インプラント

永久歯がないって病気なの?先天性欠如歯の原因やリスクについても解説

永久歯がないって病気なの?先天性欠如歯の原因やリスクについても解説

乳歯がなかなか抜けないと悩んでいる方はいませんか? もしかすると先天性欠如歯が関係しているかもしれません。先天性欠如歯とは、生まれつき一部の永久歯が存在しない状態を指します。この問題は、噛み合わせや見た目に影響を及ぼすだけでなく、全身の健康にも深刻な影響を与える可能性があります。そのため、早期発見と適切な治療が必要です。この記事では、先天性欠如歯の原因やリスク、具体的な治療法について詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。

先天性欠如歯とは

先天性欠如歯とは 先天性欠如歯は、10人に1人の割合で発生する歯科的な問題です。生まれつき一部の永久歯が存在しない状態を指し、噛み合わせや見た目に大きな影響を与えます。ここでは、先天性欠如歯の概要と発生しやすい部位について解説します。

先天性欠如歯について

先天性欠如歯は、生まれつき永久歯の数が足りない形成異常です。何かの病気ではないかと心配になるかもしれませんが、病気ではありません。一般的に、乳歯は20本、永久歯は親知らずを含めると32本生えるはずですが、先天性欠如歯があると永久歯の数が不足します。この状態は、歯の芽となる歯胚(しはい)が正常に形成されないことが原因とされています。歯胚は通常妊娠中に作られますが、それが作られない場合には歯が生えてきません。先天性欠如歯は具体的なメカニズムが解明されていないため、現時点では予防する方法は不明です。

先天性欠如歯が起こりやすい部分

先天性欠如歯は、特定の歯に集中して発生するという特徴があります。例えば、上下の第二小臼歯(中央から5番目)や第三大臼歯(親知らず)が欠如するケースがよく見られます。また、上下の前歯も先天性欠如歯の影響を受けやすい部位です。これらの歯が欠如すると、噛み合わせに問題が生じたり、見た目にも影響を及ぼしたりするため、早期の発見と適切な治療が重要です。

先天性欠如歯の原因

先天性欠如歯の原因 先天性欠如歯には、複数の要因が絡み合っているといわれています。主に遺伝的要因と環境的要因が関与しており、これらが歯の発育に大きな影響を及ぼします。ここでは、先天性欠如歯の原因について詳しく見ていきましょう。

遺伝的要因

先天性欠如歯の主な原因は、遺伝的要因とされています。家族内で発生することがよくあるためです。具体的には、歯の発育に関わる遺伝子の異常や変異が先天性欠如歯を引き起こすと考えられています。

環境的要因

遺伝的要因だけでなく、環境的要因も先天性欠如歯の発生に影響を与えるといわれています。例えば、胎児期の栄養不足や母親の喫煙薬物使用などが歯の発育に悪影響を与えることがあります。さらに、妊娠中の母親が感染症にかかることも、胎児の歯の発育に影響を与える要因のひとつです。これらの環境的要因が、特に妊娠初期に影響を及ぼすと、歯の形成に問題を引き起こすことがあるとされています。

その他の関連要因

その他の関連要因として、先天性欠如歯の発生にはさまざまな要素が関与していると考えられています。例えば、歯の発育に影響を与えるホルモンの異常や特定の病気による影響が挙げられます。また、放射線治療や化学療法を受けた経験がある場合も、歯の形成に影響することがあるのです。さらに、全身疾患や染色体異常も先天性欠如歯の原因となります。これらの要因が歯の形成過程において重要な役割を果たし、その影響を受けることで歯の発育に異常を引き起こす可能性があります。

先天性欠如歯によるリスク

先天性欠如歯は、見た目の問題だけでなく、口腔全体の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。ここでは、先天性欠如歯による具体的なリスクについて詳しく解説します。噛み合わせの問題、むし歯や歯周病のリスク、見た目の問題など、多角的な視点から理解を深めていきましょう。

噛み合わせが悪くなる

先天性欠如歯があると、噛み合わせに問題が生じることがあります。特に奥歯が欠けている場合、噛む力が均等に分散されず一部の歯に過度な負担がかかってしまうのです。この結果、歯の摩耗が進み、顎(がく)関節にも負担がかかる可能性があります。

