インプラントは、失った歯を自分の歯に近い状態で再現できる施術です。
その施術の一種で、オールオン6というものがあります。それは1本ずつインプラント体を埋入する通常のインプラントとは少し異なります。
オールオン6とはどのようなものなのでしょうか。
この記事ではオールオン6の治療期間だけでなく、メリットやデメリット、費用や注意点に関して解説していきます。
治療を検討している方、オールオン6の詳細を知りたい方の参考になれば幸いです。
オールオン6の基礎知識
オールオン6とは、インプラント治療の方法の一つです。より咬合力を高めることができ、入れ歯の悩みを解決しやすい施術です。
ここでは、オールオン6の概要や仕組み、適応となるケースとそうでないケースについて解説していきます。
オールオン6の概要と仕組み
オールオン6とは、ポルトガル・リスボンのパウロ・マロによって実用化されたオールオン4の一種です。
オールオン4は、すべての歯を失った状態で行われるインプラント治療です。小臼歯の間に4本のインプラント体を埋め込んで、その上部に人工歯を取り付けます。
インプラント体を埋め込む際には、歯肉パンチで穴を開けて埋め込むフラップレスで行います。切開しないため、手術時間が短縮され、痛みや腫れがほぼないのがメリットです。
骨の厚みがある部分に奥のインプラントを斜めに入れ、力を均等に分散させるため、歯一列すべてを支えることができます。
オールオン6は、4本ではなく6本のインプラントで歯を固定する方法です。
4本のインプラントで治療可能なケースがほとんどですが、歯の安定性を優先して行われるのがオールオン6です。
オールオン4もオールオン6も、短期間で見た目を改善し、咀嚼機能を取り戻せます。人工歯がしっかりインプラントに固定され、その日のうちに食事が可能です。
噛むときにずれず自歯に近い感覚で食べることができ、入れ歯のように着脱する必要がないため、ケアも簡単に実施できます。
オールオン6が適しているケース・適していないケース
オールオン6が適しているケースは以下のとおりです。
- ほとんどもしくはまったく歯がない
- 総入れ歯を使用している
- 骨量が少ない
- 重度のむし歯や歯周病がある
- 通常のインプラントでは費用がかかる
オールオン6は、歯をすべて失った方に向いている施術です。
総入れ歯が合わなくなってきた場合、自分の歯に近い状態で食事がしたい場合もオールオン6は適しています。
オールオン6はインプラント体を斜めに入れる構造のため、骨量が少ない方にも実施可能です。
また、重度なむし歯や歯周病があり回復が見込めない場合も、失ってしまう歯の代わりにインプラントで補える可能性があります。
失った歯を補おうとすると、通常のインプラントでは本数が多く費用がかかりますが、オールオン6だと費用を抑えて実施することが可能です。
一方、オールオン6が適していないケースは以下のとおりです。
- 歯が残っている
- 糖尿病や高血圧症などがある
- アルコールや煙草をやめられない
- 金属アレルギーがある
オールオン6は人工歯が連結しているため、もし歯が残っている場合は、抜歯する必要があります。
糖尿病や高血圧症、アルコールや煙草は治癒不全や免疫低下など生じる可能性があります。
感染症などのトラブルになりやすく、インプラント治療にリスクとなる要因です。
また、インプラント体は金属を使用するため金属アレルギーがある方も注意が必要です。
インプラント体は一般的にアレルギーの症状が出にくいとされるチタンが使われていますが、まれに症状が出る方もいます。
持病や金属アレルギーに関しては、事前にしっかり歯科医師に相談しましょう。
オールオン6の治療期間はどのくらい?
