近年、インプラント治療を検討する方が増えています。インプラントとは、欠けた歯を補う手法で、入れ歯やブリッジと違って歯茎にボルトを埋め込む手術を行います。
歯茎に埋め込んだボルトに義歯を差し込むことで、自分の歯に近い感覚で食事を楽しめるのが特徴です。
しかしインプラント治療は大掛かりな外科手術であるため、手術後の過ごし方には注意する点がいくつかあります。
この記事ではインプラント治療後の食事・過ごし方などについて解説していきます。手術後の留意点を知ることでインプラント治療の効果を高めましょう。
インプラントの手術後の注意点は?
ここではインプラントの手術後の注意点について解説します。手術後の経過とともに各段階における注意点は異なります。
特に手術後から1週間程度は注意すべき点が多いのです。
まず手術直後の注意点として食事が挙げられます。インプラントの手術では麻酔を施すので、手術直後3〜4時間ほどは口の中の感覚が戻りません。
この状態で食事をすると火傷に気づきにくかったり、誤って舌を噛んでしまうケースがあったりします。
また、1週間経過後も食事に気を遣う必要があります。インプラントはボルトを顎骨に植え付ける手術なので、骨とボルトの合着までに時間がかかるからです。
インプラントが合着するまでの間は、特に固い食べ物を避けるように配慮しなければなりません。
さらに、日常生活の過ごし方も重要です。インプラントが顎骨に合着するまでの間は体の自然治癒能力を高めるような生活習慣が大切です。
そのためは喫煙や激しい運動を避け、安静に日常生活をおくる必要があります。
そのほか、手術後の注意点のなかでも難しいのは歯磨きです。歯磨きにおいては患部を刺激しないように柔らかいブラシでなるべく優しく磨くことが大切です。
ただしここで気をつけたいのは、磨き残しがないよう綺麗に磨くことです。細菌が増殖すると患部の治りが遅くなります。
それどころか、細菌の増殖によって炎症を起こす可能性さえあります。インプラントの手術後の歯磨きは、いつも以上に丁寧に磨くことです。
なお、インプラント治療後に出ると良くない症状もあります。それは、患部の腫れや鼻血などです。
これらの症状がみられた場合はインプラントを施した部位の周辺で問題が起きていることになります。
ここからは上記の注意点をそれぞれ詳しく解説していきます。対処法も紹介するので、困ったときの参考にしましょう。
インプラントの手術後に向いている食べ物は?
上記で述べたように、インプラントの手術後は食事について特に気を配る必要があります。では、どのような食事が手術後に向いているのでしょうか?
ここでは、インプラントの手術後に適した食事について解説します。すでに述べたように、注意点は各段階ごとに異なります。
手術後の経過に応じた適切な食事を選んで口内の自然治癒力を高めていきましょう。
インプラントの手術から数週間程度は、インプラントへの負担を軽減するために柔らかい食べ物を食べるようにしましょう。
柔らかい食べ物でおすすめなのが、おかゆやゼリーなどです。特におかゆはアレンジがしやすく、栄養価を確保しやすいメニューです。
インプラントの手術からしばらくは念のため、おかゆのような柔らかい食事に絞りつつ、栄養価もしっかり取れるよう意識しましょう。
前のセクションで、インプラントの手術後は麻酔により口の中の感覚がしばらく戻らないことを解説しました。そのため誤って舌を噛んでしまうことがあります。
そのようなリスクを避けるためには、原則、手術直後の数時間は飲食を避けることが大切です。
どうしてもお腹が空いたときなどにおすすめなのは、飲み物やスープなどの噛む必要のない食べ物です。
先述した、インプラントへの負担軽減としても効果的なので、特に手術直後は飲み物やスープなどで軽めに済ませ、栄養を補給しましょう。
インプラントの手術後に避けるべき食べ物は?
