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インプラント治療の数年後に痛みが生じる理由とは?治療法や予防法を解説!

インプラント治療の数年後に痛みが生じる理由とは?治療法や予防法を解説!

インプラント治療後、数年経過して痛みを感じる場合があります。痛みの原因は、インプラント周囲炎やむし歯、噛み合わせの問題などが考えられます。
本記事ではインプラントの寿命と再手術について以下の点を中心にご紹介します。

  • インプラント治療の数年後に痛みが生じる理由
  • インプラント周囲炎の治療法
  • インプラント治療後の痛みを予防するには

インプラント治療の数年後に痛みが生じる理由について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

そもそもインプラント治療とは?

そもそもインプラント治療とは?

インプラント治療とはどのような治療法なのでしょうか。インプラントの寿命や治療に伴う痛みについても併せて確認していきましょう。

治療法

インプラント治療は、失った歯の機能や見た目を回復するために行われる先進的な歯科治療です。チタン製の人工歯根(インプラント体)を顎の骨に埋め込み、その上に人工の歯を装着する治療法で、自然な歯と同じような噛む力と美しさを取り戻せます。

手術の方法には1回法と2回法があります。
1回法は一度の手術でアバットメントまで装着する方法、2回法はインプラントと骨の結合を待ってから二度目の手術を行う方法で、骨の状態により選択されます。

寿命

インプラント治療の寿命は、10年以上とされています。インプラント体(人工歯根)が顎の骨としっかり結合することで長期間機能しますが、日々のケアが重要です。適切なメンテナンスを行うことで、インプラントは10年以上、場合によっては15年を超えて使い続けることができます。

インプラントの寿命には5年または10年の保証がついていることが多いですが、喫煙や歯ぎしりなどのリスク要因があると、寿命が短くなることもあります。逆に、良好な口腔環境を保つことで、インプラントを長く機能させることができるため、定期的なチェックとケアが不可欠です。

また、歯科医師の指導の下、正しい歯磨きやフロスの使用を心がけることが、インプラントの長寿命化にとって大変重要です。

治療中や治療直後の痛み

インプラント治療は、治療中や治療直後に痛みを感じる場合がありますが、対応方法はあります。

治療中は麻酔を使用するため、痛みを抑えられることが多いとされていますが、麻酔の効き目には個人差があり、痛みを感じることもあります。その場合は、事前に歯科医師と相談し、麻酔を強めにしてもらうことができます。

治療直後は、顎に穴を開けるため痛みを伴うことがありますが、鎮痛剤で軽減できます。痛みは2〜3日で収まり、1週間以内に改善するケースが多く、それ以上続く場合は担当の歯科医師に相談してください。

また、インプラントを埋め込む顎の骨自体には痛覚がないため、大きな問題ではありませんが、歯肉や血管への負担により痛みが生じることがあります。痛みは治療の過程としてよくあることであり、痛み止めで緩和できる程度のものです。

インプラント治療の数年後に痛みが生じる理由

インプラント治療の数年後に痛みが生じる理由

インプラント治療の数年後に痛みが生じる場合、その理由にはどのようなことが考えられるのでしょうか。詳しく確認していきましょう。

噛み合わせの変化

インプラント治療を受けてから数年後に痛みが生じる理由の一つとして、噛み合わせの変化があります。

インプラントは天然歯と異なり、歯根と顎の骨の間に歯根膜がないのです。噛み合わせが悪化するとインプラントへの負荷が増え、周囲の骨に過度な力がかかります。そのため、痛みが発生したり、インプラントが破損したり、ぐらつきや脱落を引き起こします。

特に歯ぎしりや食いしばりなどの噛み癖がある場合、インプラントに強い力がかかりやすく、痛みや破損のリスクが高まります。また、インプラントを入れた部分と反対側の歯とのバランスが崩れることもあり、これが噛み合わせの変化を引き起こす要因となります。

長期的に快適な使用を続けるためには、定期的な歯科検診と適切な噛み合わせの調整が重要です。

インプラント周囲炎

インプラント治療後に数年経過して痛みが生じる原因の一つに、インプラント周囲炎も挙げられます。インプラント周囲炎はインプラントの周囲に炎症が起き、歯周病と似た症状を引き起こす病気です。

