歯科治療の中でも需要が高まってきているのがインプラント治療です。審美性の高さや長持ちするというメリットがあるので人気が高いのでしょう。
しかしその一方で、治療費が高いというデメリットもあります。もう少し安くなればと思っている人もいるのではないでしょうか。
ここでは、インプラントの治療費が高い理由について解説します。一般的な費用相場・負担軽減方法についてもあわせて紹介するので参考にしてください。
インプラントの治療費が高い理由は?
インプラントは一般的な歯科治療と比べて高額になりがちです。その理由としてあげられるのが主に下記の4点といえるでしょう。
- 自由診療
- 高額な材料・部品
- 設備費
- 高い技術力
それぞれの理由について解説するので参考にしてください。
自由診療のため
インプラントの治療費が高い理由として最初にあげられるのが自由診療です。歯科治療に限らず診療には保険と自由の2パターンがあります。
保険診療とは、診察・検査などを受ける際に健康保険が適用される治療のことです。適用されると、負担額は原則1~3割ですみます。
しかし、あらゆる治療・診察に適用されるわけではありません。厳格な規定が設けられており、これをクリアする必要があります。
一方の自由診療とは、簡単にいえば健康保険が適用されない治療・診療のことです。全額自己負担になるため、医療費の100%を窓口で支払います。
インプラントの場合、そのほとんどの治療は健康保険が適用されません。かかった医療費は全額自己負担になるため、治療費が高くなってしまうのです。
材料・部品が高額のため
インプラントに使用される材料・部品が高額な点も、治療費が高くなる原因の一つといえるでしょう。
歯科医院としては今後の治療の有無も考えたうえで、生体親和性に優れた安全な材料を使用しなければならず、その分の費用が治療費に加算されるので高額になるのです。
手術に使用する設備が必要なため
インプラントを行うにあたって手術などに使用する設備にも費用がかかる点も、治療費を高額にしている原因といえます。
インプラントの成功率は、治療前の丁寧な検査・高度医療の手術が鍵を握っているといっても過言ではありません。
検査・手術には優れた新しい医療機器をそろえる必要がありますが、これらはどれも高額です。
また、衛生管理も重要といえるでしょう。手術後の感染症を防ぐために厳しい衛生管理を行った施設も必要で、ここにも費用がかかります。
このようなさまざまな設備投資に必要な費用はすべて治療費に反映されるので、治療費が高額になってしまうのです。
高い技術を必要とするため
インプラントで必要なのは材料・設備だけではありません。治療・手術を行う歯科医師の高い技術力も必要不可欠です。
高い技術力を身に着けるためには国内外問わずさまざまな病院・医院での研修などが必要になり、その分費用もかかります。
人材育成・技術力の向上にかかる時間・費用も治療費に反映されるので、必然的に治療費が高額になるのは仕方ないといえるでしょう。
インプラント治療の費用相場
インプラント治療は高いといわれています。それでは、実際にはどれくらいの費用がかかるのでしょう。
インプラントを考えている人の中には、目安となる一般的な相場を知りたいと思っている人もいるかもしれません。
ここでは1本と全体の費用相場について紹介するので、参考にしてください。
1本の費用相場
インプラント1本の一般的な費用相場は30~50万円(税込)といわれています。あくまで一般的な相場なので参考にしてみてください。
ただし、どの歯をインプラントするかによって金額には多少の差が出ます。
例えば、目立ちやすい前歯をインプラントする場合は見た目が重要になるでしょう。高い技術と高品質な材料が必要になるため、金額も高くなります。
一方の奥歯の場合は、人と話す場合にはあまり目立ちません。見た目という点ではあまり重視しなくて良いので、一般的な相場よりも若干安くなることもあります。
しかし、歯科医院によって設備投資・使用する材料は異なるので一概にはいえません。治療を行う前に費用について確認したほうが良いでしょう。
全体をインプラントにした場合の費用相場
全体をインプラントにした場合の費用相場はいくらぐらいなのか、気になる人もいるかもしれません。
成人の歯は親知らずも含めると28~32本といわれています。インプラント1本分の相場は30~50万円(税込)なので、単純計算すると1,000万円(税込)超えです。
しかし、歯科医院によっては設備・材料が異なるので金額にも差が出るので注意してください。必ず担当医に費用について確認しましょう。
インプラント治療の負担を軽減する方法は?
