失った歯を補うインプラントは魅力的な治療法ですが、その分治療費が高額となるイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
インプラントは専門性の高い治療であり、信頼できる医療機関で受けることが重要です。そのため治療費も高額になります。
ですが医療費控除等を利用したり、支払方法を工夫することで、治療費を軽減することは可能です。また、限定的ではありますが保険が適用されるケースもあります。
この記事ではインプラントを少しでも安く受ける方法についてご説明します。費用の問題であきらめてしまう前に、ぜひ参考にしてみてください。
インプラントを安くする方法はある?
インプラントは基本的に保険適用外の治療です。そのため、治療費は高額となることが多いです。
費用の面だけを重視してしまうとかえってトラブルに発展することも多いため、ある程度の治療費がかかることは見越しておきましょう。
ですが、医療費控除を受けることや支払い方法を工夫することで、少しでもインプラントの治療費を抑えることは可能です。 また、ごく限定的な場合ではありますが、保険適用が可能な場合もあります。それぞれについてみていきましょう。
保険適用できるか調べる
インプラントは基本的に保険適用されない治療法です。ただし、限定的ではありますが保険適用が可能な場合があります。
詳しくは後述しますので、ぜひご確認ください。
医療費控除を申請する
年間の医療費が10万円を超えた場合、医療費控除を申請することで税金の還付を受けることが可能です。
インプラントは一般的に10万円を超える費用がかかるため、医療費控除を受けられます。
控除額については所得等によって異なるので、国税庁のホームページなどを確認してみましょう。
クレジットカードでのポイント還元
控除などの制度とは異なりますが、支払いをクレジットカードで行うことでポイント還元を受けられます。
直接治療費や現金が還元されるわけではありませんが、ポイントをうまく使うことで実質の治療費を多少軽減することが可能です。
クレジットカードだけでなく電子マネー決済が使用できる場合もあります。
こちらも同様にポイント還元が期待できますので、普段よく使うカードや電子マネーを活用してみましょう。
クレジットカードや電子マネー決済は分割払いにすることもできますので、一括で払うことが難しい場合にも強い味方になってくれます。
それぞれの利用規約についてよくご確認の上ご利用ください。
デンタルローンを利用する
インプラント等の高額な歯科治療を受ける場合、歯科治療専門の分割払いサービスであるデンタルローンが利用できる場合があります。
信販会社が治療費を立て替え、利用者は分割で信販会社に返金していくこととなります。
総額が安くなるわけではありませんが、一度の支払い金額が抑えられるため利用しやすいサービスです。
利用には審査が必要ですが、まとまった額の支払いができない場合でもインプラントなどの治療を視野に入れられます。
また、デンタルローンを利用した場合支払いそのものは一括で行ったことになるので、医療費控除の金額によってはクレジットカードでの分割払いよりお得になることもあります。
こちらも利用規約等を確認した上でご利用ください。
複数の歯科で費用を比較する
インプラントは医院によって費用相場に大きく幅があります。一例として、奥歯1本のインプラントあたり30~50万円(税込)程度がかかることが多いです。
しかし、医院やプランなどによっては15万円台から可能なケースもあるため、費用を安く抑えたい場合には複数の医院を比較検討してみましょう。
ただし、後述しますがインプラントが高額となりやすいことには理由があります。そのため、低価格で治療が受けられることだけを重視するのはあまりおすすめできません。
トラブルの原因になることもあるため、信頼できる医療機関で治療を受けるようにしましょう。
また、インプラントは継続的にメンテナンスが必要です。その点も踏まえて、継続的に通える医療機関を検討しましょう。
インプラントは保険適用ができる
インプラントは基本的に保険が適用されません。ですが、限定的ではありますが保険適用が可能な場合があります。
インプラントに保険適用が可能なのは以下の場合です。
- 病気や事故などで顎の骨を広く失った
- 先天的な異常で顎の骨を1/3以上失っている
これらの条件に当てはまる場合はインプラントの保険適用が可能です。
