インプラント

インプラント治療で仮歯を入れる理由を解説|仮歯を入れるタイミングやいれるときの注意点も紹介します

医師

インプラント治療を検討している人で、一定期間、歯がないことを心配する人は少なくありません。

インプラント治療では、インプラント体を埋入した後、すぐに人工歯を装着することは難しいです。

そのため、歯がない期間があると思いがちですが、インプラント治療では仮歯を入れることがあります。

本記事ではインプラント治療で仮歯を入れる理由と、仮歯を装着しているときの注意点についてご紹介していきます。

ぜひ最後までご覧いただき、インプラント治療を成功させてください。

インプラント治療で仮歯を入れる理由

歯を見せる女性

インプラント治療において、仮歯はどのような役割を果たすのでしょうか。ここからは、仮歯を入れる5つの理由についてご紹介していきます。

  • インプラント直後は人工歯を入れられない
  • 見た目の美しさを保つ
  • 噛み合わせや歯並びの歪みを防ぐ
  • 顎骨や歯茎を安定させる
  • 口内細菌や外部の刺激から口腔内環境を守る

上記の理由をしっかり理解することで、仮歯の大切さがわかっていただけるかと思います。ひとつずつ詳しくご紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。

インプラント直後は人工歯は入れられない

基本的に、インプラント埋入手術を行った直後に人工歯を入れることはできません。

タイミングや装着期間については後述しますが、人工歯を入れるタイミングは患部の治癒が終わった後です。

仮歯を入れないと、インプラントの部品であるインプラント体の埋入手術を行ってから、長期間に渡って歯が抜けている状態が続きます。

そうするとインプラント体がむき出しになり、様々な口内トラブルを巻き起こしてしまう可能性があります。

人工歯を入れられない期間を仮歯で代用をすることで、口内トラブルを予防できるでしょう。

見た目の美しさを保つ

インプラント治療で仮歯を入れる理由のひとつとして、「見た目の美しさを保つ」という目的があります。

インプラントの手術後はすぐに人工歯を入れることはできないため、仮歯を入れないと歯が抜けた状態で日常生活を送ることになってしまうでしょう。

歯が抜けた状態は見た目にも大きく影響し、発音などもうまくできない可能性があります。

仮歯を入れることで歯の抜けた見た目を防ぎ、息漏れも防止できるため、発音にも影響せず会話にも支障をきたさないというメリットがあります。

インプラントの治療期間をストレスなく過ごすためにも、仮歯は非常に重要な役割を果たすため、よほどのことがない限りは仮歯を入れることが望ましいです。

後述しますが、前歯は必ず仮歯を入れ、奥歯は仮歯を入れるケースと入れないケースがあります。奥歯がないのが気になるのであれば、医師とよく相談するようにしましょう。

噛み合わせや歯並びの歪みを防ぐ

歯を見せた口元

インプラント治療で仮歯を入れる理由に、「噛み合わせや歯並びの歪みを防ぐ」という目的があります。

歯が抜けた状態が続くと、両側の歯が抜けた部分に向けて動いたり倒れたりして、歯並びが歪む原因となってしまう可能性が高いです。

例えば歯は1ヶ月で1mm程度動くため、人工歯を入れるまでの期間が6ヶ月程度あるとすると、6mm程度も歯が動いてしまうことになります。

仮歯を入れることで、人工歯を入れるスペースを確保するだけでなく歯並びの歪みを防げるため、仮歯を入れることは非常に大切です。

また、インプラント体は金属でできているため、仮歯を入れないということは金属がむき出しの状態になっているということです。
そうすると周辺の粘膜を傷つけ、口内環境を悪化させる原因にもなります。

歯並びの歪みを抑えるのは歯の噛み合わせ悪化の防止につながるため、食事や会話もしやすくなります。

仮歯を入れることはインプラント治療を成功させることに直結しますので、医師の指示に従って行うようにしましょう。

顎骨や歯茎を安定させる

仮歯は顎骨や歯茎を安定させる役割も担います。入れ歯を長期間使っていたり、歯が抜けたまま長期間放置していたりする人は、あごの骨や歯茎が変形している可能性があります。

