4本のインプラントですべての歯を固定することで、手術による身体への負担や、経済的な負担を軽減できるオールオン4治療ですが、仮歯を入れたときの違和感が気になるという方もいらっしゃるようです。
この記事では、オールオン4治療で仮歯を入れる際の違和感の原因や、対策方法などについて解説いたします。
オールオン4で仮歯の違和感を感じることがある?
オールオン4の治療では、最終的な人工歯を入れる前に仮歯を装着する期間がありますが、この仮歯を使用している最中に、違和感が生じるケースがあります。
そもそもオールオン4がどのような治療かというと、これは口腔内に設置された4つのインプラント体によって、前歯から奥歯までのすべての人工歯を固定するという治療法です。
インプラントの手術は、歯槽骨に対してインプラント体と呼ばれるチタン製の人工歯根を埋め込むことで行います。埋め込んだインプラント体は、数ヶ月程度の時間をかけて骨としっかり結合していくため、その間はしっかりと歯を固定させることができません。
そこで、インプラントが骨に結合するまでの間は仮歯を装着して過ごす形となります。
仮歯とはいえ、インプラントの支えによって安定感がある噛み心地が得られるため、機能性については治療前よりも改善が期待できます。
しかし一方で、手術直後の炎症や、そもそも新しい歯に慣れないといった理由から仮歯を使用している期間は違和感が生じやすく、最初は痛みや噛みにくさを感じる可能性があります。
手術後、2~3週間程度すれば少しずつ慣れて違和感が減っていくというケースが多いといえますが、違和感の原因によっては長引く可能性もあります。
オールオン4で仮歯に違和感を感じる理由
オールオン4の治療で、仮歯を装着してから違和感が生じる理由には、主に下記のようなものがあります。
慣れていない
仮歯を装着した直後から生じる違和感の原因として、特に考えやすいのが、そもそもインプラントや新しい歯に慣れていないというものです。
オールオン4の治療では手術によって歯槽骨にインプラントが埋め込まれ、仮歯にかかる負かがインプラントを通じて骨へと伝わる状態となります。
それまで入れ歯などですごしていた場合は、今まで感じていなかった刺激や負担を実感しやすくなるため、違和感が生じやすいといえるでしょう。
また、そもそも歯を装着するという状況に慣れていないため、手術後の2~3週間は装着感による違和感が出やすく、時間をかけて少しずつ慣れていく必要があります。
しっかりと固定できていない
オールオン4の装着感に対して慣れていないという理由以外の違和感として、仮歯がしっかりと固定できていないという可能性が考えられます。
オールオン4の治療では、仮歯をアバットメントというパーツを使用してインプラントに固定します。しかし、この接続がしっかりとできていないと、仮歯がぐらついてしまう可能性があります。
仮歯がぐらぐらしてしまうときちんと噛みにくくなってしまうため、これが違和感へとつながり、手術からある程度時間が経過しても違和感が続いてしまいます。
また、噛むことによって仮歯に力が加わると、さらに固定が不十分な状態となり、場合によっては仮歯が外れてしまったりするため、仮歯がぐらつくようであれば、歯科医院に相談して固定しなおすようにしましょう。
炎症が起きている
オールオン4の治療では、インプラントを手術によって歯槽骨に埋め込みます。
手術を行った後に、手術部位に細菌感染が生じてしまったり、不適切な術後ケアで歯茎に強い負担がかかると炎症が起きてしまい、これが痛みなどの違和感につながる可能性があります。
また、そもそも体質や体調などによっては手術の負荷によって歯茎や顎の骨がダメージを受けて、これが炎症につながるケースもあります。
炎症については適切な痛み止めや抗生物質を服用することで治療が可能ですが、場合によっては症状が長引いてしまうこともあります。
炎症による違和感を予防するためには、手術前後に適切な口腔ケアを行うことや、歯や顎に負担がかかってしまうような、硬い食品を含んだ食事を避けるといった対応が有効です。
インプラントの埋入位置や角度に問題がある
オールオン4では、インプラントを埋め込む位置や深さ、そして埋入する角度を、顎の骨の状態や歯並びに合わせて、綿密に計算して決定する必要があります。
