インプラント

インプラントの抜歯即時埋入とは?メリット・デメリット・流れを解説

インプラントの抜歯即時埋入とは?メリット・デメリット・流れを解説

インプラントは義歯のような不安定さがなく、残っている歯に負担をかけることもありません。歯ごたえのある食べ物も問題なく食べることができます。

天然歯と変わらないので大きくお口を開くこともできますが、治療期間が長いことや治療費が高額になるなどがデメリットです。

インプラントの埋入方法は、抜歯即時埋入以外に従来型の待時埋入・早期埋入もあるので、それぞれの特徴や治療の流れを本記事で詳しく解説します。

インプラントの抜歯即時埋入とは?

歯の模型

抜歯即時埋入は抜歯後すぐにインプラントを埋入する手術方法です。

従来のインプラントの埋入は抜歯した後、歯茎や骨が治癒してから埋入するので、2~3ヵ月後までインプラントの埋入を待つ必要があります。

しかし、近年は歯科医療が発展し抜歯と同時にインプラントの埋入ができるようになりました。

抜歯即時埋入を行うと身体への負担が心配になると思いますが、かえって身体への負担は軽減され、適応性も従来のインプラントの埋入と差がないことが報告されています。

インプラント治療を必要とする患者さんは少なくないため、今後抜歯即時埋入を行う患者さんは増えると予想されます。

ただし、抜歯早期埋入は術式が難しいため歯科医師の技術が必要です。

抜歯早期埋入・待時埋入との違い

説明

インプラントの埋入はタイミングによって分類され、抜歯即時埋入・早期埋入・待時埋入があります。

タイミングとは、埋入の時期の設定ですが、埋入方法毎にメリットやデメリットがあるので一概にどの手術方法がよいと決めることはできません。

また、それぞれの埋入法は手術の方法や治療期間などが異なります。なお、埋入方法の選択には患者さんの歯や口腔内の状態の診断が必要です。

この項では、抜歯即時埋入・待時埋入を詳しく解説します。

早期埋入とは

早期埋入は、抜歯後4~16週にインプラントの埋入を行う手術です。適切な条件下であれば抜歯即時埋入と早期埋入の両者に術後の経過観察で遜色ないと報告されています。

軟組織の治療を伴う審美領域(前歯など)は、抜歯即時埋入より抜歯早期埋入がタイミングとして適切で安全性の高い治療ができるため、抜歯早期埋入が支持されるのです。

待時埋入とは

待時埋入は、従来施されている術式で、抜歯してから6ヵ月以上の時間を空けてインプラントの埋入が行われる手術です。

重度のむし歯や歯周病で抜歯を余儀なくされた場合、歯茎の炎症や骨の吸収が起こっていることが少なくないため治療を優先します。

そして、歯茎や骨が回復してからインプラント体の埋込を行います。抜歯即時埋入に比べると>感染リスクが減少し、インプラントを保護する骨や歯茎の回復を見込めることが特徴です。

ただし、待時埋入は抜歯後の治療に半年程かかるうえ、インプラント体を埋入してから骨に結合するのにさらに3ヵ月程かかります。

結合を確認できたら再び歯茎を切開し、仮のアバットメントを連結します。粘膜の治癒を待ち、人工歯を装着して終了する流れです。

待時埋入は、治療が終了するまでに1年以上かかることも予想されます。

抜歯即時埋入のメリット

治療中

抜歯即時埋入は、抜歯と同時にインプラント体(歯の根っこにあたる部分)を埋入する方法です。抜歯即時埋入にはさまざまなメリットがあります。

  • 手術回数や通院回数の減少
  • 心理的・身体的な負担減少
  • 治療期間短縮
  • 審美性の確保
  • 骨や粘膜の退縮の回避

上記のメリットが抜歯即時埋入が多く施術されるようになった理由です。ここからは、それぞれのメリットを詳しく解説します。

手術回数が減る

従来の治療では、治療が終了するまでに抜歯とインプラントを埋め込むための手術の2回の手術が必要でした。しかし、抜歯即時埋入は抜歯後すぐにインプラント体を埋入するので手術は1回で済みます。

治療期間が短縮できる

通常のインプラントの装着治療の総合的な治療期間は、上顎8~9ヵ月程・下顎で5~6ヵ月程です。

むし歯や歯周病が重篤な場合は治療期間が長くなるので、1年を超えることも少なくありません。一方で抜歯即時埋入は半分程の期間で治療が終了します。歯茎や骨の回復を待つ治癒期間が必要ないからです。