また、保険適用を行うためには以下の条件を満たす医療機関で治療を受ける必要があります。
- 歯科または歯科口腔外科の病院であること
- 歯科または歯科口腔外科に5年以上の経験がある、かつ3年以上のインプラント治療の経験がある常勤医師が2名以上配置されている
- 当直体制が整備されている
- 医療機器や医薬品の安全確保のための体制が整備されている
保険適用が可能な場合、費用はぐっと下がりますので、まずはご自分が保険適用可能か検討してみることをおすすめします。
むし歯や歯周病などで歯を失った場合は保険適用はできません。
インプラントが高額な理由
インプラントは魅力的な治療方法ですが、費用は高額であることが多いです。その点が問題となってインプラント治療を受けられないとお悩みの方も多いのではないでしょうか。
インプラントが高額となってしまうのは相応の理由があります。なぜインプラントは高額となるのか、その理由についてみていきましょう。
素材が高額
インプラントは複数のパーツによって構成されています。
一般的には、歯根の代わりとして体に埋め込む人工歯根・人工歯根と上部構造をつなぐアバットメント・歯の代わりとなる上部構造の3パーツで構成されていることが多いです。
これらのパーツは人体に悪影響を与えず、親和性の高いチタンや、強度の高いセラミック・ジルコニアなどが使われています。
こうしたパーツは医療用の信頼性の高いものを使うため、価格も高額となります。そうしたパーツはアフターフォローも充実しているものが多いです。
インプラントは装置を体に埋め込む治療ですので、こうした安全性が高く信頼できる素材を使うことは非常に重要です。
また上部構造(被せ物)のパーツは強度や審美性によってプラスチック・セラミック・ジルコニアなどの複数の素材から選べることが多く、その素材によっても費用が上下します。
機材が高額
インプラントは顎の骨に人工のパーツを埋め込む外科的手術です。そのため、一般的な歯科治療よりも多くの機材を必要とします。
骨の状態を調べるためのCT検査や、体の状態を調べるための血液検査などを行うために設備が必要です。
また、インプラント専門の機材をそろえる必要もあります。手術を行うため、滅菌や感染予防のための設備にも投資が必要となります。
こうした点で一般の歯科医院とは別の設備が必要となるため、インプラント治療を行うためには歯科医院側にも多くの資金的な負担がかかっているのです。
技術習得に時間がかかる
インプラントは非常に高度な外科的治療です。 まずCTなどの検査によって患者さんの体の状態を確認し、インプラントが可能かどうか判断します。
その後手術を行い、顎の骨に歯根部を埋め込んでいきますが、これらの行程でも粘膜の切開やパーツの埋め込みなど専門的な技術が必要です。
さらにその後の治療を進めていく際には、患者さんの状態に気を配りつつ、ひとりひとりに合った形で治療の進み具合を判断していく必要があります。
歯科医師に求められる技能が多く、さらに経験も必要なため、習得には非常に時間がかかります。
そのため、信頼できる医療機関での治療は必然的に高額となりやすいのです。
インプラントの被せ物の種類
インプラントの素材の中でも、特に価格差が大きいのが上部構造、つまり被せ物の部分です。価格だけでなく特徴にも違いがありますので、ひとつひとつ確認してみましょう。
メタルボンド
メタルボンドは、金属の上に陶材を焼き付けて作られた被せ物です。
一見するとセラミックと同じように見えますが、内部は金属でできています。そのため、光に透かすと芯の部分が暗く陰って見えるという点が特徴です。
メタルボンドの長所は、その適合性にあります。適用範囲が広いため、信頼性の高い素材として活用されています。臨床的生存率も比較的高いとされています。
反面、光に透かした時に芯材が暗く映ってしまうので、前歯などの人の目につきやすい部分では違和感が生じる可能性があります。
そのため、目に見えやすい部分に使う場合や、強度よりも審美性を重視する場合は、メタルボンドはあまり適していないといえます。
価格面では、他の素材と同等か、メタルボンドの方が高いことが多いです。
費用の相場は、1本約5〜15万円(税込)ほどです。参考にしてみてください。
オールセラミックやジルコニアが出たばかりのころは、メタルボンドの方が安かったこともありますが、2023年の時点では手作業が必要なことと金属代の高騰によりそれほど安価ではありません。