インプラントの手術後は麻酔の効果が残っていたり、インプラントの合着が安定していなかったりと、さまざまなリスクがあることを冒頭で述べました。
ここでは、それらのリスクを回避するために避けるべき食べ物について解説します。日常的に食べているものだと、特に避けるべき食べ物を見落としがちです。
避けるべき食べ物をしっかり把握し、インプラントの手術後の経過を妨げるようなことがないよう留意しましょう。
先述したように、インプラントの手術後は麻酔が残っている状態であり、口の中の感覚が無い状態なので温度を感知しにくいです。
そのため熱い食べ物を口に入れても、火傷していることに気づかないのです。普段、口の感覚がない状態を知らないので意識しなければ大怪我につながります。
また、熱い食べ物そのものがインプラントへの刺激となるケースもあります。インプラントの手術後の患部周囲は非常に繊細です。
インプラントへの刺激は歯茎の腫れ・出血の原因となります。なるべく刺激を与えないような食事を心がけましょう。
なお冒頭で述べたように、食事後の歯磨きについても刺激を避けるため、柔らかいブラシで優しく磨くことをおすすめします。
インプラントの手術後3〜6ヶ月程度は固い食べ物もなるべく避けるようにしましょう。先述したように、固い食べ物はインプラントへの負担となります。
特にフランスパンやナッツ類などは顎に対する刺激が直接入ってしまうので、なるべくメニューから除外しましょう。
なお、飴玉くらいの固さでも、噛み砕くような行為はNGです。少しでも顎やインプラントに負担がかかりそうな食べ物は除外するのが無難です。
刺激の強い食べ物は歯茎の腫れ・出血の原因となります。東南アジアなどにみられる、香辛料が多めな食べ物は避けるべきです。
普段は辛いものが大丈夫といって食べてしまうケースが多くありますが、先述したように、インプラントの手術後は患部が繊細な状態です。
また、インプラントのボルトと骨が合着するには相応の時間とケアが必要不可欠となります。ある程度安定してくるまでの1週間程度は慎重になるべきです。
インプラントの手術後の過ごし方は?
冒頭で触れたように、インプラントの手術後は私生活での過ごし方にも気を付ける必要があります。
そもそもインプラントの手術は外科手術です。そのため患部には傷口がある状態です。これらは手術後の自然治癒で回復していきます。
傷口が回復していくなかで骨とボルトの合着も進んでいくので、私生活において、なるべく回復を早めるような過ごし方をするのが得策です。
以下、手術後の過ごし方について具体的に解説していきます。インプラントの手術を受ける場合は、これらの生活習慣をきちんと守りましょう。
インプラントの手術後は、患部の自然治癒を促進するためにできる限り安静に過ごすことが大切です。十分な睡眠をとりつつ活動は控えめにしましょう。
また、意外かもしれませんが、入浴は血液の流れを循環させてしまうので、手術後数日は避けなければなりません。
血液の循環が良くなると痛みが出てきたり、出血が起こりやすくなったりします。特に就寝中に出血が起こると寝具を汚してしまうことにもなりかねません。
体を洗う場合は湯船に浸からず、シャワーで済ませましょう。また、入浴以外の方法でリラックスできるように工夫することも大切です。
激しい運動も血液の循環を促進し、患部の痛みや出血につながってしまうので、なるべく控えましょう。
手術後1週間程度は患部が痛みやすいので、安静にするべきです。特に手術後2〜3日の間は軽いウォーキングも避ける必要があります。
なるべく横になって安静に過ごしましょう。1週間程度経過すればある程度の運動は可能となります。
なお、運動は血液の循環による痛みのみならず、運動の疲れによる免疫力の低下を招くので自然治癒には不利なのです。
喫煙はインプラント治療のみならず、あらゆる歯の治療において避けるべき習慣です。喫煙はインプラントの成功率を落としてしまいます。
タバコに含まれるニコチンは血液の循環を阻害します。血液の循環を促進するのがインプラントにとって良くないことをお伝えしましたが、逆もダメなのです。
血液は歯茎などの血管を通じて、患部に栄養を供給します。その流れが悪くなると栄養が行き届かず、細菌への抵抗力が弱くなるのです。
その結果、細菌が増殖するきっかけとなります。最悪の場合、インプラントが外れてしまうケースもあります。
また、そもそもタバコは歯周病のリスクを高める習慣です。歯周病になりやすい口内環境がインプラント治療に悪影響となることは明白です。
そのほか、手術後1週間程度は飲酒も控える必要があります。アルコールにも血液の循環を促進させる作用があるほか、アルコールそのものが刺激物となり得ます。
飲酒によって患部を刺激し続けると腫れや炎症につながる可能性があるのです。
インプラントの手術後に気を付けるべき症状は?
