で、歯茎を切開し、剥離して歯槽骨を露出させた後、インプラントを埋入するための穴を開けます。

この際、重要なのは、上顎洞を傷つけないように十分注意を払い、ドリルの深さを細かく確認することです。インプラント治療と同様に、歯槽骨に穴を開けますが、シュナイダー膜(上顎洞の粘膜)を傷つけないよう、専用の特殊なドリルを使用します。

③上顎洞底粘膜を持ち上げる

次に、上顎洞底にある薄い粘膜(シュナイダー膜)を慎重に持ち上げます。この作業は、サイナスリフトとは異なり、直接粘膜を目視できないため、手指の感覚に頼る部分が大きいです。そのため、特別な器具を使い、粘膜を破らずに丁寧に持ち上げる必要があります。

まず、ソケットに骨ノミ(オステオトーム)という棒状の器具を挿入し、外科用のハンマー(マレット)で軽く叩いて、歯槽骨と上顎洞粘膜を持ち上げます。この際、上顎洞の粘膜を傷つけないように細心の注意を払いながら、シュナイダー膜剥離子を用いて慎重に剥離し、持ち上げた部分に自家骨や人工骨を埋入します。これにより、上顎洞と歯槽骨の間に骨を増やすスペースを作り、インプラントを支えるための骨量を確保します。

④骨補填材を充填する

上顎洞粘膜を慎重に持ち上げ、破れていないことを確認した後、次に骨補填材を充填します。使用する骨補填材は顆粒状で、後方から丁寧に詰めていきます。まず、上顎洞粘膜と歯槽骨を慎重に剥離し、補填材を挿入するためのスペースを確保します。空間ができたら、そのスペースに必要量の骨補填材を充填してふさぎます。

充填には、人工の骨補填材や、患者さんご自身の骨を細かく砕いたものを使用します。これらを新たに作り出した空間にきっちりと埋め込んでいきます。最後に、剥離した歯茎を元の位置に戻し、丁寧に縫合して手術を完了させます。この手順により、骨の再生が促進され、インプラントが安定するための基盤が作られます。

⑤インプラント体を埋入する

十分に骨補填材を充填した後、予定していた位置にインプラント体(人工歯根)を埋入します。この段階では、インプラントがしっかりと固定されることが重要です。埋入が完了したら、インプラントが安定しているか確認し、問題がなければ歯茎を元の位置に戻し、慎重に縫合します。縫合後、出血がないことを確認し、必要に応じて歯科用CTで最終確認を行います。
インプラントがしっかりと固定されていることが確認できれば、治療は一段落します。インプラントの上部構造は、骨がしっかりと作られてから装着されるため、約4~5ヶ月後に完成となります。

サイナスリフトの手順

サイナスリフトの手順

次にサイナスリフトの手順について解説します。

①局所麻酔を行う

手術を始める前に、治療部位を麻痺させるため、局所麻酔を施します。局所麻酔は、手術中に痛みを感じさせないためにも大切です。麻酔液を注射することによって、手術部分をしっかりと麻痺させます。また、注射の際、痛みを軽減するために事前に表面麻酔を行うことで、注射時の不快感を抑えることができます。

そして、手術に対する不安や恐怖心が強い方には、静脈内鎮静法の併用が可能とされています。静脈内鎮静法は、リラックスした状態で手術を受けられるため、眠っているような感覚になります。局所麻酔を使用するため、全身麻酔は必要なく、日帰りで治療を終えることができます。

②骨に窓を作る

手術を進める前に、歯科用CTの画像を慎重に確認し、上顎骨に窓を開ける位置を決定します。三次元的な位置関係が難しい場合には、3Dプリンターを使用して顎の骨を再現し、精密に位置を決定します。これにより、手術中の誤差を抑えられます。

麻酔が効いた後、頬側の歯肉を切開し、露出した骨に対して慎重に窓を作る作業を行います。上顎洞を覆っているシュナイダー膜を傷つけないように、特に注意深く進める必要があります。

