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ザイゴマインプラントのデメリットとは?メリットやリスクも併せて解説します

ザイゴマインプラントのデメリットとは?メリットやリスクも併せて解説します

「骨が足りないからインプラントは難しい」といわれた方にとって、ザイゴマインプラントは新たな選択肢となりうる治療法です。上顎の骨が大きく失われたケースでも、頬骨にインプラントを固定することで、従来は不可能だった症例に対応できます。
しかし、精密な技術が求められる分、リスクやデメリットも無視できません。

本記事ではザイゴマインプラントのデメリットについて以下の点を中心にご紹介します。

  • ザイゴマインプラントのメリット
  • ザイゴマインプラントのデメリット
  • ザイゴマインプラントを検討する際のポイント

ザイゴマインプラントのデメリットについて理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

ザイゴマインプラントとは

ザイゴマインプラントとは

ザイゴマインプラントとは、上顎の骨量が著しく不足している方に推奨されているインプラント治療法です。
従来のインプラントは歯槽骨に埋め込みますが、ザイゴマインプラントでは、より硬くて吸収されにくい頬骨(ザイゴマ)を利用します。

なかでも、オールオン4が適用できないケースやサイナスリフトが必要とされる症例でも、手術当日に固定式の歯を装着できる可能性が高まります。
従来では困難だった上顎無歯顎の治療に、新たな選択肢を提供する先進的な方法です。

ザイゴマインプラントの治療の流れ

ザイゴマインプラントの治療の流れ

ザイゴマインプラント治療は、以下の流れで進められます。

① カウンセリング
治療は、事前の予約後に行われるカウンセリングから始まります。患者さんの悩みや要望を丁寧に聞き取り、不安や疑問を一つずつ解消しながら、治療内容や流れをわかりやすく説明します。

② 精密検査・診断
歯科用CTやレントゲン、口腔内外の写真撮影、歯型の採取などを行い、頬骨の状態や噛み合わせを詳細に確認します。仮歯製作のためのデータもこの段階で取得されます。

③ 治療計画の立案と説明
検査で得られた情報をもとに、患者さんごとの状態に応じた治療計画が立案されます。治療の内容や通院回数、費用の目安なども明確に示され、納得のうえで次のステップに進む体制が整えられています。

④ 手術前の口腔管理
インプラントの長期的な安定のために、むし歯や歯周病がある場合は先に治療を行い、清潔な口腔環境を整えます。必要に応じて、歯周病治療なども組み込まれます。

⑤ インプラント埋入手術
頬骨に長さのあるザイゴマを埋め込むと、大体のケースでその日のうちに仮歯が装着されます。自然な見た目と基本的な咀嚼機能が早期に回復する点が特徴です。

⑥ 仮歯の調整
装着された仮歯は実生活のなかで使用しながら調整が重ねられます。嚙み合わせや形状を細かく確認し、最終的な上部構造の完成度を高めていきます。

⑦ 上部構造の装着
仮歯の調整データをもとに製作された最終的な上部構造を装着します。見た目の自然さと機能性を兼ね備えた歯が仕上がります。

⑧ 定期メンテナンス
治療後も3〜6ヶ月ごとの定期検診が推奨され、インプラント周囲の健康管理や嚙み合わせのチェックが行われます。日常のセルフケアも天然歯と同じく重要とされます。

ザイゴマインプラントのメリット

ザイゴマインプラントのメリット

ザイゴマインプラントには、どのようなメリットがあるのでしょうか。以下で詳しく解説します。

手術当日に固定された歯が入る

ザイゴマインプラントのメリットの1つ目に、手術当日に固定式の歯が装着できる点が挙げられます。

頬骨に長いインプラントを安定的に埋め込むため、すぐに食べ物を噛めます。従来のインプラントでは、骨との結合を待つため数ヶ月かかることが主流ですが、ザイゴマインプラントでは歯がない期間を作らずに日常生活へ復帰できます。

顎の骨量が少なくても行える

ザイゴマインプラントのメリットの2つ目に、顎の骨が少ない方でも骨移植を行わずに治療ができる点が挙げられます。

ザイゴマインプラントでは硬く吸収されにくい頬骨に直接インプラントを埋め込むため、治療期間の短縮にもつながるのです。精神的ストレスが少なく、よりスムーズな治療が期待できます。