主な原因は、適切なケアが行われていないことによりプラークが蓄積し、歯周病菌が増殖することです。初期段階では赤みや軽い腫れが見られますが、炎症が進行するにつれて痛みが発生し、最終的には歯茎や顎の骨が破壊されることがあります。最悪の場合、インプラント体が支えきれなくなり、ぐらつきや脱落を引き起こすこともあります。

インプラント周囲炎は初期段階では自覚症状が少なく、進行スピードが速いため、痛みが現れた時にはすでに進行していることが多いとされています。定期的なメンテナンスと日々の歯磨きが重要です。

周囲の歯のトラブル

次に、インプラント治療後に痛みが生じる原因として、周囲の歯にトラブルが発生することも挙げられます。

インプラント自体はむし歯になりませんが、隣接する歯にむし歯や歯周病が生じると、痛みが引き起こされることがあります。特に、インプラント周囲の歯にプラークが蓄積すると、むし歯リスクが高まります。そのため、インプラント周辺の歯や歯周組織のケアが不十分だと、インプラント周囲炎という病気を引き起こします。

インプラント周囲炎は、歯茎の腫れや出血、膿の発生などの症状を伴い、進行するとインプラントを支える骨が破壊され、最終的にはインプラントがぐらつく原因となります。

周囲の歯のトラブルを防ぐためには、日々の歯磨きや定期的なメンテナンスが欠かせません。

アバットメントのネジの不具合

次に、アバットメントのネジの緩みが挙げられます。

アバットメントは、インプラント体と上部構造をネジで接続する役割を果たしており、強固に固定されています。しかし、咬合面への過剰な力や、設計上の問題、ネジの角度不良、さらにはカンチレバー構造の影響などが重なると、徐々に緩みが生じることがあります。

また、ネジの緩みが続くと、インプラント自体の破損や噛み合わせの変化にもつながる可能性があるため、定期的なチェックが重要です。
アバットメントのネジの状態を確認することで、長期間にわたり快適にインプラントを使用できます。

インプラントと骨の間のひび割れ

インプラント体と顎骨の境目に発生する微細なひび割れも挙げられます。ひび割れは、強い食いしばりや無意識の歯ぎしりなど、過度な力が加わることで生じることが多いとされています。

インプラント体と骨の間にひびが入ると、痛みやインプラントのぐらつき、最悪の場合には脱落の原因となります。破損は目に見えない部分で起こることもあり、表面上は問題がなくても内部でひび割れが進行している場合があります。

もし顎に違和感を感じた場合は、速やかに歯科医師に相談し、レントゲン検査などで状態を確認することが大切です。
早期に問題を発見し、適切な対処を行うことで、インプラントの長期的な安定を保てます。

インプラント周囲炎の治療法

インプラント周囲炎の治療法

インプラント周囲炎の治療法には、軽度から重度までさまざまなアプローチがあります。

軽度の場合、歯科医院でのクリーニングにより歯垢や歯石を除去し、正しいブラッシング指導を行うことで改善できます。しかし、痛みがある場合は、ある程度進行していることが多く、抗生物質の投与や患部の洗浄が必要です。

重度のインプラント周囲炎では、歯茎を切開して歯石を取り除いたり、炎症部位を切除したりする外科的治療が求められることもあります。

治療は非外科的治療と外科的治療に分かれ、非外科的治療では歯石除去や歯周ポケットの洗浄を行い、生活習慣の改善を指導します。外科的治療では、歯茎を切開し、骨再生が必要な場合には骨移植を行うこともあります。
いずれの場合も、治療後のセルフケアが重要です。

インプラント治療後の痛みを予防するには

インプラント治療後の痛みを予防するには

インプラント治療後の痛みの予防法にはどのようなことが挙げられるのでしょうか。以下でご紹介します。

念入りなセルフケア

インプラント治療後の痛みを予防するためには、日々のセルフケアが大変重要です。

インプラント周囲炎は歯磨きで最後まで除去できなかったプラークの蓄積が原因で発症することがあるため、正しい方法で歯磨きを行い、インプラント周囲炎のリスクを減らすことが大切です。歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシを使うことで、歯と歯茎の間に溜まった汚れを除去できます。

歯磨きは1日2回以上、食後すぐに行い、歯ブラシは45度の角度で小刻みに動かして、力を入れずに汚れを落とすように心がけましょう。インプラント周辺や歯と歯の間は汚れが溜まりやすいので、デンタルフロスや歯間ブラシを活用して、より丁寧なケアをすることが推奨されます。

