オールオン4は、インプラント4本で片顎の歯すべてを作ることができる治療法です。入院は必要なく、手術当日に自分の歯の代わりとなる仮歯を装着できます。ほとんど自分の歯が抜けてしまった方や、入れ歯を入れたくない方にとって救世主のように感じられることでしょう。
ただし、オールイン4治療にはメリットばかりではなく、デメリットや注意点もあります。また、手術の難しさからくる不安や高額な治療費など、いろいろ心配な点もあるのではないでしょうか。
そこで今回は、インプラントの手術の流れから治療費の相場までを詳しく紹介します。オールオン4を検討中の方は、ぜひ最後までお読みになり検討の一助として頂けたら幸いです。
オールオン4の特徴
オールオン4は、1日で仮歯まですべて終了することが可能です。そのため、当日の夜もしくは翌日から仮歯で食事を楽しめるでしょう。オールオン4には、ほかにも以下のような特徴があります。
- 4本のインプラント体で顎全体の上部構造を支える治療方法
- 総入れ歯に比べてしっかり噛める
- 外科手術での身体の負担を軽減できる
- 従来のインプラント治療よりも費用を抑えやすい
4本のインプラント体で顎全体の上部構造を支える治療方法
オールオン4は、片顎に4本のインプラントを埋入して12本の人工歯をしっかり支える治療法です。
入れ歯やブリッジなどが合わず悩んでいる方・歯周病などでほとんどの歯を失ってしまった方などに向いています。
また、上顎骨にほとんど骨のない方でも、基本的に骨造成などの治療が必要なくオールオン4治療を受けられるかもしれません。骨の厚みがある部分に奥のインプラントを斜めに埋入させることで、4本のインプラントですべての人工歯を固定することができるためです。
総入れ歯に比べてしっかり噛める
オールオン4は、4~6本のインプラント体である人工歯根を顎の骨に埋入し、上物である12本の人工歯をしっかりと固定します。入れ歯やブリッジと比べて、大変安定性の高い噛み心地が得られる治療法といえるかもしれません。
また、骨とインプラントが接合する半年後には、さらに強くきれいな本歯が入り、自分の歯に近い感覚で食べ物を噛んで味わえるでしょう。
外科手術での身体の負担を軽減できる
オールオン4治療では、顎の骨に埋め込むインプラント体の本数が4~6本に少なく抑えられるため、身体的負担が軽減されます。痛みや腫れといった症状も出にくい傾向があります。
また、オールオン4では骨の厚みのある部分を狙ってインプラントを斜めに埋入できるため、骨の移植や造成の必要がなく身体への負担が軽減されるでしょう。入れ歯のように歯茎と人工歯のあいだに食べ物が挟まる痛みや不快なストレスを感じることがほとんどありません。
従来のインプラント治療よりも費用を抑えやすい
オールオン4は、4本の少ないインプラント埋入で12本すべての歯を支えるため、その分費用を抑えやすくなります。
また、すべての歯を失ってしまった方には、入れ歯かオールオン4の2択になりますが、噛み心地や見た目の違和感などから入れ歯に抵抗がある方も少なくないでしょう。失った歯のすべてをインプラントにすると通常は8~14本のインプラントが必要になり、治療費はかなり高額になってしまいます。
そのため、すべての歯を失った方が1本1本インプラントを入れていた従来の方法より治療費用を抑えられます。
治療期間が短い
オールオン4治療のメリットの1つに、インプラントの手術時間が短いという点があります。外科手術の時間が長くなる程身体にかかる負担は大きくなり、腫れや痛みも増す傾向にあるでしょう。
また、通常の通常のインプラント治療の場合は術後に歯が入るまで何ヵ月も待たなくてはなりません。オールオン4は、手術当日には仮歯が入り、流動食ややわらかい食事ができるようになります。
残っている歯を抜歯するケースもある
オールオン4は、基本的には片顎または両顎のすべての歯を失っている方で入れ歯にしたくない方を対象とした治療法となります。可能な限り現存の歯を活かす治療法を検討するのが通常ですが、重度の歯周病などで歯がグラグラして残す方がリスクが高いと歯科医師が判断した場合には、抜歯するケースもあります。
ほとんどの歯が抜けていて噛み合わせに問題がある・現存の歯もボロボロで見た目にも悪い・歯周病やむし歯で損傷しているなどの歯を抜歯することで、結果的に口内環境の改善につながる可能性もあるでしょう。
オールオン4の仮歯の役割は?
