インプラントの人工歯にあたる上部構造には、セメント合着とスクリュー固定の2つの固定方法があります。上部構造の固定様式はどちらでもよいのでは?と思われるかもしれませんが、治療の成否を分ける大切なポイントです。 固定様式の種類によってメリットとデメリットが大きく異なるため、違いを理解したうえで適切な方を選ぶのが望ましいでしょう。この記事では、インプラントのセメント合着とスクリュー固定の違いについて詳しく解説します。
セメント合着とスクリュー固定の違い
インプラントのセメント合着とスクリュー固定の違いを確認しておきましょう。
- セメント合着とスクリュー固定の基本的な違いは何ですか?
- 上部構造をアバットメントに固定するための材料と器具の違いです。
セメント合着は歯科用セメントを使って、上部構造をアバットメントに固定します。一般的な差し歯に使われるものと同様で、基本は取り外すことはありません。
スクリュー固定は上部構造をアバットメントにスクリューで固定するため、歯科医院で自由に取り外すことができます。
- インプラント治療でセメント合着とスクリュー固定が使い分けられる理由を教えてください
- インプラントのセメント合着とスクリュー固定には、それぞれ異なる特徴とメリットとデメリットがあるため、適する症例にも違いがあります。患者さんのお口の中の状態や口腔ケアの状況、埋入したインプラントの本数などによって、使い分けられます。
- どのようなケースでセメント合着が選ばれ、どのようなケースでスクリュー固定が適しているのですか?
- セメント合着が適しているのは、審美性を追求している場合です。
口を開けたときにも自然な仕上がりを希望する場合はセメント合着が向いています。セメント合着の上部構造は、装置の形がとてもシンプルです。一般的な被せ物とほぼ同じ形態をしているため、複数本のインプラン体を埋め込んだケースでも目立ちにくいです。
セメント合着のメリット・デメリット
インプラントのセメント合着に伴うメリットとデメリットを解説します。
- セメント合着のメリットは何ですか?
- インプラントのセメント合着には、以下にあげる4つのメリットを伴います。
- 見た目が自然で美しい
- 上部構造のケアがしやすい
- 複数のインプラント体を埋入するケースに適している
- 費用がやや安い
インプラントの審美性を発揮できるのはセメント合着です。セメント合着の上部構造には、スクリュー固定のアクセスホールが存在していないため目立ちにくいです。
また、セメント合着の上部構造は、一般的な被せ物と同じであることから、ケアがしやすいのも特徴です。セラミックで作られた上部構造であれば、汚れも付着しにくく、上部構造の衛生状態を良好に保ちやすいといえるでしょう。
シンプルな構造の上部構造は、複数本のインプラント体を埋め込むケースにも適応しやすく、構造がシンプルなので費用も少し安くなります。
- セメント合着のあるリスクやデメリットがあれば教えてください
- インプラントのセメント合着には、以下にあげる3つのデメリットを伴います。
- 上部構造を外せない
- セメントは経年的に劣化する
- 余剰セメントが細菌の温床となる
セメント合着の上部構造は、歯科用セメントでしっかりと固定されているため、メンテナンスの際に取り外してクリーニングすることができません。
そのため、インプラント周囲炎にかかった場合は、上部構造の破壊による撤去が必要となります。また、セメント合着に使用する歯科用セメントは、年月の経過とともに劣化していきます。その結果、上部構造が外れる可能性もあるのです。
上部構造をセメント合着する際に、余剰セメントをしっかり取り除かないと細菌の温床となるリスクもあります。そこで歯周病菌が繁殖すれば、インプラント周囲炎の発症リスクが高まるのです。
- 近年、仮止めレベルで留められるセメントも開発されているのは本当ですか?
- 開発されています。上部構造とアバットメントの固定を仮止めにしておくことで、インプラント周囲炎を発症したときの治療が行いやすくなります。ただし、仮止めできるセメントも万能ではなく、上部構造が外れやすくなったり、逆に外れなくなったりするリスクも伴います。
スクリュー固定のメリット・デメリット
インプラントのスクリュー固定に伴うメリットとデメリットを解説します。
- スクリュー固定のインプラントを選ぶメリットを教えてください
- インプラントのスクリュー固定には、以下にあげる3つのメリットを伴います。
- メンテナンスのときに取り外せる
- インプラント体のネジを締め直しやすい
- インプラント体への負荷を軽減できる
スクリュー固定のメリットは、上部構造を歯科医師が自由に取り外せる点です。毎回のメンテナンス時に、上部構造を取り外した状態でインプラントをケアできるため衛生的です。インプラント周囲炎を発症したときも治療がしやすいメリットがあります。
また、インプラント体とアバットメントもネジによって固定されており、使っていくなかで徐々に緩んでいきますが、このようなネジの緩みもスクリュー固定なら締め直せます。
- スクリュー固定が適さない歯はどこですか?
- 高い審美性が求められる部位です。口を開けたときに目立ちやすい前歯や奥歯は、スクリュー固定ではなく、セメント固定の方が適しています。
- スクリュー固定にはどのようなデメリットがありますか?
- インプラントのスクリュー固定には、以下にあげる3つのデメリットを伴います。
- 審美性がやや低い
- ネジが緩む・破折するリスクがある
- 費用がやや高い
スクリュー固定のアクセスホールは、歯と似た色をしたコンポジットレジンで塞ぎますが、それでも見た目が少し不自然になります。しかもコンポジットレジンは、汚れがつきやすい、変色や摩耗がしやすいという欠点もあります。
また、インプラントにかかる力を上部構造とアバットメントの連結部分で吸収できるものの、その分だけネジが緩んだり、破折したりするリスクが高くなっています。
セメント合着とスクリュー固定の選択方法
インプラントのセメント合着とスクリュー固定の選択方法を紹介します。
- セメント合着とスクリュー固定のどちらを選ぶかは、どのように決めるべきですか?
- インプラント治療に何を求めるかによって、選択方法は変わります。
審美性を追求したい場合は、セメント合着が向いていますし、メンテナンスのしやすさを求めている場合は、スクリュー固定が向いています。このようにどちらが向いているかは患者さんの価値観によるところが大きいため、主治医と相談しながら選ぶのがよいでしょう。
- 口腔状態によって、適した固定方法が変わることはありますか?
- 変わることはあります。口腔ケアがしにくい口腔状態であれば、上部構造を取り外せるスクリュー固定が適しています。インプラントを目立ちやすい場所に装着する場合は、セメント固定が適しているといえるでしょう。
- 治療後のメンテナンスを第一に考えた場合、どちらを選ぶべきか教えてください
- スクリュー固定です。スクリュー固定ならメンテナンスの際に、上部構造を取り外すことができます。その結果、インプラント周囲炎の発症リスクも低減できることでしょう。
編集部まとめ
インプラントのセメント合着とスクリュー固定の違いや選択方法について解説しました。インプラントのセメント合着は、上部構造とアバットメントを歯科用セメントでしっかり固定する方法で、審美性に優れてはいるものの、メンテナンスしにくいというデメリットを伴います。
一方、スクリュー固定は歯科医師が自由に取り外せるため、メンテナンスがしやすいのですが、アクセスホールが設置されていることから、セメント合着よりも見た目が目立ちやすいです。どちらが適しているかは、患者さんの価値観やお口の状態によって変わることから、歯科医師と相談しながら慎重に選ぶことが大切です。
参考文献