オールオン4

糖尿病でもオールオン4は受けられる?治療リスクや注意点などを解説します

糖尿病でもオールオン4は受けられる?治療リスクや注意点などを解説します

糖尿病患者さんにとって、歯の健康維持は重要です。オールオン4とは、多くの歯を失った場合に行われるインプラント治療法ですが、糖尿病患者さんがオールオン4の治療を受ける場合にはいくつか注意点があります。
本記事では、オールオン4と糖尿病について以下の点を中心にご紹介します!

  • 糖尿病の方がオールオン4を受けるリスク
  • 糖尿病の方はオールオン4を受けられるか
  • 糖尿病の方がオールオン4を受ける際の注意点

オールオン4と糖尿病について理解するためにもご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

そもそもオールオン4と糖尿病とは

そもそもオールオン4と糖尿病とは

オールオン4と糖尿病の概要についてそれぞれ解説します。

オールオン4とは

オールオン4は、すべての歯を失った場合や多くの歯を失った場合に行われるインプラント治療の一種です。従来のインプラント治療では、上顎と下顎それぞれに8〜14本のインプラントを埋め込む必要がありましたが、オールオン4では、顎の骨に4本のインプラントを埋め込むだけで全体の義歯の固定が可能とされています。

オールオン4の主なメリットは、少ないインプラント本数でしっかりと義歯を固定できる点です。これにより、手術の時間が短縮され、身体への負担が軽減されます。また、顎の骨が少ない場合でも、骨移植を行わずに治療が可能なため、骨量に左右されにくい特徴があります。治療当日に仮歯が装着されるため、見た目や噛む機能がすぐに回復します。

従来のインプラント治療に比べてインプラントの本数が少ないため、治療費が抑えられます。さらに、固定式の義歯なので、総入れ歯のようにズレたり外れることがなく、自然な見た目と強い噛む力が得られます。

一方で、オールオン4にはデメリットも存在します。残っている歯がある場合、すべて抜歯しなければならないため、健全な歯を抜く必要があります。また、顎の骨や全身の健康状態によっては治療が適用できない場合があります。さらに、オールオン4は保険適用外のため、費用が高額になることもデメリットの一つです。

オールオン4の治療は技術的に難しいため、手術ができる歯科医師や歯科医院が限られています。治療を検討する際は、経験豊富な専門医に相談し、しっかりとした診断と計画のもとで進めることが重要です。オールオン4により、快適で自然な噛み合わせを取り戻し、生活の質を向上させます。

糖尿病とは

糖尿病とは、インスリンが不足したり、その作用の低下によって血糖値が高くなる病気です。インスリンは膵臓のランゲルハンス島で作られ、血液中のブドウ糖やアミノ酸を細胞に取り込む働きを持っています。インスリンが十分に働かないと、細胞はエネルギーを得られず飢餓状態に陥り、さまざまな健康問題を引き起こします。

糖尿病の主な症状には、頻尿、喉の渇き、体重減少、疲労感などがあります。これらは、体が血糖値を下げようとして尿に糖を排出し、体液のバランスが崩れるためです。また、糖尿病が進行すると、視力低下や神経障害、腎臓病、心血管疾患などの合併症が発生しやすくなります。

糖尿病には主に1型と2型があります。1型糖尿病は自己免疫反応によってインスリンを作る細胞が破壊されることで発症し、若年層に多く見られます。2型糖尿病は生活習慣や遺伝的要因によってインスリンの働きの低下により発症し、中高年に多く見られます。2型糖尿病は肥満や運動不足、不健康な食生活がリスク要因となります。

糖尿病の治療は、血糖値の管理が基本です。1型糖尿病の場合、インスリン注射が不可欠です。2型糖尿病の場合、食事療法や運動療法が重視されますが、進行した場合には経口血糖降下薬やインスリン注射が必要になることもあります。また、定期的な医師の診察や血糖値のモニタリングが重要です。

糖尿病は慢性的な病気であり、一度発症すると改善は難しいですが、適切な管理と治療によって健康な生活の維持は可能とされています。自己管理と医師のサポートを受けながら、血糖値のコントロールを行うことが大切です。

糖尿病の方がオールオン4を受けるリスク

糖尿病の方がオールオン4を受けるリスク

糖尿病の方はオールオン4を受ける前に以下のリスクを把握しておきましょう。

感染リスクを高める

糖尿病患者さんがオールオン4のインプラント治療を受ける際には、感染リスクが高まる点に注意が必要です。糖尿病はインスリンの不足や作用不全により血糖値が高くなる病気であり、高血糖状態が続くと免疫力が低下します。このため、糖尿病患者さんは細菌感染に対する抵抗力が弱くなり、インプラント手術後の感染リスクが高まります。

