インプラント治療後、傷口が白くなり不安になる方は少なくありません。通常の歯茎の色とは異なるため、何かトラブルが起こったのではと考える方もいます。
なぜ、インプラントの傷口が白くなるのでしょうか。本記事では、インプラントの傷口が白くなる理由を解説します。
インプラント治療後の経過や注意点についても紹介するので、参考にしていただけますと幸いです。
インプラントの傷口が白い理由
インプラント治療は自由診療のため、入れ歯やブリッジなどの保険適用の治療と比べると費用が高額になる傾向があります。費用相場はインプラント1本あたり、300,000~500,000円(税込)程です。
ほかにも外科的手術を伴うため心身の負担が大きいことや、術後に痛みや腫れを伴うことがあるなどのデメリットがあります。
しかし、顎骨にインプラントを埋め込むため、自分の歯と同じような感覚で噛めるようになります。上部構造(人工歯)はセラミックやジルコニアを使うため、審美性に優れているのもインプラントのメリットです。
このように、デメリットもありますがメリットの方が大きいため、インプラント治療を選択する方は少なくありません。
ここではまず、インプラントの傷口が白くなる理由からみていきましょう。白くなる理由として考えられるのは主に次の3つです。
- フィブリンによるかさぶたの形成
- 口内炎
- 傷口の上に付着した汚れ
それぞれの理由について詳しく解説します。
フィブリンによるかさぶたの形成
インプラントの傷口が白くなったりぶよぶよしていたりすると不安を覚える方も少なくないですが、これは傷が治ろうとしている証拠です。
怪我をしたとき、かさぶたができますが、口腔内でも同じような現象が起きます。かさぶたを作るのは、フィブリンと呼ばれる物質です。
フィブリンが血液をゲル状にしてかさぶたを作るのです。この時、白くぶよぶよした状態になり、血餅と呼ばれます。
インプラント治療後の注意点は後述しますが、血餅が取れることがあるので激しいうがいや傷口を舌で触らないようにしましょう。
口内炎
口内炎によって、インプラントの傷口が白くなることもあります。口内炎と聞くと、疲れやビタミン不足でなるイメージがある方も少なくないのではないでしょうか。
口内炎はさまざまな理由で、発症します。傷などが原因となり発症することもあるため、インプラント治療によって口内炎ができる場合もあります。
口内炎ができるのは、人間の身体がもつ免疫機能や防御反応によるものです。1週間程度で自然と治りますが、心配な方は担当医に相談してみるといいでしょう。
傷口の上に付着した汚れ
インプラントの傷口が白くなる原因は血餅や口内炎など以外にも、汚れの可能性もあります。骨造成を同時に行った場合、骨補填剤や砕いた自家骨の粉末などが汚れとして付着することもあるでしょう。
汚れなのか判断がつかない場合は、担当医に聞いてみるといいでしょう。
インプラント治療後の経過
インプラント治療後の経過についてみていきましょう。インプラント治療は歯茎を切開して治療を行うため、傷口が完全に治るまで時間がかかります。
なかなか傷口が治らないと不安を感じたり心配になったりすることもあるでしょう。しかし、どのようにして傷口が治るのかを知ることで不安を軽減できるかもしれません。
ここでは抜歯後にどのようにして傷口が治っていくのかを紹介します。一部、インプラント治療の内容と当てはまらない部分はありますが、傷口が治っていく過程は参考になるでしょう。
血餅の形成・歯茎の再生が始まる
先述したように、まず血餅が形成されます。血餅が傷口を覆うことで出血が防げ、歯茎や顎骨の回復が促進されます。
通常どおりに歯磨きなどをして血餅が取れてしまうと、傷の治りが悪くなることもあるでしょう。血餅ができたところはなるべく刺激しないように注意してください。
歯を抜いた場合、3~4日程で歯を抜いた後の穴の周囲から少しずつ、歯茎の再生が始まります。歯茎の再生のことを上皮化といいます。
血餅が肉芽組織に変わる
血餅ができてしばらくすると、血餅が肉芽組織に変わります。肉芽組織は血餅と同じように、傷口を守るためにできる組織のことです。
血餅よりも定着する力が強いため、血餅が剝がれる心配はなくなるでしょう。