インプラント治療は高額になりがちなのです。もし治療負担を軽減できるのなら、その方法が知りたいと思う人もいるでしょう。
実は治療費の負担を減らす方法はあります。その主な方法は下記の2つです。
- 医療費控除
- 高額療養費制度
これらのうち、多くの人が対象となるのは医療費控除でしょう。控除を受けるためには下記の条件を満たしている必要があります。
- 年間医療費が10万円以上
- 年間所得額200万円未満で、医療費が所得合計金額の5%以上
対象者は本人だけではありません。生計を共にする家族も含まれます。また、実家は離れているけれど仕送りを受けている場合も対象です。
医療費控除は、確定申告を行う際に同時に申請します。言い換えるなら、医療費控除を受ける場合は確定申告をしなければなりません。
必要な書類は以下の5つです。
- 確定申告書
- 医療費の明細書
- 源泉徴収票
- 医療費の領収書
- 本人確認書類
申請の期間は確定申告と同様に2月16日~3月15日までなので、忘れずに申告しましょう。ただし、還付は5年以内なら遅れて提出・申請が可能です。
一方の高額療養費制度は保険診療であることが前提なので、多くのケースでは適用外でしょう。
しかし下記の条件を満たせば保険が適用され、高額療養費制度の対象になります。
- 先天性疾患
- 事故・病気などによる骨の欠損
上記のいずれかにあたる場合は、保険適用でのインプラント治療が可能です。高額療養費制度は保険適用が前提なので、対象になります。
治療費が高くても選ばれる理由は?
さまざまな理由で治療費が高くなるインプラントですが、多くの人に選ばれている治療です。その理由として下記の5つがあげられるでしょう。
- 天然歯同様に噛める
- 審美性が高い
- 長持ちする
- 健康な歯に負担をかけにくい
- 骨の吸収防止になる
それぞれの理由について解説するので参考にしてください。
天然歯と同じようにしっかり噛めるようになる
天然歯と同じようにしっかり噛める点は、選ばれる理由の一つといえるでしょう。咀嚼しやすいのは、インプラントを顎骨に埋め込むからです。
主な手術方法として、チタンでできた人工の歯根を顎骨に直接埋め込みます。そうすることでしっかり固定され、安定するのです。
例えば入れ歯の場合は、使い続けている間にズレてきたり違和感を覚えたりするでしょう。食べ物の味がわかりにくいこともあります。
インプラントはこのようなことがありません。天然歯同様に顎骨から直接生えている形なので、硬いものも味わいながら噛めるでしょう。
審美性が高い
審美性が高い点も、高くてもインプラントが選ばれている理由の一つです。
インプラントの根元の部分にはチタンが使われることが多くありますが、上の部分はさまざまな素材が使用されています。
なかでも多くの歯科医院で使用されているのはセラミックでしょう。オールセラミックスの場合は天然歯と同様の見た目にできる場合があります。
また、あまりに白すぎて目立ってしまう場合にも微調整が可能です。周囲の天然歯と変わらない色味にすることで違和感がなくなります。
ただし、高額になりがちというデメリットがあるので注意が必要です。一般的な相場は1本10~15万円(税込)なので参考にしてください。
セラミック以外にも、レジン・ジルコニアなど多くの種類がありますが、どのような素材を使用しているかは歯科医院によってさまざまです。
素材が異なれば審美性の点でも違いが出てくるので、担当医と相談して決めてください。
他の治療方法より長持ちするケースが多い
インプラントは治療10年後の生存率が90%を超えています。治療費によっては10年を短いと感じる人もいるでしょう。
世界で初めてインプラント治療をした患者さんは、40年以上も機能したという記録が残っています。
インプラントは施術を行って終わりではありません。その後の使い方・メンテナンスも重要です。定期的なメンテナンスはインプラントの生存率を高めます。
正しく使うことで他の治療法よりも長持ちするケースが多いのがインプラントです。適切に管理すれば20年以上持つことも選ばれている理由でしょう。
周りの健康な歯に負担をかけにくい
インプラント治療は周りの健康な歯に負担をかけにくい利点があります。
例えば部分入れ歯の場合、周囲の天然歯に装具をひっかけて固定しなければいけません。健康な天然歯に負担がかかり、歯全体の寿命が短くなる恐れがあります。
インプラントの場合は独立しているため、他の健康な歯に負担をかけることはありません。周囲の歯を削ることもないので、天然歯が維持できます。
多くの人は自分の天然歯を残したいと思うでしょう。健康な歯には負担をかけずに治療をしたいと思うのは当然といえます。
インプラント治療はこれらの希望を叶えることが可能なので、例え治療費が高くても多くの人たちから支持を集めているのです。
顎の骨の吸収を抑えられるため
顎骨の吸収が抑えられる点も、インプラントを希望する理由の一つでしょう。
顎骨の厚み・高さは、咀嚼時の刺激によって骨の吸収が抑制されることで保たれています。これは反対にいえば、刺激がなければ吸収されてしまうのです。
インプラント治療では顎骨に直接人工歯根を埋め込むので、咀嚼の刺激が骨に伝わりやすくなります。
他の治療方法との費用の違いは?
