歯を失ったときの選択肢としてインプラントが選ばれることも少なくありません。インプラントは入れ歯やブリッジと違い、治療の完了までに時間を要するため、会話や食事に影響が出る可能性もあります。
歯は発音に深く関わっており、失った歯の治療を行うと話し方や滑舌に変化が生じやすくなります。
本記事では仮歯になった際の滑舌への影響や、治療後に違和感を覚えた場合の対処法について詳しく解説します。これからインプラント治療を検討している方や、すでに治療を行っている方の疑問を解消する手助けとなれば幸いです。
インプラント治療の特徴と滑舌への影響
- インプラント治療のメリットとデメリットを教えてください。
- メリットとして挙げられるのは義歯がしっかり固定できる点です。顎の骨にボルトを埋め込むため入れ歯やブリッジより安定感があり、頻繁に取り外してケアを行う必要もありません。周囲の歯を削ったり装置をつけたりすることもないため、残っている健康な歯の負担が少ない点も利点といえます。
デメリットは口腔内の状態だけではなく身体全体の状態が良好でないと治療を開始できない点や、天然歯に比べると感染症にかかるリスクが高い点が挙げられます。インプラントを埋め込む箇所の根元の骨が十分でないと、治療が難しくなることもあります。事前に口腔内を始めとした身体全体のチェックを細かく行っておきましょう。
- 滑舌が悪くなる一般的な原因を教えてください。
- 一般的に滑舌が悪くなる原因は、主に歯並びや噛み合わせが悪いからだといわれています。歯並びが乱れていると発音をする際に舌や唇の動きが限定されたり、舌が歯に当たったりするため言葉が聞き取りにくくなりやすいです。噛み合わせがズレている場合は、言葉を発するときに歯の隙間に舌が入り、発音が正確にしにくくなることがあります。
歯並びや噛み合わせは歯列矯正治療を行うと改善が見込めます。治療が進むにつれて滑舌も徐々に改善される傾向にあるため、滑舌を改善したい方は日本矯正歯科学会 認定医に相談しましょう。
- インプラント治療の滑舌への影響を教えてください。
- 一般的に、インプラント治療が滑舌に与える影響は少ないとされています。天然の歯と似た構造のインプラントは違和感が少なく、自分自身の顎の骨と歯が一体化し、治療前と同じような感覚で過ごせるためです。
仮歯を入れた状態では仮歯が本来の歯と大きさや形が異なる場合があるので、滑舌が悪くなったと感じる方もいます。滑舌の変化は仮歯の装着期間中に限定されるため、過度に気にする必要はありません。仕事や学校でどうしても滑舌の悪さを改善したい場合は、仮歯を調整すると症状を軽減できる場合があるため、担当の歯科医師に相談しましょう。
- インプラントの治療法によって滑舌は変わりますか?
- インプラントの治療法によって滑舌が変化する場合もあります。特に前歯や舌が触れやすい位置の歯を失った場合、その部分にインプラントを入れると空気の通り道や舌の動きが変化し、治療前より発音が改善したり安定したりする場合も少なくありません。
装着直後は慣れるまで違和感が生じやすいため一時的に滑舌が悪くなることもありますが、通常は時間とともに徐々に改善します。しっかりと口腔内にフィットしたインプラントであれば、入れ歯やブリッジに比べて自然な発音がしやすくなるといわれています。発音や滑舌に不安がある方は、治療前に歯科医師や日本矯正歯科学会 認定医に相談、チェックをしてもらうことが重要です。
インプラントの仮歯の滑舌への影響
- インプラントの仮歯の役割について教えてください。
- 仮歯の主な役割は、歯並びや噛み合わせの乱れを防ぐことです。インプラントのために元の歯を抜いて仮歯を入れないままでは、周辺の歯が傾く可能性があり、人工歯を作成しても装着できなくなる可能性があります。審美性を保つ観点からも仮歯を入れることはおすすめです。
前歯を抜いた場合は特に目立ちますし、奥歯だとしても大きくお口を開けると見えてしまうため、人前で話したり食事したりすることがストレスに感じる場合があります。ストレスを感じることなくインプラント治療期間を過ごすためにも、仮歯の挿入はきちんと行っておきましょう。
- 仮歯の期間に滑舌が悪くなる場合があると聞いたのですが本当ですか?
