インプラント

インプラントの土台となる骨を増やす手術、骨造成について解説!

インプラントの土台となる骨を増やす手術、骨造成について解説!

骨量が足りないからインプラントできない、前歯のインプラントを考えているが骨が薄いと言われた、などの理由でインプラント手術をあきらめていませんか。

顎の骨が原因でインプラントをあきらめ、入れ歯で対応するしかないと考えている方は、骨造成を選択肢の一つに加えてはいかがでしょうか。

骨造成は骨の量を増やす治療で、これによりインプラント治療ができる可能性が高くなります。

ここでは骨造成が必要なケースや骨造成の手術、手術後の注意点を解説します。

インプラントの土台となる骨について

歯のレントゲン写真と歯科衛生士

インプラントの土台になるのはどこの骨ですか?
土台になるのは上下顎骨です。インプラント治療はチタンやチタン合金で作られた人工歯根を直接顎骨に埋め込み、その上に上部構造を取り付けて失われた歯を再生する治療方法です。
インプラントの土台に適さないのはどのような骨ですか?
骨の以下2点を確認し、適するかどうか判断します。

  • 骨量
  • 骨質

骨量が適していない骨は、高さ・幅が人工歯根の埋め込み長さ・幅に対して足りないケースです。公益社団法人日本口腔インプラント学会の治療指針では、歯槽骨と呼ばれる歯を支える骨の高さ10㎜以上・幅6㎜以上が望ましいとしています。
骨質とは骨の硬さや密度です。皮質骨の厚みと海綿骨の密度で判断されます。
骨量・骨質ともにエックス線撮影やCT撮影で検査します。インプラント実施時だけでなく、実施後の経年時の骨量の確認も重要です。

骨量が減ってしまう原因は何ですか?
原因には後天的なものと先天的なものがあります。後天的な原因は、主に次のようなものがあります。

  • 加齢
  • 長年の義歯の装着
  • 歯周病・むし歯
  • 抜歯後の放置・多量の抜歯
  • 顎骨の病変
  • 事故や怪我
  • ビスフォスフォネート系薬剤関連顎骨壊死

加齢による顎骨形状の変化や、義歯の長期使用で顎骨がやせてしまうことがあります。歯周病やむし歯による重度の炎症により歯の周囲の骨が溶かされたり、抜歯を長年放置した結果顎骨が吸収されたりします。病変によるものは腫瘍による顎骨欠損、外的要因として挙げられるのが事故や怪我による欠損です。ビスフォスフォネート系薬剤は骨粗鬆症の治療薬ですが、抜歯や局所麻酔によって顎骨壊死・顎骨骨髄炎を起こすリスクがあります。
先天的なものは骨質が十分ではないケースです。皮質骨・海綿骨ともに薄い、皮質骨が薄いなど、インプラントの初期固定が不安定になる原因になります。

インプラントの土台となる骨の手術

丸の札をもつ男性医師

インプラントの土台となる骨は増やせますか?
歯が残っている患者さんでしたら骨は増やせます。足りない骨を増やす手術が骨造成です。骨造成のタイミングは以下の2通りあります。

  • 先に骨造成のみ行う
  • インプラント手術と同時に行う

骨造成だけ先に行うケースは、骨が大きく欠損している場合で、造成した骨の定着に6ヶ月くらいかかることがあります。骨が人工歯根を支えられる状態になってからインプラント手術を実施します。骨造成からインプラント手術まで長期間になるため、事前に歯科医師から説明を受けるようにしましょう。
骨造成は主に次の方法があります。

  • ブロック骨移植
  • サイナスリフト(上顎洞底挙上法)
  • ソケットリフト
  • GBR(Guided Bone Regeneration・骨再生誘導法)

ブロック骨移植とは自分の下顎やほかの部位などから採取した骨を不足部分に移植し固定します。
サイナスリフトソケットリフトは、どちらも上顎の骨量が不足しているときに採用される術式です。サイナスリフトは上顎骨の広範囲に骨の厚みが薄い部分がある、残歯が少ないなど、骨量が少ない患者さんに適用されます。通常インプラント手術より先に実施されます。ソケットリフトが選択されるのは骨の補填分量が少ない場合です。インプラント手術と同時に実施されるケースもあります。
GBR(骨再生誘導法)は下顎や前歯部分の骨分量が少ない場合の造成方法です。骨を作るために使用する骨補填剤には主に次のようなものが挙げられます。

  • 自家骨(自分の骨)
  • 代用骨(人工の骨)
  • 異種骨(動物由来)