埋入する位置が不適切な場合、特定のインプラントに対して強い負荷がかかりやすくなったり、十分な安定感が得にくくなってしまう可能性があります。
埋入する深さや角度によっても、噛み合わせのバランスが崩れて適切な噛み心地を得にくくなり、違和感が生じる原因となります。
こうした違和感を避けるためには、治療経験が豊富で、しっかりとした検査をもとに、一人ひとりの口腔内に合ったインプラント手術を行える歯科医師による治療を受けることが大切です。
インプラント周囲炎が生じている
インプラント治療における特有のトラブルとして、インプラント周囲炎というものがあります。
インプラント周囲炎はその名称のとおり、インプラントの周囲にある歯茎で生じる炎症(歯周病)のことで、まずは歯肉に腫れなどの炎症による症状が表れ、進行すると歯槽骨が溶かされて歯茎が退縮していきます。
インプラント周囲炎は、通常の歯周病よりも進行が早いという特性があり、早期に治療を行うことが大切です。しかし、その一方で初期症状では自覚症状も出にくいため、気が付いたら症状が進行してしまっているというケースもあり、歯に違和感が生じているような段階では、すでにある程度進行している可能性が高いと考えられます。
インプラント周囲炎は、通常の歯周病と同じように、不十分な歯磨きによって残ってしまったプラークなどが原因となりますので、適切な歯のケアと、定期的な歯科医院でのケアを受けることが大切です。
インプラント周囲炎は仮歯の時期だけではなく、最終的な歯を装着した後でも、症状が引き起こされる可能性があります。
数ヶ月ごとに歯科医院での定期健診を受けることで、インプラント周囲炎を防止して状態を良好に保ちやすくなりますので、オールオン4による治療が終わった後も、しっかりとケアのために歯科医院に通うようにしましょう。
破損などのトラブルが起きている
オールオン4の手術を行った後で、インプラントや仮歯が破損してしまうなどのトラブルが起きていると、違和感が生じる原因となります。
インプラント自体は金属でできているため、通常の力のかかりかたで破損することは考えにくいですが、埋入された時点で破損があるとこうしたトラブルの原因となります。
また、装着する仮歯は強い力がかかると割れるなど破損してしまう可能性があるものですので、特に奥歯部分など強い力がかかりやすい部分については、強すぎる力で噛んだりしないようにすることが大切です。
オールオン4の仮歯期間の注意点
オールオン4治療で使用する仮歯は、最終的に装着する本歯と比べ、強度や耐久性が劣るものとなっています。
オールオン4の治療で最終的に装着することになる本歯は、セラミックやジルコニアといった素材が使用され、しっかりとした硬さと、天然の歯のような自然な見た目が期待できるものです。
一人ひとりの口腔内に合わせて、審美性と耐久性の高い素材を使用して作られるため、ある程度のコストはかかりますが、その分、とても良好な使用感が期待できます。
一方、仮歯は最終的には取り外す前提で、インプラントが結合されるまでの間の一定期間だけ使用されるものであるため、そこまでコストをかけず、噛み合わせという機能面を中心に考えて作られます。
仮歯は保険適用の入れ歯と同様、歯科用レジンなどの樹脂で作られるケースが多く、本歯と比べ、強い力がかかると変形したり、破損したりする可能性が高いといえます。
また、仮歯を使用している期間は、基本的にインプラントが骨に結合するのを待っている期間です。
この時期はまだインプラントと骨の結合が弱いため、強い力が加わってしまうと埋入位置がずれてしまったり、外れやすくなったりしてしまう可能性もあります。
このような理由から、オールオン4で仮歯を装着している期間については、なるべく硬いものを食べないようにしたり、食いしばりに注意するなど、歯に強い負荷がかかる行為を避ける必要があります。
強い負荷がかかってしまうと、違和感が長引きやすくなるばかりか、場合によっては治療のやりなおしなどが必要となる可能性もありますので、歯科医師の指示を守って、仮歯やインプラントに過度な負担がかからないように過ごすよう心がけましょう。
オールオン4の違和感を予防するために
