インプラント治療後にインプラントが取れてしまった場合、別の歯医者に行っても問題ないのでしょうか?
インプラントが取れた場合、まずは担当の歯科医師に相談するのがおすすめです。しかし、通っている歯科医院が休診中ですぐに受診できない、引っ越しするなど、さまざまな理由で別の歯科医院を検討される方は多いのではないでしょうか。
本記事ではインプラントが取れたら違う歯医者に行ってもいいのかについて、以下の点を中心にご紹介します。
- インプラントが取れたときの応急処置方法
- インプラントが取れる原因
- 違う歯医者の選び方
インプラントが取れたら違う歯医者に行ってもいいのか理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
インプラントが取れたときの応急処置方法
まず、インプラントが取れてしまった場合、どのような応急処置が必要なのでしょうか。
取れた部分を確認する
インプラントが取れてしまった場合、まずは冷静に状況を確認しましょう。取れた部分がどのパーツかによって、歯科医院での対応が異なります。
パーツの種類を確認したら、すぐにパーツを清潔な布やティッシュで包んで保存してください。このとき、自己判断で口腔内に戻さないようにしましょう。 取れたインプラントを誤って触れたり戻したりすると、状態が悪化したり感染症を引き起こしたりする可能性があるため、注意が必要です。
また、口腔内や取れた部分に異常がないか、痛みや出血がないかを確認してください。痛みや出血がある場合は、すぐに歯科医院に連絡し、指示を仰ぐことが必要です。
特に、インプラントの根元であるインプラント体が取れた場合は、顎の骨や歯周組織に問題が生じている可能性があるため、早急に歯科医院に相談しましょう。
取れたインプラントを清潔に保管する
インプラントが取れてしまった場合、まずはそのパーツが清潔であることを確認しましょう。もし汚れや血が付着している場合は、流水で優しくすすいで清潔にしてください。
作業を行う際は、誤ってパーツを排水口に落とさないように、洗面器などの上で行うことをおすすめします。
パーツがきれいになったら、破損を防ぐためにも、清潔な容器に入れて保管してください。そして、早急に歯科医院に持参し、診てもらうことが重要です。
パーツを洗浄する際は、強くこすったり、消毒液や洗剤に浸けることは避けましょう。パーツを傷つけたり破損させたりする原因となります。
もしインプラントが破損してしまうと、修理や交換に追加費用が発生する可能性があるため、軽い水洗い程度に留めておくのが理想的です。
歯科医院に連絡して早急に受診する
インプラントが外れた場合、速やかに治療を受けることが大切です。
まずは、インプラント治療を行った歯科医院に連絡し、早急に対応をお願いしましょう。インプラントを放置しておくと、汚れや細菌が溜まり、炎症を引き起こす可能性があります。迅速に行動することで、リスクを抑えられます。
歯科医院へ連絡する際は、以下のポイントを伝えると、歯科医院側も迅速かつ適切な対応がしやすくなるでしょう。
- インプラントが外れた時間
- どのような状況で外れたか
- お口のなかの状態
- 痛み、腫れ、出血などの症状があるか
- インプラントが外れる前に、グラつきや違和感があったか
事前にこれらの情報を整理しておくと、電話でのやり取りがスムーズになります。
インプラントに関するトラブルは放置せず、できるだけ早く歯科医院を受診することが重要です。
インプラントが取れる原因と対処法
そもそも、インプラントが取れる原因や対処法にはどのようなものがあるのでしょうか。
パーツごとに解説します。
インプラント体が取れる場合
インプラント体が取れる原因として、主に以下が考えられます。
- 治療後、数ヶ月でインプラントが外れた場合
インプラント治療から最初の数ヶ月の間にインプラント体が外れる場合、顎の骨とインプラント体の結合が不十分だったと考えられます。本来、インプラント体は骨と癒着してしっかりと固定されるべきですが、以下の要因が影響して、結合がうまくいかないことがあります。
- 顎の骨の質や量が不足している
- 歯科医師の技術や経験が不十分であった
- 手術中や手術後の口腔衛生管理がよくなかった
リスクを防ぐためには、歯科医院選びが重要です。医師の経歴や症例を確認したり、クリニックの設備を事前に確認したりしましょう。
治療前に十分な検査と診断を受け、自身に合った治療計画を立ててもらうことが大切です。
- 治療後、数年経過してからインプラントが外れた場合
インプラント治療から数年後にインプラント体が取れる場合、“インプラント周囲炎”と呼ばれる疾患が原因と考えられます。インプラント周囲炎は、口腔内の不衛生や歯周病菌の増殖により、歯茎に炎症が起こった\り、インプラントを支える骨に影響を及ぼしたりします。進行すると、インプラント体が不安定になり、取れてしまうことがあります。