通常、乳歯から永久歯への生え変わりは自然に進みますが、先天性欠如歯の場合、この過程が正常に行われません。乳歯が長く残り徐々に吸収されることがあります。乳歯は永久歯に比べて歯根が短く質がもろいため、長期間残ることができません。その結果、噛み合わせが悪くなってしまうのです。

また、欠如した歯の周りの歯は、隙間を埋めようとして倒れたり、歯並びが乱れたりします。これにより、全体的な噛み合わせが悪くなり、歯が欠けやすくなったり、すり減ったりするのです。特に子どもの場合、顎の成長に悪影響を与え、歯並びや噛み合わせの問題が深刻化することがあります。先天性欠如歯の場合は、早期の診断と適切な治療が重要です。

むし歯や歯周病のリスクが高くなる

先天性欠如歯があると、残っているほかの歯の負担が増えむし歯や歯周病のリスクが高まります。特に噛み合わせのバランスが悪くなると、お口の中を清潔に保つことが難しくなり、プラーク(歯垢)が溜まりやすくなります。その結果、むし歯や歯周病が発生しやすくなり、歯茎の炎症や出血につながってしまうのです。

また、欠如した歯の部分に食べかすやバクテリアが溜まりやすく、そこからの感染がお口全体に広がることもあります。そのため、先天性欠如歯がある方は、定期的な歯科検診と適切な口腔ケアが推奨されます。早期に対策をとることで、お口の中の健康を維持し、全身の健康にもプラスに働くでしょう。

見た目が悪くなる

先天性欠如歯が前歯にある場合、見た目にも大きな影響があります。歯がないことで笑顔に自信が持てなくなったり、人とのコミュニケーションに支障をきたしたりするのです。このような見た目の問題は、心理的なストレスを引き起こし生活の質に影響を与えます

また、欠如部分に隣接する歯が傾いたり、噛み合わせがずれたりすることもあります。このような歯並びの乱れは、見た目だけでなく、口腔機能全般に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、先天性欠如歯の治療は、見た目の改善だけでなく、噛み合わせや口腔機能の回復を目的とすることが重要です。

先天性欠如歯の治療法

先天性欠如歯の治療法 先天性欠如歯の治療は、欠如した歯を補うための方法が中心です。治療方法には、義歯、インプラント、ブリッジ、歯列矯正などがあります。ここでは、それぞれの治療法の特徴とメリットやデメリットについて詳しく紹介します。

義歯

義歯は、失った歯を補うための取り外し可能な人工歯です。部分義歯や総義歯があり、欠如した歯の数や位置に応じて選びます。先天性欠如歯がある場合、部分義歯がよく使われます。

義歯のメリットは、取り外して清掃できるため、口腔ケアがしやすい点です。また、安価で治療期間も短いため、手軽な選択肢です。しかし、義歯は噛み合わせや装着感に違和感があることもあり、見た目の自然さもほかの方法に比べて劣るかもしれません。取り外して毎日ケアすることも必要です。

インプラント

インプラントは、人工歯根を顎骨に埋め込みそのうえに上部構造を装着する治療法です。天然の歯に近い機能と見た目を持ち、固定式であるため、違和感がなくしっかりと噛むことができます。また、インプラントはほかの歯に負担をかけずに独立して機能するため、周囲の歯を削る必要がありません。しかし、手術が必要で治療期間が長く、費用も高額になることが一般的です。骨や全身の健康状態によっては、適応できない可能性もあります。

ブリッジ

ブリッジは、欠如した歯の両隣の歯を支えとしてその間に人工の歯を取り付ける方法です。噛む力が分散できるため機能的に優れていて、噛み合わせや見た目の改善に効果的です。しかし、ブリッジを装着するためには、支えとなる両隣の歯を削らなければなりません。長期的には、支えとなる歯への負担が増える可能性があります。また、ブリッジは固定式で取り外して清掃することができないため、口腔ケアに注意が必要です。

歯列矯正

歯列矯正は、歯並びや噛み合わせを改善するための効果的な方法です。先天性欠如歯がある場合、歯列矯正によってほかの歯の位置を調整し、欠如した部分を自然に補うことができます。特に、欠如している歯が前歯の場合、歯列矯正は見た目の改善にも大きな効果が期待できます。子どもや顎の小さい方にとっては、成長期を利用して顎の発育をサポートしながら治療を進めることができるため、適した方法です。噛み合わせに問題がなければ、すべて永久歯に生え変わる12歳前後からの治療開始が望ましいといわれています。しかし、歯列矯正治療は治療期間が長く、費用も高額になる傾向があります。

