インプラント

歯が欠けた!その場でやるべき応急処置とその後の治療法も解説

歯が欠けた!その場でやるべき応急処置&その後の治療法も解説

歯はとても丈夫な器官ですが、強い力がかかると欠けたり、割れたりすることがあります。歯が欠けるというのは、膝を擦りむくのとは大きく異なるため、パニックに陥ってしまう方もいらっしゃることでしょう。しかし、スムーズにその後の治療に移るためにも、歯が欠けたらどうすればいいのか知っておくほうがよいでしょう。

今回は、歯が欠けた時にその場でやるべきことやその後の治療法などについて詳しく解説します。アクシデントに遭遇した際には参考にしてみてください。

歯が欠けたときの応急処置

歯が欠けたときの応急処置 事故やスポーツなどで外傷を負って歯が欠けた場合は、次のような応急処置を行いましょう。

「欠けてしまった破片は生理食塩水で保存」は必要なし

歯が欠けたというよりは「抜けた」場合は、生理食塩水で保存しておくことをおすすめします。歯がきれいに抜けたケースでは、歯科医院で元の場所へと戻せることがあるからです。天然歯は再生することがない器官であり、戻せるものであれば戻した方が患者さんのメリットにもなります。

ちなみに、生理食塩水以外でも牛乳や歯の保存液が近くにあれば、それらに抜けた歯を保存しても良いです。特に学校などではティースキーパーと呼ばれる歯の保存液が完備されていることも多いため、歯が抜けた際にはその点について確認しておくとよいでしょう。

歯の一部が欠けたり、割れたりした場合は、基本的に元に戻すことは難しいです。そのため歯の破片を生理食塩水や牛乳に浸けておく必要もありません。歯医者さんに破片を持参すれば、外傷を受けた時の状況などもよくわかるため、保存だけはしておくようにしましょう。

欠けてしまったところは触らない

歯が欠けたところは、傷を負っている状態と同じです。無暗に触ると細菌に感染したり、さらに欠けたりしてしまうことがあります。それ以上、患部を悪くしないためにも、欠けてしまったところはできるだけ触らないようにしてください。

ただ、歯医者さんを受診するまでに期間があいてしまう場合は、口腔ケアをしっかり行うことが大切です。歯の欠け方にもよりますが、原則的には歯磨きを行い、歯垢や食べかすが付着しないよう努めましょう。

歯が欠けた部分は、健全な歯質よりもむし歯になりやすくなっています。だからといって硬い歯ブラシでゴシゴシと力強く磨くと、歯が摩耗したり、痛みが生じたりするため、上手にコントロールすることが大切です。

痛みが強い場合は鎮痛剤を服

用 歯が欠けたことによって強い痛みが生じている場合は、我慢せずに市販の鎮痛剤を飲みましょう。普段から飲み慣れている鎮痛剤があればそれで構いません。あくまで応急的な処置なので、強い痛みが生じているケースであれば、できるだけ早く歯医者さんに診てもらうことが大切です。歯が欠けて痛みがあるということは、歯やその周りに深刻な異常が生じていることを意味します。

歯が欠けた際の重症度別の治療法

歯が欠けた際の重症度別の治療法 歯が欠けた・抜けた場合の治療法は、重症度によって大きく変わります。ここでは重症度別の代表的な治療法をご紹介します。

歯が小さく欠けた場合

歯の辺縁が少しだけ欠けたような場合は、次の2つの方法で治療することができます。

・コンポジットレジン
コンポジットレジンは、歯科用プラスチックです。ペースト状の材料を欠けた歯の部分に盛り付けて、形を整えた上で固めます。光を照射するだけで硬化させることができるため、いわゆる歯型取りは必要ありません。歯が欠けた部分の治療をその日のうちに終わらせることができます。

また、保険が適用されるため費用も抑えられるのもメリットです。歯が欠けた範囲が狭く、特別な症状も現れていないのであれば、初診料も含めて2000~3000円で治せるでしょう。

ただ、歯が欠けた部分が小さかったとしても、部位によってはコンポジットレジンで修復できない場合もあるので、その点は注意が必要です。いずれにせよ、歯が小さく欠けたケースでは、コンポジットレジンによる修復治療が第一の選択肢となることでしょう。