- 仮歯の装着期間中に滑舌が悪くなることはあります。仮歯の大きさが本来の歯の大きさや形状と異なっていた場合は、口腔内に違和感を覚えるため話しにくさや発音のしにくさを感じる場合があるためです。ただ、仮歯がなくても歯と歯の隙間がそのままになるため、空気が漏れてきちんと発音ができなかったり滑舌が悪くなったりします。
特に前歯をインプラントにする場合は、仮歯を入れると隙間からの空気の漏れを防げるため、術前の発音の状態を保てることもあります。歯科医師と口腔内に適した仮歯を選べば、むしろ滑舌が悪化することは少ないと考えられるでしょう。
- 仮歯の影響で滑舌が悪くなった場合の対処法を教えてください。
- 仮歯をつけてすぐの期間は話しにくいと感じることがありますが、数日経てば仮歯が馴染み、違和感が軽減される場合がほとんどです。どうしても仮歯を入れてから滑舌が悪い状態が長く続いたら、まずは担当の歯科医師に相談を行いましょう。
仮歯の形や噛み合わせの様子を確認し調整することで、滑舌の悪さを軽減できることがあります。ただし、滑舌の悪さが気になるからといって仮歯の装着をやめてしまうと、全体的な歯並びが悪化する可能性があります。一時的な滑舌の変化には一定の慣れが必要です。
- 違和感が続く場合は歯科医院で診てもらえますか?
- 口腔内の違和感が長期間続いている場合は、歯科医院で診察してもらえます。違和感に関しては滑舌の悪さとは違い放置せず、すぐに歯科医師に相談を行いましょう。インプラント周囲の歯肉が炎症を起こしていたり、仮歯がうまく固定できていなかったりと、インプラント治療が継続できなくなる症状が引き起こされている可能性があるためです。
症状が進行してしまうとインプラントが装着できない場合や、口腔内トラブルによる治療の複雑化で治療期間や治療費用が増えてしまう場合があります。早い段階で歯科医師に相談を行えば、違和感のある期間を短くでき、なおかつ費用を抑えることが可能です。
インプラント治療後の違和感と対処法
- インプラント治療後の違和感はどのくらい続きますか?
- インプラントの治療が終了した後に感じる痛みや違和感は、早い場合2日から3日で治ります。インプラント治療は外科処置も行われるため、違和感はほとんどの方に症状として現れます。違和感が長引くかどうかは体調や体質によっても変わってくるため、手術箇所の経過観察もしっかり行いましょう。
1ヶ月などあまりにも長い期間違和感が続いている場合は、インプラントに不具合が起きていたり、インプラント周囲炎を起こしていたりする場合も少なくありません。症状が悪化すると、インプラント治療を中断しなければいけなくなります。違和感を覚えたら、できるだけ早く歯科医師に相談するのがおすすめです。
- インプラント治療後に違和感が続く場合の対処法を教えてください。
- 口腔内の違和感が長く続く場合、歯科医院を受診し指示を受けましょう。歯茎の部分に圧迫感があれば、インプラントの調整が必要です。
インプラントの固定方法にはスクリュー固定とセメント固定の2種類があります。治療の際にスクリューで固定を行っている場合、スクリューの締め具合を調節するだけでも圧迫感が改善されることがほとんどです。また、スクリューが緩みすぎている場合も不安定さから圧迫を感じている可能性があるため、定期的にインプラントの状態は歯科医師にチェックしてもらうとよいでしょう。
編集部まとめ
インプラント治療は基本的に滑舌に与える影響は少ないといわれ、影響が出たとしても一時的なものの場合がほとんどです。仮歯を入れた段階では以前の歯の大きさとのギャップで滑舌が一時的に悪化することがあります。
仮歯をつけてすぐは話しにくいと感じることがありますが、数日経てば馴染んで次第に気にならなくなる場合がほとんどです。仮歯を入れると隙間からの空気漏れを防げるため、歯科医師と相談して口腔内に適した仮歯を選択すれば、滑舌が悪化する可能性は低いと考えられます。
ただし、口腔内の違和感が長く続く場合はインプラント周囲炎や、装置の不具合が原因である可能性が高いでしょう。速やかに歯科医院を受診し、歯科医師の指示を受けるのがおすすめです。早期に症状に気付ければ、治療期間の延長や治療費が必要以上に増えることを防げます。
インプラント治療を行う前には、仮歯になった際の滑舌の変化や、治療後の違和感への対処法を正しく把握しておきましょう。
参考文献