先天性欠如歯の治療期間と費用

先天性欠如歯の治療期間と費用 先天性欠如歯の治療を検討する際に、治療期間と費用は重要なポイントではないでしょうか。治療法の選択や個々の状況により、治療にかかる時間や費用は大きく異なります。ここでは、それぞれの治療法の期間と費用について詳しく紹介します。治療を選択する際の判断材料として、ぜひ参考にしてください。

治療期間

先天性欠如歯の治療期間は、選択する治療法や患者さんの状態によって異なります。義歯およびブリッジの場合、保険診療の治療では2週間から1ヵ月程度が一般的です。自由診療では、より精密な型取りや調整が可能なため、2~3ヵ月程度かかることがあります。インプラントの場合、手術から治療完了までは早くて3ヵ月、骨の状態が悪い場合は1年程度かかることもあります。ブリッジは1~3ヵ月程度、歯列矯正は1~3年程度かかることが多くなります。治療計画を立てる際には、歯科医師と十分に相談し、無理のないスケジュールを組みましょう。

費用

治療費用も選択する治療法によって大きく異なります。義歯は安価で、保険診療であれば1万円前後で作ることが可能です。ただし自由診療の場合は材質によって価格が変わり、20~80万円程度かかることがあります。インプラントは自由診療になるため高額で、1本あたり40~100万円程度と歯科医院によって異なります。ブリッジは保険診療で15000円~3万円程度、セラミックなどの材質にする場合は自由診療になり20~30万円程度です。歯列矯正も自由診療になるため高額で、50~100万円かかることがあります。保険適用の有無や治療内容、歯科医院によって費用が異なるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。

先天性欠如歯と発覚した場合に取るべき対応日常ケアの重要性

先天性欠如歯と発覚した場合に取るべき対応日常ケアの重要性 先天性欠如歯が発覚した場合、どのように対処するかが将来の歯の健康に大きな影響を与えます。早期発見と適切な日常ケアが、欠如歯の問題を抑える鍵となります。ここでは、先天性欠如歯が発覚した際に取るべき対応と、日常の歯のケアについて詳しく解説します。

早期発見が大切

先天性欠如歯は早期に発見し適切な対策をとることが重要です。定期的に歯科検診を受けることで、早期に問題を発見し、適切な治療を開始することができます。例えば、就寝時にマウスピースを使用することによって噛み合わせの問題をできる限り抑え、将来的な口腔内のトラブルを軽減することが可能です。

歯の健康を保つための日常ケア

先天性欠如歯がある場合、日常の歯のケアは特に重要です。適切な歯磨きやデンタルフロスの使用、そして定期的な歯科検診を行うことで、むし歯や歯周病のリスクを大幅に減らすことができます。これにより、口腔内の健康を維持しやすくなるのです。

特に先天性欠如歯がある場合、残っている歯を大切にし、乳歯を長持ちさせることがとても重要です。乳歯は永久歯よりも歯根が短く、質ももろいため、適切なケアがなければ早期に抜けてしまう可能性があります。そのため、定期的にフッ素塗布を行ってむし歯になりにくくしたり、マウスピースの使用で噛み合わせを調整したりすることで、乳歯を長持ちさせることが期待できます。

また、バランスの取れた食事や適度な運動も、歯の健康には重要なポイントです。栄養が豊富な食事は歯や歯茎の健康を保つために不可欠であり、運動は全身の血行をよくし、口腔内の健康にもプラスに働きます。

まとめ

先天性欠如歯は遺伝や環境によって引き起こされるもので、病気ではありませんが、噛み合わせや見た目、全身の健康に影響を与えることがあります。しかし、自分の状況に適した治療法を見つけ早期に対応することで、その影響をできる限り抑えることが可能です。治療方法には、義歯、ブリッジ、インプラント、歯列矯正治療などがあります。また、日々の口腔ケアをしっかり行うことで、乳歯を長持ちさせることができます。健康な口腔環境を保つために、適切な治療とケアを行ってみてください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
木下 裕貴医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

木下 裕貴医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

北海道大学歯学部卒業 / 医療法人社団天祐会 副理事長 / 専門はマウスピース矯正、小児矯正 / 一般歯科全般もOK

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