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インプラントの将来に潜むデメリットとは?原因や対処法を解説します

インプラントの将来に潜むデメリットとは?原因や対処法を解説します

インプラント治療は“第二の永久歯”とも呼ばれる治療法ですが、実は将来的なデメリットが潜んでいることをご存知でしょうか。
本記事では、インプラントに潜むデメリットについて以下の点を中心にご紹介します。

  • インプラントの基本情報と寿命の目安
  • 寿命を縮める生活習慣やリスク要因
  • 将来起こりうるトラブルへの対処法

インプラントの将来的なデメリットについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。

インプラント治療について

インプラント治療について

インプラントとはどのような治療ですか?
インプラント治療は、むし歯や歯周病、事故などで歯を失った際に、その部分の顎骨に人工の歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工の歯を装着して噛む力や見た目を回復する治療法です。インプラント体にはチタンが用いられ、生体親和性のよい金属として骨としっかり結合する特徴があります。
ブリッジのように隣の健康な歯を削る必要がなく、入れ歯のような不安定さも少ないため、自然な噛み心地が得られやすいという特徴があります。
食事や会話のしやすさ、見た目の美しさを重視する方におすすめの治療ですが、手術を伴うため、全身の健康状態が整っていることが前提となります。
また、インプラントを長く使い続けるためには、日々のセルフケアと歯科医院での定期メンテナンスが欠かせません。将来的なトラブルを防ぐためにも、治療内容を理解したうえでの選択が大切です。さらに、治療後は噛み合わせや咀嚼の力のバランスも調整しながら経過を見ていく必要があります。これらの点を総合的に考慮することで、満足度の高い治療結果につながるでしょう。
インプラントの寿命はどのくらいですか?
インプラントの寿命は、個人差はありますが、10年以上もつことが多いとされており、適切なケアを続けることで20年以上機能する場合もあります。インプラント本体はチタン製で腐食に強く、素材そのものは長期使用に耐えうるものですが、周囲の歯茎や骨の状態に左右されやすいのが実情です。
特に注意が必要なのが“インプラント周囲炎”と呼ばれる病態で、プラークの蓄積や不適切なセルフケア、定期検診の不備によって炎症が進行し、インプラントが脱落する原因にもなることがあります。
また、歯ぎしりや噛みしめ癖、合わない噛み合わせも寿命を縮める要因です。上部構造の摩耗や破損も含め、すべてを長持ちさせるには、生活習慣の見直しとしっかりとした管理が重要です。
治療後は噛み合わせの調整や、ナイトガードの活用も視野に入れるとよいでしょう。さらに、口腔内の清潔を保つことでインプラントの寿命を維持しやすくなります。インプラントは“入れたら終わり”ではなく、継続的なケアが鍵です。

インプラントの将来的なデメリットにつながる習慣

インプラントの将来的なデメリットにつながる習慣

喫煙しているとインプラントに悪影響を及ぼしますか?
喫煙はインプラント治療において、大きなリスク要因になることがあります。
タバコに含まれるニコチンには血管収縮作用があり、インプラント体が骨と結合する”オッセオインテグレーション”の過程に悪影響を及ぼす可能性があります。
血流の低下により酸素や栄養が骨に行き渡りにくくなると、骨の再生が遅れ、インプラントの安定性が低下します。
さらに、喫煙者は非喫煙者に比べてインプラント周囲炎のリスクが高いとされ、長期的な維持にも支障をきたすことがあります。術後も傷の治りが悪く、炎症が慢性化する傾向があり、治療の経過に影響するケースも少なくありません。そのため、多くの歯科医院はインプラント治療の前後に禁煙指導を行い、継続的な禁煙を強くすすめています。喫煙の影響は術後経過だけでなく、数年単位での予後にも及ぶため、安定性を確保するうえで極めて重要な習慣改善項目のひとつです。
歯ぎしりや噛み癖はインプラントの寿命を縮めますか?
歯ぎしりや食いしばりなどの噛み癖は、インプラントの寿命を縮める要因となることがあります。
天然歯には歯根膜というクッションの役割を果たす組織がありますが、インプラントには歯根膜が存在しないため、強い噛む力がダイレクトに伝わりやすい構造です。その結果、上部構造が割れたり、インプラント体に微小な動揺や骨吸収が生じたりするリスクが高まります。なかでも就寝中の歯ぎしりは自覚がないまま長期間継続してしまい、ダメージが蓄積しやすくなります。対策としては、ナイトガード(マウスピース)の装着が有効とされており、力の分散や破損の防止に役立ちます。インプラント治療を計画する際には、噛み合わせや筋肉の緊張状態を正しく評価し、必要に応じて噛み合わせの調整や生活習慣の改善を図ることが重要です。
こうした対応を怠ると、せっかくの治療効果が短期間で失われてしまう可能性もあります。
食生活で気を付けるべきことは何ですか?
治療後は、食生活のあり方がインプラントの寿命に大きく影響するとされています。例えば、硬いせんべいやスルメなどを頻繁に噛むと、インプラントや上部構造に過剰な負荷がかかり、破損や緩みの原因になります。また、粘着性のあるキャラメルやガムなどは、上部構造の脱離を招く可能性があり注意が必要です。さらに、甘い物を好む習慣があると、プラークの蓄積を助長し、インプラント周囲炎のリスクが高まります。一方で、やわらかいものばかりに偏った食事も、咀嚼力の低下や歯茎の退縮を招く恐れがあるため、噛みごたえのある食材も適度に取り入れることが望ましいです。栄養バランスのよい食生活を心がけ、カルシウムやビタミンDなど骨の健康に関与する栄養素を意識して摂取することが、インプラントの長期安定につながるとされています。食後の歯みがきも重要で、生活全体で意識を向ける必要があります。
持病があるとインプラントの将来にどのようなデメリットがありますか?
糖尿病や高血圧、骨粗鬆症などの持病がある場合、インプラント治療には慎重な対応が求められます。例えば糖尿病は、高血糖状態が続くことで免疫機能が低下し、術後の感染リスクや傷の治癒遅延が問題となります。
骨粗鬆症の方は骨の密度が低下しているため、インプラントが骨としっかり結合しにくくなる場合があります。また、抗血栓薬やステロイドなどの薬剤を服用している場合、出血リスクや骨代謝への影響にも注意が必要です。しかし、これらの疾患を持っているからといって、必ずしもインプラントができないわけではありません。主治医や内科と連携しながら、全身状態を適切にコントロールすることで、治療を行うことが可能とされています。医科歯科連携に加え、定期的な血液検査や内服管理、術前後のサポート体制の強化なども長期安定に欠かせない要素です。