治療期間が短縮されるので、抜歯即時埋入は通院回数を減らすことも可能です。

骨や粘膜の退縮を避けられる

抜歯を行うと骨が吸収され骨が痩せた状態になります。骨が減少するとインプラント体を埋入する場所が狭くなりインプラントを埋入しても安定しません。

そこで、自身の骨や補填剤を充填して骨の増強を行いますが、再生までの時間や費用が増加します。

また、骨が痩せると歯茎も下がりほかの歯とのバランスが取れなくなる可能性もあります。

抜歯即時埋入は、骨や粘膜の退縮前にインプラント体を埋入するため、歯茎の形態の維持が可能です。

抜歯即時埋入のデメリット

歯が痛い男性

抜歯即時埋入はメリットも多く、インプラント埋入に積極的に取り入れている歯科医院も少なくありません。

しかし、待時埋入に比べると手術が難しく歯科医師の技術が問われるので、抜歯即時埋入を行わない歯科医院も存在します。

ここからは、抜歯即時埋入のデメリットを解説します。

取り扱っている歯科医院が少ない

抜歯即時埋入インプラントは、難易度の高い手術です。

通常、抜歯をすると歯を支えていた歯槽骨が役目を終えたことになり、数ヵ月程かけて徐々に吸収されていきます。

抜歯してすぐにインプラント体を埋入するには、歯科医師が吸収される骨の量を計算してインプラントの高さを推測し、正しい位置を見極めることが重要です。

しかし、インプラント体を埋入した後で予想を上回る骨の吸収があると、仕上げたときにインプラント体の深度が浅すぎてほかの歯と高さが合わなくなっていまいます。

埋入の失敗は治療のやり直しにつながり、治療の長期化や費用の増加などのリスクが高まるので、施術ができる歯科医院が少ないと考えられます。

歯肉や顎骨などの状態によってはできないケースもある

悩む女性

抜歯即時埋入は、治療期間や費用が抑えられるなどのメリットがあり、できれば抜歯即時埋入インプラントで治療をしたいと思う人も少なくないのではないでしょうか。

しかし、抜歯即時埋入を行うには適応条件があります

  • 顎骨の状態が良好=十分な厚み・高さ・密度がある
  • 感染のリスクが高くない

上記の項目に適合していない人は抜歯即時埋入ができない可能性があります。

感染のリスクが高まる

従来施術の多くを占めていた待時埋入は、抜歯後の感染や炎症が消滅してから手術を開始すれば、感染のリスクが減らせると考えられていたからです。

しかし、抜歯即時埋入法が用いられるようになった背景には、待時埋入ほど抜歯後に時間を置かなくとも良好な結果を得られるようになったからです。

抜歯で形成された穴は、実際のインプラントの大きさと合わないことが少なくないので、口蓋側や舌側にインプラント体を埋入するようになります。

すると軟組織で傷を閉じられなくなり感染リスクを高める可能性があります。また抜歯の原因が歯周病や根尖性歯周炎の場合、抜歯後に感染が残る危険性がありました。

これらのことから、抜歯即時埋入は感染リスクが高いと思われていましたが、感染巣を丁寧に取り除くことで感染リスクは減らせると報告されています。

抜歯即時埋入の治療の流れ

治療する男性

抜歯即時埋入は抜歯した当日にインプラント体を埋入するため、治療期間の短縮が可能です。

初診では、カウンセリングや検査・インフォームドコンセント(説明と同意)を行いますが、インフォームドコンセントでは、以下の確認を行います。

  • 手術に関する説明
  • インプラントの種類や審美性などの説明
  • 治療費に関する説明

上記以外に疑問に思ったことや心配なことは隠さず確認しましょう。説明を聞いたうえで納得したら同意書に署名します。

検査・診断・治療計画

まずカウンセリングを行い、患者さんの希望や相談を聞きます。

カウンセリング後にお口の中の診査を行い顎骨の状態を把握するために、検査(CT検査・レントゲン検査・血液検査・歯周病検査など)を実施します。

骨が十分にない場合は骨移植が必要になるため、CT検査は骨の量の確認に重要な検査です。検査後に歯や噛み合わせの確認のための模型作成の型取りを行う場合もあります。

検査で、噛み合わせ異常や歯周病がみつかると必要に応じて治療を優先します。検査後に診断が下され、今後の治療計画や必要な費用の提示が行われるのが一般的です。

抜歯・インプラント埋入