・ラミネートべニア
ラミネートベニアとは、歯の表面にセラミック製のチップを貼り付ける治療法です。エナメル質を一層、削る必要がありますが、それによって歯の寿命が大きく縮まることはありません。歯の表面に亀裂が入ったり、小さい範囲で欠けたりした場合は、ラミネートベニアを検討してみてもよいでしょう。
ちなみに、ラミネートベニアには保険が適用されません。セラミック製のチップを使った審美治療の一種であることから、原則として自費診療となります。そのため、コンポジットレジンによる修復よりも費用が高くなる点には注意が必要です。

歯が中程度に欠けた場合

歯が中程度に欠けた場合で、神経を残せるケースでは、被せもので治療するのが一般的です。専門的にはクラウンと呼ばれる修復物を作って装着します。被せものには保険と自費の2種類があります。

・保険適用の被せもの
保険適用の被せものは、歯科用プラスチックであるレジンか銀歯になることがほとんどです。レジンは安価で成形もしやすい材料ですが、経年的な劣化が起こりやすいのが難点です。治療から1~2年もすると変色や摩耗が目立つようになり、強い力がかかると欠けることもあります。

銀歯も安価に作れる被せものですが、金属アレルギーのリスクがある点に不安を感じる方が多くなっています。また、銀歯から溶出した金属イオンが歯茎に沈着すると、メタルタトゥーという黒ずみを生じさせます。そうしたことから、最近は銀歯ではなく、白い歯を希望される方が増えてきています。

最近では、保険適用の白い歯の被せものとして「CAD/CAM冠(キャドキャムカン)」と呼ばれるものも増えてきています。CAD/CAM(Computer Aided Design/Computer Aided Manufacturing)冠とは、コンピューターを使って被せものの設計から製作までを行う手法で、工業分野ではかなり前から普及している技術です。

歯科医療でも活用される場面が増え、いよいよ保険診療でも使えるようになりました。CAD/CAM冠では、ハイブリッドセラミックという、レジンより耐久性が高い材料を使える点は大きなメリットです。ただし、自費診療のセラミックほど耐久性は高くありませんので、その点は混同しないように注意しましょう。

・自費診療の被せもの(セラミック)
自費診療では、純粋なセラミックを使用することができます。セラミックはいわゆる陶器であり、美しい白色を呈しているだけでなく、天然歯の光沢や透明感、質感なども忠実に再現できます。ひと言でセラミックといってもいくつかの種類に分けられますが、その中でも以前から使用されているのは「オールセラミック」です。「ジルコニア」は、透明度においてオールセラミックに劣るものの、強度においては優れています。人工ダイヤモンドと呼ばれるくらい硬いため、強い力がかかりやすい奥歯にも安心して使えます。

歯が大きく欠けた場合

歯が大きく欠けた場合は、神経を残せない可能性があります。なぜなら、歯の神経と血管から構成される歯髄(しずい)は、細菌に感染してしまうと抜かざるを得なくなるからです。歯の神経を抜くということは、歯の寿命を縮めることにもつながるため、できれば避けたい処置ではありますが、歯が大きく欠けて歯髄が露出した場合はやむを得ません。

そして、歯が大きく欠けた場合に厄介なのは、歯の神経を抜いただけでは治療が終わらないという点です。歯の神経が収まっている根管の中をきれいに掃除しなければ、その後、根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)という病気を発症してしまいます。そこで必要となるのが根管治療です。根管内をいろいろな器具や薬剤を使って消毒する処置を施し、根管の中の感染源をできる限り取り除いたら、最終的には土台を作って被せものを装着します。そこに至るまでにはかなりの期間を要しますが、かけがえのない歯を残すためにも頑張って治療をやり遂げましょう。

歯がかなり大きく欠けた場合

歯がかなり大きく欠けた場合は、保存することが難しくなります。歯の頭の部分である歯冠(しかん)だけでなく、歯根(しこん)まで亀裂が入ったり、割れたりしているケースが該当します。そうしたケースでは抜髄や根管治療、被せもの治療を行うことはありません。歯を抜いた上で、入れ歯やブリッジ、インプラントといった補綴治療(ほてつちりょう)を実施します。

・入れ歯
入れ歯は、取り外し式の装置です。歯を1本失ったケースからすべての歯を失ったケースまで適応できます。残った歯を大きく削る必要はなく、保険も適用されることから、手軽に作れる補綴装置といえるでしょう。ただし、装置が目立ちやすく、違和感や異物感も大きいため、後からインプラントに切り替える人もいます。