将来に起こりうるインプラントのデメリットと対処法

将来に起こりうるインプラントのデメリットと対処法

日々のメンテナンスはどのように行えばよいですか?
インプラントを長く快適に使い続けるには、日々の丁寧なメンテナンスが重要です。天然歯と同様に、インプラントの周囲にも歯垢(プラーク)は付着します。歯垢(プラーク)を放置すると、インプラント周囲炎という炎症性疾患を引き起こし、最悪の場合インプラントが脱落するリスクもあります。毎日のセルフケアでは、やわらかめの歯ブラシを使い、インプラントと歯茎の境目を優しく磨くことが大切です。
また、歯間ブラシやデンタルフロスを併用して、細部まで清掃する習慣を身につけると、より効果的な汚れの除去が期待できます。
加えて、研磨剤の強い歯磨き粉はインプラントに傷をつける恐れがあるため、低研磨タイプの歯磨剤を使用するのが望ましいです。洗口液を活用するのも一つの方法です。
定期メンテナンスはどのくらいの頻度で行えばよいですか?
インプラントを快適な状態で維持するためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。 3ヶ月に1回程度の通院が推奨されていますが、口腔内の状態やインプラントの本数、セルフケアの精度などによって間隔が調整されます。定期メンテナンスは、インプラントやその周囲の歯茎の状態をチェックし、歯垢や歯石の除去、噛み合わせの確認、インプラント周囲炎の早期発見などが行われます。自覚症状がないまま進行するトラブルも少なくないため、痛みや違和感がなくても定期的に診てもらうことが大切です。
なかでも喫煙習慣がある方や、糖尿病などのリスク因子を持つ方は、より短い間隔での受診がすすめられる場合もあります。日頃のセルフケアとあわせて、専門的な視点から定期的に状態を確認することで、将来のトラブルを未然に防ぐことが可能とされています。
通院の頻度については、かかりつけ医と相談しながら見直していくことが重要です。
老後におけるインプラントのデメリットと注意点を教えてください
老後は、インプラントの管理が難しくなる場合があります。加齢に伴い手先の器用さや視力が低下し、毎日のセルフケアが不十分になりやすくなります。その結果、インプラント周囲炎のリスクが高まり、長年使っていたインプラントが脱落するケースもあります。また、介護が必要な状態になると、口腔内を清潔に保つことが本人だけでは困難になり、介護者による口腔ケアの重要性が増します。
さらに、噛む力の低下や義歯との併用が必要になることもあり、インプラントの安定性や快適さが変化することも想定されます。将来を見据えて、インプラントのメンテナンス方法やトラブル時の対応を事前に相談しておくことが安心につながります。高齢期を迎える前に定期検診の計画や代替手段も考慮しておくと、より安心して日常生活を送ることができるでしょう。

編集部まとめ

編集部まとめ

ここまで、インプラントの将来的なデメリットについてお伝えしてきました。記事の要点をまとめると以下のとおりです。

  • インプラントは、天然歯のような見た目と噛み心地を再現できる一方で、適切なケアを怠ると寿命が短くなることがある
  • 喫煙や歯ぎしり、偏った食生活、持病などは、将来的なトラブルを引き起こす要因となりうる
  • 日々のメンテナンスと定期的な受診を継続することが、インプラントを長く健康に保つための鍵である

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

出身大学:福岡歯科大学 / 経歴:1989年福岡歯科大学 卒業 1991年松浦明歯科医院 開院 2020年医療法人松栄会まつうら歯科 理事長就任 / 資格:厚生労働省認定研修指導医 日本口腔インプラント学会認定医 ICOI (国際インプラント学会)Fellowship認定医 / 所属学会:ICOI(国際口腔インプラント学会) 日本口腔インプラント学会 日本臨床歯科学会(SJCD) 福岡支部 理事 日本顎咬合学会 会員 日本臨床歯科CAD/CAM学会(JSCAD)会員

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