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「先天性欠損歯」とは?特徴や原因、発生確率や治療方法などを詳しく解説

「先天性欠損歯」とは?特徴や原因、発生確率や治療方法などを詳しく解説

生まれつき歯の数が足りない状態のことを「先天性欠損歯」と呼びます。大人になるまで気付かないこともあり、放置していると噛み合わせの悪化や虫歯・歯周病のリスクが高まります。

今回は「先天性欠損歯」とはどんな症状なのか、特徴や原因、発生確率などの疑問に回答。治療や診断方法に関する質問にも答えていくので、ぜひ最後まで読んでみてください。

先天性欠損歯の特徴や原因

先天性欠損歯の特徴や原因

先天性欠損歯はどのような特徴がありますか?
先天性欠損歯とは、生まれつき歯の本数が足りない状態を指し、「先天性欠如」ともいわれます。先天性欠損歯は病気ではなく、形成異常の一つです。 通常、人の歯の本数は乳歯が20本、永久歯が28本あり、親知らずを含めると32本ありますが、何らかの要因で歯が足りない状態になる場合があります。1本のみ不足しているケースが多いですが、2本以上不足するケースも少なくありません。
先天性欠損歯の原因を教えてください。
先天性欠損歯の原因は2023年4月現在でもはっきりと分かっていませんが、以下のことが関係していると考えられています。
  • 遺伝
  • 妊娠中の栄養不足
  • 歯の生育中の栄養不足
  • 放射線障害
  • 内分泌障害など体の疾患の影響
  • 感染・薬の影響

乳歯の下には永久歯になるための卵のような役割がある「歯胚(しはい)」があります。何らかの理由で歯胚が作られず、永久歯が生えてこないことが原因といわれてます。また、やわらかい食事が増えたことによる退化減少との意見もありますが、これも因果関係は分かっていません。

どのくらいの確率で発生しますか?
2010年11月の「日本小児歯科学会」の調査によると、10人に1人の確率で先天性欠損歯が発生することが確認されています。上あご(4.37%)より下あご(7.58%)の方が発生確率が高く、左右の差はほとんどありません。 発生確率が高い歯は、上下ともに第二小臼歯(前から5番目)が最も高く、次に側切歯(前から2番目)の順になります。先天性欠損歯は、永久歯が生えてこないため歯の生え変わりが正常に行われません。いつまでも乳歯が残っている場合は注意した方がいいでしょう。

先天性欠損歯の診断・治療方法

先天性欠損歯の診断・治療方法

どのような検査を行いますか?
先天性欠損歯の検査は、顎全体を撮影できるパノラマレントゲンを使用し、永久歯があるかどうか確認します。顎全体の撮影を行うことで下記のようなことがわかります。
  • 顎の骨の中に異常が見られないか
  • 歯の生え変わりに問題がないか
  • 永久歯の数や位置・方向

上記のようなレントゲンは、乳歯の生え変わりが遅い、歯の本数が少ない気がするなど、何か気になる症状がきっかけとなって受診するケースが多いです。実際は、大人になるまでレントゲンを撮る機会がない人も少なくありません。

何歳から診断できますか?
先天性欠損歯は、一般的に5歳~6歳頃から診断が可能になります。 子どもの乳歯は、2歳半~3歳までに約20本がすべて生えそろい、その後6歳~12歳にかけて徐々に永久歯に生え変わります。 歯の生え変わりは個人差があるため、1~2年の誤差は問題ない場合が多いです。しかし乳歯がいつまでも抜けずに残っている場合は、早期の受診をおすすめします。
先天性欠損歯の治療方法が知りたいです。
先天性欠損歯と診断された場合、以下のような複数の治療方法があります。
  • 矯正治療
  • インプラント治療
  • ブリッジ治療
  • 入れ歯を入れる

