インプラント

インプラントと天然歯の違いとは?インプラントの特徴について解説します

インプラントと天然歯の違いとは?インプラントの特徴について解説します

インプラントとは、歯根部・支台部・人工歯の3つのパーツからできている人工歯です。失った歯を再生する治療として注目されています。

一方で、天然歯とは自分の歯のことです。エナメル質の内側に象牙質があり、さらにその内側に歯髄があります。

では、インプラントと天然歯は具体的にどのような違いがあるのでしょうか。本記事ではインプラントと天然歯の違いやインプラントの特徴などを解説します。

インプラントと天然歯の違いを理解するためにも、ご参考いただければ幸いです。

インプラントと天然歯の違い

歯の模型

インプラントと天然歯の構造の違いを教えてください
大きな違いは、歯根膜の有無です。天然歯には歯の根と歯を支える骨の間に歯根膜と呼ばれるものがあります。厚さは0.2〜0.4mmで、物を噛むときのクッションと歯を簡単に抜けなくすることが歯根膜の役割です。
しかし、インプラントには歯根膜がなく、直接骨に埋まっています。その他の構造として挙げられるのは歯自体の構成要素の違いです。インプラントは顎骨に埋め込む歯根部と歯根部に取り付ける支台部、支台部に取り付ける歯の部分となる人工歯の3つのパーツからできています。
一方で、天然歯は歯の表面にあたるエナメル質と内側にある象牙質、象牙質の内側にある歯髄からできています。
インプラントと天然歯の感覚の違いは何ですか?
天然歯のみにある歯根膜には知覚神経があり、噛んだときの圧力や温度を感じられます。一方で、インプラントには歯根膜がないため、噛みごたえや温度を感じることはないです。
噛んだときの衝撃は、直接歯に伝わります。また、天然歯だと固いものややわらかいものを噛んだときの力加減が無意識で行えます。しかし、インプラントでは感覚を感じられないため、自身で力加減の調整が必要です。
インプラントと天然歯の咀嚼力の違いは何ですか?
インプラントと天然歯の咀嚼力は大きく変わらず、同程度の力が発揮できます。しかし、インプラントは噛む際に充分配慮する必要があります。なぜなら、インプラント周囲にはクッションがなく噛んだときの感覚が感じられないからです。
前述したとおり、天然歯には歯根膜がありクッションの役割を果たします。ものを噛んだ際に歯根膜には20〜200ミクロン程度の被圧変位量があり、これにより歯が少し動き咬合力に干渉します。一方で、インプラントにはクッションの役割を果たす歯根膜がありません。そのため、噛んだ際の衝撃は直接歯や顎の骨に加わってしまいます。また、歯根膜には知覚神経があるため、天然歯だと噛む力を無意識でコントロールできます。
片や、インプラントには歯根膜がなく知覚神経がないため、咀嚼力のコントロールは自身での調整が必要です。インプラント治療後に咀嚼力が強すぎてしまうと、インプラント体の動揺や破損・インプラント周囲の炎症の進行促進につながることもあるため、十分に注意しましょう。
インプラントと天然歯の寿命の違いは何ですか?
天然歯の平均寿命は歯の位置や性別にもよりますが、短くて49.4年、長いと66.7年です。しかし、インプラントは10〜20年程度で、なかには20年以上持った方もおられます。インプラントの寿命は天然歯に比べて短いとされており、原因には以下のことが挙げられます。
  • 噛む力が強い、噛み癖がある
  • 感染に弱く炎症が起こると進行しやすい
  • 歯科医院の技術不足

特に感染には注意が必要で、インプラントには天然歯と比べて血液供給量が少なく炎症になりやすい傾向があります。炎症になってしまうとインプラント周囲には神経が通っていないため自身では気付きにくいです。
また、進行が進みやすいのも特徴の一つです。インプラントを長く利用するためには、咬合力の改善やセルフケアの実施や、定期的なメンテナンスが重要となります。また、インプラントに異変を感じたら、すぐに歯科医院で受診しましょう。

インプラントと天然歯のメンテナンス方法に違いはありますか?
歯科医院へ受診した際の、インプラントのメンテナンス方法は以下のとおりです。
  • プラークやコントロールや周囲粘膜の状態確認
  • プロービングの深さ測定
  • 排膿の有無の確認
  • インプラントの動揺度測定
  • エックス線写真撮影
  • 口腔内の観察と写真
  • 細菌検査
  • 指尖血清抗体価検査

