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オールオン4で骨造成が必要になるケースとは?治療の流れや注意点も併せて解説

オールオン4で骨造成が必要になるケースとは?治療の流れや注意点も併せて解説

多数の歯を失った方にとって、オールオン4は、インプラント治療のなかでも短期間で安定した噛み心地を取り戻せる治療法とされています。しかし、顎骨が不足している場合では、骨造成が必要となるケースもあります。

本記事ではオールオン4の骨造成について以下の点を中心にご紹介します。

  • オールオン4の骨造成とは
  • オールオン4で行う骨造成のメリットと注意点
  • オールオン4の骨造成を受ける前に知っておくこと最小4本のインプラントで

オールオン4の骨造成について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

オールオン4と骨造成について

オールオン4と骨造成について

歯科治療のひとつであるオールオン4と骨造成ですが、どのような治療法なのでしょうか。以下で解説します。

オールオン4とは

オールオン4(All-on-4)は、最小4本のインプラントで上下歯列すべての上部構造を支える治療法です。オールオン4は、4~6本のインプラントを顎骨にバランスよく配置します。その上に連結した上部構造を固定し、少ない本数でもしっかりと噛める歯につながるのが特徴です。

顎骨の状態によっては骨移植をせずに治療が可能な場合もあり、抜歯からインプラント埋入、仮歯の装着までを1日で行う即日治療に対応している歯科医院もあります。
顎や歯の状態にもよりますが、「総入れ歯が合わない」「歯の見た目を早く改善したい」「何度も通院するのが難しい」といった方におすすめの治療法です。

骨造成とは

骨造成(こつぞうせい)は、インプラントを埋め込むために必要な骨の高さや厚みを再生させる手術のことです。
歯周病や加齢、抜歯後の骨吸収などが原因で顎骨が痩せてしまうと、インプラントがしっかり固定できず、手術が難しくなることがあります。こうした場合に骨造成を行うことで、失われた骨を再生させ、インプラント治療ができる状態を目指します。

代表的な方法に、GBR法(骨誘導再生法)があります。GBR法(骨誘導再生法)は、骨が不足している部位に自身の骨や人工骨補填材を詰め、メンブレン(人工膜)で覆って骨の再生を促す方法です。
数ヶ月の治癒期間を経て、新しい骨が形成され、しっかりとした土台が期待できます。

オールオン4における骨造成について

オールオン4における骨造成について

ここでは、オールオン4で骨造成が必要になるケースや、注意点などを解説します。

オールオン4で骨造成が必要になるケースとは

オールオン4で骨造成が必要になるのは、以下のようなケースです。

  • 歯周病で骨が溶けてしまった場合
  • むし歯や根の病巣によって骨が失われた場合
  • インプラントを理想的な位置に埋めるために骨が足りない場合

顎の骨量が極端に少なかったり、骨質がやわらかい上顎だったりする場合、インプラントの固定が難しくなることがあります。このようなケースでは、骨造成(GBR法など)によって骨を増やしてから治療を行う必要が出てきます。

なかでも上顎は下顎に比べて骨がやわらかく、インプラントの安定性を確保するために追加の骨造成を併用するケースも少なくありません。そのため、オールオン4を検討する際は、歯科用CTの撮影などによって骨の状態を診断したうえで、綿密な治療計画の作成が重要です。

骨造成を行うメリットと注意点

骨造成を行う主なメリットには、以下のような点が挙げられます。

①インプラントが安定しやすくなる
骨造成を行うことで顎の骨量を十分に確保でき、インプラントを正しい角度と深さで埋め込めるようになります。その結果、インプラントの固定力や長期的な安定性の向上につながります。

②見た目(審美性)が改善する
骨が不足していると歯茎が下がり、口元のバランスが崩れる場合があります。骨造成を行うことで、歯茎のラインが整い、自然で美しい仕上がりが期待できます。

③将来的なトラブルを防ぐことにつながる
骨が足りないままインプラントを行うと、歯茎から金属が露出するなどのトラブルが起こる可能性があります。骨造成を併用すれば、抜け落ちや炎症などのリスク軽減につながります。

しかし、骨造成にはいくつかの注意点もあります。

①治療期間が長くなる
骨造成は、骨が再生するまでに数ヶ月の治癒期間が必要です。そのため、通常のオールオン4よりも治療期間が延びることがあります。

②身体への負担が増える
自身の骨を採取する場合は、追加の外科処置が必要となるため、腫れや痛みが出やすい傾向があります。人工骨を使用する場合でも、術後は安静が求められます。

③全身状態によっては適応外となる場合もある
糖尿病や高血圧などの持病がある方、喫煙者は骨の治りが悪くなることがあります。治療前に必ず歯科医師と相談し、リスクを把握することが大切です。

また、骨造成後の術後24時間以内は患部を刺激しないことが大切です。強いうがいや硬い食べ物は避け、やわらかい食べ物を選ぶようにしましょう。喫煙や飲酒は血流を悪化させ、傷の治りを遅らせる原因になるため、2週間程度は禁煙と禁酒が推奨されます。