自家骨は自分の骨を移植または補填剤に使用します。自家骨は骨リモデリング機能により弾性のある骨が形成されやすいとされています。採取箇所は、患者さん自身の下顎やオトガイ、腸骨などです。ただ採取する箇所によっては、手術を行うので入院が必要となります。
人工骨(代用骨)は自家骨の代用として開発されたものです。炭酸アパタイト・リン酸オクタカルシウム(OCP)+アテロコラーゲン・水酸アパタイト(ハイドロキシアパタイト)・β型リン酸三カルシウム(βTCP)などがあります。炭酸アパタイト・OCP+アテロコラーゲンは歯科領域の人工骨として薬事法の認可を受けています。
異種骨は牛骨由来の脱タンパク牛骨ミネラル成分で作られたものです。欧米では骨補填剤として頻繁に使用されています。日本の薬事法で2024年5月時に歯周病の認可はあるが、歯科インプラントは未承認となっているため、患者さんの使用同意書が必要です。

骨造成のメリットは何ですか?
メリットは以下が挙げられます。

  • インプラント手術が可能
  • インプラント審美面の満足度

骨造成により骨量がないからと義歯やブリッジを使用していたものを、インプラントに置き換えることができます。また骨造成によりインプラントの人工歯根が定着します。
審美面では、特に前歯はスマイルライン・ハイスマイルラインを表現するのに重要です。骨造成を行うことで歯根部を安定させ、結果としてインプラント後の歯肉や歯茎のラインが揃い、患者さんの審美面での満足度を上げることが可能です。

骨造成のデメリットは何ですか?
デメリットは以下の点があげられます。

  • 時間
  • 費用
  • 副作用

インプラント前に骨造成を行う場合、骨の定着まで4ヶ月から6ヶ月ほどかかることがあります。骨の土台ができてからインプラント手術となるため、両方あわせると7ヶ月から9ヶ月となります。
骨造成は自由診療です。金額は、どの術式を使用するかで変わるため歯科医院で事前に確認しましょう。
副作用は、人工骨や異種骨を使用した場合の免疫反応による腫れや痛みです。自家骨でも腸骨から採取する場合は、手術や入院が必要です。

骨造成が必要になるのはどのようなケースですか?
顎骨にインプラントの人工歯根を埋め込むとき、骨の幅や高さが不足して人工歯根が安定しないと判断された場合です。骨量が不足する原因は、重度の歯周病やむし歯による炎症・抜歯後の放置・事故や怪我・腫瘍などがあります。これらの原因で歯槽骨が吸収、欠損している状態ではインプラントの骨量に適さないことがあります。

骨造成の術後の注意点

男性医師と患者

骨造成の手術後に痛み・腫れは出ますか?
術後歯肉に痛み・腫れが出ることがあります。代用骨や異種骨を使うことによる免疫反応が原因といわれています。
痛み止めや抗生物質が処方されるので、痛みがある場合は痛み止めを服用しましょう。抗生物質は最後まで飲み切ることが大切なので、痛み・腫れが落ち着いても服用を続ける必要があります。痛み・腫れの程度や期間は個人差があります。
骨造成の手術後はどのような食事をすべきですか?
手術直後は患部を使わないよう、もう一方で噛んだりできるだけやわらかいものを食べるようにします。入院する場合は、細かくカットされ飲み込んでも大丈夫なものや、お粥などが提供されるようです。食事は術後のお口を動かす訓練にもなるため、歯科医師の指示に従い、徐々に通常の食事に戻すようにしていきましょう。
骨造成の手術後にやってはいけないことは何ですか?
骨造成の補填剤や術式により変わるため歯科医師に確認しましょう。外科手術の後ですので、入浴・激しい運動・お酒・たばこなどは歯科医師の指示に従います。
自家骨を口腔以外の箇所から採取する場合、入院治療が必要なケースもあります。またGBRの場合でも歯ブラシによる歯磨きは歯科医師の許可が出るまで行わないようにしましょう。骨造成部に使用した人工膜を除去するまで歯磨きせず、うがいで洗口します。
術式に関わらず口腔内を清潔に保つため、決められた間隔で歯科医院に通い清掃をしてもらいましょう。歯磨きが許可されても、骨造成部周辺のプラーク除去はやわらかい毛先の歯ブラシやフロスを使用するなど、歯科医師の指導が必要です。

編集部まとめ

インプラントイメージ

骨造成を伴うインプラント治療は専門的な知識や経験を必要とします。

骨造成に対応できない歯科医院もあり、骨量不足と診断されたときは別の歯科医院に相談することが大切です。

インプラント治療の安全性を高めるためには、その土台となる骨の状態が重要です。骨造成法はいくつかの種類がありますが、患者さんごとに適した方法が異なりますので、精密検査を受けたうえで適した方法を相談しましょう。

費用や時間もかかるので、納得して手術を受けられるように術式を含め、しっかりと歯科医師に確認することが大事です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
大津 雄人歯科医師(医療法人社団GLANZ大津歯科医院 副院長 / 東京歯科大学インプラント科 臨床講師)

大津 雄人歯科医師(医療法人社団GLANZ大津歯科医院 副院長 / 東京歯科大学インプラント科 臨床講師)

東京歯科大学歯学部 卒業 / 東京歯科大学大学院歯学研究科(口腔インプラント学) 卒業 / 現在は大津歯科医院勤務 / 東京歯科大学インプラント科臨床講師 / 専門は口腔インプラント

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