・ブリッジ
ブリッジは、1~2本の歯を失った場合に適した補綴装置です。隣の歯を少なくとも1本削る必要があるため、健康な歯を犠牲にしたくないという方にはあまりおすすめできません。入れ歯とは異なる固定式の装置であることから、安定感は良好で、硬い食べ物でもしっかり噛めます。保険内で作ることも可能で、費用は比較的安価です。

・インプラント
インプラントは、顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込む治療法です。歯科では唯一、歯根から回復できる補綴装置です。噛んだ時の力が顎の骨に伝わることから、顎骨の吸収も起こりにくいです。ただ、インプラントは原則として自費診療となります。費用は高額で、1本あたり30万~50万円程度かかる点には注意が必要です。

「歯が欠けた!」よくある原因

「歯が欠けた!」よくある原因 歯が欠けた場合の応急処置や治療法についてはご理解いただけたかと思います。ここではそもそもなぜ歯が欠けるのかについて、もう少し詳しく解説します。

むし歯

意外に思われるかもしれませんが、むし歯になると歯が欠けることがあります。むし歯は歯の表面に穴をあける病気ですが、その過程でエナメル質や象牙質が脆くなり、とくに穴があいた部分の周辺は、歯質が薄くなってしまいます。そのため、ちょっとした衝撃が加わるだけでもかんたんに割れてしまいがちです。いつも通りに食事をしていて歯が割れた場合は、もともとむし歯で歯質が脆くなっている可能性が高いでしょう。

酸蝕歯

酸蝕歯(さんしょくし)とは、酸性の刺激によって歯が溶かされる病気です。むし歯と同様に歯質が脆くなっている状態であることから、ちょっとした衝撃で歯が割れる場合があります。酸蝕歯は、逆流性食道炎(ぎゃくりゅうせいしょくどうえん)を患っていて、胃の内容物が口腔にまで逆流している人にも起こり得ます。細菌感染症ではないため、むし歯とは明確に異なり、原因となっている習慣や病気が改善されれば、その進行も止まるでしょう。

歯ぎしり(食いしばり)

歯ぎしりや食いしばりの習慣があると、歯の摩耗や欠ける原因になります。成人男性が噛む力は60~100㎏に達するといわれているため、歯ぎしりによる歯へのダメージもかなり大きくなります。

噛み合わせ

噛み合わせの異常によって、歯が欠ける事態を招く場合もあります。上下の歯が適切な位置で噛み合っていないと、一部の歯だけに大きな負担がかかって割れてしまうのです。悪い噛み合わせは、詰めものや被せものの調整、歯列矯正などで改善できます。

外傷によるもの

歯が欠ける原因として最も多いのは外傷です。道端で転んだり、スポーツで顔面を強打したりした際に、歯が割れます。そのため、他の選手と強く接触するリスクがあるスポーツでは、マウスガードを着けた方がよいといえます。具体的には、フルコンタクトの格闘技やアメリカンフットボール、アイスホッケーなどです。マウスガードを装着していれば、顔面に強い衝撃が加わっても歯は守られます。ご高齢の方で足腰が弱くなっている場合は、道端で転ばないよう、杖などを使うようにしましょう。

まとめ

まとめ このように、何らかのアクシデントで歯が欠けた場合は、本文でも紹介したような応急的な処置を実施する必要があります。欠けた歯の治療法は重症度によって大きく変わりますので、まずは歯医者さんに診てもらうことが大切です。仮に歯そのものを失ったとしても、インプラントなどの補綴治療がありますので、審美性や機能性を回復することができます。かかりつけの歯医者さんで診てもらうのもよいですが、なるべくさまざまな治療方法が可能な歯医者さんを選ぶとよいでしょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
遠藤 眞次医師(グランメゾンデンタルクリニック)

遠藤 眞次医師(グランメゾンデンタルクリニック)

長崎大学歯学部を卒業後、東京と群馬の歯科医院で分院長を歴任。臨床のかたわら、歯周治療やインプラント治療についての臨床教育を行う「Dentcation」の代表を務める。他にも、歯科治療のデジタル化に力を入れており、デジタルデンチャーを中心に、歯科審美学会やデジタル歯科学会等で精力的に発表を行っている。

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長崎大学歯学部を卒業後、東京と群馬の歯科医院で分院長を歴任。臨床のかたわら、歯周治療やインプラント治療についての臨床教育を行う「Dentcation」の代表を務める。他にも、歯科治療のデジタル化に力を入れており、デジタルデンチャーを中心に、歯科審美学会やデジタル歯科学会等で精力的に発表を行っている。

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