もし出血や腫れが長引く、痛みが強いなどの症状がある場合は、自己判断せずに早めに歯科医師へ相談しましょう。適切なケアを行うことで、骨造成後の回復がスムーズになり、オールオン4の長期的な維持につながるでしょう。

骨造成が必要な場合の治療の流れ

骨造成が必要な場合の治療の流れ

それでは、骨造成とはどのような流れで行われるのでしょうか。以下で解説します。

①自家骨を採取する

患者さん自身の骨を利用する自家骨移植を行う場合、まず顎の先端や奥歯の外側から骨を採取します。採取した骨は、細かく砕いて移植しやすい状態に加工されます。
インプラントと骨造成を同時に行う場合には、この採取した骨を用いて骨の厚みや高さを補います。

②インプラントを埋入する

次に、インプラントを顎骨の所定の位置に埋め込む手術を行います。 まず歯茎を切開し、専用のドリルで骨に小さな穴を開け、インプラント体を定めた角度と深さで挿入します。
このとき、骨の高さや厚みが不足している場合には、事前に自家骨や人工骨補填材を併用して土台を補強します。

骨造成を伴うインプラント手術は、インプラントの一部が骨から露出しないように慎重な埋入が求められます。術後の安定性を高めるため、噛み合わせの位置や力のかかり方も考慮しながら計画的に埋入を行います。
埋入が完了したら、インプラントが骨としっかり結合するまで数ヶ月間の治癒期間を設け、次のステップに進みます。

③骨補填材を充填する

インプラントを埋入した後、骨が不足している部分に採取した自家骨や人工の骨補填材を充填します。
この骨補填材は、骨の再生を助ける重要な役割を果たし、将来的にインプラントが安定するための土台となります。
充填後は、特殊な人工膜(メンブレン)で覆い保護します。メンブレンには歯肉の侵入を防ぎ、骨がゆっくりと再生する環境を保つ働きがあります。
膜の種類には、体内で自然に吸収されるタイプと、治癒後に除去が必要なチタン製タイプがあり、患者さんの状態に応じて選択されます。

④歯茎の縫合

骨補填材の充填とメンブレンの設置が完了したら、歯茎を元の位置に戻して丁寧に縫い合わせます。この縫合は、外部からの細菌感染を防ぎ、骨が安定して再生するために重要な工程です。
骨の再生には通常6〜10ヶ月程度の期間がかかり、その間は患部を刺激しないように注意が必要です。
また、定期的に経過観察を行い、治癒の進行を確認しながら次のステップへ進みます。

⑤上部構造を装着する

骨の再生とインプラントの結合が確認できたら、上部構造を装着する最終ステップに入ります。
まず、歯茎を少し開いてアバットメントと呼ばれる連結パーツを取り付けます。その上に、周囲の歯の色や形に合わせて製作した上部構造を装着し、噛み合わせや見た目を調整します。チタン製のメンブレンを使用していた場合は、この段階で一緒に取り除きます。
治療完了後は、インプラントの寿命を長く保つために定期的なメインテナンスと丁寧なセルフケアを行い、清潔な口腔環境を維持することが重要です。

オールオン4で骨造成が必要になる場合の治療期間や費用相場

オールオン4で骨造成が必要になる場合の治療期間や費用相場

メリットや注意点のあるオールオン4の骨造成ですが、治療期間や費用はどのくらいかかるのでしょうか。以下で基本的な目安を紹介します。

治療期間

オールオン4に骨造成を併用する場合、治療期間は通常よりも長くなる傾向があります。
骨造成の治癒には4〜8ヶ月程度の時間が必要とされます。骨の量を増やした後、しっかりとした骨が再生されるまで待つ期間があるためです。さらに、骨造成とインプラント埋入を別々に行う場合は、併せて1年程度かかることもあります。

ただし、骨の状態や治癒の経過には個人差があります。それなりに骨の量が残っている方であれば、骨造成とインプラント埋入を同時に行う“同時埋入法”が可能な場合もあり、期間を短縮できることもあります。

いずれにおいても治療前の精密検査で骨の状態を把握し、歯科医師と一緒に無理のないスケジュールを立てることが大切です。

費用相場

骨造成を伴うオールオン4の治療は、自由診療(保険適用外)が基本です。
そのため費用は全額自己負担となりますが、医療費控除の対象にはなるため、確定申告時に申請すれば税金の一部が戻る可能性があります。
骨造成の費用は、採用する術式や骨の再生量によって異なります。以下で目安を紹介します。

ソケットリフト:約3万〜10万円。骨の不足が軽度な場合に行う方法で、インプラントの埋入方向から骨を補います。

サイナスリフト:約15万〜35万円。上顎奥歯の骨が薄いケースに適用される手術で、側面からアプローチして骨を増やします。

GBR法(骨誘導再生法):約3万〜15万円。人工膜で骨の再生を助ける方法で、幅広い症例に対応できるとされています。

ボーングラフト(骨移植):約5万〜30万円。自家骨や人工骨を移植して骨を増やす方法で、大きな欠損部位に適しています。

ソケットプリザベーション:約5万〜15万円。抜歯直後に骨の吸収を防ぐ目的で行う治療です。

複数の術式を併用する場合や、上顎の治療ではさらに費用が高くなる可能性もあります。
治療計画を立てる際には、総費用の見積もりと分割支払いの可否などを事前に確認しておきましょう。