念入りなセルフケアの習慣を徹底することで、口腔内の細菌が増殖しにくくなり、痛みや炎症の予防につながります。

歯科医院での定期検診

インプラント治療後の痛みを予防するためには、歯科医院での定期検診が重要です。

インプラント周囲で発生する問題のなかには、初期段階では自覚症状がないものも多いといわれ、知らないうちに症状が進行してしまいます。定期的に歯科医院で検診を受けることで、こうした問題を早期に発見し、対処できます。

また、歯科医院でのクリーニングを受けることで、歯ブラシでは落としきれない歯石や着色汚れを取り除くことができ、インプラント周囲炎やむし歯のリスクを減少させます。診察やレントゲン撮影を通じて、インプラントの状態や噛み合わせの乱れなどもチェックできます。

定期メンテナンスを受けることで、万が一のトラブル時に無料または低価格で再治療を受けられる保証制度も提供しているクリニックも多いようです。

定期的な検診は痛みの予防だけでなく、将来的な費用負担を軽減するためにも重要です。

生活習慣の改善

インプラント治療後の痛みを予防するためには、生活習慣の改善がとても重要です。特に禁煙はインプラントの成功に大きな影響を与えるため、治療後は必ず禁煙を徹底しましょう。 喫煙によって血流が悪化し、治癒が遅れるだけでなく、免疫力が低下しインプラント周囲炎のリスクが高まります。

また、タバコに含まれるニコチンは、インプラント体と顎の骨の結合を妨げ、インプラントの安定性を損なう原因となります。インプラントを長持ちさせるためには、禁煙を心がけることが大切です。

また、糖尿病を患っている方は血糖値のコントロールを行うことも重要です。高血糖状態が続くと、インプラント周囲の治癒が遅れ、感染のリスクも高くなります。

健康的な生活習慣を心がけることで、インプラント治療の成功につながり、長期的な健康を維持できます。

インプラント治療の数年後に痛みが出た場合は歯科医院へ

インプラント治療の数年後に痛みが出た場合は歯科医院へ

インプラント治療から数年後に痛みや不快感を感じた場合、何らかの問題が発生している可能性が高いため、早めに歯科医院で診てもらうことが重要です。痛みを放置すると、症状が悪化し、最悪の場合、インプラントが使えなくなることもあります。

インプラント周囲炎やむし歯、噛み合わせの変化など、痛みの原因はさまざまですが、早期に対処すれば問題の進行を防げます。特にインプラント周囲炎は、早期発見と早期治療が不可欠です。痛みを感じた際は、すぐにインプラントを入れた歯科医院に相談し、治療を受けましょう。

定期的なメンテナンスと日々のケアを徹底することで、インプラントの長期的な使用が可能とされています。

まとめ

まとめ

ここまでインプラント治療の数年後に痛みが生じる理由についてお伝えしてきました。
インプラント治療の数年後に痛みが生じる理由の要点をまとめると以下のとおりです。

  • インプラント治療後、数年経過して痛みが生じる原因には、噛み合わせの変化やインプラント周囲炎、周囲の歯のトラブル、アバットメントのネジの不具合、インプラントと骨の間のひび割れなどが考えられる。早期の発見と対応が重要
  • インプラント周囲炎の治療法には、軽度の場合はクリーニングと歯磨き方法の指導、進行した場合は抗生物質投与や外科的治療が必要。治療後のセルフケアも重要である
  • インプラント治療後の痛みを予防するためには、日々のセルフケア、定期的な歯科医院での検診、そして生活習慣の改善が重要。特に禁煙や血糖値の管理を心がける必要がある

インプラント治療後の痛みは早期に対処することで予防できます。定期的な検診やセルフケアを徹底し、長期間快適にインプラントを使用できるよう心がけましょう。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

出身大学:福岡歯科大学 / 経歴:1989年福岡歯科大学 卒業 1991年松浦明歯科医院 開院 2020年医療法人松栄会まつうら歯科 理事長就任 / 資格:厚生労働省認定研修指導医 日本口腔インプラント学会認定医 ICOI (国際インプラント学会)Fellowship認定医 / 所属学会:ICOI(国際口腔インプラント学会) 日本口腔インプラント学会 日本臨床歯科学会(SJCD) 福岡支部 理事 日本顎咬合学会 会員 日本臨床歯科CAD/CAM学会(JSCAD)会員

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