インプラント体の土台となるあごの骨や歯茎の状態が悪いままインプラント治療を行っても、望んだ状態にならないかもしれません。

もしもあごの骨や歯茎の状態に異常がある場合は、仮歯の形を調整しながら人工歯を入れるまでの期間に、口内状態の安定を図る必要があります。

口内細菌や外部の刺激から口腔内環境を守る

お菓子と虫歯

仮歯には口内細菌や外部の刺激から口腔内環境を守る役割があります。

口内には約1,000億〜6,000億もの常在菌が生息しており、これらの中には虫歯や歯周病、インプラント周囲炎の原因になる細菌も含まれています。

インプラント治療を行い、インプラント体が安定する前に細菌感染を起こしてしまうと、インプラント歯周炎を起こしてしまう可能性が高いです。

そうするとインプラント体の結合を阻害したり、腫れや出血が起こったりするため、大きな口内トラブルに発展しかねません。

そのため、仮歯で患部を守ることが大切です。また、歯には咀嚼時の圧や飲食物による温冷など、様々な刺激が日常的に加わります。

仮歯を入れないと、これらの刺激がインプラント体や周辺組織に加わり、大きな負担となります。

患部を保護し、痛みや口内トラブルを予防するためにも、仮歯を入れることは非常に重要です。

インプラントの仮歯を入れるタイミングと装着期間

治療

インプラント治療において、仮歯を入れることは様々なメリットがあることがわかりました。

次に、仮歯を入れるタイミング装着期間を見ていきましょう。タイミングや装着期間を知っておかないと、「思ったより長かった」という事態に発展しかねません。

スムーズにインプラント治療を終わらせるためにも、仮歯のタイミングや装着期間を知っておくことは非常に大切です。

仮歯を入れるタイミング

仮歯を入れるタイミングは人により変わりますが、早くて当日に入れることもあります。

インプラントの埋入手術当日に仮歯を入れる方法を「即時負荷インプラント」「即日仮歯」と呼び、治療の回数を減らすことで体への負担も軽減できます。

基本的には傷口がふさがってから仮歯を入れることが一般的ですが、前歯は審美的な観点もあり、比較的早い段階で仮歯を入れることが多いです。

しかし奥歯の場合は、仮歯を入れるケースと入れないケースがあります。

詳しくは後述しますが、あらかじめ型取りして仮歯を作成しておくため、比較的早いタイミングでの装着が可能です。

しかし、手術後すぐに仮歯を入れるには、以下のような条件を満たす必要があります。

  • 顎骨が良い状態であること
  • 骨再生や造骨などの処置が不要であること
  • かみ合わせに問題がないこと

上記は1例ですので、自身が手術直後に仮歯を入れられるかどうかは医師に相談するようにしましょう。

装着期間

仮歯を装着する期間は、3〜6ヶ月ほどが目安になります。人により期間は異なりますが、基本的に、インプラント体を埋入してから3~6ヶ月は人工歯を装着することができません。