身体的負担が抑えられる

ザイゴマインプラントのメリットの3つ目に、身体的負担が抑えられる点が挙げられます。

従来のインプラントや骨移植では、複数回の手術や長期間の回復期間が必要で、感染や合併症のリスクも伴います。

一方、ザイゴマインプラントは原則1回の手術で完了し、頬骨への埋入により安定性も高いため、術後のトラブルが少ないとされているのです。

ザイゴマインプラントのデメリット

ザイゴマインプラントのデメリット

ザイゴマインプラントの3つのメリットについて解説しましたが、以下では3つのデメリットについて解説します。

手術時間が長い

ザイゴマインプラントのデメリットの1つ目に、手術時間が長い点が挙げられるでしょう。

ザイゴマインプラントは頬骨にインプラントを埋め込む精密な治療であるため、従来のインプラント手術施術よりも時間が長くなる傾向があります。

また、頬骨はとても硬く、精密な操作が求められるため、施術には麻酔歯科医師が常駐しているような設備の整った専門的な医院で行います。
手術時間の長さは身体への負担にも影響するため、患者さんの全身状態に対する配慮も欠かせません。

治療費が高額になりがち

ザイゴマインプラントのデメリットの2つ目に、治療費が高額になりがちな点が挙げられます。

ザイゴマインプラントは、精密な技術を要する専門性の高い治療であるため、従来のインプラントよりも費用が高くなる傾向があるのです。

さらに、保険適用外の自由診療であることから、経済的な負担が大きくなります。そのため、治療を受ける際には、事前に費用の内訳や支払い方法についてしっかり確認することが大切です。

対応できる歯科医院が限られている

ザイゴマインプラントのデメリットの3つ目に、対応できる歯科医院が限られている点が挙げられます。

ザイゴマインプラント治療は、とても精密な知識と技術、そして整った設備が求められるため、どの歯科医院でも実施できるわけではありません。

そのため、せっかく治療に前向きでも、近隣に対応医院がないと受けることが難しいケースもあります。また、治療経験や専門性を見極めることも重要であり、医院選びには慎重さが求められます。

ザイゴマインプラントのリスク

ザイゴマインプラントのリスク

ザイゴマインプラントには、さまざまなリスクがあるため、治療前に理解しておくことが大切です。以下では、4つのリスクについて解説します。

上顎洞炎を発症するリスク

ザイゴマインプラントは、上顎の骨が極端に薄い方でも受けられる治療方法ですが、頬骨にインプラントを埋め込む際、上顎洞に近い位置を通過するため、上顎洞炎(副鼻腔炎)のリスクが伴います。

上顎洞は粘膜に覆われた空洞で、誤って粘膜を損傷したり、感染が広がったりすると、炎症が発生しやすくなるのです。症状としては、鼻づまりや膿の排出、歯の痛み、頬部の腫れ、発熱、頭痛などが挙げられます。

さらに悪化すると、中耳炎や気管支炎、まれに脳や視神経へと広がる重篤な合併症を引き起こすこともあるのです。

そのため、手術前には歯科用CTなどで解剖構造を正確に把握し、細心の注意を払った埋入計画が不可欠です。

顔面瘻孔ができるリスク

ザイゴマインプラントは、頬骨に直接インプラントを埋め込む特殊な治療法であるため、頬部の軟部組織に近接して手術が行われます。

このため、術後に感染や組織の治癒不良が起きた場合、顔面瘻孔(ろうこう)という異常な開口部が頬に生じる可能性があります。瘻孔ができると、膿や体液が漏れ出し、見た目の問題だけでなく、感染の慢性化や再手術の必要性といった深刻な事態につながることもあるのです。

なかでも、術後のケア不足や、インプラント先端への物理的刺激が原因になることがあります。瘻孔の予防には、手術時に軟部組織への圧迫を避け、術後も感染を防ぐための衛生管理と経過観察が欠かせません。

インプラント周囲炎のリスク

ザイゴマインプラントもほかのインプラント治療と同じく、インプラント周囲炎のリスクもあります。インプラント周囲炎は、インプラント周囲の歯茎や骨に炎症が生じる状態で、進行すると骨が吸収され、インプラントの動揺や脱落につながる恐れがあります。

主な原因は、口腔内の細菌感染によるもので、特に喫煙習慣や糖尿病のある方は発症リスクが高まるのです。症状としては、歯茎の腫れや出血、違和感などが挙げられます。こうした兆候が見られた場合は、早期の診察と処置が欠かせません。

予防には、手術前後の衛生管理がとても重要です。手術前のクリーニングや抗菌薬の使用、術後の服薬とセルフケア、そして禁煙の徹底が、インプラントの長期維持に直結します。

眼の損傷のリスク

ザイゴマインプラントは、頬骨に沿って長いインプラントを埋め込む治療法であり、その位置関係から眼の周囲に近接した解剖領域で手術が行われます。大体は、眼球との距離は確保されていますが、骨の構造が特殊なケースや頬骨の厚みが不十分な場合、埋入位置や角度の調整が必要となり、その際に血管や神経を損傷するリスクが生じるのです。