骨の再生が始まる
歯を抜いてから3週間~1ヵ月程経つと、肉芽組織が結合組織と呼ばれる組織に変わります。あわせて、骨の再生も始まります。
窩が歯茎に覆われる
歯を抜いてから1ヵ月~1ヵ月半程すると、抜歯後の穴も完全に歯茎で覆われるようになります。
歯茎の穴が完全に埋まる
半年~1年経つと、歯茎の穴は完全に埋まります。レントゲン写真で確認しても、歯を抜いた後はわからないでしょう。
インプラント治療は歯茎を切開して治療を行うため、縫合して傷口を塞ぎます。そのため、抜歯のように歯茎に穴が開いている状態にはなりません。
インプラント治療後の傷口が癒えるまでの期間は個人差はありますが、だいたい2週間程です。抜糸は1週間程してから行われることが多いようです。
インプラント治療直後から1週間の注意点
インプラント治療は外科的手術を伴うため、治療後の過ごし方が気になる方は少なくありません。安静にしていないといけないのか、食事はどうしたらいいのかなど、気になる点は多いのではないでしょうか。
インプラント治療直後から1週間はどのようなことに注意をしたらいいのでしょうか。インプラント治療後は通常どおりに過ごすことができますが、傷口が癒えない間は感染症のリスクがあったり刺激によって傷口が開いたりするリスクがあります。
- 食事はやわらかい物をとる
- 飲酒・喫煙はしない
- 入浴・運動は控える
特に気を付けた方がいいのはこの3点です。それぞれの注意点を詳しく解説しますので、参考にしてください。
食事はやわらかい物をとる
インプラント治療後の食事制限は特にありません。しかし、粘着性のあるものなどを食べると血餅が取れたり、食べ物が引っかかって糸が抜けてしまったりするリスクがあります。
そのため、治療後直後から1週間は食事に気を付けた方がトラブルを軽減できるでしょう。痛みなどの不安がある場合は、やわらかい物を食べるようにするのがおすすめです。
治療直後は麻酔の影響が残っているため、特に注意してください。お口の中が麻痺しているため、熱さを感じにくかったり感覚が鈍っていたりすることがあります。
火傷をしたり頬・唇などを噛んでしまったりするリスクがあるので、術後数時間は食事を控えるようにしましょう。麻酔が切れたら通常どおりに食事をしていただいて大丈夫です。
飲酒・喫煙はしない
インプラント治療を受けた後は、飲酒・喫煙は控えるようにしてください。飲酒をすることで血圧が高くなることがあるためです。
タバコは血流を妨げるため、飲酒・喫煙をすると出血したり傷の治りが悪くなったりします。
特に喫煙は歯周病のリスクも高めるといわれています。インプラントを埋め込んだ部分は歯周病にはなりません。しかし、歯周病と似たインプラント周囲炎になるリスクがあります。
インプラントの生存率を下げることになるので、インプラント治療を機に禁煙するのがおすすめです。
入浴・運動は控える
インプラント治療直後は、入浴・運動は控えた方がいいといわれています。痛みや出血がひどくなる可能性があるためです。
手術が終わって3日程度はシャワーのみにしておくといいでしょう。入浴や運動は血行をよくするため、痛みや出血が出やすいといわれています。
インプラント治療1週間後からメンテナンスまでの注意点
インプラント治療1週間後からメンテナンスまでの注意点もみていきましょう。治療後1週間程すると、痛みや腫れも落ち着いてきます。
しかし痛みや腫れなどがないからとケアを怠ると、トラブルが起こることもあります。痛みや腫れが落ち着いても治療が完了するまでは気を抜かないようにしましょう。
- 毛先のやわらかい歯ブラシで歯を磨く
- 鎮静剤で痛みを抑える
- 抗菌剤は最後まで飲み切る
治療1週間後からメンテナンスまでの期間は、これらのことに注意しましょう。
毛先のやわらかい歯ブラシで歯を磨く
インプラント治療後、歯磨きに悩む方は少なくありません。歯ブラシで傷口を傷付けたらと考え、歯磨きを躊躇っている方もいるのではないでしょうか。
しかし、インプラント治療をした場所以外はきちんとお手入れをしないとむし歯や歯周病などのリスクがでてきます。
治療した部分にも悪影響を及ぼす可能性があるため、きちんとお手入れをしましょう。毛先のやわらかい歯ブラシを使うのがおすすめです。
