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インプラント治療後にマウスピースを使用するメリットやデメリットを紹介

インプラント治療後にマウスピースを使用するメリットやデメリットを紹介

インプラント治療は、失った歯の機能を取り戻す手段の一つです。せっかく入れたインプラントを長持ちさせるには、日々のケアが欠かせません。そのメンテナンスの一環として、歯科医師からマウスピースの使用をおすすめされることがあります。

本記事ではインプラント治療におけるマウスピースについて以下の点を中心にご紹介します。

  • インプラント治療後にマウスピースを使用するメリット
  • インプラント治療後にマウスピースを使用するデメリット
  • マウスピース使用する際の注意点

インプラント治療におけるマウスピースについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

インプラント治療と生活習慣の関係

インプラント治療と生活習慣の関係

噛み癖はインプラントにダメージを与えますか?
歯ぎしりや食いしばりといった噛み癖は、インプラントに負担を与える原因になります。リラックスしているときは上下の歯の間に2~3mm程度の隙間があり、歯やインプラントに力はかかりません。しかし、眠っている間に歯ぎしりをすると、長時間強い摩擦と圧力が加わり、インプラント周囲の骨にストレスがかかります。食いしばりも同様で、集中時や就寝中に無意識に強く噛みしめてしまうことで、数倍の力がインプラントに伝わるといわれています。

こうした習慣が続くと、インプラントの寿命が短くなるほか、上部構造の破損やネジのゆるみを引き起こすこともあります。
噛み癖の主な原因はストレスや噛み合わせのズレとされており、自覚しづらいものです。 顎の疲れや歯のすり減りを感じたら、早めに歯科医院で相談しましょう。

噛む力が強いとインプラントにどのような影響がありますか?
噛む力が強すぎると、インプラントにさまざまな悪影響が生じます。インプラントは天然歯と異なり、歯根膜(歯の根と土台となる骨を結び付ける組織)がないため、噛む力を直接顎骨が受け止めます。その結果、過度な力が加わると上部構造を固定するネジが緩んだり、上部構造そのものが外れることがあります。
また、上部構造に使われるセラミックは美しく耐久性のある素材ですが、衝撃には弱いため、噛む力が強いと欠けや割れの原因になります。さらに深刻なのは、骨へのダメージです。インプラント体が受ける過剰な圧力によって骨が少しずつやせてしまうと、固定が不安定になり、インプラントが抜け落ちてしまうこともあります。

インプラント以外にも、頭痛や腰痛、肩こりなどを引き起こす可能性があるため、早めの対策が重要です。

歯ぎしり癖があってもインプラント治療はできますか?
歯ぎしりの癖がある方でも、インプラント治療を受けられます。ただし、歯ぎしりの程度や影響によっては、治療前後に対策を行う必要があります。歯ぎしりはブラキシズムとも呼ばれ、寝ている間に歯をこすり合わせるグライディングや、無意識に噛みしめるクレンチングなども含まれます。
また、強い力で食いしばるだけでなく、弱い力でも、接触し続けると弊害が起きると考えられています。
歯や顎骨がすり減っている中〜重度の場合は、まず歯ぎしりによるダメージを改善することが大切です。原因としてはストレスや噛み合わせのズレなどが考えられ、放置するとインプラント体や上部構造に過剰な力がかかり、ぐらつきや破損を招くおそれがあります。

インプラント治療後に使用するマウスピースについて

インプラント治療後に使用するマウスピースについて

マウスピースにはどのような種類がありますか?
インプラント治療後の噛み癖対策として使用されるマウスピース(ナイトガード)には、大きく分けてソフトタイプハードタイプの2種類があります。ソフトタイプはやわらかいゴム素材でできており、装着時の違和感が抑えられ、初めて使う方でも馴染みやすいのが特徴です。
ただし、やわらかい分すり減りやすく、強い噛み癖がある方では時間の経過とともに穴が開いてしまうこともあります。加えて、逆に噛みしめが強くなる場合もあるため、注意が必要です。一方、ハードタイプはレジン(硬質プラスチック)製で耐久性があり、インプラントや天然歯をしっかり保護します。最初は硬さによる違和感を感じやすいですが、長期的に見るとインプラント保護効果が期待でき、歯ぎしりが強い方に推奨されます。

また、形状もフルカバータイプ部分カバータイプに分かれます。インプラントを守る目的なら、上下どちらかの歯列全体を覆うフルカバータイプがおすすめです。

インプラント治療後にマウスピースを使用するメリットは何ですか?
インプラント治療後にマウスピース(ナイトガード)を使用するメリットとして、以下のような点が挙げられます。まず、インプラントの保護効果です。天然歯にある歯根膜がインプラントにはないため、噛む力が直接顎骨に伝わりやすい構造をしています。マウスピースを装着することで噛む力を分散させ、インプラントや周囲の骨への負担を軽減させます。また、マウスピースの使用は、歯ぎしりや食いしばりの予防にもつながります。さらに、噛み合わせの安定にも役立ちます。
インプラント治療後は噛み合わせのバランスが微妙に変化することがあるため、マウスピースを使うことで異常な力の集中を防ぎ、あご関節への負担も軽減できます。

