むし歯や歯周病で多くの歯を失ったことにより、見た目の悪化や咀嚼力の低下に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
オールオン4は4本のインプラントを土台に義歯を装着する、負担の少ないインプラント治療法です。
従来のインプラント治療に比べて手術の回数が少なく、手術当日には仮歯で普段どおりに食事ができるなどの特徴があります。
この記事では、オールオン4の治療の流れや期間、メリットとデメリットについて詳しく解説します。
インプラント治療を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
オールオン4の手術までの流れ
オールオン4の治療は、カウンセリングから始まり精密検査や治療計画の立案を経て手術が進められます。
それではそれぞれのステップについて詳しく解説します。
カウンセリング
オールオン4の治療を開始するにあたって始めに行われるのがカウンセリングです。オールオン4は患者さんの身体の状況によっては治療できない場合があるため、健康状態をしっかりと把握するためにカウンセリングはとても重要です。
カウンセリングでは、口腔内のみでなく全身の健康状態、持病や病歴などについて詳しく確認します。心疾患のある方・糖尿病を患っている方・血糖値のコントロールができない方・骨粗しょう症の方などは治療ができない、または治療を延期する可能性があります。
金属アレルギーのある方や喫煙する方も治療後の経過が悪くなる恐れがあるため、これらの条件に当てはまる方はあらかじめ医師に相談しておくようにしましょう。
また、カウンセリングでは患者さんの悩みや希望する仕上がりについて、医師がヒアリングを行います。
患者さんの不安を取り除きながら治療内容・期間・費用などを具体的に説明することで、納得して次の段階に進めるようにすることがカウンセリングを行う目的の1つです。
精密検査・診査診断
オールオン4の手術を行う前には、精密検査による診査と診断が欠かせません。患者さんの口腔内の状況を詳細に把握することで、適切な治療計画を立てることができます。
精密検査では、レントゲン装置やCT装置による画像検査により、顎の骨や残っている歯の状態などを確認します。
特にCT検査は3次元で歯や骨の立体的な構造がわかるため、インプラントを正確な位置に配置するためにとても有効です。なお、歯周病がある方は治療後にインプラント歯周炎に罹るリスクが高まります。
そのため、歯周病の状況によってはインプラント治療を開始するより先に、歯周病の治療を行う場合もあるのです。
また、カウンセリングで事前に持病や病歴の確認を行いますが、患者さん自身が気付いていない病気を患っている可能性があります。
血液検査や心電図検査などで身体の状態を詳細に把握することも必要です。
治療計画の立案と説明
精密検査の結果をもとに、医師がオールオン4の手術の治療計画を立案します。治療計画では患者さんの顎の骨の状態、希望する仕上がりなどを考慮して、手術の具体的な方法・使用するインプラントの種類・手術の日程・治療期間などの方針を決定するのです。
治療計画の立案後は、医師が患者さんに対して治療計画を説明します。手術の方法・術後の経過・治療におけるリスク・治療費に関することなどを詳しく聞いたうえで、患者さんは小さな疑問も隠さずに医師に伝えることが大切です。
インフォームドコンセント(説明と同意)によって治療内容やリスクを理解し、自らの意思で治療に進むかどうかを決めることができます。不安なくオールオン4の治療を受けるために重要なステップです。
オールオン4の手術の流れ
オールオン4の治療では、抜歯・インプラントの埋入・仮歯の装着を一度の手術で行い、埋め込んだインプラントが安定した頃に義歯を装着します。
手術の具体的な手順を、一つひとつ詳しく解説します。
抜歯
オールオン4は前歯から奥歯まで一体となっているため、天然歯がほとんど残っていない方に適した治療法です。
ただし、インプラントを埋入する顎に残っている歯はすべて取り除く必要があります。
抜歯を行うことで、口腔内をインプラント手術に適した状態に整えるのです。抜歯は局所麻酔をしたうえで行われるため、術中に痛みを感じることはほとんどありません。
抜歯後は傷口からの感染リスクが高まるため、普段以上に口腔内のケアを入念に行う必要があります。
インプラント埋入手術と仮歯の装着
インプラントの埋入手術は、局所麻酔または静脈麻酔のもとで行われ、歯茎を切開して4本のインプラントを埋入します。