一方で、天然歯のメンテナンス方法は以下のとおりです。

  • 歯石やプラークの除去
  • 歯面の清掃と研磨
  • 歯周ポケットの洗浄

天然歯のメンテナンスはむし歯や歯周病対策が中心です。片や、インプラントのメンテナンスはインプラントの長期的な機能や炎症の早期発見、口腔内の疾患やトラブルの早期発見のために行われます。
先に述べたとおり、インプラントの周囲炎症は起こりやすく進行しやすいです。また、気付きにくい特徴もあるので、2〜6ヵ月に1度の頻度でメンテナンスを行う必要があります。

インプラントと天然歯の比較

ブラッシング指導をする歯科医イメージ08

インプラントにあって天然歯にないものは何ですか?
歯質の強さです。天然歯とは違い、インプラントはむし歯にならないです。むし歯は、むし歯菌から出る酸により歯のエナメル質を溶かすことから始まります。しかし、インプラントは人工の歯のため、酸により溶かされることはありません。
また、歯磨きやむし歯などにより引き起こされる歯質が脆くなる心配もありません。さらに、インプラント周囲の組織の方が、天然歯周囲の組織よりコラーゲンの含有量が多いです。インプラント治療で口腔内に怪我が生じたことで、瘢痕組織となるためです。
天然歯にあってインプラントにないものは何ですか?
天然歯にあってインプラントにないものは以下のとおりです。
  • 歯根膜
  • セメント質

また、天然歯の方がインプラントより多いものは以下のとおりです。

  • 結合組織の線維芽細胞
  • 血液供給
  • 歯肉プローブ挿入時の抵抗性
  • プラークへの抵抗性

前述したように、天然歯には歯根膜があることや血液供給がインプラントの2方向に対して天然歯は3方向と多いことから、天然歯はインプラントに比べて感染に強いです。
インプラントを感染から予防するためにも、日頃のセルフケアや定期的なメンテナンスをしっかりと行いましょう。

インプラントの特徴

歯の模型・開口・横

インプラントのメリット・デメリットを教えてください
歯を喪失した際にインプラント治療を行うメリットを挙げます。
  • 審美性や機能性に優れている
  • 長期間良好に使用できる
  • ほかの歯の負担が少ない
  • 付け外しの必要がない

特に審美性や機能性に優れている点が利用者に喜ばれており、天然歯と同じように利用できます。一方で、インプラント治療を行うデメリットは以下のとおりです。

  • 治療期間が長く、費用負担が大きい
  • 外科的侵襲の恐れがある
  • 口腔内だけでなく全身状態の影響を受ける
  • 外科処置中に出血や合併症の恐れがある

口腔内だけではなく、インプラント治療により全身に湿疹や水疱瘡の症状がでる場合があります。インプラント治療のメリットやデメリットを考え、治療を行うか決めましょう。また、歯が欠損した際は入れ歯やブリッジなどの治療方法もあります。

インプラントで注意すべきことはありますか?
インプラント治療の際は、感染症や合併症などのリスクがあるため、口腔内だけではなく全身状態にも注意が必要です。まず、口腔内での注意すべき点を挙げます。
  • 歯周病やむし歯がないか
  • 咬合状態
  • 骨量と骨質

次に、全身状態の注意すべき点を以下に記載します。

  • 糖尿病
  • 骨粗鬆症
  • 貧血
  • 高血圧
  • 喫煙

また、インプラント治療をする歯科医院の選択にも注意が必要です。具体的には、インプラントの知識や技術があるか・地域医療機関と連携しているか・救命救急の研修を受けているか・臨床検査やCT検査が行えるかなどを確認しましょう。さらに、年齢制限もあるので、治療前に歯科医師に確認が必要です。

編集部まとめ

歯を触る若い日本人女性

歯を損失した際に人工歯を取り付けるインプラントには、天然歯といくつか違いが見られます。

まず、構造の違いは歯根膜の有無です。歯根膜のないインプラントは、天然歯と違い噛む際の感覚がわかりにくく咬合力が強くなってしまうことがあります。

その他にも、セメント質がない・血液供給量が少ないなどがインプラントの特徴です。細菌に感染しやすいインプラントはメンテナンスが重要です。

また、インプラント治療後に腫れに気付いた際は、天然歯と比べ炎症が進行しやすいためできるだけ早めに歯科医院を受診しましょう。

インプラント治療を行いたい方は、メリットやデメリットをよく考え、入れ歯やブリッジも視野に入れて検討しましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
竹本 竜太朗歯科医師(北海道大学病院歯科診療センター(歯科矯正科) 大学院生)

竹本 竜太朗歯科医師(北海道大学病院歯科診療センター(歯科矯正科) 大学院生)

北海道大学歯学部 卒業 / 現在は北海道大学病院歯科診療センター勤務 / 専門は歯科矯正科

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