インプラント手術では、歯肉を切開して顎の骨にインプラントを埋め込むため、骨が露出し細菌に感染するリスクが生じます。健康な方であれば免疫システムが働いて感染を防ぎますが、糖尿病患者さんの場合は免疫力が低下しているため、感染しやすくなります。インプラント周囲炎と呼ばれるインプラントの周囲の炎症が起こりやすく、悪化するとインプラントの脱落につながる可能性があります。

歯周病になる可能性がある

糖尿病患者さんがオールオン4のインプラント治療を受ける際には、歯周病になるリスクが高まります。糖尿病は血糖値が高い状態が続く病気であり、高血糖状態が長期間続くと免疫力が低下し、体全体の感染に対する抵抗力が弱くなります。その結果、歯周病菌などの細菌に対しても抵抗力が低くなり、歯周病のリスクが増加します。

糖尿病患者さんの口腔内では、唾液の分泌が減少し、お口の中が乾燥しやすくなります。唾液には口内の自浄作用があり、唾液の分泌が減ると細菌が繁殖しやすくなります。これにより、歯周病菌が増え、歯茎に炎症が起こりやすくなります。糖尿病が進行すると、炎症が慢性化しやすく、歯周病が重症化する傾向があります。

インプラント治療を受ける前に、歯周病の治療を行うことが重要です。歯周病があると、インプラントを支える歯槽骨に問題が生じ、インプラントの成功率が低下します。治療後も、口腔内の清潔を保つために、定期的なメンテナンスと適切な口腔ケアが欠かせません。

低血糖になる可能性がある

糖尿病患者さんがオールオン4のインプラント治療を受ける際には、低血糖になるリスクが高まることに注意が必要です。糖尿病は血糖値のコントロールが難しい病気であり、治療中や治療後に血糖値が急激に変動する場合があります。

インプラント治療は外科手術であり、手術中や手術後に食事の摂取が制限されることがあります。この状況で糖尿病患者さんが普段どおりインスリン注射や経口血糖降下薬を使用すると、血糖値が急激に下がりすぎて低血糖を引き起こすリスクが高まります。低血糖発作は、発汗、動悸、手足の震え、視界のぼやけ、さらには意識喪失や昏睡状態に至ることもあり、危険です。

低血糖の予防には、治療計画の段階で内科医と歯科医が連携し、患者さんの血糖値管理の徹底が不可欠です。インプラント手術の前には、血糖値を測定し、適切な範囲内に収めることが必要です。また、手術後の食事制限が予想される場合は、その期間中のインスリンや血糖降下薬の使用量を調整する必要があります。

さらに、低血糖発作のリスクを軽減するために、手術のタイミングの工夫も有効です。また、低血糖が起こりにくいように、治療中に迅速に糖分を補給できるような準備をしておくことも重要です。例えば、手元にブドウ糖タブレットや砂糖入りの飲み物を用意しておくとよいでしょう。

骨吸収が進んでしまう

糖尿病患者さんがオールオン4のインプラント治療を受ける際には、骨吸収が進むリスクが懸念されます。糖尿病は血糖値が高い状態が続く病気であり、高血糖状態が続くことで骨質が劣化しやすくなります。糖尿病による酸化ストレスやインスリン抵抗性が原因で、骨の形成が阻害され、骨吸収が助長されるためです。

骨吸収とは、古い骨が破壊され、新しい骨に置き換わる自然なプロセスですが、糖尿病患者さんではこのバランスが崩れやすくなります。顎の骨が減少すると、インプラントがしっかりと固定されず、ぐらついたり脱落するリスクが高まります。インプラントは顎の骨に埋め込まれるため、骨の健康状態が重要です。

糖尿病患者さんの骨吸収が進む主な要因について解説します。高血糖により体内の酸化ストレスが増加し、骨細胞にダメージを与え、骨の再生を妨げます。また、インスリンの効果が低下すると、骨形成に必要な細胞の働きも弱まり、新しい骨が作られにくくなります。高血糖が続くと血管が損傷し、血流が悪化します。これにより、骨に必要な栄養や酸素が十分に供給されず、骨の健康が損なわれます。

これらの要因により、糖尿病患者さんは骨の強度が低下し、インプラント手術後の回復が遅れる可能性があります。さらに、骨吸収が進むことでインプラント周囲の骨が減少し、インプラントの安定性が失われるリスクが高まります。

骨の健康を維持するために、適切な栄養摂取や運動も欠かせません。カルシウムやビタミンDを十分に摂取し、適度な運動を行うことで骨密度を保ちます。

傷が治りにくい

糖尿病患者さんがオールオン4のインプラント治療を受ける際には、傷が治りにくいリスクがあります。糖尿病は血糖値が高い状態が続く病気であり、高血糖状態が続くと血流が悪化し、体の組織に必要な酸素や栄養が十分に供給されにくくなります。結果、傷の治癒が遅れることがあります。