インプラントを埋め込む位置や角度は事前に行なったCT検査のデータに基づいて決められます。正確に埋入を行うためには高い技術が必要です。
インプラントを埋入したら、同じ日に仮歯の装着を行います。これにより、患者さんは手術を受けた直後から普段どおりに食事をすることが可能となるのです。
仮歯を装着することで見た目や咀嚼力が向上し、日常生活に大きな効果をもたらします。ただし、仮歯は強度がないため、手術直後は硬い食べ物は避けてやわらかい食べ物を食べることが推奨されます。
義歯の型取り
インプラントが骨と結合して安定した状態になったら、義歯の型取りを行います。義歯がインプラントの位置にしっかりとフィットし、自然な噛み合わせになるように設計されるのです。
型取りをする過程では数回の通院が必要な場合があります。装着後に違和感や不快感を感じないようにするために、慎重に進めることが求められるのです。
義歯の装着と最終調整
義歯の型取りと製作が完了したら実際に義歯を装着します。仮歯を外して完成した義歯をインプラントに装着し、細かな位置の調整などを行います。
その際に、噛み合わせやフィット感を確認することが重要です。
また、見た目のバランスなども確認し、必要であれば微調整を加えます。装着後はすぐに通常の食事が可能となり、見た目においても自然な口元を取り戻すことができます。
オールオン4手術後は定期的なメンテナンスが必要
オールオン4の治療後、インプラントと義歯を長持ちさせるためには定期的なメンテナンスが不可欠です。メンテナンスでは義歯の安定感や噛み合わせの具合、清潔さなどをチェックします。
加えて、インプラント周囲の歯茎や口腔内全体の健康状態も確認し、炎症や異常が起きていないか確認するのです。オールオン4の手術後に起こりやすいトラブルとしては、インプラント周囲炎の発症や義歯の破損などが挙げられます。
インプラント周囲炎に罹ると、歯周病菌によりインプラントを支える歯肉や骨が炎症を起こし、インプラントの安定性が失われる場合があります。
特に、糖尿病の疾患を持つ方は傷の治りが悪く、感染リスクが増加するため注意が必要です。
インプラント周囲炎は初期段階で発見できれば対処が可能ですが、重度の場合はインプラントの再手術が必要となることもあるため、定期的なメンテナンスによって症状の進行を防ぐことが大切です。
義歯の破損についても、定期的にチェックすることで早めに修復ができます。また、過度な喫煙はインプラントの残存率の低下につながるため、喫煙者の方は特に定期的なメンテナンスをすることをおすすめします。
オールオン4の治療期間と費用の目安
オールオン4の治療にはどのくらいの期間や費用がかかるのでしょうか。
ほかのインプラント治療との違いも含めて解説します。
治療期間
オールオン4の治療は全体を通して6ヵ月前後で行う場合が多く、従来のインプラント治療に比べて期間が短いのが特徴です。
通常の治療工程としては、初診とカウンセリングから始まり、精密検査を行います。その後、医師が検査の結果に基づいて治療計画を立案し、患者さんが治療に同意すれば手術の予約が可能になります。
抜歯が必要な場合は、抜歯の施術も含めてスケジュールが調整されますが、多くの場合は抜歯とインプラント埋入手術を同じ日に実施することが可能です。
インプラント埋入手術は1日で終了し、その日に仮歯を装着できるため、患者さんは手術当日から日常生活に戻ることができるのです。手術後は、インプラントと骨がしっかり結合するのを待つために約3~6ヶ月間の安定期間が設けられます。
この期間中に義歯の型取りと製作を実施します。最後に義歯を装着し、必要に応じて最終調整を行って治療は完了です。
費用
オールオン4の治療費用は、一般的に片顎あたり2,000,000円(税込)程度が目安とされています。これは使用する設備・義歯の種類・地域・クリニックの料金設定などによって大きく変動します。
なお、インプラント治療は基本的に保険適用外のため、自己負担となる場合がほとんどです。オールオン4は従来のインプラント治療と比べて費用を抑えられるといわれています。
ただし、オールオン4の治療が終わった後も定期的なメンテナンスは必要なため、長期的にかかる費用を含めて治療するか検討する必要があります。
オールオン4を選択するメリット
従来のインプラント治療と比べて、オールオン4は身体の負担・治療期間・費用を抑えられるといったメリットがあります。
オールオン4を選ぶメリットについて、それぞれ詳しく紹介します。
