インプラントを検討している方が気になることとして、補助金や医療費控除が使えるのかどうかが挙げられると思います。インプラントにかかる治療費用は高額になりがちなため、補助金や医療費控除の制度に関して理解しておくことで、治療費用を抑えられるかもしれません。
そこでこの記事では、インプラントの補助金や医療費控除に関するよくある質問を紹介しながら、これからインプラントを受けようとしている方にわかりやすく解説します。
インプラント治療の費用について
- インプラント治療に利用できる補助金はありますか?
- インプラント治療で利用できる補助金はないと考えてください。この場合の補助金とは、各自治体の行政機関に申請することで、インプラント治療にかかる費用を補助してもらえる制度を指しますが、一般的なインプラント治療を対象にした補助金制度を用意している自治体はないと考えてよいでしょう。
一方、インプラント治療は医療費控除の対象です。医療費控除が受けられることは、間接的な補助が受けられる意味でもあります。また、条件こそあるものの、保険が適用されるケースもあるため、すべての方が全額自己負担になるとは限りません。
したがって、インプラント治療では補助金こそないものの、医療費控除や保険を活用して治療費を抑えられる可能性があることを知っておいてください。
- インプラントは保険適用ですか?
- インプラント治療は、保険が適用される条件を満たせば保険適用となります。保険が適用される条件の目安は、以下3つのケースです。
- 生まれつき顎の骨が3分の1以上欠損している
- 顎の骨に形成不全が認められる
- 病気や事故により、顎の骨が大きく欠損している
このように、インプラント治療で保険適用されるケースは極めて限定的といえます。よくありがちな、入れ歯が合わない、差し歯をやめたいといった理由では保険は適用されません。また、むし歯や歯周病、そして加齢が原因で歯を失った場合にも保険は適用されないので注意しましょう。
- インプラントで医療費控除は利用可能ですか?
- インプラント治療は医療費控除を利用可能です。医療費控除とは、1月1日を起点とする1年間のうちに、支払った医療費が10万円を超える場合または年間総所得が200万円未満で医療費が総所得の5%を超えた場合において、一定の控除が受けられる制度です。
インプラント治療を受けた場合、医療費控除を申請することで、インプラント治療にかかった費用の一部が還付されるため、実質的な補助となり、治療費用を安く抑えられます。
なお、美容や審美性の追求を目的にしたインプラント治療は医療費控除の対象外です。あくまでも、失われた歯の機能を補うことを目的にしたインプラント治療だけが医療費控除の対象になると覚えておきましょう。
- 医療費控除を受ける方法を教えてください
- インプラント治療で医療費控除を受ける方法は、管轄の税務署窓口、郵送、そしてインターネット経由いずれかによる自己申告制となります。医療費控除を受けるには、以下の書類を用意しましょう。
- インプラント治療を受けた際の領収書
- 保険組合からの「医療費控除のお知らせ」
- 医療費控除の明細書(税務署やオンラインで入手可能)
- 源泉徴収票(給与所得者が対象)
- インプラント治療を受けた際に発生した公共交通機関の料金明細
インプラント治療の医療費控除を受けるには、上記の必要書類を用意したうえで、確定申告受付期間の毎年2月16日から3月15日までに、税務署窓口、郵送、そしてオンラインいずれかの方法で、自己申告しなければならないことを忘れないでください。なお、医療費控除の申請は、過去5年に遡ってできるため、申請期間を過ぎた場合でも5年内なら申請をおすすめします。
- インプラントは高額療養費制度の対象ですか?
- インプラント治療は高額医療費制度の対象にならないと考えてください。理由は、高額医療費制度は保険が適用される保険診療だけが対象となるためです。インプラント治療は、原則として保険が適用されない自由診療に該当することから、高額医療費制度の対象とはなりません。ただし、インプラント治療で保険が適用される条件(顎の骨が欠損または形成不全)に該当する場合は、高額医療費制度の対象になります。
一方、歯の機能を補うことを目的にしたインプラント治療は医療費控除の対象です。ほとんどのインプラント治療は、高額医療費制度の対象にならないかもしれませんが、治療費を抑えるために医療費控除を活用できることを覚えておきましょう。
治療費用を抑えられる方法
- インプラントの1回法と2回法では治療費用が変わりますか?
- インプラント治療では、1回法と2回法によって治療費用が変わります。1回法は手術が1回で済むのに対し、2回法は2次手術も必要になるため、1回法の方が治療費用が安く済むことがほとんどです。
1回法は2回法と比べて治療費用が抑えられるだけでなく、患者さんの心身の負担が少なく済むこと、そして通院期間や治療期間が短いメリットがあります。対照的に、2回法は1回法と比較して治療費用が高くなりやすいものの、骨量が少ない方や全身疾患がある方も受けられることがメリットです。
インプラント治療の費用を抑えるには、1回法の方が適しているといえますが、治療費用以外の条件に関しての考慮も大切になります。
- オールオン4とはどのような治療ですか?
- インプラント治療のオールオン4とは、4~6本のインプラントを使い、連結した12本の人工歯を固定する治療方法です。通常のインプラント治療は、1本の歯に対して1本のインプラントが基本ですが、オールオン4であれば少ない本数でより多くの歯を固定できます。オールオン4は、インプラントの本数を少なく抑えつつ、上顎、下顎、さらには両顎すべての歯を作れることが特徴です。
オールオン4は、入れ歯と比較して高い咬合力が得やすくなるほか、審美性の高さ、そして治療時の身体的な負担が少ないメリットがあります。一方、治療費用が高額になりがちで、治療期間が長いこと、そして定期的なメンテナンスが必要なことはデメリットに思えるかもしれません。
- インプラントオーバーデンチャーはどのような治療ですか?
- インプラントオーバーデンチャーとは、上顎または下顎に被せる入れ歯をインプラントや残存歯を使って固定する治療方法です。一般的な入れ歯の固定方法は、バネや歯茎の吸着を利用するのに対し、インプラントオーバーデンチャーは、2~6本のインプラントや、残った歯を使って固定する違いがあります。
インプラントオーバーデンチャーは、固定源が安定しやすいため、咬合性が高まるだけでなく、入れ歯にありがちな噛みにくさや、痛み、そして外れやすさなどの懸念が少なく済むことが特徴です。また、少ない本数のインプラントで固定できるため、費用を抑えやすいこともメリットになるでしょう。
一方で、残存歯がむし歯になるリスクがあるほか、抜歯が必要になる可能性があること、どなたにも適合する方法でないこと、そして一般的な入れ歯よりも高額になってしまうことはデメリットになります。
編集部まとめ
インプラント治療は、どなたにも適用される補助金こそないものの、実質的な補助として医療費控除や保険適用が受けられるため治療費用を抑えられる可能性があります。とりわけ、医療費控除はインプラント治療を受けるすべての方に適用されるので、この記事で紹介したことを参考にして、積極的な活用をおすすめします。
参考文献