矯正治療は、欠損している隙間部分を整えたり、今ある歯で安定した噛み合わせをつくる治療方法です。取り外し可能なマウスピース矯正や、ワイヤーを用いた治療などがあり、矯正治療といっても複数の選択肢があります。

インプラント治療は、欠損している部分に人工の歯根を埋め込み、その上から人工歯を被せる治療方法です。大人になってから先天性欠損歯と診断された人におすすめです。インプラント治療は、医療機関によって差がありますが16~20歳以上を対象としているため、子どもは治療できません。

ブリッジ治療は、欠損している歯の両隣の歯を利用して、橋渡しのように人工歯を固定する治療方法です。治療にかかる期間が比較的短いメリットがありますが、両端の歯を削る必要があります。

入れ歯は欠損部分に入れ歯を装着する治療方法です。取り外し可能なので子どもにも対応しています。

また、乳歯が残っていてなおかつ噛み合わせや見た目が気にならないケースでは、あえて治療を行わないこともあります。ただし、乳歯は虫歯になりやすいため、定期的な歯科検診でのケアが大切です。

治療は保険適用で行えますか?
先天性欠損歯は自費治療が一般的ですが、2020年に改定されたため治療方法によっては保険適用になるケースがあります。
矯正治療の場合、合計6本以上の欠損があれば、保険適用内で治療可能です。その他にも細かい適用条件があるため、よく確認した方がよいでしょう。
また、ブリッジや部分義歯は保険適用になる可能性が高いです。ただし、医療機関によって対応が異なるため、事前に見積もりを依頼し、計画的に治療を進めましょう。
歯の治療は高額になるイメージをもつ人も少なくないと思いますが、症状や治療方法によって異なりますので、まずは医師に相談してみましょう。

先天性欠損歯の対策とリスク

先天性欠損歯の対策とリスク

先天性欠損歯を放置するとどうなりますか?
一般的に何もしなければ乳歯の寿命はあまり長くなく、20歳前後で抜けてしまうケースが多いです。抜けた状態を放置すると、周囲の歯が動いたり、歯並びを崩す原因になります。 歯並びが崩れると、嚙み合わせが悪くなることであごの成長に影響を与え、顎関節症のリスクを高めてしまう可能性もあるため注意が必要です。
また、噛み合わせの悪い部分があると、咀嚼する際に一部の歯に負担がかかることになり、歯周病や虫歯の発生につながりやすくなるでしょう。 歯並びや噛み合わせの悪化は、治療も長期間にわたり費用も高額になる可能性があるため、先天性欠損歯かどうか気になった段階で、一度受診することをおすすめします。
予防はできますか?
先天性欠損歯は、その名の通り先天性のため予防することはできません。あらかじめ予防することは困難ですが、乳歯が抜ける前に気付ければ、治療の選択肢が広がります。先天性欠損歯は、検診で指摘されるまで自分では気付かないケースが多いため、まずは歯科医院を受診することが大切です。
乳歯を残す場合、定期的なケアや管理を行えば、30代以降まで抜けずに残すことも可能です。そのためにも、日頃から虫歯や歯周病ケアなどの定期的な歯科検診を意識するといいでしょう。

編集部まとめ

編集部まとめ

先天性欠損歯は生まれつき、生えてくる歯の本数が少ない状態を指します。歯並びが固定する大人になってからよりも、子どもの方が治療しやすいです。しかし、大人になるまで気付かないケースもあり、放置すると、歯並びの悪化や顎関節症になる可能性もあります。このような、症状の悪化を防ぐためにも早期発見・早期治療を心がけましょう。
この記事を読んで「先天性欠損歯かも?」と疑いを持った人は、歯科医院の受診をおすすめします。

参考文献

この記事の監修歯科医師
柴原 孝彦医師(東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座)

柴原 孝彦医師(東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座)

1979年東京歯科大学卒業、2004年東京歯科大学主任教授、2012年東京歯科大学市川総合病院口腔がんセンター長、2020年東京歯科大学名誉教授

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