そのため、手術から人工歯を装着するまでの期間は仮歯を入れて生活することになります。

仮歯を入れる箇所や口内の状態、インプラントが歯肉や顎骨に固着する期間によって装着期間は変わりますので、詳細な期間を知りたい場合は医師に確認することが大切です。

インプラントの仮歯をいれるときの注意点

医師

ここまで、インプラント治療で仮歯を入れる理由やタイミング、装着期間についてご紹介してきました。

メリットの多い仮歯ですが、装着する際は様々な注意点があります。具体的には以下のようなものです。

  • 仮歯につきやすい食事や硬い食べ物は避ける
  • 仮歯の破損は放置しない
  • 仮歯のまま治療を放置しない
  • 仮歯でも歯磨きは丁寧に

これらの注意点を知っておくことで、仮歯期間をトラブルなく過ごせます。インプラント治療をスムーズに終わらせるためにも、しっかりと確認しておきましょう。

仮歯につきやすい食事や硬い食べ物は避ける

仮歯期間は、仮歯に付着しやすい食べ物硬い食べ物を食べないようにする必要があります。

仮歯は治療中でも修正しやすいように、プラスチック素材でできているため、強度はさほど高くありません。

そのため、仮歯の強度を気にせず硬いものを食べてしまうと、割れたり欠けたりしてしまう可能性があります。

また、仮歯は人工歯の装着時に取り外すことを想定しているため、接着自体は強くありません。

ソフトキャンディやガムなど、粘着性のある食べ物を食べた際に、不意に取れてしまうこともありますので注意しましょう。

1例ですが、以下のような食べ物は避けることをおすすめします。

  • 硬めのパン
  • 煎餅
  • キャラメル
  • ソフトキャンディ
  • ガム
  • スルメイカ

また、インプラント治療をしてから2〜3日は痛みも伴います。そのため、ヨーグルトやスープ、雑炊などなるべく噛まずに食べられる食事が望ましいです。

食事で過度な刺激を与えないよう注意しましょう。

仮歯の破損は放置しない

歯痛

食事やふとした際に仮歯が破損してしまった場合は、放置せずに医師に相談することが大切です。

仮歯が欠けたり外れたりしたまま放置すると、周囲の歯が動くことで噛み合わせが変わってしまう可能性があります。

噛み合わせが変わってしまうと、装着していた仮歯を取り外せなくなるだけでなく、人工歯も上手く装着できなくなってしまうでしょう。

また、仮歯で保護されていた患部に細菌が入り込んでしまったり、むき出しになったインプラント体が周囲の組織を傷つけてしまったりします。

そうすると口内トラブルに発展する可能性がありますので、仮歯が破損した場合はすぐに医師に相談しましょう。

仮歯のまま治療を放置しない

インプラント治療を行う際は、仮歯のまま治療を放置しないことも大切です。

仮歯はあくまでも人工歯を入れるまでの代替品のため、強度や安定感はそこまで期待できません。

長期間の使用には適していないため、仮歯のまま生活を続けてしまうと、仮歯の形が崩れて噛み合わせが変化してしまうこともあります。

そうすると人工歯がうまく装着できなかったり、インプラント治療をやり直したりすることになってしまうでしょう。

また、仮歯はプラスチック素材で作られているため、経年劣化で黄ばんだりニオイの元を吸収するため口臭にも影響したりします。

どうしても治療を中断しなければならない場合は、医師に相談して指示を仰ぎましょう。

仮歯でも歯磨きは丁寧に

歯科医師

仮歯を装着している期間は、歯磨きも優しく丁寧に行う必要があります。

仮歯は長期間使用することを想定していないため、強度や安定性はそこまで高くありません。

そのため、歯ブラシで強い力を加えながら磨くと、外れてしまったり傷の原因になったりしてしまいます。

仮歯はプラスチックでできているため虫歯になることはありませんが、患部や周囲の組織に汚れや細菌が溜まるため、インプラント周囲炎やインプラント周囲粘膜炎を引き起こすこともあります。

通常の歯と同様に歯磨きをする必要がありますが、力加減には注意が必要です。

仮歯を入れるケースと入れないケースについて

仮歯

前述しましたが、仮歯は入れるケースと入れないケースが存在します。前歯の場合と奥歯の場合で仮歯の有無は変わりますので、事前に確認しておきましょう。

ここからは、それぞれのケースにおいての仮歯の有無についてご紹介していきます。

前歯の場合

基本的に、前歯にはほとんどの場合、すぐに仮歯が入ります。

前歯に仮歯を入れないと、歯が抜けた見た目になり、日常生活でストレスを感じてしまうでしょう。

口内の状態によって変わりますが、前歯に付ける仮歯は両端の歯に接着する方法が一般的です。その場合、噛む機能が低いため、食事には気をつける必要があります。

奥歯の場合

奥歯は前歯と違い、歯が抜けている状態でもそれほど目立ちません。

そのため、奥歯に関しては状態によって、仮歯を入れるケース入れないケースがあります。

医師が骨との結合に問題があると判断した場合は仮歯を使用しないこともあります。その場合、あご骨とインプラント体がくっつくまでの3ヶ月ほどは歯がない状態です。

奥歯に仮歯を入れる場合は、以下のようなものを使用します。

  • 固定式の仮歯
  • 取り外しができる仮の入れ歯

しかし、奥歯に仮歯を入れる場合は別途で費用がかかることが多いです。そのため、歯がない状態が困る場合は、医師に相談して判断を仰ぎましょう。

インプラントの仮歯装着後によくあるトラブル

デンタルミラーで口の中と歯を見る女性

インプラントの仮歯装着後には様々なトラブルが発生する可能性があります。特に、以下の2つは仮歯期間中に起きやすいトラブルですので、事前に知っておきましょう。

  • 仮歯が壊れたり取れたりしてしまう
  • インプラントが脱落してしまう

これらのトラブルがある可能性を知っておくことで、実際に起きた際に迅速に対応できます。ぜひ参考にしてください。

仮歯が壊れたり取れたりしてしまう

インプラント治療で使われる仮歯はプラスチック素材で作られているため、強度は高くなく、外れやすいです。

そのため、強い力が加わると壊れてしまったり、外れてしまったりします。

歯ぎしりのクセなどがある場合、仮歯が壊れてしまう可能性があるため、事前に医師に伝えておくようにしましょう。

インプラントが脱落してしまう

仮歯だけでなく、インプラント体が脱落してしまうケースもあります。

歯茎への感染症や外的要因、医師のインプラント手術の技術不足などが原因で、インプラント体が外れてしまうこともあるため、できる限り安静かつ口内を清潔に保ちましょう。

インプラントの仮歯のトラブルは…

医師

インプラント治療で仮歯を装着し、トラブルが起こってしまった際は早急に医師に相談するようにしましょう。

医師への相談が遅れ、インプラント周囲炎になってしまったり、噛み合わせが悪化してしまったりする場合、治療が計画どおりに進まなくなってしまいます。

そうするとインプラント治療をやり直すことにもなってしまい、多額の費用がかかってしまうかもしれません。

自分で判断せず、少しでも異常を感じたら医師へ相談することが大切です。

まとめ

インプラント

本記事では、インプラント治療において仮歯を入れる理由や注意点をご紹介していきました。

仮歯は患部を保護したり、噛み合わせを維持したりするためにも非常に重要な役割を果たします。

しかし、注意点を守らないとインプラント治療がスムーズに進まなくなってしまう可能性もあるため、医師の話をしっかりと聞く必要があります。

ぜひ本記事を参考にしていただき、スムーズなインプラント治療を実現してください。

参考文献

参考サイト

この記事の監修歯科医師
柴原 孝彦医師(東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座)

柴原 孝彦医師(東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座)

1979年東京歯科大学卒業、2004年東京歯科大学主任教授、2012年東京歯科大学市川総合病院口腔がんセンター長、2020年東京歯科大学名誉教授

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柴原 孝彦医師(東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座)

1979年東京歯科大学卒業、2004年東京歯科大学主任教授、2012年東京歯科大学市川総合病院口腔がんセンター長、2020年東京歯科大学名誉教授

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