インプラントの手術は外科手術のため、手術後にさまざまな症状が出る場合があります。
起こり得る症状は主に出血・痛み・腫れ・鼻血などです。これらは特定の部位で副作用的に起こる場合もあれば、何らかの問題が生じている兆候である可能性もあります。
以下、インプラントの手術後に起こり得る症状について詳しく解説していきます。少しでもおかしいと思ったらすぐにクリニックへ相談するのがおすすめです。
インプラントの手術後しばらくは不安定な状態であり、出血が続くこともあります。唾液で血の味を感じる程度であれば問題ありません。
ただしまれに、一部が紫色になるほど出血がひどくなる場合があります。その場合は10〜15分程度ガーゼをくわえ、出血が治まるのを待ちます。
それでも治らない場合、クリニックへ診てもらう必要があるでしょう。いずれにせよ、焦らず冷静に対処することが大切です。
インプラントの手術は歯茎を切開してボルトを埋め込む手法です。そのため手術後に麻酔が切れた際、どうしても痛みが出る場合が一定数あります。
特に埋め込むインプラントの本数が多い方や、歯肉の移植を伴う手術を行った方などは痛みが起こりやすいとされています。
痛みが出た際は、処方されたお薬を服用すれば大体の場合1週間程度で痛みがひきます。しかし1週間以上経っても痛みが治まらない場合は注意が必要です。
この場合、インプラント周囲が細菌などに感染している可能性が考えられるからです。ただちにクリニックへ連絡し、相談しましょう。
インプラントの手術は軽度な手術では決してないので、些細な兆候を見逃さないことが重要です。
インプラントの手術後の痛みがある場合、同時に起こりやすいのが歯肉部分の腫れです。
痛みが出やすい方の場合と同様に、インプラントの本数が多い方や歯肉の移植を伴う手術を行った方に出やすい症状です。
処方されたお薬を服用して安静にしていれば、通常は3日程度で治ります。しかし腫れが長引いている場合、注意が必要です。
歯肉の腫れがひどくなると、義歯と歯肉の隙間が広がり、食べかすや細菌がたまりやすくなります。
そうなると菌の増殖によって炎症が進み、最悪の場合インプラント周囲炎などにもつながるのです。
また、腫れている部分を舌や指で押すことも炎症を進行させる要因となるので、避けるべきです。
意外かもしれませんが、インプラントの手術後には鼻血が出ることもあります。主に上顎の奥歯部分にインプラントを埋め込んだ場合、起こりやすい症状です。
上顎の奥歯部分は鼻腔に通じていますが、インプラントを埋め込むことで炎症を起こす可能性があります。
処方されたお薬を飲めば、通常は2週間程度で治まる症状です。しかしそれ以上長引く場合は、クリニックへ相談するのがおすすめです。
まとめ
この記事ではインプラントの手術後の注意点について、食べ物・過ごし方・症状などを中心に解説してきました。
インプラントの手術を行ったあとは患部の自然治癒のため、注意すべき点が多くあります。
特に手術後1週間は食べ物から過ごし方に至るまで、多くのことに気を遣って過ごさなくてはなりません。
インプラント治療では埋め込んだボルトと歯茎が合着するまでの間、炎症や痛みが起こりやすく、食べ物や過ごし方によってはその症状を悪化させてしまうからです。
また、インプラント治療は外科手術につき、手術後の経過についても目を配る必要があります。少しでも違和感がある場合は、クリニックに相談しましょう。
ともあれ、手術後の注意点は多いものの、不安定な時期を越えればインプラントは自分の歯のように使いこなせる優れた技術です。
上記の注意点などを差し引いても、インプラント治療は検討するだけの価値があるでしょう。この記事がインプラント治療を検討している方の参考になれば幸いです。
参考文献
- インプラント手術後注意すべきこと8選|医療法人真摯会 まつもと歯科
- インプラント|テーマパーク8020
- インプラント治療は痛い?手術中と手術後に分けて解説|医療法人社団弘堂会 高田馬場駅前デンタルクリニック
参考サイト