結果として、インプラント周囲炎の予防や、快適な噛み心地を長く保つことにつながります。

インプラント治療後にマウスピースを使用するデメリットは何ですか?
マウスピース(ナイトガード)を使用するデメリットの一つ目は、費用がかかる点です。
マウスピースの製作には5,000円前後の費用が必要で、噛み合わせ確認や調整のために数回通院する場合もあります。加えて、使用しているうちにすり減ったり、穴が開いたりするため、経年劣化により作り替えが必要になることがあります。次に、装着時の違和感です。初めて使う際は、厚みや圧迫感を強く感じる方も少なくないようです。 ただし、1〜2週間程度で慣れるとされています。さらに、マウスピースのメンテナンスを怠ると、細菌が繁殖しやすい点にも注意が必要です。
ぴったり合わない場合は顎関節に負担がかかる可能性もあるため、違和感が続く場合は早めに歯科医院で調整しましょう。

インプラント治療後のマウスピースを使用するときのポイント

インプラント治療後のマウスピースを使用するときのポイント

インプラント治療後はどのくらいの頻度でマウスピースを使用すべきですか?
インプラントを長持ちさせるためには、毎晩マウスピース(ナイトガード)を装着することが基本です。
特に歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は、寝ている間に強い圧力がインプラントに加わるとされており、これが損傷や緩みの原因になることがあります。就寝中のマウスピース使用は、こうした無意識の力からインプラントを守る大切な習慣です。また、日中でも無意識に歯を噛みしめてしまう方や、デスクワークやスポーツ時に力が入りやすい方は、日中用マウスピースの使用がおすすめです。マウスピースの使用頻度やタイミングは個人の噛み癖や生活習慣によって異なるため、歯科医師に相談し、自身に合った使用スケジュールを決めることが大切です。
マウスピースのお手入れ方法を教えてください
マウスピース(ナイトガード)はお口のなかに直接触れるため、毎日の洗浄と正しい保管が欠かせません。使用後はすぐに流水で軽くすすぎ、やわらかい歯ブラシで汚れを優しく落としましょう
熱湯を使うと変形する恐れがあるため、ぬるま湯が推奨されます。
また、研磨剤入り歯磨き粉は傷の原因となるため使用を避けましょう。さらに、週に数回は専用の洗浄剤を使うことで、目に見えない細菌や臭いの原因を除去できます。
使用後はしっかり乾かし、通気性のある専用ケースに保管しましょう。湿った状態でしまうと、カビや細菌が繁殖しやすくなります。さらに、マウスピースは時間とともに摩耗したり、ひびが入ったりすることがあります。 インプラントの定期メンテナンス時に状態をチェックしてもらい、必要に応じて新しいものと交換しましょう。
マウスピース使用時に痛みがある場合の対処法を教えてください
マウスピース(ナイトガード)を初めて使用すると、軽い圧迫感や違和感を覚えることがありますが、数日〜1週間程度で慣れる場合がほとんどだといわれています。そのため、強い痛みが長く続く場合は、マウスピースが歯や歯茎に合っていない可能性があります。
硬すぎる素材を使用している場合や、噛み合わせ部分のズレによって局所的に圧力がかかると、歯や顎に負担がかかりやすくなります。違和感や痛みを感じる際は、無理に使い続けず歯科医師に相談しましょう。わずかな調整で痛みが改善する場合もあります。
また、慣れるまでは装着時間を短くし、徐々に使用時間を延ばすと違和感の軽減につながります。

編集部まとめ

編集部まとめ

ここまでインプラント治療におけるマウスピースについてお伝えしてきました。
インプラント治療におけるマウスピースの要点をまとめると以下のとおりです。

  • マウスピースを使用するメリットは、噛む力を分散しインプラントや周囲骨への負担を軽減する役割を持つほか、歯ぎしりや食いしばりを予防し、インプラントの緩みや破損を防ぐ効果が期待できる点などが挙げられる
  • マウスピースのデメリットには、製作費用や調整に通院が必要で、経年劣化により作り替えが生じる可能性がある。また、装着初期は厚みや圧迫感に違和感を覚える場合があり、加えて清掃を怠ると細菌が繁殖しやすく、口腔環境に悪影響を及ぼす恐れがあるため、日々の手入れが必要
  • マウスピースは毎晩の装着が基本であり、特に歯ぎしりや食いしばりがある場合は就寝時の使用が重要である。使用後はぬるま湯で洗浄し、乾燥させて清潔に保管し、痛みや強い違和感が続く場合は、無理に使用せず歯科医師に相談して、調整を受けることが望ましい

インプラントを長持ちさせるためにも、正しいマウスピース(ナイトガード)の使用方法や知識を深めましょう。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

出身大学:福岡歯科大学 / 経歴:1989年福岡歯科大学 卒業 1991年松浦明歯科医院 開院 2020年医療法人松栄会まつうら歯科 理事長就任 / 資格:厚生労働省認定研修指導医 日本口腔インプラント学会認定医 ICOI (国際インプラント学会)Fellowship認定医 / 所属学会:ICOI(国際口腔インプラント学会) 日本口腔インプラント学会 日本臨床歯科学会(SJCD) 福岡支部 理事 日本顎咬合学会 会員 日本臨床歯科CAD/CAM学会(JSCAD)会員

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