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歯科治療で使用されるセラミックとジルコニアはどのような違いがある?それぞれの特徴や選び方などを詳しく解説

被せ物などの補綴物による歯科診療を行う際、素材に何を使用するかによって耐久性や審美性などに差が生じます。補綴物の素材として人気のものにセラミックやジルコニアがありますが、この記事ではこれらの違いや、どちらを選ぶべきかが気になっている方に、それぞれの特徴などについて詳しく解説いたします。

補綴物の素材として利用されるセラミックやジルコニアとは

補綴物の素材として利用されるセラミックやジルコニアとは

詰め物や被せ物など、補綴物を作って治療を行う際に、治療の仕上がりの良し悪しを大きく左右する要素の1つが、どのような素材を使用して補綴物を作るかというものです。
補綴物を作る素材にはさまざまな種類がありますが、そのなかでも特に機能面、そして審美面で優れていて、自然かつ丈夫な補綴物を作りたい場合によく利用されるのがセラミックとジルコニアです。
まずは、これらの素材について解説します。

セラミックとは

セラミックというと、陶器を思い浮かべる方が多いかもしれません。
セラミックは焼き物のことと考えている方も多く、セラミックで歯を作るというと、粘土などを材料に補綴物を作るイメージをしやすいかと思いますが、実は、セラミックとは鉄や銀といった金属や、プラスチックや木材といった有機物以外の素材全般を指す言葉で、陶器だけではなく、セメントや宝石、広義ではガラスなどもセラミック素材として分類されます。
補綴物には、銀歯や金歯のように金属が使用されるものや、歯科用のプラスチックが使用されるものなどがありますが、こういった素材ではないものが、全般的にセラミック素材と呼ばれています。
なお、単純にセラミックと呼ぶ場合は補綴物の素材すべてがセラミックであるオールセラミックを示す場合が多く、補綴物の素材にはそれ以外にもセラミックの内側に金属の素材が使用されたメタルボンドや、セラミックとプラスチックの組み合わせで作られたハイブリッドセラミックなどの素材もあります。

ジルコニアとは

ジルコニアは、正式名称を二酸化ジルコニウムといい、人工ダイヤモンドとも呼ばれています。
ジルコニアはジルコニウムという金属の酸化物となりますが、原子同士の結合形態が金属と異なるため、ジルコニアはセラミックの1つとされています。
広義ではセラミックの中の一つではありますが、歯科診療で用いられるポーセレンやイーマックスといったセラミックとは性質が異なるため、ジルコニアはセラミック素材と別物のように紹介されることも多くなっています。

なお、宝石でよく人工ダイヤモンドとして使用されるキュービックジルコニアと呼ばれるものがありますが、これは二酸化ジルコニウムに酸化カルシウム、酸化マグネシウムや酸化イットリウムなどを混ぜて結晶化したもので、同じジルコニアという名前はついていますが別物です。

セラミックについて

セラミックについて

補綴物の素材として用いられるセラミックには、いくつかの特徴があり、その一つ目が自然な透明感を再現することが可能という点です。
天然の歯に対して裏側から光を当ててみるとわかりやすいのですが、人の歯は真っ白な色ではなく、実際には少しだけ光を透過させる透明な色となっています。
セラミックはこの自然な透明感を実現することができる素材であるため、元々生えている天然の歯と比べても違和感のない、自然な色の歯を作ることができます。
二つ目が滑らかかつツヤがある仕上がりになるという点で、セラミックで作った補綴物は表面がツルツルになっているため、歯垢などが付着しにくくなっています。 また、この滑らかさによって歯磨きなどのケアを行ったときにもしっかりと汚れが除去しやすいため、むし歯や歯周病の原因となるような菌が繁殖しにくく、健康な状態を維持しやすいという特徴があります。

また、耐久性に優れている点も大きな特徴で、とても硬く摩耗しにくい素材であるため、噛む力によって損傷する可能性が低くなっています。
人の噛む力は成人男性の前歯で15kg程とされていますが、食事の際など頻繁に強い力がかかり続けても、セラミックの耐久性があれば長期間使い続けやすいといえます。

こうしたさまざまな特徴、メリットがあるため、自然かつ丈夫で、長持ちしやすい補綴物の素材としてセラミックを使用した治療を推奨する歯科医院が多くなっています。

セラミックを使用した補綴物の種類

セラミックを使用した補綴物にはいくつかの種類があります。
まず一つ目がオールセラミックと呼ばれるもので、これは補綴物のすべてがセラミックで作られているものです。
完全にセラミックの補綴物であるため、天然の歯のような自然な色合いの歯を作る事が可能で、特に見た目を重視したいという方におすすめされます。