治療した部分やその周囲は、抜糸するまで歯磨きを控えましょう。歯磨きによって傷口が開くことがあるためです。
鎮痛剤で痛みを抑える
術後の痛みは鎮痛剤で抑えることができます。1週間程度は痛みは落ち着きますが、痛みが続くこともあるでしょう。処方された鎮痛剤を飲み切ってしまった場合は、市販の鎮痛剤を服用してください。
鎮痛剤を飲んでも効果がないときは、担当医に相談してください。
鎮痛剤を飲んでも痛みが落ち着かないのは薬が合っていなかったり、何らかのトラブルが起こっていたりする可能性があります。
抗菌剤は最後まで飲み切る
インプラント治療後、鎮静剤と一緒に抗菌剤も処方されます。処方された抗菌剤は最後まで飲み切ってください。
痛みや腫れが落ち着いたからといって、服用を途中でやめるのはおすすめできません。なぜなら、抗菌剤は指定された日数分を飲み切ることで効果が得られるからです。
途中で飲むのをやめてしまうと、適切な効果を得られなくなってしまいます。また、アルコールと一緒に服用するのもダメです。薬の効果が発揮されなくなってしまいます。
鎮痛剤や抗菌剤が合わず、下痢や湿疹などの症状が出る方もいるようです。この場合は速やかに、担当医に相談してください。
治療箇所から膿が出る場合の対処法
治療箇所から膿が出る原因として考えられるのは、傷口の細菌感染とインプラント周囲炎です。インプラント周囲炎は症状が進行すると、インプラントが抜け落ちてしまうリスクがあります。
インプラント治療後の歯科医師のメンテナンスが不十分だったり、歯磨きが適切にできていなかったりするとインプラント周囲炎になる可能性があります。細菌がインプラントと歯茎の間に入り込み、炎症を起こすのです。
初期段階ではインプラント周囲の歯茎からの出血がみられます。しかし、症状が進行すると腫れや膿がでてきます。
治療中の感染対策が万全でなかったり、治療後のケアが不十分だったりすると傷口が細菌感染することもあるでしょう。顎骨とインプラント体の間に炎症が起きて、膿がでるのです。
細菌感染するとインプラント体と骨がうまく結合できないため、インプラント治療を続けられなくなるかもしれません。
膿がでた場合はまず、治療を受けた歯科医院を受診しましょう。膿が自然に回復することはありません。
抗生剤やうがい薬が処方されるので、歯科医師の指示に従って服用してください。インプラント周囲炎になっており顎骨が減少している場合や、インプラント体と骨が結合しない場合はインプラントの除去が行われます。リカバリーが難しいためです。
膿が出ないようにするためには、口腔内を清潔に保つことが大事です。毎日の歯磨きを徹底し、定期的にメンテナンスを受けるようにしましょう。
インプラント治療後の痛みのピークと期間は?
最後に、インプラント治療後の痛みのピークはいつなのかや痛みが続く期間を解説します。
インプラント治療中は麻酔を使うため、治療中の痛みは心配ないでしょう。麻酔を打つときに注射の痛みを感じますが、表面麻酔をすることで軽減できます。
インプラント治療による痛みを感じるのは、麻酔が切れた後が多いようです。しかし、処方された鎮痛剤を服用することで痛みは抑えられます。
痛みのピークは術後3~4日目です。3~4日経つと、だんだんと痛みを感じなくなるでしょう。長くても1~2週間程で痛みは落ち着きます。
痛みの感じ方や、痛みが続く期間には個人差があります。なかなか痛みが落ち着かない、痛みを我慢できないなど、心配なことがあったら担当医に相談することをおすすめします。
まとめ
ここまで、インプラント治療で傷口が白くなる理由などを解説しました。インプラント治療で傷口が白くなるのは傷口を治そうとしているためです。
なので、傷口が白くなっていてもあまり心配は必要ないでしょう。細菌感染などによって膿が発生することがありますが、膿は臭いがあり、色も黄色味を帯びています。
その場合は、速やかに治療を受けた歯科医院で相談しましょう。本記事ではインプラント治療後の注意点なども紹介してきました。
これからインプラント治療を受ける方やインプラント治療を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
参考文献