オールオン4治療とは、片顎に4本のインプラントを埋入し、奥歯から前歯まですべての人工歯を支える治療法です。
すべての歯を人工歯に置き換えるため、治療を行うときに歯が残っている場合はどうなるのか不安に思う方も多いでしょう。
オールオン4治療にはメリットとデメリットがあり、生活習慣や基礎疾患によっては適応とならない場合もあります。
本記事では、オールオン4治療で抜歯が必要かどうかに加え、メリットやデメリット、ほかの治療法の選択肢について詳しく解説します。
インプラント治療やオールオン4治療を検討中の方にとって、有益な情報となるでしょう。
オールオン4の特徴
オールオン4の特徴は、少ない本数のインプラントですべての人工歯を固定できる点です。
通常のインプラントの治療では、１本の歯に対して1本のインプラントを埋入する必要があります。
埋入するインプラントの本数が少ないため、身体への負担や治療時間を抑えられます。
また、天然歯に近い噛み心地と見た目に加え、インプラントでしっかり固定されているため人工歯が外れにくい点も特徴です。
総入れ歯のように取り外してお手入れをする必要がない点も、オールオン4の大きな特徴です。
オールオン4のメリット
オールオン4治療にはどのようなメリットがあるのか、気になる方も多いでしょう。治療を検討する際には、どのような効果があるのかを知っておくことも重要です。
ここでは、通常のインプラント治療との違いも踏まえて、オールオン4治療のメリットを4つ紹介します。
天然歯に近い噛み心地になる
オールオン4治療は、インプラントを埋入することにより人工歯をしっかりと固定するため、天然歯に近い噛み心地を実現できます。
総入れ歯のように歯茎に被せる構造ではなく、顎の骨に埋入したインプラントで人工歯を固定するため、咀嚼時のズレが少なく、安定した噛み心地が得られます。
インプラント1本ごとに人工歯を装着する治療法と比べ、オールオン4治療は嚙み心地や咀嚼力が劣るのではと不安に思う方もいるかもしれません。
しかし、オールオン4治療で咀嚼機能が十分回復したという報告もあり、より天然歯に近い噛み心地に近づけるでしょう。
審美性が高い
オールオン4治療は複数の人工歯が一体となった構造のため、審美性が高いのも特徴です。
人工歯は陶歯やレジン歯、金属歯などの種類が存在し、オールオン4治療では主に陶歯というセラミックス系素材の人工歯が使用されます。
セラミックス系素材は、天然歯に近い質感や透明感を再現できる点が特徴です。また、個人の希望に沿って人工歯の素材変更も可能です。
気になる方は、一度歯科医院で相談してみることをおすすめします。
通常のインプラントに比べて治療期間が短い
オールオン4治療は、通常のインプラントと比べて治療期間が短い点も特徴です。
通常のインプラント治療であれば1本の歯に対して1本ずつインプラントを埋入しますが、オールオン4治療では、4本のインプラントで片顎すべての人工歯を支えることが可能です。
そのため、インプラントの埋入本数が少なく、身体への負担や治療期間も抑えられます。
ただし、インプラント体が顎の骨と結合するまでの期間は変わらず、インプラントを埋入した後の治療期間は3～5カ月ほどかかります。
取り外してお手入れをする必要がない
オールオン4治療は、人工歯を取り外してお手入れの必要がない点も特徴です。
オールオン4治療はインプラントを埋入した後に人工歯を固定します。使用される人工歯は12本が一体化しており、歯茎に似せた構造も含まれています。
そのため、総入れ歯やインプラントオーバーデンチャーのような着脱式の義歯のように取り外してお手入れをする必要がありません。
また、インプラントによって固定されているため、自身で取り外すことはできず、歯科医院での対応が必要です。
人工歯の破損や歯茎に違和感がある場合は、治療を受けた歯科医院を受診しましょう。
オールオン4のデメリット
治療にはメリットがある一方でデメリットも存在します。ここでは、オールオン4治療のデメリットを3つ紹介します。
オールオン4治療を検討している方の参考になれば幸いです。
治療を受けられないケースがある
基礎疾患がある方や特定の薬を服用している方、顎の骨量が少ない方、歯周病の方、喫煙習慣のある方は、オールオン4治療を受けられない場合があります。
オールオン4治療では、インプラントを埋入する手術が必要であり、インプラントと骨の結合が成功の鍵です。
全身状態が悪い場合や感染症のリスクが高い場合は、基礎疾患の治療を優先する必要があります。