オールオン4の治療では、仮歯の期間や本歯の期間を問わず、適切なケアが行えていないと違和感が生じる原因となる可能性があります。
オールオン4での違和感を予防するために、治療後は特に下記のような点に気を付けるようにしましょう。
禁煙する
煙草に含まれるニコチンは、血管を収縮させる性質を持つため、喫煙習慣があると血流が妨げられ、細胞の活動に必要な酸素や栄養が行き届きにくくなります。
手術によって埋め込んだインプラントと骨の結合は、細胞が活発であるとしっかりと行われやすくなります。その逆に、喫煙によって細胞の代謝が低下していると骨の結合が進みにくくなり、違和感が出たり、長引いたりしやすくなります。
そのほかにも、手術後の傷の回復にも時間がかかるようになりますし、免疫力の低下によって炎症などのトラブルも生じやすくなりますので、特に手術後は必ず禁煙をするようにしましょう。
インプラントが骨と結合し、仮歯から本歯へと治療が進めばひとまずは禁煙をしなくてもよいといえますが、喫煙習慣は免疫力を低下させるため、口腔内で菌が増殖しやすくなる要因となります。
お口のなかの菌が増殖すると、インプラント周囲炎などのリスクが上がりますし、そのほかにも喫煙習慣は口腔がんなどさまざまな口腔トラブルの原因となりますので、治療が終わったもなるべく禁煙は継続した方がよいでしょう。
歯磨きを丁寧に行う
歯に付着した食べ残しなどが残っていると、口腔内で菌が繁殖し、歯垢(プラーク)や歯石が形成されます。
また、菌が増殖すると、その菌が作り出す毒素や酸によって、歯や歯茎がダメージを受け、むし歯や歯周病といった症状の原因となります。
オールオン4の治療を受けている場合、むし歯が進行するということはありませんが、毒素によって歯茎が炎症をおこしたり、歯槽骨が溶かされるインプラント歯周炎になる可能性はありますので、歯磨きを丁寧に行い、口腔内を清潔に保つことが大切です。
歯磨きは、歯ブラシでの清掃を行うだけではなく、歯間ブラシやフロスを使用して、歯と歯の隙間までケアしましょう。
歯と歯の間は通常の歯ブラシだけでは十分に掃除できない可能性が高く、ここに残った汚れがトラブルの原因となるケースも多いため、歯間までしっかり掃除することが、口腔内を健康に保つためのポイントとなります。
歯科医院でしっかりとメンテナンスを受ける
オールオン4の治療が完了してしっかり噛めるようになった後でも、歯科医院での定期的なメンテナンスは続けるようにしましょう。
歯科医院では、インプラント周囲炎などの問題が出ていないかといった検査が行われ、必要に応じて専門的なクリーニングなどにより、口腔内の状態を良好に保つための診療を受けることができます。
インプラント周囲炎は通常の歯周病よりも進行が早いという特徴があり、きちんとしたケアを受けていないと、気が付いたらあっという間に歯槽骨が溶かされ、歯がぐらぐらしてしまうという可能性もあります。
定期的なメンテナンスを受けることでこうしたトラブルを未然に防ぐことが可能です。
また、こうしたトラブルがなくても口腔内の状態は加齢等とともに変化していくものですので、定期的に検査を受けて、その時の口腔状態に合わせた歯の調整などを行うことで、長く良好な噛み心地が継続しやすくなります。
歯周病やむし歯は事前にしっかりと治す
歯周病やむし歯といった症状が残ったままオールオン4の治療を行ってしまうと、治療期間中に症状が進行してしまい、口腔内の状態が変化してしまう可能性があります。
また、歯周病が治っていない状態で治療を進めると、インプラント周囲炎のリスクが高まってしまい、骨との結合が不十分となる可能性もあります。
オールオン4をはじめ、インプラントの治療を受ける場合は、まずは歯周病やむし歯といった症状の治療を優先されるかと思いますが、しっかりと歯のトラブルを治してから、オールオン4を受けることが大切です。
編集部まとめ
オールオン4の治療ではインプラントが骨に結合するまでの期間に仮歯が使用されますが、仮歯を装着した直後は違和感などが生じやすい時期です。
多くの場合は2~3週間程度で装着感に慣れて違和感が軽減しますが、長引く場合にはインプラント周囲炎などのトラブルも考えられますので、早めに歯科医師へ相談するとよいでしょう。
参考文献