インプラント手術の傷が癒えて、インプラント体が顎の骨や周辺組織としっかり結合するまでの間、歯の機能の代用として仮歯を入れる必要があります。一方で、なぜ仮歯ではなくすぐに人工歯を被せないのか、疑問に思う方もいるかもしれません。
ここからは、仮歯を入れるメリットについて1つずつ解説しましょう。
普段どおりに食事がしやすくなる
オールオン4の仮歯のメリットは、手術をした当日にやわらかいものなら食事も可能になる点です。う蝕により歯がボロボロになった方でも手術当日にきれいな仮歯が入り、審美性をその場で回復できます。
また、オールオン4は顎の骨に4本の人工歯根を埋め込み固定するため、しっかりとした装着感と噛み心地から、自分の歯に近い感覚で食事が楽しめることでしょう。入れ歯のように歯茎を覆わないので違和感が少なく、天然の歯のように温度や味も感じられます。
仮歯が取れるまでは、食事制限に加え、食べたらすぐ歯を磨き口内衛生に気をつけてお過ごしください。
細菌が入るのを防ぐ
口内の常在菌は約1000億~6000億生息しているといわれ、これらの中には歯周病などの原因になる細菌も含まれています。仮歯期間中に細菌感染を起こすと、炎症を起こしてインプラント体の結合を阻害する恐れがあるので注意しなければなりません。
噛むときにかかる咬合圧・飲食物による温冷などの刺激はインプラント体やその周辺組織に大きな負担をかけてしまいます。仮歯はインプラント体に直接刺激が加わらないよう、蓋の役割をして保護してくれているのです。
また、オールオン4はむし歯や歯周病などの細菌が残っている歯と歯茎をすべて取り除いてからインプラントを埋入するため、細菌感染が抑えられる治療法といえるでしょう。
オールオン4の手術の流れ
オールオン4の手術は、以下のような流れになります。
- カウンセリング
- 検査・診断
- インプラント手術
- 仮歯の装着
- 上部構造装着
それぞれ、解説していきます。
カウンセリング
全身の健康状態やアレルギーなどの問診・口腔内チェックなどの診断を経て、担当の歯科医師と入念なカウンセリングを行います。オールオン4治療についてのメリット・デメリットの説明を受けたうえで、入れ歯などほかの選択肢についても検討しましょう。
検査・診断
オールオン4治療の理解と了承を得たうえで、レントゲン診査とCT撮影を行い、インプラントの埋入位置をプランニングします。歯科医師の診断後、全体的な治療計画を立案し、提案してもらいましょう。
インプラント手術
インプラント体を埋め込む手術を行います。上の歯の場合、上顎全体に麻酔をかけるのでほとんど痛みはありません。インプラント手術は、以下のような流れで行われます。
- 麻酔を上の顎全体にかける
- 歯茎を切り開く
- 顎の骨を平らな状態にならし、ドリルで穴をあける
- 人工歯根(インプラント)を埋め入れる
- 人工歯根と人工歯を連結させる支台を取付ける
歯茎を縫い合わせて、インプラント手術は終了です。骨が少なくて通常のオールオン4ができない場合は、ザイゴマインプラントと呼ばれる鎖骨に長いインプラントを埋入する治療法を行う場合もあります。歯茎が癒えるのを待ち、問題がなければ数日後に糸を抜くことになるでしょう。
仮歯の装着
インプラント手術が終わったら、少し休憩を挟み、仮歯を装着します。数時間後に、事前に製作してあった仮の人工歯を調整し、埋め入れた人工歯根(インプラント)をネジで固定して手術は終了します。
ただし、口腔内の状態によっては仮歯装着が翌日になるケースもあるので注意しましょう。人工歯根が顎の骨に馴染むのを待っている期間は仮歯で過ごすことになるので、歯磨きの励行など歯科医師の注意事項を遵守しましょう。
仮歯の期間中はトラブルが起きやすい期間でもあるため、硬いものを噛むのは控え、流動食ややわらかい食べ物を中心に食事を楽しむようにしてください。
上部構造装着
オールオン4の仮歯装着から約3~6ヵ月後、骨とインプラントがしっかり接合されるのを待って、最終的な上部構造である本歯を装着します。本歯は仮歯と違い、素材・強度・耐久性などがより優れ、壊れにくいのが特徴です。
仮歯より審美性の高い美しい仕上がりの人工歯と交換した後は、自分の歯のように笑顔や会話に自信がつくでしょう。食事制限も解除されますので、何でも噛んでおいしく食事を楽しんでください。
ただし、引き続き歯磨きや口内洗浄を励行し、日々のセルフケアを怠らないようにしましょう。
仮歯装着から上部構造ができるまでの期間はどのくらい?
