インプラント

インプラント治療後の頭痛に注意!頭蓋骨への影響と頭痛が起きた際の対処法

インプラント治療後の頭痛に注意!頭蓋骨への影響と頭痛が起きた際の対処法

インプラントは、失った歯を補うための装置ですが、治療後に頭痛で悩まされるケースも見られます。顎の骨に人工歯根を埋め込むことがなぜ頭痛を引き起こすのか、よくわからないという人がほとんどではないかと思います。たしかに、上顎のインプラントの場合は頭蓋骨がすぐ近くにあることから、治療のミスなどで頭痛が起きてもおかしくはありません。ここではそんなインプラント治療後の頭痛について、頭蓋骨への影響も踏まえながら対処法まで詳しく解説します。

インプラント治療について

インプラント治療について はじめに、インプラント治療の基本事項を確認しておきましょう。

インプラントとはどのような治療法ですか?
インプラントとは、歯を失った部位に人工歯根(インプラント体)を埋め込み、そのうえに上部構造を装着する治療法です。インプラントは、天然の歯と同様の見た目や機能を持ち、噛み合わせの改善や口腔内の健康維持に寄与します。特に、むし歯や歯周病、事故で歯を失った患者さんにとって有効な選択肢といえます。インプラント治療には、人工歯根を顎骨に埋入するための外科的手術が必要であり、治療期間は数ヶ月に及ぶことがあります。
インプラントのメリットを教えてください
インプラント治療には、以下に挙げるメリットを伴います。

◎見た目が自然で美しい
インプラントは天然の歯と見分けがつかない自然な見た目を持っています。これにより、患者さんは自信を持って笑顔を見せることができます。

◎硬いものでもしっかり噛める
インプラントは顎骨にしっかりと固定されるため、硬い食べ物でもしっかりと噛むことができます。その結果、食事の楽しみが増し、全身の栄養状態も向上します。

◎顎の骨が痩せにくい
インプラントは顎骨に埋め込まれるため、骨の吸収を防ぎます。これは歯を失った際に起こる顎骨の退縮を防ぎ、顔の輪郭を保つのにも役立ちます。

◎周りの歯に負担がかからない
インプラントは周りの歯に頼らず独立して機能するため、隣接する歯に余分な負担がかかりません。これにより、健康な歯を長く保つことができます。

◎装置の寿命が長い
インプラントは適切なケアを行えばとても長持ちします。定期的なメンテナンスを受けることで、長期間にわたって健康な口腔環境を維持することができます。

インプラントのデメリットを教えてください
インプラント治療には、以下に挙げるデメリットを伴います。

◎保険が適用されない
インプラント治療は一般的に保険が適用されないため、費用が高額になることがあります。患者さんは事前に費用を確認し、予算を考慮する必要があります。

◎外科手術が必須
インプラント治療には外科手術が必要です。手術に伴う痛みや不快感が生じることがあり、術後の回復にも時間がかかることがあります。

◎治療期間が長い
インプラント治療は複数の段階を経るため、治療期間が長くなることがあります。治療完了までに数ヵ月から1年程度かかることが一般的です。

◎感染症のリスクがある
手術を伴うため、感染症のリスクがあります。術後の適切なケアとフォローアップが重要で、感染を防ぐための対策が必要です。治療がすべて終わった後もインプラント周囲炎という歯周疾患にかかりやすい点も注意しなければなりません。

◎治療後のメンテナンスが重要
インプラントは長持ちしますが、治療後のメンテナンスが欠かせません。定期的な歯科検診や清掃を行うことで、健康な状態を維持することができます。 これらのデメリットを理解し、適切な対策を講じることで、患者さんはインプラント治療を安心して受けることができます。

インプラントによる頭蓋骨への影響と後遺症

次に、インプラントが頭蓋骨へ与える影響や後遺症について解説します。

インプラント治療後に頭痛がするのですが原因は何ですか?
インプラント治療後に頭痛がする原因としては、主に以下の2つが考えられます。

◎噛み合わせが悪くなった
インプラント治療後に頭痛が発生する原因の一つに、噛み合わせの不良が考えられます。インプラントや人工歯が正しく調整されていない場合、噛み合わせにズレが生じ、顎の筋肉や関節に負担がかかることがあります。この負担が頭痛として感じることがあるのです。

◎上顎洞を損傷した
もう一つの原因としては、上顎洞の損傷が挙げられます。上顎にインプラントを埋め込む際、上顎洞を損傷すると、術後に炎症が起こり、それが頭痛の原因になることがあります。専門的には上顎洞炎(じょうがくどうえん)と呼ばれる病気で、早期の治療と適切なケアが必要です。