インプラント周囲炎を予防するためには、毎日の歯磨きが欠かせません。
喫煙や過度の飲食を避け、定期的な歯科医院でのチェックを受けることも予防につながります。
アバットメントが取れる場合
アバットメントが取れる原因として、以下の点が考えられます。
- アバットメントの固定不良
アバットメントはインプラント体と上部構造をつなぐ重要なパーツで、ネジでしっかりと固定されます。
しかし長期間使用することで、ネジが緩んだり、破損したりすることがあります。 - 経年劣化
アバットメントを構成する素材は、時間の経過とともに劣化することがあります。
使用される金属やセラミック素材が、過剰な力や摩耗によってその耐久性が低下し、アバットメントが取れてしまうことがあります。 - 噛み合わせの問題
噛み合わせに問題がある場合、インプラント部分に過度な力がかかり、アバットメントを支えるネジに負担がかかりやすくなります。 - 口腔衛生状態の不良
口腔内が不衛生であると、歯茎やインプラント周囲に炎症が起きることがあります。この状態をインプラント周囲炎と呼び、進行するとインプラントの固定が弱まり、アバットメントが取れる原因になります。
アバットメントが外れると、インプラントの機能が損なわれるため、速やかに歯科医院に相談し、修理や再調整を行うことが必要です。
上部構造が取れる場合
上部構造が外れる原因にはいくつかの要因が考えられます。
- ネジの締め付け不良
スクリュー式のインプラントでは、上部構造とインプラント体を接続するネジの締め付けが甘いと、上部構造が外れる原因になります。
ネジが緩むことで、インプラントとの接続が不安定になり、上部構造が取れてしまうことがあります。 - 経年劣化
上部構造は使用していくうちに経年劣化が進行します。
上部構造の寿命は約10年程度とされており、年数が経過すると素材が劣化し、割れたり欠けたりすることがあります。 - 噛み合わせの問題
噛み合わせがよくないと、インプラントに過度な負荷がかかります。これにより、上部構造が外れやすくなる可能性があります。 - 歯ぎしりや食いしばり
睡眠中に歯ぎしりや食いしばりがある場合、インプラントや上部構造に強い圧力がかかり、上部構造が外れることがあります。 - むし歯や歯周病の影響
むし歯や歯周病が進行すると、歯茎が弱くなり、インプラントがぐらつくことがあります。このため、インプラントが不安定になり、上部構造が外れる原因となります。 - セメントの劣化
セメント式のインプラントでは、接着に使われるセメントが経年で劣化することがあります。セメントが弱くなると、上部構造が取れやすくなります。
インプラントが取れたら違う歯医者に行ってもいい?
結論からいうと、インプラントが取れてしまった場合、異なる歯科医院で治療を受けることは可能とされています。
ただし、その際はいくつかの重要なポイントを考慮する必要があります。
まず、一般歯科ではなくインプラント治療を主としている歯科医院へ相談しましょう。
設備が整っているか、医師の経歴、費用、自身が信頼できるかなどを考慮し、納得して治療を受けられそうな歯科医院を探しましょう。
また可能であれば、通っていた歯科医院から過去の治療記録や現在の口腔状態についての情報を受け取り、転院先の歯科医院へ伝えましょう。患者さん自身が過去の治療内容を伝えるか、歯科医院が書類を転送する形で行います。
既存の治療経過や状態を伝えることで、自身に合った治療方針を立てるのに役立ちます。
違う歯医者に行くメリット
通っていたのとは違う歯科医院へ行くメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
多角的な視点から治療プランを提案してもらえる
歯科医師それぞれが持つ経験と知識は異なり、患者さんの症状に対するアプローチも異なります。そのため同じような症状であっても、前の治療とは異なる視点や方法でアプローチして貰える可能性があります。
複数の歯科医院を訪れ、さまざまな視点から治療プランを提案してもらうことは、よりよい治療を受けるための参考になります。
自身に合う治療法を選択できる
別の医療機関に受診することで、より自身に合った治療法を選択できる可能性があります。万が一、前の治療が自身に合っていなかった場合のセカンドオピニオンにもつながります。
歯科治療は高度な技術を要求されたり、専門知識を必要とするため、すべての歯科医院が同じ治療を提供しているわけではありません。
先進的な治療法を提供している場合もあれば、ある病状に特化した治療に力を入れているところもあります。
不安が軽減される