インプラントと比較されたり提案されたりする治療方法として、入れ歯・ブリッジがあります。
どちらにもメリット・デメリットがあるため、「この治療法が良い」とは一概にいえません。また、治療方法も異なるので費用にも差があります。
それぞれの治療方法・メリット・デメリット・費用相場について解説するので、参考にしてください。
入れ歯の場合
入れ歯には総入れ歯・部分入れ歯の2通りがあります。
総入れ歯は上顎・下顎全体の歯を失った際の治療法です。一方の部分入れ歯は、一部の歯を失ったときに用いられます。主なメリットは以下の5つです。
- 保険適用が可能
- 適応範囲が広い
- 多くの歯科医院で対応
- 着脱式なので手入れが簡単
- 治療期間が短い
入れ歯には保険適用と適用外があります。保険を使用すれば治療費は3割負担になるので、費用面でメリットといえるでしょう。
また多くの歯科医院では入れ歯の治療・調整に対応しているため、引越し等で歯科医院が変わった場合でも対応してもらえます。
しかし、その一方で下記のようなデメリットもあるので注意してください。
- 咀嚼力が劣る場合がある
- 審美性が劣る場合がある
- 異物感が大きい
- 食べ物の温度・味覚を感じにくいことがある
保険適用と適用外を選べますが、適用させた場合は異物感が大きくなります。その原因は使用する素材です。
保険を使用した場合、素材にはプラスチックしか使用できません。それ以外の素材で作られた入れ歯はすべて適用外になります。
厚みが増し、顎の骨と合わない場合もあるので違和感が大きくなるのです。また、食べ物の温度・味覚なども感じにくくなることがあります。
一般的な相場は保険適用の場合で5,000~1万円(税込)、自費の場合は15万~80万円(税込)です。参考にしてください。
ブリッジの場合
ブリッジは主に部分的に連続して1~2本の歯がない場合に使用される治療方法です。
両隣の天然歯を削って、人工歯列を架け橋のように装着します。主なメリットは下記の5つです。
- 保険適用が可能
- 入れ歯よりも咀嚼力が強い
- 治療期間が短い
- 異物感が少ない
- 食べ物の温度・味覚が感じられる
咀嚼力が強いうえに食べ物の温度・味覚が感じられる点はメリットといえるでしょう。また、保険適用が可能な点も魅力的です。
異物感が少ないという点も相まって、入れ歯よりもブリッジを希望する人は一定数います。
ただし、ブリッジの大きなデメリットは健康な天然歯に負担をかける点です。歯の状態によっては削る必要が出てきます。
また人工歯列を天然歯に装着するため、長期にわたって使用すると健康な歯の寿命を縮める原因にもなるのです。
ブリッジの相場は保険適用の場合で1本あたり15,000~2万円(税込)、自費の場合は30〜50万円(税込)とされています。参考にしてください。
インプラント治療の費用の支払い方法は?
インプラント治療を行っている歯科医院の多くで採用されている現金以外の費用の支払い方法は、主に下記の2つです。
- デンタルローン
- クレジットカード
デンタルローンとは、歯科治療のためのローンサービスです。通常のローンよりも金利が安く設定されています。
一般的にWeb上から申し込みをすることで審査が行われ、承認がおりれば利用可能です。Web申し込み時には原則書類は必要ありません。
ローン会社によっては、6回払いなどの少ない回数に限り金利手数料が0%のところもあります。
ただし、すべての歯科医院でデンタルローンが利用できるわけではありません。対応していないところもあるので確認してください。
また、クレジットカード払いに対応している歯科医院もあります。
しかし、回数払いに対応していないところやクレジットカードの取り扱いがない歯科医院もあるので注意しましょう。こちらも歯科医院に確認してください。
まとめ
インプラント治療が高い理由について解説してきました。
インプラント治療は基本的に金額が高額になりがちなので、安いところに魅力を感じることもあるでしょう。
インプラントを行う際には高度な技術と新しい設備が必要です。また高品質なメーカーの材料を使用するため、治療費は高くなってしまいます。
治療費が高額になるのには、それなりの理由があるのです。
医療費を安く抑えるための医療控除などを活用し、適正な価格で正しい治療を受けることをおすすめします。
参考文献