オールオン6の治療期間は、骨の結合にもよりますが3ヶ月〜1年程度とされています。
手術自体は短時間で終了しますが、骨の結合やメンテナンスなどの時間が必要です。実際、骨との結合だけでも約半年安静期間を置きます。
歯周病などお口のなかの治療があったり全身状態に問題があったりした場合は、さらに時間がかかります。
問題を放置していると、感染症や免疫低下などが生じ、せっかく設置したインプラントが脱落する危険性が高まるため治療は必須です。
そのため、治療期間には個人差があります。期間や工程については治療方針や費用に関わるので、歯科医師に確認した方がよいでしょう。
オールオン6の治療期間の流れ
オールオン6の治療期間は平均すると約半年です。その半年の間に、さまざまな工程があります。医師との確認作業など、実施した方がよいことも少なくありません。
ここでは、治療の流れについて、初回のカウンセリングから手術後のメンテナンスまで詳しく見ていきましょう。
カウンセリング・検査から手術までの流れ
オールオン6の治療で始めに行うのがカウンセリングです。これまでの病歴や歯の状態、希望などを聞き取ります。
次に歯科用CTやレントゲン撮影などで、顎の中の神経や血管、骨の厚みや密度を精査します。インプラントの土台となるので骨の状態は重要です。
カウンセリングや検査の結果から、顎の骨や全身状態を考慮し、インプラント治療の適性と治療計画を説明します。
治療が適正であり、計画に同意すれば手術を実施します。
持病や歯周病があるときは、感染症などのリスクが高くなるため、それらの治療を先に行わなくてはいけません。
どのように治療を進めるかは、歯科医師と相談しましょう。
人工歯(インプラント)の装着と保定期間
手術は6本のインプラント体を埋め込むものです。
歯茎を切開した場合は、糸で歯茎を縫い合わせ、仮の人工歯を取り付けて手術は完了です。
手術後は、埋め込んだインプラント体が結合するまで3〜6ヶ月ほど安静期間を置きます。
インプラント体の結合を確認したら、人工歯との連結部分を装着し、修正を行います。
治療後のメンテナンス
手術や修正が完了しても、インプラントを長期間安定して使用するために、定期的なメンテナンスが必要です。
自宅での歯磨きのほか、歯科医師や歯科衛生士によるケアを行います。
ケアをしながら、インプラント体周囲の骨の吸収状態を確認するなど、観察も重要です。
メンテナンスの内容や期間はインプラント体の結合や状態にもよるので、詳細は歯科医師に確認しましょう。
オールオン6治療のメリットとデメリット
インプラント治療には、メリットとデメリットがあります。オールオン6にも、特性や構造などに関係してメリットやデメリットがあります。
治療を受けるにあたって、メリットとデメリットを把握しておくことは重要です。ここでは、オールオン6のメリットとデメリットを確認しましょう。
オールオン6のメリット
オールオン6のメリットは以下のとおりです。
- 顎の骨が薄くても適応
- 手術当日から使用できる
- 入れ歯より使用感がよい
- 身体への負担が少ない
- 費用が抑えられる場合がある
オールオン6は顎の神経を避けて斜めに埋め込むため、骨の骨量や密度が低くても、骨造成や骨移植を行わずに手術を行える可能性が高くなります。
インプラント体を埋入してすぐに人工歯を取り付けるため、状態がよければ手術当日から食事が可能です。歯が安定しやすく、咀嚼力が強くなるため、使用感もよいでしょう。
また、オールオン6は6本のインプラント体のみ埋入するため、腫れや痛みが少なく身体への負担が軽減されます。
1度の手術で完了するため、精神的なストレスを抑えることも可能です。
さらにインプラント体の本数が少ないので、通常のインプラント治療より費用を抑えられる可能性があります。
オールオン6のデメリット
オールオン6のデメリットは以下のとおりです。
- 外科手術が必要
- 入れ歯より費用が高い
- 治療できる医院が限られる
インプラントを埋め込む治療は外科手術が必要です。
すべての歯を損失している場合、歯茎を切開してインプラント体を埋入し、抜歯と同時に行うときは抜歯後にインプラント体を取り付けます。
通常のインプラント治療よりは手術の時間や身体への負担がかからない傾向ですが、一般的に痛みへの対策として麻酔や静脈内鎮静法は使用されます。
そのため、手術のストレスは否定できません。
また、通常のインプラントより費用が抑えられる可能性はあるものの、入れ歯と比べると手間も費用もかかる傾向があります。
オールオン6は詳しく検査したうえで特殊な技術で行うため、実施できる歯科医院が限られます。歯科医師の施術経験も重要です。
治療を受けるにあたり、メリットやデメリットを把握して、適切な歯科医院や歯科医師を選びましょう。
オールオン6の治療費用
インプラント治療は自由診療のため、費用が高くなる傾向があります。
しかし、オールオン6は制度を利用すると、通常のインプラントより費用を抑えることが可能です。
ここでは、費用の相場と費用負担を抑える方法を解説します。
オールオン6治療の費用相場
オールオン6治療の費用は、上下で行った場合、5,000,000円(税込)前後が一般的です。
これには手術費用だけでなく、人工歯の製作や術後のメンテナンスなども含まれています。
手術と片頬上部構造のみだと費用は2,500,000円(税込)程度になるケースもあります。
ただし、メンテナンスやほかの治療と合わせるとさらに費用がかかると考えられるでしょう。
インプラントや人工歯の材料が高額であり、高度な技術が必要とされるため、インプラント治療は費用が高くなる傾向があります。