インプラント治療でお口にしびれを感じるのですが原因は何ですか?
インプラント治療後に生じるくちのしびれの原因としては、下歯槽神経の損傷が考えられます。下歯槽神経は口周りの感覚を司る重要な神経であり、インプラント手術中に損傷することがあります。厚生労働省が発表した資料によると、インプラント埋入手術における下歯槽神経麻痺の発現率は0.13~8.5%で、そのなかには一時的な麻痺も含まれているため、すべてのケースで具体的な治療が必要となるわけではありません。
インプラント治療後に副鼻腔炎が発症する理由を教えてください
うえの奥歯の歯根付近には上顎洞という副鼻腔が存在します。インプラント治療中にインプラント体が上顎洞内へ突き抜けることがあると、副鼻腔炎(上顎洞炎)を引き起こすことがあります。これにより、頭痛や不快感を生じることがあります。そのためインプラント手術では、上顎洞を避けるために事前の正確な診断と慎重な手術が重要です。
その他にも知っておくべき後遺症はありますか?
後遺症とは少し異なるかもしれませんが、以下に挙げる2つのリスクも知っておく必要があります。

◎術中の動脈損傷による出血
インプラント手術中に動脈を損傷することがあり、これが原因で大量の出血が発生することがあります。迅速な対応が必要となるため、経験豊富な歯科医師による手術が重要です。

◎インプラント周囲炎
インプラント周囲炎は、インプラントの周囲組織に炎症が起こる状態で、放置すると骨の吸収が進行することがあります。適切な口腔ケアと定期的な歯科検診が予防に重要です。

後遺症が起こったときの対処法

後遺症が起こったときの対処法

後遺症が残った場合の対処法を教えてください
基本的な対処法は、治療を受けた歯科医院に相談することです。これまでの治療経緯を把握しているため、スムーズな対応が期待できます。具体的な対処方法はケースによりますが、後遺症の内容によっては再治療が必要になることもあります。保証制度がある歯科医院であれば、無料で再治療を受けられる場合もあります。ただし、保証範囲や内容は異なるため、詳細は治療を受けた歯科医院で確認してください。

また、客観的な視点からのアドバイスを求める場合は、セカンドオピニオンの利用も一つの方法です。セカンドオピニオンとは、別の歯科医院の歯科医師に意見を求めることです。

後遺症を防ぐ方法はありますか?
インプラント治療に伴う後遺症を防ぐためには、以下の2点を意識することが大切です。

◎経験が豊富な歯科医院を選ぶ
後遺症を防ぐためには、経験が豊富な歯科医院を選ぶことが重要です。インプラント治療には高度な技術と知識が求められるため、さまざまな症例を手がけた経験のある歯科医師がいる医院が望ましいです。豊富な経験により、適切な治療計画が立てられ、手術の精度も高まります。

◎設備が整っているかを確認する
インプラント治療の成功には、新しい設備と技術が欠かせません。CTスキャンなどの高度な診断機器が揃っている歯科医院を選ぶことで、より正確な診断と治療が可能になります。また、清潔な環境での手術は感染症のリスクを減少させるため、衛生管理が徹底されているかも確認することが大切です。 これらのポイントを考慮することで、インプラント治療後の後遺症をできる限り抑え、安心して治療を受けることができます。 頭痛が長引く場合には何らかの対応を必要とする場合もありますので、早期に診察を受ける様にしましょう。

編集部まとめ

今回は、インプラント治療後の頭痛や頭蓋骨への影響、後遺症が生じた際の対処法などを解説しました。インプラント治療の成功率は9割以上といわれており、手術の失敗や後遺症が残るリスクはすくないのですが、それでもいくつかの理由で頭痛や感染症に悩まされることがあります。いずれの場合も対処法が用意されているため、焦らずまずは主治医に相談しましょう。インプラント治療後の頭痛や後遺症を防ぐのであれば、経験が豊富な歯科医師を探し、医療設備も整った歯科医院を選ぶことが重要です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
大津 雄人医師(医療法人社団GLANZ大津歯科医院 副院長 / 東京歯科大学インプラント科 臨床講師)

大津 雄人医師(医療法人社団GLANZ大津歯科医院 副院長 / 東京歯科大学インプラント科 臨床講師)

東京歯科大学歯学部 卒業 / 東京歯科大学大学院歯学研究科(口腔インプラント学) 卒業 / 現在は大津歯科医院勤務 / 東京歯科大学インプラント科臨床講師 / 専門は口腔インプラント

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