レントゲン写真

抜歯即時埋入では、抜歯と同時にインプラント体の埋入が実施されます。インプラント体埋入までの流れは次のようになります。

    1. 1.局所麻酔後に抜歯をする
    1. 2.抜歯によりできた穴をインプラントの形態に合わせる
    1. 3.インプラント体を埋め込む
    1. 4.骨補充剤充填を入れ、骨とインプラント体の隙間を塞ぐ

インプラントの形状を整える際に必要に応じて専用のドリルを使用します。また、支える骨が少ない場合は自家骨や人工骨を充填します。

仮歯または縫合

インプラント体埋込が終了すると、縫合またはインプラント専用キャップ・仮歯を装着してインプラント体と骨が結合するのを数ヵ月間程待つこともあります。

手術時間は1~3時間程です。入院の必要はなく、翌日から通常の生活を送ることが可能です。なお、一般的には、縫合した場合は約1週間後に抜糸を行います。

型取り・上部構造の装着

インプラント体埋入から数ヵ月後にインプラントの型取りを行い1~2週間後に作製した人工歯を装着します。

インプラント体と骨が強固に結合までは、食事などに注意事項がある場合がありますので、歯科医師の指示に従います。また、結合には個人差があるので人工歯の装着が多少遅れる場合があります。

インプラントを長期間残存させるためには、毎日の清掃と定期的なメンテナンスが必要です。

抜歯即時埋入の費用相場

お金

インプラントの治療費はほとんどが自由診療のため全額自費になります。治療費に含まれるものは初診料・再診料・検査料・手術費・インプラント製作費などが含まれます。

総額すると、抜歯即時埋入の費用は1本あたり30万~60万円(税込)前後が相場です。治療に個人差があるように治療期間や元の歯の状態により費用も個人で異なります。

2012年4月からインプラントの治療が一部保険適用になりましたが、保険の適用を受けるには条件があります。

  • 先天性の疾患で顎骨の3分の1以上の欠損が認められる場合
  • 顎骨の形成不全
  • 病気(骨髄膜炎・がんなど)や事故による外傷で広範囲の顎骨を失った場合

むし歯や歯周病の進行で顎骨を失った場合や加齢で骨が痩せた場合は保険の対象外です。なお、保険が適用される場合でも治療が受けられる施設は国に定められています。

インプラントの治療は高額で費用の負担を減らしたいと思う人には、インプラント治療は医療費控除の対象です。

まとめ

インプラント

インプラントの治療方法の1つである抜歯即時埋入は、抜歯と同時にインプラント体を埋めることができるため、患者さんの心理的・身体的な負担が軽減されます。

ただし、抜歯即時埋入には適用条件がありすべてに適用するのは難しいかもしれません。しかし、インプラントの埋入ができれば10年以上の残存も可能です。

インプラントは審美的にも天然歯と変わらない見た目になり、食べ物の触感も楽しむことができます。以上のことからもインプラントの埋入はおすすめです。

抜歯後にインプラント治療を検討しているのであれば、費用面も抑えることができる抜歯即時埋入を候補に入れてはいかがでしょうか。

参考文献

この記事の監修歯科医師
遠藤 眞次医師(グランメゾンデンタルクリニック)

遠藤 眞次医師(グランメゾンデンタルクリニック)

長崎大学歯学部を卒業後、東京と群馬の歯科医院で分院長を歴任。臨床のかたわら、歯周治療やインプラント治療についての臨床教育を行う「Dentcation」の代表を務める。他にも、歯科治療のデジタル化に力を入れており、デジタルデンチャーを中心に、歯科審美学会やデジタル歯科学会等で精力的に発表を行っている。

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遠藤 眞次医師(グランメゾンデンタルクリニック)

長崎大学歯学部を卒業後、東京と群馬の歯科医院で分院長を歴任。臨床のかたわら、歯周治療やインプラント治療についての臨床教育を行う「Dentcation」の代表を務める。他にも、歯科治療のデジタル化に力を入れており、デジタルデンチャーを中心に、歯科審美学会やデジタル歯科学会等で精力的に発表を行っている。

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