ハイブリッドセラミック
ハイブリッドセラミックは、セラミックとレジン(樹脂)の混合によって作られた被せ物です。 オールセラミックより比較的安価で使用できるため、コストパフォーマンスにも優れた素材といえるでしょう。
一方、素材の特性上、経年によって少しずつ色が変化してしまうという特徴があります。 長期間使用していると多少の変色や着色が発生してしまう可能性がある点は理解しておきましょう。
なお、費用の相場は、1本約4〜12万円(税込)ほどです。参考にしてみてください。
オールセラミック
オールセラミックは、セラミック(陶材)のみで作られた被せ物です。
セラミックの長所はその審美性にあります。色合いが本来の歯に近く、透明感があるためメタルボンドのような違和感がありません。
そのため、前歯などの人の目につきやすい場所に使う素材には大変適しています。また、金属を一切使用しないため、金属アレルギーの可能性もありません。
強度は天然歯とほぼ同等です。そのため、奥歯などで極端に強い力がかかってしまった場合は稀に割れてしまう可能性があります。
なお、費用の相場は、1本約7〜17万円(税込)ほどです。参考にしてみてください。
ジルコニア
ジルコニアはセラミックスの一つで、強度が高いことが特徴です。
メタルボンドのように光を当てて黒く影が出てしまうことがなく、透明感があるため審美性にも大変優れています。
金属素材を使わないため、金属アレルギーの心配がない点も長所です。 一方、費用としては高額になりやすい傾向にあります。費用の相場は、1本約9〜20万円(税込)ほどです。参考にしてみてください。
インプラントは値段以外も重視しよう
インプラントは一般的に高額な治療法です。
一般的な相場としては奥歯1本あたり30~50万円(税込)ほどの費用がかかることが多いですが、時折「格安」でのインプラント治療を売りにしているクリニックが存在します。
こうしたクリニックを価格だけで安易に選んでしまうとトラブルの元になることもあるため、注意が必要です。どのようなケースがあるのかご紹介します。
インプラントはトラブルも多い
インプラントは価格の面で魅力的ですが、専門的で高度な技術を必要とする治療法でもあります。そのため、健康トラブルにつながってしまう事例も存在します。
たとえば、治療後に痛みや出血が続いたり、インプラントが脱落してしまうケースも報告されています。
インプラントの治療を受ける際には、歯周病などの治療やインプラント挿入後のケアを充分に行ってくれるかどうかも重視し、価格面だけで判断せず信頼できる医療機関で処置を受けることをおすすめします。
手術後の保証も確認しよう
インプラントは、導入後も定期的にアフターケアが必要となる治療です。そのため、装置にも10年などの保証がついていることがほとんどです。 そうした信頼性の高い装置は価格も比較的高くなってしまいます。
インプラントの治療を受ける際は、インプラント装置のメーカーや保証についても必ず確認し、信頼できるメーカーの装置を選ぶようにしましょう。
インプラント以外の治療方法と比較して決めよう
歯を失ってしまい、インプラントを考えたいが費用面で難しいという方も多いのではないでしょうか。
歯を失った場合の治療方法はインプラントだけではありません。歯を失った場合、ブリッジ・入れ歯といった治療方法で対処できる可能性もあります。
ブリッジは隣の歯を削り、失った歯の部分も含めた被せ物を被せて、周囲の歯で失った歯の部分を支える治療法です。
入れ歯は失った歯の場所に部分入れ歯を作り、バネなどを用いて固定することで失った歯を補う治療法です。
ブリッジ・入れ歯は保険適用で受けられる場合も多いため、費用面で悩みがある場合はインプラントにこだわらず、保険適用での治療方法も考慮することをおすすめします。
どちらの場合も歯科医師と相談し、メリット・デメリットを充分考えた上で治療方針を決めていきましょう。
まとめ
インプラントは基本的に高額な治療方法で、保険適用が可能な場合も限られています。
しかし医療費控除を受けたり、クレジットカードなどのポイント還元を活用することで、多少費用を抑えることは可能です。
また、デンタルローンなどを活用することで、1回あたりの支払いを抑えてインプラントを受けることもできる可能性があります。
保険適用が可能な場合や、他の治療方法が適している場合もありますので、インプラントをお考えの際はまずは専門の医師に相談してみましょう。
参考文献