手術から約3ヵ月~半年は、人工歯根が顎の骨に馴染むのを待ちます。骨の結合を意味するオッセオインテグレーションには個人差がありますが、仮歯装着から約半年を想定しておくとよいでしょう。
特に、術後3週間~2ヵ月までの治癒期間は良好な予後を期待するために、なるべく消化のよいやわらかいものを食べてください。仮歯が壊れる・インプラントがグラグラして取れてしまうなどのトラブルが発生した場合、手術のやり直しになってしまいます。
傷が癒えたら、仮歯と最終的な上部構造を交換し、インプラント体の頭部に装着して固定します。 噛み合わせのチェックも行い、調整をします。
オールオン4の費用相場は?
オールオン4は基本的には4本のインプラントを埋入するため、インプラント4本の手術費と上物の人工歯の費用がかかります。
トータルとしてオールオン4の治療費は、片顎で220~300万円前後(税込)が相場でしょう。ただし、ジルコニアなど歯の材料や術後の保証の有無によっても治療費は異なります。
手術代のほかにも別途、以下のような費用がかかります。
- インプラント埋入手術代 32,000円(税込)
- 診断料+CT撮影代 22,000円(税込)
- 静脈内鎮静法:3ブロック88,000円 4ブロック121,000円~(税込)
- 麻酔薬代:11,000円
- プレドニン(腫れ止め)注射代:3,300円
- トランサミン(抗炎症・止血)静脈注射代:3,300円
- 人工歯根(4本):12年保証1,320,000円・15年保証1,540,000円(税込)
- 連結部アバットメント(4本):220,000円(税込)
オールオン4は自由診療なので治療費は歯科医院によってまちまちです。治療費の見積もり例をあげますので、参考にしてください。
インプラントの埋入手術費・ジルコニアとセラミックのオーダーメードの被せ物・治療計画立案・相談説明料を含む一括払いの場合、約3,003,000円 (税込)が目安です。治療費のほかに術後のメンテナンス費用がかかるでしょう。
現金一括払いが難しい患者さんのために歯科医院での分割やデンタルローンを取り揃えている場合もあるので、併せて相談してみてください。
また、オールオン4は高額医療費控除の対象なので、確定申告することで税金の一部が戻ってきます。オールオン4の治療費として支払った際の領収書はなくさないよう、大事に保管しておきましょう。
オールオン4手術後の注意点は?
オールオン4の手術後は、抜歯をしたときのような痛みや腫れの症状が出る可能性があります。腫れは2~3日後がピークで、その後1~2週間程かけて落ち着いてきます。
痛みが出る前に、処方された鎮痛剤でうまくコントロールしてください。個人差はありますが、通常で約2~4週間のダウンタイムがあるため、その間は安静に過ごしましょう。
オールオン4は天然の歯と違い、インプラントと粘膜の間に細菌が容易に侵入するため、食後は歯磨きの励行などセルフケアを心がけてください。
歯垢がついたままになっていると、口内細菌が増えてインプラント周囲炎などの問題が発生するかもしれません。
また、オールオン4では術後の咬合調整が必要です。上の歯をオールオン4にした場合、下の歯も調節しないと不正咬合は解決しません。大切なオールオン4を守るために、噛み合わせにも注意して、日々のセルフケアと歯科医院での定期的なメンテナンスを受けるようにしましょう。
まとめ
今回は、オールオン4の仮歯の役割について、手術の流れから上部構造ができるまでの期間までを解説してきました。
オールオン4は従来の入れ歯と違い、インプラント4本で入れ歯を支えるため、自歯と遜色ない噛み応えに加え、見た目も自然で美しいのが特徴です。歯を失ってから諦めていたようなことが可能になるため、生活に昔のような潤いが蘇ってくることでしょう。
今回ご紹介したように、オールオン4の仮歯はインプラント治療の中間段階として重要な役割を担っています。インプラント手術後に細菌が入るのを防ぎ、すぐに審美性を回復して噛めるようにするだけではありません。
仮歯は、本歯の試作品として色やデザインを決める参考としても大切なものです。仮歯期間中はくれぐれも硬いものを噛むのは控え、口内衛生に十分気をつけてお過ごしください。
参考文献