保険適用はされず自由診療になるため、全額自己負担です。しかし、制度や分割払いを利用して費用を抑えることは可能です。
費用負担を抑える方法(1) 医療費控除の利用
オールオン6は医療費控除の対象となります。医療費控除とは、1年間で支払った医療費が一定額を超える際に、支払額の一部が戻ってくる制度です。
支払い額が10万円(税込)を超える場合が対象であり、上限は200万円です。なお、世帯年収が200万未満であれば、年収の5%が医療費として支払った際に対象になります。
また、通院に公共交通機関を利用した場合は交通費も対象です。
申請方法は、医療費控除に関する事項やその他の必要事項を記載した確定申告書を、最寄りの税務署に提出します。
近年ではスマートフォンやパソコンからも申請可能なので、利用しやすくなっています。
費用負担を抑える方法(2) デンタルローンの使用
デンタルローンは、ローンの一種で、歯科治療費を少しずつ支払うための仕組みです。
一括で多額の支払いをする必要がなく、月々決められた額を払うため、費用負担が軽減されます。
まず、治療を行う歯科医院で費用を見積もり、提携している金融機関やローン会社に申し込みます。
審査が通れば、金融機関などから歯科医院に直接支払われ、利用者は分割で返済を行う流れです。
しっかり返済計画を立てて毎月無理なく支払えるようにすれば、一度に費用を支払うことがないため、ストレスを感じにくいでしょう。
デンタルローンでも医療費控除は可能です。金融機関が立て替えた金額のうち、契約をした年の1年分の支払いが医療費控除の対象となります。
ただし保険金や手数料が控除の対象外となる点は注意が必要です。
費用負担を抑える方法(3) 分割払いの利用
費用の支払いを抑えるには、クレジットカード支払いで分割払いを利用する方法もあります。
分割払いは治療の進行状態に合わせて支払うケースが多く、治療完了までの期間に完了させる場合が少なくありません。
利息や手数料が発生することを忘れず、費用総額を確認したうえで支払い方法を検討しましょう。
費用の支払いに関しては、後々トラブルが起きないように歯科医師としっかり相談することが重要です。
オールオン6治療を成功させるポイント
オールオン6は費用がかかりますが、技術の高い施術です。できるだけ問題なく治療を成功させたいと思う方も少なくないでしょう。
ここでは、オールオン6の治療を成功させるポイントを解説していきます。
どのような点に注意すればよいかを確認しながらご覧ください。
施設設備の整ったクリニックを選ぶ
インプラント治療は、インプラント体を埋め込むための外科的処置を必ず行わなくてはいけません。
通常の治療とは異なるため、インプラント治療専用の手術室や個室を完備している必要があります。
また、歯や骨の状態を調べる歯科用CTなど医療機器が充実しており、精密検査をしっかり行える医院を選ぶのが大切です。
検査を十分に行うことで綿密な計画を立案でき、質の高い治療を施行できます。
また、オールオン6は歯科医師なら誰でもできるわけではなく、知識と技術が必要です。
インプラント治療について詳細まで理解しており、経験が豊富な歯科医師を選びましょう。
日本口腔インプラント学会 口腔インプラント専門医は、より専門的な知識と技術を得ていると学会に認定された歯科医師です。
知識や経験の有無だけでなく、ほかの歯科医師の推薦や試験の合格などさまざまな条件を満たしている必要があります。
その資格の有無も判断材料にするとよいでしょう。
施術の説明が明瞭な歯科医師を選ぶ
インプラントは高度な技術であり、治療費も高額な施術です。そのため、事前の説明が不十分だとトラブルになりやすいでしょう。
検査結果や治療計画、費用など、しっかり丁寧に説明する歯科医師を選びましょう。
また、説明を受ける際は詳細まで相談するようにすると、トラブルを防ぐことができます。
しっかり施術に臨むためにセカンドオピニオンを検討するのも一つの方法です。
アフターフォローが充実している歯科医院を選ぶ
インプラント治療は、感染症や不具合防止のために術後のメンテナンスも重要です。
定期的なメンテナンスのほかに、インプラントに適応される保証があるかどうかも事前に確認する必要があります。
保証期間内であれば、もしインプラントに不具合があっても無償で解決することができます。
メンテナンスやアフターフォローがしっかりしている歯科医院を選んで、術後も不安なく過ごせるようにしましょう。
日々の口腔ケアや健康管理を丁寧に行う
インプラント治療は、歯茎を切開してインプラント体を顎の骨に埋め込む治療です。
口腔内の衛生管理が不十分だったり、全身状態が管理できていなかったりすると、免疫低下や感染症のリスクがあります。
日々の口腔ケアをしっかり行い、必要に応じて歯科医院でのメンテナンスを受けるようにしましょう。
また、喫煙は治癒を遅らせ、インプラント周囲炎のような感染症を悪化させる要因になります。
感染症はインプラントの脱落などトラブルにつながりやすいので、日々のケアや健康管理は必ず行いましょう。
まとめ
オールオン6は、6本のインプラントで歯一列全体を支える施術です。
歯をすべて失った方でも自然に近い状態で歯を再現することができ、通常のインプラント治療と比べて費用を抑えられるため、有用な治療法といえます。
しかし、顎の骨や全身状態、費用や術後のメンテナンスなど、注意点も少なくありません。
歯を取り戻すことは、食事や会話がしやすくなるだけでなく、見た目の改善など心理的にもよい影響があると考えられます。
生活の質を向上させるためにも、事前に歯科医師と十分に話し合って、不安や疑問を解消してから治療に臨みましょう。
参考文献