インプラントでありがちなトラブルのひとつがゆるみです。インプラントを長く使用しているとグラついたり、浮いたりすることがあります。特に、これからインプラントを検討している方は、ゆるみの原因や対処法をあらかじめ理解しておくことで、トラブルに対処しやすくなるでしょう。また、すでにインプラントを使用している方は、原因と対処法を知ることでスムーズな対応が可能です。この記事では、インプラントのゆるみに関してわかりやすく解説します。
インプラントのゆるみについて
- インプラントにゆるみが出る原因はなんですか?
- インプラントにゆるみが出る原因は、以下のようなことが考えられます。
- アバットメントのゆるみ
- インプラント周囲炎
- 歯ぎしりや食いしばり
- 噛み合わせのバランス崩れ
- 外部からの衝撃
上記のなかで典型的な原因とされているのが、アバットメントのゆるみです。アバットメントとは、骨に埋入したインプラント体と人工歯を結びつけるための部品のことで、ネジ式でインプラント体に固定する仕組みになっています。アバットメントはネジ式であることから、時間の経過や口腔内で絶えず生じる振動でゆるむことがあります。また、人工歯に過度な圧力や衝撃が加わることでもゆるむかもしれません。アバットメントのゆるみは、歯科医院での定期的なメンテナンスで調整できますが、メンテナンスを怠るとゆるみが起きやすくなります。インプラントのゆるみは、ネジ式のアバットメントが原因と考えるとよいでしょう。一方、インプラント周囲炎や、歯ぎしり、食いしばりなどの原因も考えられるため、ゆるみが起きたときは医師に原因を特定してもらう必要があります。
- インプラント周囲炎とはなんですか?
- インプラント周囲炎とは、インプラントを行った部分の粘膜から歯槽骨で炎症や腫れが起こる症状のことです。インプラント周囲炎になると、インプラント体と顎の骨が結合しにくくなって、グラついたり、歯が浮いたりする感覚になります。インプラント周囲炎を放置していると骨が溶けるまで症状が進行し、ひどい場合はインプラント体が抜け落ちてしまうかもしれません。インプラント周囲炎の原因は細菌性のプラークです。歯磨きをはじめとする適切なオーラルケアのほか、3ヶ月に1回を目安にした歯科検診を受けることが予防につながります。
インプラントがゆるんだ場合の対応
- インプラントがゆるんだときに気を付けるべきことはありますか?
- インプラントがゆるんだときは、症状の程度を自己判断せず、速やかに医師に相談してください。また、自分でゆるみを直そうとすることは厳禁で、さらなる衝撃などが生じないよう細心の注意を払ってください。特に、インプラントがゆるんでいるときは、硬いものが含まれる食事を控えること、衝撃を加えないこと、そして自分で触らないことが大切です。インプラントのゆるみ、グラつき、違和感があるときは、自分では何もせず、すぐに医師に診てもらってください。
- インプラントのゆるみは歯科医院で直せますか?
- インプラントのゆるみは歯科医院で直せます。ただし、インプラント治療に対応している歯科医院であることが条件です。可能であれば、インプラント治療を受けた歯科医院で直してもらうようにしましょう。なぜなら、同じ歯科医院であれば、患者さんの治療計画や経過観察のデータがあるためです。もし、同じ歯科医院に行けないようなら、あらかじめインプラントのゆるみ調整や診断に対応してくれるかを電話で確認するとよいでしょう。なお、ゆるみの原因によっては、すべての歯科医院が対応できるとは限らないため、まずはインプラント治療を受けた歯科医院に相談してください。
- インプラントが外れたら自分でつけ直してもよいですか?
- インプラントが外れたら、自分で直そうとせず、速やかに歯科医院を受診してください。インプラントは、インプラント体、アバットメント、そして人工歯の3つで構成されていますが、どれが外れても自分でつけ直すことはできません。簡単そうだからといって、自分で付け直すことは控えましょう。いかなる場合であっても、外れた部品を保護し、医師に相談してください。
- ゆるみを直すためにインプラントの再治療が必要になることはありますか?
- インプラントのゆるみを直すために再治療が必要なケースもあります。具体的には、インプラント周囲炎や歯周病などによって、インプラント体と骨が結合しなくなった場合です。人工歯やアバットメントなどの上部構造がゆるむのではなく、土台が原因でゆるんでいる場合は再治療が必要になります。また、インプラント周囲炎が悪化し、再治療が困難な場合は、抜去手術が必要になるかもしれません。まずは歯科医院を受診し、ゆるみの原因と対処法を医師に示してもらいましょう。
インプラントのゆるみを予防する方法
- インプラント治療後に控えた方がよい生活習慣はありますか?
- インプラント治療後は、術後1週間を目安にして、喫煙、飲酒、激しい運動などの生活習慣を控えるようにしましょう。喫煙や飲酒は傷口の治りを遅くする要因になるほか、激しい運動は過度な血流を促し、患部を安静に保ちにくくなります。医師が日常生活に戻ってよいと判断するまでは、なるべく安静を心がけた日常を過ごすようにしましょう。特に、術後1週間は、食事や運動などの生活習慣に制限がかかると考えてください。
- インプラントのゆるみを予防するセルフケアを教えてください
- インプラントのゆるみを予防するセルフケアは、丁寧なオーラルケアと定期的な歯科検診を欠かさないことです。なかでも、日常的に取り組みやすいオーラルケアとして、やわらかいブラシを使った歯磨きや、歯を1本ずつ磨きやすいタフトブラシの使用、そして歯間ブラシなどを使うことが推奨されます。歯磨きでは、インプラントを摩耗しないためにも、研磨剤入りの歯磨き粉を使用しないことをおすすめします。また、セルフケアの一環として、定期的な歯科検診のスケジュールを計画し、歯科検診とメンテナンスを受けるようにしましょう。
- インプラント後の歯科医院でのメンテナンスは必要ですか?
- インプラント治療を受けた後、歯科医院での定期的なメンテナンスが必要です。目安として3ヶ月から6ヶ月に1回の頻度で、インプラント治療を受けた歯科医院でメンテナンスを受けてください。メンテナンスの内容は、インプラントのゆるみや破損がないかの点検をはじめ、インプラント周囲炎のチェック、レントゲン検査、そしてPMTCと呼ばれる歯科医院でしか受けられないクリーニングなどを含みます。インプラントは、手術もさることながら、術後の定期メンテナンスがとても重要です。定期メンテナンスは、インプラントのゆるみを防ぐだけでなく、インプラントを長持ちさせること、そしてお口の健康維持にも有用なため、セルフケア同様にしっかり実施するようにしましょう。
編集部まとめ
インプラントにゆるみがあるときは、速やかに治療を受けた歯科医院に相談してください。インプラントのゆるみは、自然に直ることはなく、自分でも直せません。 ゆるみの原因を特定すること、そして適切な対処法をとる必要があるため、いかなる場合でも医師に相談してください。
参考文献