インプラントの応用法ともいえるオールオン4は、標準的な治療法よりも優れた点が多々あります。とくに総入れ歯と比較した場合は、メリットが際立つため、深く考えずにオールオン4を選択してしまう方もいらっしゃることでしょう。それでもオールオン4は万能な治療法ではないことから、後悔するケースも稀にあります。ここではそんなオールオン4で後悔する理由について、メリットやデメリットも併せて解説します。
オールオン4で後悔することはあるか
- オールオン4とはどんな治療法?
- オールオン4は、ほとんどの歯がない、あるいは残存歯がゼロのケースに適応される治療法です。4本のインプラントで一塊となった上部構造を支えることから、このような名前が付けられています。人工歯根で装置を固定できるため、着脱式の総入れ歯とは大きく異なる治療法といえます。
- オールオン4をいれてどんなときに後悔する?
- オールオン4による治療で後悔するのは、次に挙げるようなケースです。今現在、オールオン4を検討中の方は、参考にしてみてください。
・術前・術後の説明が不十分な歯医者で治療を受けた
オールオン4には、通常のインプラント治療と同じような外科手術を伴います。この点は、総入れ歯の治療とは根本的に異なる部分です。外科手術前や手術後の説明が不十分だと、いろいろと後悔することが出てくることでしょう。例えば、オールオン4の手術を受けた後は、傷口が腫れたり、痛みが生じたりするものです。手術前には残っている歯を抜くことになるかもしれません。そうした術前・術後の説明が不十分な歯医者でオールオン4の治療を受けると、その他の場面でも後悔することが多くなりがちです。・経験や技術不足の歯医者で治療を受けた
オールオン4は、極めて専門性の高い歯科治療です。単にインプラント治療の経験があっただけでは、適切に手術を行うことは難しいでしょう。オールオン4自体の診療実績が豊富で、技術力も高い歯医者でなければ、治療結果に後悔することも多くなります。ですから、オールオン4の治療を任せる歯医者選びは、慎重に行うべきといえます。・術後のセルフケアや定期検診を怠ってしまった
オールオン4は、比較的大掛かりな外科処置が必要となります。片側の顎の骨に4本の人工歯根を埋め込むだけでも、心身への負担はそれなりに大きくなることでしょう。そのため術後のセルフケアや定期検診を怠ってしまうと、治療した部位の状態が悪くなり、痛みや腫れの症状も強く出ます。場合によっては、人工歯根が顎の骨に定着せずに治療自体が失敗に終わることもあり得ます。
オールオン4で後悔しないために知っておくべきこと
オールオン4で後悔しないためには、この治療に伴うリスクやデメリット、メリットなどを正しく理解しておく必要があります。
- オールオン4のリスクは?
- オールオン4に伴うリスクは、通常のインプラント治療とほぼ同じです。とくに以下の3点には十分な注意が必要となります。
・インプラントが骨に固定しない
オールオン4で埋め込む人工歯根も通常のインプラント治療と同様、顎の骨との結合が不可欠です。専門的にはオッセオインテグレーションと呼ばれる現象で、それが正常に起こらないと治療は失敗に終わります。そして、オールオン4にもインプラントが骨に結合しないリスクは存在しているのです。ただし、一般的にオールオン4で用いられるインプラント体は長く抜けにくいことは確かですがあくまでそのリスクがあるということは知っておきましょう。ちなみに、オールオン4では、骨がしっかりとある部分を選んで、インプラントを埋め込むことが可能となっています。・時間差で腫れや痛みが出る
オールオン4の手術を行った後には、少し時間を置いてから腫れや痛みが出る場合もあります。手術直後に顕著な症状が現れていなかったとしても、大事をとって安静に過ごすようにしてください。とりわけ痛みに関しては、手術で使った麻酔の種類や方法によって症状が出現する時間に大きな差が出やすくなっています。・インプラント周囲炎
歯周病というのは、歯が存在しなければ発症することがない病気です。つまり、もうすでに歯が1本もない無歯顎(むしがく)の人は、歯周病のリスクがゼロとなりますが、オールオン4による治療を受けた後は、インプラント周囲炎のリスクが生じます。なぜなら、オールオン4では、顎の骨に人工歯根を埋め込むからです。インプラントの周囲の歯茎は天然歯よりも弱く、歯垢や歯石が堆積すれば、歯周病菌も繁殖します。その結果、インプラント特有の歯周病であるインプラント周囲炎を発症してしまうのです。ちなみにインプラント周囲炎は、インプラント治療が失敗する主な原因であり、発症した時点で後悔する人は少なくないです。
- オールオン4のデメリットは?
- オールオン4には、次に挙げるようなデメリットを伴うことも知っておきましょう。
・歯が残っている場合は適応外
オールオン4は、基本的に歯が1本もない状態に適応される歯科治療です。それは「総入れ歯」と同じです。そのため天然歯が残っている場合は、適応外となることがほとんどです。あるいは、残っている歯を抜いた上で、オールオン4による治療を行うことになります。・普通のインプラントに戻すことが困難
すべての歯を失ったケースでは、普通のインプラントで治療するという選択肢もあります。その場合、埋入する人工歯根の本数が多くなり、治療にかかる費用も高くなりますが、何らかの理由でオールオン4という選択肢を除外する場合には、有用です。ただ、オールオン4による治療で後悔したり失敗したりしたからといって、普通のインプラント治療に戻すことは困難なことが多い点を理解しておく必要があります。これはオールオン4という治療システムに伴う問題であり、歯科医師の技術や経験とはあまり関係のないデメリットといえるでしょう。・メンテナンスが必須
オールオン4による治療を受けた後は、定期的にメンテナンスを受ける必要があります。快適な人工歯が手に入ったからといって安心せず、セルフケアとプロフェッショナルケアをしっかり両立させていきましょう。メンテナンスを怠ると、インプラント周囲炎や装置の故障のリスクが高まります。
- オールオン4のメリットは?
- オールオン4には、次に挙げる4つのメリットがあります。
・装置が外れない
オールオン4は、4本の人工歯根で上部構造をしっかりと固定する治療法です。会話や食事の際に装置が外れるということはまずありません。上部構造はコンパクトで、装着感も良好です。・手術日にすぐ仮歯を取り付けられる
通常のインプラント治療では、仮歯を付けるまでに一定の期間を要します。一方、オールオン4では原則として手術したその日に仮歯を装着できるのです。これは患者さんにとって極めて大きなメリットとなることでしょう。・すべての歯をインプラントより安く治療できる
すべての歯を普通のインプラントで治療した場合よりもオールオン4で治療した場合の方が費用を抑えられます。ケースによっては、半額程度になることもあるのです。・見た目が美しい
オールオン4と総入れ歯を比較した場合は、前者の方が美しい状態を長く保てます。総入れ歯は樹脂でできているため着色や劣化により色が変化しやすいです。
編集部まとめ
このように、オールオン4では術前・術後の説明が不十分だったり、歯科医師の技術が不足していたりする場合に後悔することが多いです。また、オールオン4のデメリットをしっかり理解していないことでも後悔しやすくなっているため、十分にご注意ください。
本文でも述べたようにオールオン4から普通のインプラント治療に戻すことは困難であることから、後悔や失敗は可能な限り避けたいものです。そのためにはカウンセリングの段階できちんと歯科医師の話を聞くことが重要となります。
参考文献