日常生活への影響

骨造成を伴うオールオン4の治療後は、日常生活での注意点を守ることが回復の鍵となります。
まず、手術当日は血行をよくする行動は避けましょう。例えば、飲酒や激しい運動、長風呂などが挙げられます。翌日からいつもの生活に戻れる場合が多い傾向にありますが、2〜3日程度は安静を保つことが望ましいです。

また、手術部位を触ったり、強くうがいしたりしないことが大切です。骨造成した箇所は、骨折と同じようにデリケートな状態です。歯ブラシが当たらないように注意し、歯科医師から指示された範囲内で優しく口腔ケアを行いましょう。

食事も重要なポイントです。硬いものを噛むと骨補填材が動いてしまい、骨の再生が妨げられることがあります。治療直後はゼリーやスープ、おかゆなどのやわらかい食事を中心にしましょう。
また、仮歯を装着している場合は、強い力で噛むと外れることがあるため、仮歯に負担をかけない食事を意識することも大切です。

オールオン4で骨造成が必要になる場合に知っておきたいこと

オールオン4で骨造成が必要になる場合に知っておきたいこと

オールオン4で骨造成が検討される場合は、以下のような点を確認しておきましょう。

オールオン4と骨造成の関係を正しく理解する

オールオン4の治療を検討する際、骨造成と聞くと「大がかりな手術では?」「痛みが強いのでは?」と不安に感じる方もいるのではないでしょうか。
しかし、骨造成は歯科医師が処方する鎮痛薬をきちんと服用すれば、数日で痛みや腫れが落ち着くケースが多いとされています。

もちろん、骨の不足量が大きい場合や手術範囲が広い場合は、やや痛みが強く出ることもありますが、正しい処置とアフターケアを行えば日常生活への影響は少なく抑えられるでしょう。

一方で、事前にリスクや回復期間を理解しておくことも大切です。
骨造成は、インプラントを安定させるための準備であり、重要なのは正しく理解し、準備して臨むことです。歯科医師の指示をよく聞いて、納得したうえで骨造成を伴うオールオン4に進むとよいでしょう。

治療を検討する際は歯科医師へ相談する

オールオン4や骨造成を検討する際は、治療内容やスケジュールを歯科医師にしっかり相談することが不可欠です。
インプラント治療は段階的に進むため、骨造成を行う場合は全体で半年〜1年程度かかるケースもあります。治療の流れや通院頻度、治療期間の目安を明確にしてもらうことで、仕事や生活への影響を事前に把握することにつながります。

また、使用するインプラントのメーカーや材質の特徴、耐久性、保証内容についても事前に確認しておきましょう。自身の骨や体質に合ったインプラントを選ぶことが、長期的な安定につながります。

さらに、術後のトラブル対応や保証体制についても確認しておくことが大切です。
例えば、インプラントが定着しなかった場合の再治療や、炎症が起きた際の保証範囲などを具体的に聞いておきましょう。

骨造成を含むオールオン4は、歯科医師との丁寧なカウンセリングを通して理解を深め、不安の少ない治療計画を立てることが重要です。

まとめ

まとめ

ここまでオールオン4の骨造成についてお伝えしてきました。オールオン4の骨造成の要点をまとめると以下のとおりです。

  • オールオン4の骨造成は、インプラントを安定して支えるために不足した顎骨を再生させる治療である。歯周病や加齢で骨が痩せた場合に行われ、強固な土台を形成することを目的としている
  • 骨造成を行うことでインプラントの安定性や噛み心地が向上し、見た目のバランスも整うなどのメリットが挙げられる。一方で、治療期間が延びる、手術後の腫れや痛みが出やすいなどの注意点もあるほか、全身疾患がある場合は治癒が遅れるため、歯科医師と相談のうえで慎重に進める必要である
  • 骨造成は外科的処置を伴うため、事前に治療期間やリスクを理解しておくことが重要である。痛みは軽度の傾向があるものの、生活への影響をなるべく抑えるためには、歯科医師への相談が不可欠であり、しっかりと指示に従い、無理のない計画を立てることが求められる

オールオン4における骨造成の理解を深めて、治療に望むことが大切です。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

出身大学:福岡歯科大学 / 経歴:1989年福岡歯科大学 卒業 1991年松浦明歯科医院 開院 2020年医療法人松栄会まつうら歯科 理事長就任 / 資格:厚生労働省認定研修指導医 日本口腔インプラント学会認定医 ICOI (国際インプラント学会)Fellowship認定医 / 所属学会:ICOI(国際口腔インプラント学会) 日本口腔インプラント学会 日本臨床歯科学会(SJCD) 福岡支部 理事 日本顎咬合学会 会員 日本臨床歯科CAD/CAM学会(JSCAD)会員

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