特に高血圧症や心臓疾患などの循環器系疾患、喘息などの呼吸器系疾患、糖尿病や骨粗鬆症などの疾患、腎臓や肝臓の機能障害がある場合には注意が必要です。
また、ビスホスホネート製剤や免疫抑制剤を服用している場合、服用期間や体調によってはオールオン4治療を受けられないことがあります。
顎の骨量が極端に少ない場合は、インプラントの埋入が難しく、インプラントが骨と結合しなかったり、噛み合わせが悪くなったりするなど失敗例も少なくありません。そのため、オールオン4に数本のインプラントを追加する方法の方が、よりよい選択肢と考えられています。
治療の可否が気になる場合は、歯科医院で検査を受けてみるとよいでしょう。
歯周病や喫煙習慣がある場合は、術後に感染症を起こしやすく、インプラントと骨が十分に結合しない可能性があります。
そのため、歯周病の治療や禁煙を事前に行い、万全の状態でオールオン4治療に臨むことが望ましいです。
歯科医院での定期的なメンテナンスが必要になる
オールオン4治療を受けた後は、歯科医院での定期的なメンテナンスが欠かせません。
オールオン4治療もインプラント治療の一種であり、治療後の良好な状態を維持するためにも、継続的なメンテナンスが重要です。
治療後に起こる可能性がある問題としては、人工歯の破損やインプラント周囲炎、インプラント周囲への細菌感染などがあります。
噛み合わせが悪いと、一部の人工歯に過剰な負荷がかかり破損したり、オールオン4の反対側の歯が欠ける恐れがあります。
さらに、インプラントは天然歯に比べて粘膜との結合が弱く、周囲への細菌感染のリスクがあるため、口腔衛生の管理が重要です。
そのため、歯科医院で定期的にメンテナンスを行い、日々の歯磨きの方法を確認してもらう必要があります。
また、インプラントが脱落してしまう場合もあるため、治療後に違和感がある場合は歯科医院を受診することをおすすめします。
オールオン4の治療に対応できる歯科医院が限られている
オールオン4治療に対応できる歯科医院は限られています。オールオン4治療には、高度な技術や知識、そして専用の設備が必要です。
インプラントと骨の結合が不十分だったり、埋入位置や角度が不適切な場合は、脱落や噛み合わせの不具合が生じることがあります。
オールオン4治療を施術できる歯科医院が限られる理由の一つです。
オールオン4治療に対応している歯科医院を探す際には、日本口腔インプラント学会 専門医が在籍しているかどうかを確認することも重要です。
また、歯科用CTや専用の手術室など、設備が整っているかどうかも確認しておきましょう。
歯が残っている場合は抜歯が必要？
オールオン4治療は、4本のインプラントで片顎すべての人工歯を支える治療法です。そのため抜歯が必要かどうか、不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
ここでは抜歯が必要なケースと不要なケースについて紹介します。
抜歯が必要なケース
オールオン4治療を受ける際には、抜歯が必要となるケースがあります。
歯が1本でも残っていると、人工歯と天然歯が干渉する可能性があるため、抜歯が必要となる場合があります。
また、オールオン4治療に限らずインプラント治療では抜歯が必要になるケースがあります。インプラントを長持ちさせるには、口腔衛生の管理が不可欠です。
特に、歯周病やむし歯が進行している場合、歯がぐらつく原因となるため、検査の結果によっては抜歯が必要です。
ただし、口腔内の状態によっては抜歯が不要な場合もあるため、不安な方は一度歯科医院で相談しましょう。
抜歯が必要ないケース
オールオン4治療を受ける際に、抜歯が不要なケースもあります。
治療対象の顎に健康な天然歯が残っていない無歯顎の方は、人工歯と干渉する歯がないため、抜歯を行う必要はありません。無歯顎の原因は、むし歯（う蝕）や歯周病などです。
むし歯では、歯の内部構造がむし歯菌によって破壊され、歯としての機能が十分保てない場合抜歯を行います。
また、歯周病が進行すると歯を支える歯周組織が破壊され、歯がぐらついた末に脱落することがあります。
オールオン4が不向きなケース
オールオン4治療は、すべての方に適しているも向いている治療法ではありません。現在の口腔内の状態に応じて適切な治療法を選択することが重要です。
ここでは、オールオン4治療が不向きとされるケースを紹介します。
残存歯が多い
残存歯が多い場合、オールオン4治療は適していません。オールオン4治療は、無歯顎の方や、抜歯によって無歯顎となった方を対象とした治療法です。
そのため、残存歯が1本でもあると人工歯と干渉して装着ができないため、抜歯する必要があります。