糖尿病患者さんでは、血液の循環が悪くなることが多く、末梢の血流が低下する傾向があります。血管が高血糖によってダメージを受けるためです。血流が悪くなると、手術部位への酸素や栄養の供給が不足し、細胞の修復が遅れる原因となります。

さらに、糖尿病患者さんの免疫機能も低下しているため、傷が感染しやすくなります。感染が発生すると、炎症が起こり、さらに治癒が遅れることになります。インプラント手術後は、口腔内の衛生状態を保つことが重要ですが、糖尿病患者さんは免疫力が低いため、細菌感染に対する抵抗力が弱く、感染症のリスクが高まります。

また、糖尿病患者さんはしばしば合併症として神経障害を持つことがあり、治癒を遅らせる要因となります。神経障害があると、痛みや不快感を感じにくくなるため、傷の状態に気付くのが遅れることがあります。これにより、感染や炎症が悪化する可能性が高まります。

糖尿病の方はオールオン4を受けられる?

糖尿病の方はオールオン4を受けられる?

糖尿病患者さんがオールオン4のインプラント治療を受けることは可能とされていますが、いくつかの条件を満たす必要があります。糖尿病は血糖値の管理が重要な病気であり、インプラント治療に伴うリスクも高まるため、慎重な対応が求められます。

糖尿病患者さんがオールオン4を受けるための重要な条件は、血糖値のコントロールが良好であることです。血糖値が安定していないと、手術中や術後に感染症のリスクが高まり、傷の治りが遅れる可能性があります。また、血糖値が高い状態が続くと、骨の治癒力が低下し、インプラントと骨の結合が妨げられることがあります。手術前には血糖値を測定し、HbA1cが7%以下、空腹時血糖値が140mg/dL以下の確認が望ましいです。

次に、糖尿病の合併症がないか、軽度であることが条件となります。糖尿病には網膜症、腎症、神経障害などの合併症があり、これらの合併症があるとインプラント治療のリスクがさらに高まります。重度の合併症がある場合は、治療が適用されないこともあります。

糖尿病の方がオールオン4を受ける際の注意点

糖尿病の方がオールオン4を受ける際の注意点

糖尿病の方がオールオン4のインプラント治療を受ける際には、いくつかの注意点があります。内科医と歯科医の連携が不可欠です。糖尿病治療を担当する内科医とインプラント治療を行う歯科医が協力し、患者さんの血糖値や全体的な健康状態を共有しながら治療を進めることが重要です。これにより、手術中および術後の管理が適切に行われ、リスクを抑えます。

手術後の口腔ケアも重要です。糖尿病患者さんは免疫力が低下しているため、インプラント周囲炎などの感染リスクが高まります。術後は定期的な歯科検診を受け、歯科医の指導にしたがって適切な口腔ケアを行うことが求められます。

また、食事の管理も重要です。インプラント手術後は一時的に食事が制限されることがあるため、低血糖を防ぐために食事内容や薬の調整が必要です。手術前に内科医と相談し、手術後の食事管理について具体的な計画を立てておくことが大切です。

最後に、禁煙も重要な要素です。喫煙は血流を悪化させ、免疫力を低下させるため、インプラント治療の成功率を下げる要因となります。インプラント手術を受ける前に禁煙が推奨されます。

このように、糖尿病の患者さんが治療を受ける際にはさまざまな点に注意する必要があります。なかでも、糖尿病とほかの疾患を併発している場合にはさらにリスクが高まります。
ご自身の身体の負担や糖尿病の重症度合い等を総合的に評価し、場合によってはインプラント以外の選択肢を選ぶ事も考慮するようにしましょう。

まとめ

まとめ

ここまでオールオン4と糖尿病についてお伝えしてきました。
オールオン4と糖尿病の要点をまとめると以下のとおりです。

  • 糖尿病の方がオールオン4を受ける際、感染、歯周病、低血糖、骨吸収、傷が治りにくいなどのリスクがある
  • 糖尿病の方はオールオン4を受けられるが、HbA1cが7%以下、空腹時血糖値が140mg/dL以下かつ糖尿病の合併症がないことが条件である
  • 糖尿病の方がオールオン4を受ける際は、内科医と歯科医の連携、術後の歯科検診、食事管理、禁煙が重要

オールオン4は、糖尿病患者さんにとっても有効な治療法です。
しかしながら、感染などのリスクがあることも事実のため、歯科医師や内科医と入念に相談し、ご自身に合った治療法を選ぶようにしてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
大津 雄人医師(医療法人社団GLANZ大津歯科医院 副院長 / 東京歯科大学インプラント科 臨床講師)

大津 雄人医師(医療法人社団GLANZ大津歯科医院 副院長 / 東京歯科大学インプラント科 臨床講師)

東京歯科大学歯学部 卒業 / 東京歯科大学大学院歯学研究科(口腔インプラント学) 卒業 / 現在は大津歯科医院勤務 / 東京歯科大学インプラント科臨床講師 / 専門は口腔インプラント

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