治療に対する不安は、適切な情報を得ることで軽減できる可能性があります。
「これからどんな治療や検査をするのかわからない」という状態だと、不安を感じやすくなります。
別の歯科医院を受診すると、新しい情報や異なる視点が得られるため、自身の状態や治療法についてより深く理解できるようになり、治療への不安が軽減される可能性があります。
また、治療内容や手術・検査の日程や手順、痛みなどへの対処法について、医師に詳しく聞いておくとよりよいでしょう。
違う歯医者に行くデメリット
これまで通っていたのとは違う歯医者に行くデメリットにはどのようなことがあるのでしょうか。
トラブルが生じる可能性がある
新しい歯科医院に相談する際、治療内容の引き継ぎが不十分だとトラブルが生じる可能性があります。
例えば、前の歯科医院で使用されたインプラントの種類やこれまでの治療経過が不明確だと、正確な判断を下すのが難しくなる可能性があります。
患者さん自身が治療履歴をしっかりと記録しておき、必要に応じて以前の歯科医院から情報を取り寄せることが重要です。
追加の治療費が発生する
ほかの歯科医院に転院する場合、追加の治療費が発生することを考慮に入れておきましょう。
新しい治療計画を立てるには再度検査が必要になるため、初診料やレントゲン代などが追加で発生すると考えられます。
予期せぬ出費を避けるためにも、転院先の歯科医院での料金体系や、必要な検査や治療に発生する費用について事前に確認しておくことが重要です。
違う歯医者の選び方と注意点
ここでは、これまで通っていたのとは違う歯科医院の選び方と注意点を紹介します。
違う歯医者の選び方
インプラント治療を途中でほかの歯科医院に切り替えることを検討する場合、慎重に次の歯科医院を選ぶことが重要です。転院先を選ぶためのポイントをいくつかご紹介します。
- 転院が可能か確認する
まず、転院先の歯科医院が治療中のインプラント治療を引き継いでくれるかどうか確認しましょう。治療途中の患者さんを受け入れることに対して懸念を持つ歯科医院もあるため、事前に転院可能かどうかを尋ねておくことが大切です。
- 使用しているインプラントメーカーの確認
転院先では異なるメーカーのインプラントを使用していることがあります。カウンセリング時にどこのメーカーのインプラントを扱っているか確認し、転院後の治療がスムーズに進むようにしましょう。また、転院先の歯科医院が元のクリニックと異なるインプラントメーカーを使用している場合は、治療途中での変更は問題ないかも相談してみましょう。
- 医師の技術力と設備の確認
インプラント治療は高い技術を要求されるため、経験豊富な歯科医師がいるかどうか確認しましょう。
また、新しい技術や設備を積極的に取り入れているクリニックを選ぶのも重要です。 - アフターケアを重視する医院を選ぶ
インプラント治療後はアフターケアも重要です。治療後のフォローアップがしっかりしているかどうかが、治療結果を左右することもあります。手術後のケアや定期的な検診を重視した歯科医院を探すことをおすすめします。
違う歯医者に通う場合の注意点
違う歯科医院に通う場合の注意点にはどのようなことがあるのでしょうか。以下で解説します。
- 治療情報の共有
新しい歯科医院に通う際には、前の歯科医院で行われた治療内容や使用された材料、検査結果などを詳しく伝えることが大切です。インプラント治療は個別対応で行われるため、過去の治療経過を正確に伝えないと、自身に合った診断や治療計画を立てるのが難しくなることがあります。
- 保証やアフターケアの確認
転院先の歯科医院が以前の治療に対して保証を受け入れるかどうかも重要なポイントです。治療に対する保証や修復の責任が、転院先でも適用されるかどうか、確認が必要です。
まとめ
ここまでインプラントが取れたら違う歯医者に行ってもいいのかについてお伝えしてきました。
インプラントが取れたら違う歯医者に行ってもいいのか、要点をまとめると以下のとおりです。
- インプラントが取れたときは、取れた部分の確認後、取れたインプラントを清潔に保管し、早急に歯科医院へ相談する
- インプラントが取れる原因として、顎の骨とインプラント体の結合が不十分であったり、インプラント周囲炎と呼ばれる疾患にかかった可能性が挙げられる
- 違う歯医者へ行く前に、転院が可能かの確認や、使用しているインプラントメーカーか同じかなど確認する
インプラントが取れた場合、ほかの歯科医師に相談することは可能とされています。ただし、転院に際しては治療履歴や情報の共有、費用面、治療方針の確認が重要となります。 自身が信頼できると思う歯科医師を選べば、納得して治療を受けられるでしょう。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。