ただ、どうしてもセラミックのみの素材では強度が不足してしまう奥歯などに使用する場合や、より耐久性を高めたい場合には、メタルボンドと呼ばれる、セラミックの内側に金属のフレームがつけられた種類のものが使用されることがあります。 メタルボンドは内側が金属であるためとても耐久性が高く、オールセラミックよりもさらに長持ちしやすいというメリットがある一方で、歯の透明感などの色合いについては、オールセラミックには及ばないものとなります。

また、セラミックとプラスチック素材をかけ合わせたハイブリッドセラミックというものもあり、プラスチック素材の柔軟性が加わることで適度なやわらかさがあるため、噛み合わせでほかの歯を傷つけにくい点や、オールセラミックと比較して安価で作りやすい点などがメリットとなっています。
ただし、やはりオールセラミックと比べれば審美性に劣る点や、耐久性が低く強い衝撃などで割れてしまう可能性がある点がデメリットです。

このように、セラミックを使用した補綴物にもいくつかの種類があり、どのような特徴の歯を作りたいかによって適切なものが変わりますので、歯科医師とよく相談しながら治療を行う歯の位置や、審美性へのこだわり、予算感などを含めて利用する素材を選ぶとよいでしょう。

セラミックとセラミック以外の素材の違い

セラミック以外で補綴物の素材として使用されるものには、歯科用レジン(プラスチック)や銀歯、金歯といった金属素材があります。
これらを比較した場合、まず見た目の自然さという点ではセラミックが最も優れていて、次点で歯科用レジン、そして金属素材となります。
銀歯や金歯といった金属素材の歯が自然な歯に見えないというのはあたり前のことですが、歯科用レジンについては歯の白さなどについてはある程度再現が可能であるものの、透明感を作り出すことが難しいため、どうしてもセラミックと比べて不自然な色合いになりやすいといえるでしょう。

次に、耐久性で比べた場合ですが、これは金属の歯が最も丈夫であり、次にセラミック、そして歯科用レジンという順番になります。
金属はとても硬く原子が結合しているため、強い力をかけても割れたりすることがなく、長期間にわたって使用し続けやすい素材です。
一方、歯科用のレジンは補綴物素材のなかでは耐久性が低く、強い衝撃などで割れてしまったりする可能性があるほか、摩耗して表面に歯垢などが付着することでむし歯などの症状につながりやすいというデメリットもあります。
歯科用レジンで補綴物を作った場合、数年で調整や作り直しをしながら利用していくこともあります。

治療にかかる費用という点では、歯科用レジンがコストを抑えやすく、金属素材やセラミックよりも安価で利用しやすくなっています。
これは歯科用レジンによる補綴物の作成が保健診療で認められているため、自己負担を抑えて治療を受けやすいためです。
一方で、金属素材は詰め物や被せ物の治療で銀歯が保険適用にて利用できますが、金歯などは自費診療であり、セラミックも自費診療での治療が多くなっているため、クリニックによって治療にかかる金額は異なりますが、保健診療と比較すると負担が大きくなりやすいといえるでしょう。
ただし、ハイブリッドセラミックによる前歯の治療や、金属アレルギーがある方への治療などで、セラミックを使用した治療が保健診療で受けられることもあるため、適応がある方はセラミックによる治療を、低コストで受けられる場合もあります。
また、セラミックの歯はレジンと比べて耐久性が高いため、定期的な作り直しなどにかかる手間や費用を含めると、費用に大きな差が出ないというケースも考えられます。

最後に安全性という点について、セラミック素材は金属アレルギーがある方でも利用しやすいなど、安全に使いやすい素材となっています。
セラミックとそれ以外の素材では上記のような違いがありますので、目的などに合わせてどの種類の素材で治療を受けるか検討するとよいでしょう。

ジルコニアについて

ジルコニアについて

ダイヤモンドが世界一硬い石と言われているように、ジルコニアはとても硬く、耐久性に優れた性質を持っています。
硬さによる耐久性だけではなく、酸やアルカリといった性質にも強いため、過酷な環境である口の中に長時間あっても、変質することなく使いやすい点も特徴といえるでしょう。
また、ジルコニアはセラミックと同じように審美性に優れていて、金属アレルギーの方でも安全に使用できるという点が特徴となっています。