骨が不均一だったり、血管が近くを通っていたりする場合もあるため、事前に歯科用CTの画像を詳細に確認し、慎重な手技で進行します。電動式の骨手術機器を使用して、歯肉や軟組織へのダメージを抑えながら、精密に骨に窓を開けます。この作業は、上顎洞の粘膜が現れる重要なステップとなります。

③上顎洞粘膜を剥がして骨補填材を充填する

次にシュナイダー膜剥離子を用いて上顎洞粘膜を慎重に剥がしていく作業へ進みます。この作業は、狭く暗い空間で行うため、細心の注意を払わなければなりません。広い範囲を剥離しないと、粘膜が後戻りしてしまうことがあるため、十分な確認と慎重な手技が求められます。

まずは、粘膜を持ち上げた後、破れがないかを確認します。確認方法として、患者さんに深呼吸をしていただき、上顎洞内の粘膜が破れていないかをチェックします。もし破れが見つかれば、適切な処置を施して修復します。

その後、骨補填材を充填するためのスペースを確保し、必要な量の人工骨を丁寧に充填します。人工骨は顆粒状のため、奥から少しずつ詰めていき、十分な骨量を確保します。骨補填材を充填した後、作った窓をふさぎ、剥離した歯肉を元の位置に戻して縫合します。このプロセスにより、インプラントを支えるための新たな骨を作り上げ、しっかりとした土台を確保します。

④歯茎を縫合する

骨補填材をしっかりと充填した後、歯茎を元の位置に戻し、丁寧に縫合します。縫合が完了したら、出血がないことを確認し、手術が適切に行われたか最終チェックを行います。最終確認として、歯科用CTを撮影して骨の状態や治療が問題なく進んでいるかを確認します。歯科用CTの結果に問題がなければ、痛み止めと抗菌薬を処方し、手術が終了となります。

手術後、骨の定着が確認できるまで6ヶ月程度の期間が必要です。この期間を経て、骨がしっかりと増えて安定したら、インプラントの埋入を行います。場合によっては、骨造成と同時にインプラントを埋入することも可能とされています。

まとめ

まとめ

ここまでソケットリフトの手順についてお伝えしてきました。ソケットリフトの手順についての要点をまとめると以下のとおりです。

  • ソケットリフトとサイナスリフトには、治療期間と費用に違いがある。ソケットリフトの治療期間は6ヶ月〜1年程度、費用は20万〜40万円。サイナスリフトの治療期間は4ヶ月〜半年程度、費用は3万〜15万円程度が相場
  • ソケットリフトの手順は、局所麻酔をして埋入のための穴を開け、上顎洞底粘膜を持ち上げた後に骨補填材を充填する。最後にインプラント体を埋入して完了
  • サイナスリフトの手順は、局所麻酔を行い、骨に窓を作る。次に上顎洞粘膜を剥がして骨補填材を充填し、歯茎を縫合して完了

ソケットリフトは、インプラント治療を行う際に骨量が不足している場合によい手法であり、サイナスリフトと比べると治療期間が短縮できる点がメリットです。ただし、適応症例に限り、骨の厚みや治療範囲に応じてご自身に合った方法を選択することが重要です。

治療前にしっかりと検査と診断を行い、歯科医師と十分に相談したうえで治療を進めることが大切です。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

出身大学:福岡歯科大学 / 経歴:1989年福岡歯科大学 卒業 1991年松浦明歯科医院 開院 2020年医療法人松栄会まつうら歯科 理事長就任 / 資格:厚生労働省認定研修指導医 日本口腔インプラント学会認定医 ICOI (国際インプラント学会)Fellowship認定医 / 所属学会:ICOI(国際口腔インプラント学会) 日本口腔インプラント学会 日本臨床歯科学会(SJCD) 福岡支部 理事 日本顎咬合学会 会員 日本臨床歯科CAD/CAM学会(JSCAD)会員

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