もし誤って眼の周囲に損傷が及べば、視力障害や眼窩の腫れ、違和感といった症状が現れることがあります。このようなリスクを抑えるには、術前にCTや3Dシミュレーションを活用して骨格の状態を正確に把握することが不可欠です。

また、経験豊富な歯科医師による丁寧な計画と操作が、眼の損傷を防ぐ大きなポイントとなります。

ザイゴマインプラントを検討する際のポイント

ザイゴマインプラントを検討する際のポイント

ここまでザイゴマインプラントについて解説しました。 最後に、以下ではザイゴマインプラントを検討する際に押さえておきたいポイントをご紹介します。

設備の整った歯科医院を選ぶ

ザイゴマインプラントは、従来のインプラント治療よりも手術の難易度が高く、より精密な設備や精密な診断機器が求められる治療です。そのため、治療を検討する際は、歯科医院の設備が整っているかを重視することが重要です。

例えば、CTスキャンや3Dシミュレーションシステム、マイクロスコープの導入状況、手術専用ルームの有無、衛生管理体制などをチェックするとよいでしょう。また、医師の経験や症例経験、チーム体制なども成功率を左右します。

歯科医院のホームページや医療情報サイト、実際のカウンセリングを通じて十分に確認し、任せられる医療機関を選ぶことが、納得のいく治療結果につながります。

メンテナンスを欠かさない

ザイゴマインプラントを長く安定して使い続けるためには、治療後の丁寧なメンテナンスが不可欠です。メンテナンスは従来のインプラント治療にも共通する重要なポイントであり、日々のセルフケアに加えて、定期的なプロフェッショナルケアを受けることが推奨されます。

例えば、術後しばらくは硬いものを避け、傷の回復を妨げないように注意する必要があります。また、日常的に正しい歯磨きやデンタルフロスの使用など、歯科衛生士からの指導に基づいたケアを心がけましょう。

定期健診では、歯茎の状態やインプラントの固定状態をチェックし、必要に応じてクリーニングが行われます。
メンテナンスを継続することで、インプラント周囲炎などのトラブルを未然に防ぎ、長期的な機能と見た目を維持しやすくなります。

デメリットやリスクを理解する

ザイゴマインプラントは、上顎に十分な骨がない方にとって有効な治療法として採用されていますが、その一方でほかのインプラントよりも手術部位が複雑な分、さまざまなリスクが伴います。

先述しましたが、眼や副鼻腔、神経への損傷、顔面瘻孔形成、術後にはインプラント周囲炎や骨吸収といった合併症が起こる可能性も否定できません。そのため、治療前にはこうしたリスクを十分に理解し、納得したうえで手術を受けることが重要です。

まとめ

まとめ

ここまでザイゴマインプラントのデメリットについてお伝えしてきました。
ザイゴマインプラントの特徴について、要点をまとめると以下のとおりです。

  • ザイゴマインプラントには、手術当日に固定された歯が入る、顎の骨量が少なくても行える、身体的負担が抑えられるなどのメリットがある
  • ザイゴマインプラントにはさまざまなメリットがあるが、手術時間が長い、治療費が高額になりがち、対応できる歯科医院が限られているなどのデメリットもある
  • ザイゴマインプラントを検討する際には、設備の整った歯科医院を選択する、メンテナンスを欠かさない、デメリットやリスクを理解することが大切

ザイゴマインプラントは、上顎の骨が少ない方に希望となる治療法です。ただし、精密な技術を要する分、リスクやデメリットも伴います。設備の整った歯科医院の選定や術後の丁寧なメンテナンス、正しい理解と準備が成功の鍵となります。

本記事が少しでもザイゴマインプラントのデメリットについて知りたい方のお役に立てれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
岸 民祐歯科医師(医療法人 Teethプラザ歯科 院長)

岸 民祐歯科医師(医療法人 Teethプラザ歯科 院長)

1981年日本歯科大学新潟歯学部卒業 / 1981年~1983年横浜 有楽歯科勤務 / 1983年広島市西区にて岸歯科医院開業 / 1998年中区へ移転、(医)ティース プラザ歯科開業,現在に至る / 所属協会・資格: / (公社)日本口腔インプラント学会 理事・指導医・認定医 / (公社)日本歯科先端技術研究所 指導医・認定医 / ピエールフォシャールアカデミー国際歯学会 会員 / 昭和歯科大学歯学部 外部講師 / その他:瀋陽医学院(中国) 客員教授 / ティースアート広島店

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