身体への負担が軽減できる
オールオン4のメリットの1つは、身体への負担を軽減できることです。従来のインプラント治療は失った歯ごとにインプラントを1本ずつ埋入するため、手術回数が多くなったり、治療期間が長くなったりする傾向があります。
一方、オールオン4は片顎に4本のインプラントを埋入して前歯から奥歯までの全体を固定するため、一度の手術で完了する場合がほとんどです。手術回数や時間を短縮することで、身体への負担を軽減できます。
また、オールオン4は顎の骨が少ない患者さんにも適した治療法です。従来のインプラント治療では十分な骨量が必要とされ、骨が不足している場合には骨移植手術を行うことがあります。
オールオン4は骨の量が少ない場合でも、インプラントを斜めに埋め込んでしっかりと固定することが可能です。骨移植を避けることができるため、患者さんの負担の軽減につながります。
身体的な負担が減ることで治療に対する不安やストレスも低下し、治療に取り組む気持ちも前向きになることでしょう。
治療期間と費用を抑えられる
オールオン4は、従来のインプラント治療と比較して治療期間と費用を抑えられることがメリットの1つです。
従来のインプラント治療では、失った歯の本数に応じて1本ずつインプラントを埋め込むため、手術の回数が増えて治療期間も長くなることが少なくありません。また、インプラント1本につき費用がかかるため、治療費も高額になりがちです。
オールオン4は片顎に4本のみインプラントを埋め込み、それを土台として義歯を固定する仕組みです。
治療に必要なインプラントの本数が少なく、一度の手術で済む場合がほとんどのため、治療期間と費用ともに抑えることができます。また、オールオン4は手術当日に仮歯の装着が可能です。
最終的な義歯の装着までには3~6ヵ月かかりますが、日常生活に支障がでにくいことが大きな特徴です。
経済的な負担を軽減しながらストレスの少ない治療ができるオールオン4は、インプラントを検討する方にとって大変魅力的な治療法といえるでしょう。
オールオン4を選択するデメリット
オールオン4の治療にはメリットだけでなく、抜歯の必要性や治療できる医療機関の制限といったデメリットも存在します。
オールオン4の治療を行ううえで注意すべき点を解説します。
ほとんどのケースで抜歯が必要になる
オールオン4の治療では、ほとんどの場合において抜歯を行います。インプラントを埋入する顎のすべての歯を取り除くことで、口腔内を適切な状態に整えるのです。
しかし、抜歯にはいくつかのデメリットがあります。まず、抜歯の施術によって身体に負担をかけることになります。特に高齢の方や糖尿病などの疾患を持つ方は抜歯した傷口の治りが遅く、細菌感染を引き起こすリスクが増加するのです。
また、健康な歯を抜くという決断は、多くの患者さんにとってストレスや不安の原因となることもあります。
さらに、抜歯後は痛みや腫れなどの一時的な症状に悩まされる可能性もあるのです。これらのデメリットを理解したうえで、オールオン4の治療を行うかどうか慎重に考えることが必要です。
治療できる医療機関が限られる
歯科医院のなかには、オールオン4の治療を行っていない医療機関が存在します。これは、オールオン4が高度な技術と知識を必要とする治療法であるためです。
適切な治療を受けるためには、経験豊富な歯科医師と必要な設備が整った歯科医院を探す必要があります。
なお、通院可能な範囲にオールオン4の治療を行っている医療機関が見つからない場合は、遠方まで足を運ぶ必要があるため負担が大きくなる可能性があります。また、注目を集めている医療機関では予約が集中し、手術までに待ち時間が発生する場合もあるのです。
早く治療を開始したいと考えている患者さんにとっては、不便に感じる場面があるかもしれません。
オールオン4を検討する際は、治療を行っている医療機関についてしっかりとリサーチしたうえで、自身に合ったクリニックを選択することが重要です。
まとめ
オールオン4は身体への負担が少ない治療法で、見た目や咀嚼力を大幅に改善します。
従来のインプラント治療と比べて、治療期間や費用を抑えられる点が大きなメリットです。
しかし、抜歯が必要になる場合が多く、治療できる医療機関が限られるといったデメリットもあります。
オールオン4の治療を受ける際は、これらの特徴を理解したうえで、信頼できる歯科医師に相談しながら進めることが大切です。
自身の希望や健康状態に合った治療法を選んで、快適な生活を取り戻しましょう。
参考文献