また80歳になっても20本以上自分の歯を保とうという8020運動のように、歯科治療ではできるだけ歯を残すことが基本です。
残存歯が健康で歯の機能としても十分であれば、抜歯をするのは非合理的かつ抜歯による身体への負担が大きくなるため、基本的にはオールオン4治療以外の治療が選択されます。
残存歯が多い場合は、部分インプラントやインプラントブリッジ、インプラントオーバーテンチャーなどの治療が検討されます。
歯周病にかかっている
歯周病にかかっている方のなかには、オールオン4治療が不向きな場合があります。
歯周病の場合、インプラント周囲炎や感染症、インプラントの脱落といったリスクが高まります。
また歯周病は、顎の骨量を低下させる原因の一つです。重度の歯周病でインプラントを埋入するのに十分な骨量を確保できない場合は、オールオン4治療の実施が困難になります。
しかし、オールオン4の治療前に歯周病の治療が完了している方や、治療後に十分なセルフケアができればオールオン4治療を受けることが可能です。
ただし、糖尿病や免疫抑制剤などで歯周病を発症している方は、歯周病だけでなく基礎疾患の治療も並行して行う必要があります。
糖尿病などの疾患がある
糖尿病や高血圧症などの疾患を持つ方のなかには、オールオン4治療が不向きなケースもあります。
糖尿病の方は免疫力が低下していることがあり、感染リスクが高まり、インプラントと骨の結合が不十分になる可能性があります。
また、歯周病を発症すると血糖コントロールが難しくなり、糖尿病の治療の妨げになることがわかっています。そのため、糖尿病の治療と並行して歯周病の治療も行うことが重要です。
それ以外にも、高血圧症や心臓疾患などで抗血栓薬を服用している循環器系疾患の方は、手術時に出血リスクが高まります。一方、抗血栓薬の服用を中止すると、基礎疾患が悪化するリスクもあります。
服用中の薬の種類や治療状況によっては手術が可能な場合もあるため、一度主治医に相談するとよいでしょう。
さらに、ビスホスホネート製剤や免疫抑制剤などを使用している場合は、オールオン4治療を受けられないことがあります。
ビスホスホネート製剤を使用していると、手術後の顎骨壊死のリスクが高まるためです。そのため、これらの薬を使用している場合は、オールオン4治療が適応外になることがあります。
喫煙習慣がある
喫煙者のなかには、オールオン4治療が適さないケースもあります。
喫煙習慣があると、治療後のインプラント残存率を下げる要因とされており、禁煙または減煙が強く推奨されています。
タバコに含まれるニコチンには血管を収縮させる効果があり、喫煙によって口腔内の血流量が低下し、インプラントと骨の結合が妨げられる可能性があるためです。
また、口腔内の血流量低下は免疫力にも影響を与え、歯周病やむし歯の発症リスクを高めます。
そのため、喫煙習慣のある方はまず禁煙または減煙に取り組んだうえで、オールオン4治療を検討することが推奨されます。
禁煙を目指す際は、市販の補助薬や禁煙外来を備えた医療機関の受診を検討するのも一つの方法です。
オールオン4治療ができない場合の選択肢
オールオン4治療ができない場合の選択肢には、インプラントオーバーデンチャーや総義歯、ザイゴマインプラントがあります。
インプラントオーバーデンチャーは、2～4本のインプラントを埋入し、それを支えに入れ歯を装着する治療法です。
通常の入れ歯と比べ、インプラントによる支えがあるため、噛み合わせや嚙み心地が天然歯に近くなります。また、取り外しが可能で普段のお手入れがしやすい点もメリットです。
総義歯は、片顎すべての歯を失った方のための入れ歯で、インプラントを埋入する手術が不要です。そのため、治療費を抑えられます。
ザイゴマインプラントは顎の骨量が不足していて、オールオン4治療が受けられない方に対し、頬骨を利用して行うインプラント治療です。
通常よりも長いインプラントを使用することで、骨移植や骨造成を行わずに手術が可能です。ただし、手術の難易度が高いため、熟練した口腔外科医による対応が望まれます。
まとめ
オールオン4治療は、4本のインプラントで片顎すべての人工歯を支える治療法です。
通常のインプラントに比べて身体への負担が少なく、顎の骨量が少ない方でも手術を受けられる可能性が高いのが特徴です。
ただし、歯周病や糖尿病のある方や喫煙習慣がある方は、手術を受けられない場合もあります。
また残存歯が多い方もオールオン4治療に適さない可能性があるため、まずは歯科医院で相談してみることをおすすめします。
参考文献
電話コンシェルジュで地域の名医を紹介します。