奥歯に使用されることが多い

ジルコニアはその耐久性の高さから、特に奥歯の補綴物に使用されることが多い素材です。
人の噛む力は前歯よりも奥歯の方が数倍強く、また、奥歯は歯ぎしりや食いしばりといったような行動でも強い負担がかかりやすい部位となっているため、耐久性が高いジルコニアによる治療が適しているのです。

前歯の治療でジルコニアが使われない理由

ジルコニアは丈夫で自然な色合いを実現可能な素材ではありますが、セラミック素材と比べると、やや審美性に劣るという特徴があります。
また、そもそも前歯は奥歯のように強い負担がかかりやすい場所ではないため、ジルコニアのような耐久性が必要なく、前歯の治療ではセラミックやほかの素材が用いられることが多くなっています。

セラミックやジルコニアを使用した治療方法

セラミックやジルコニアを使用した治療方法

セラミックやジルコニアを使用した治療は、具体的に下記のようなものがあります。

被せ物

クラウンとも呼ばれる治療で、むし歯などの治療で歯を削った後、歯に上からかぶせることで菌の再付着を防ぎながら、しっかりと噛めるようにする治療法です。
歯科用レジンや銀の素材を使用したものは保健診療での治療が可能で、それ以外は自費診療となっていましたが、2014年や2020年の診療報酬改定により、ハイブリッドセラミックが素材のCAD/CAM冠も保健診療で扱えるようになっています。

詰め物

インレーとも呼ばれる方法で、歯を削った部分に歯科用レジンやセラミックなどの素材を詰めて蓋をする治療法です。
詰め物によってむし歯菌が歯の内部に入ることを防ぎ、症状の再発を防止することができます。
詰め物についても、被せ物と同様にレジンや銀素材が保険適用となっていて、それ以外は保険適用外でしたが、2022年からこちらもCAD/CAMインレーが保健診療の対象となっています。

入れ歯

被せ物や詰め物は自分の歯自体は残っている場合の治療法ですが、入れ歯は歯がなくなった部分を人工的な歯で補う方法で、一部の歯だけがない場合に使用する部分入れ歯と、すべての歯がなくなった場合の総入れ歯があります。
入れ歯は歯の白い部分だけではなく、それを支える土台部分についても保健診療で扱える範囲が決まっていて、土台部分や人工歯のすべてがプラスチック素材の場合に保健適用となります。
また、入れ歯にはいろいろな形状があり、歯の状態や目的によって適切なものが異なるため、歯科医師とよく相談しながら使いやすい入れ歯を選ぶとよいでしょう。

ブリッジ

歯が1~2本なくなっている部分に対し、その両隣の歯から橋をかけるように設置する補綴物がブリッジです。
両隣の歯と接着させるため、入れ歯と比べてしっかりと噛みやすく、自分の歯と同じようにケアができる点が特徴です。
デメリットとして、ブリッジをかぶせるために両隣の健康な歯を削る必要があるため、これによって歯の寿命が短くなってしまう可能性があることや、隙間などから菌が入り込んでむし歯や歯周病の症状へとつながってしまう可能性があります。
セラミックでブリッジを作ると、とても自然で丈夫な歯を実現しやすいといえます。

インプラント

歯槽骨に対して人工の歯の根っこ(インプラント)を埋め込み、これに人工の歯をかぶせる方法がインプラントです。
天然の歯と同じように骨としっかり接続されるため、自然な噛み心地が実現できます。
また、上にかぶせる人工歯をセラミックなどで作る事で見た目も自然な歯を手に入れることができます。
インプラントは自費診療でしか行えないため、被せ物としてセラミックなどの素材以外が使われることはほとんどありません。

ラミネートベニヤ

歯の表面を薄く削って、そこにセラミックでできた人工の歯を張り付ける治療法で、前歯の見た目を向上したい方に行われている治療法です。
ホワイトニングのように白い歯を手に入れるために長期間の治療を行う必要がないため、手軽に白い歯を手に入れる方法として利用されています。

編集部まとめ

編集部まとめ

ジルコニアはセラミックの一種ですが、その耐久性の高さなどに違いがあり、主に奥歯の治療を行う際の素材として使用されることが多くなっています。
セラミックにもさまざまな種類があり、歯の状態や目的などによって適切な治療法は異なりますので、歯科医師とよく相談しながら、自分にあった治療法を見つけてくださいね。

参考文献

この記事の監修歯科医師
木下 裕貴医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

木下 裕貴医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

北海道大学歯学部卒業 / 医療法人社団天祐会 副理事長 / 専門はマウスピース矯正、小児矯正 / 一般歯科全般もOK

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