「すべての歯を失ってしまったけれど、インプラントで快適な生活を取り戻したい」とお考えではありませんか?すべての歯をインプラントにすることは可能です。しかし、治療法や費用、期間など、気になることはたくさんあるでしょう。
この記事では、すべての歯をインプラントにする方法、治療期間、費用、インプラント治療を受けられないケース、費用を抑える方法などについて詳しく解説します。インプラント治療を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
すべての歯をインプラントにする方法
- すべての歯をインプラントにすることは可能ですか?
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すべての歯をインプラントにすることは可能です。
ただし、すべての歯を一本一本インプラントにする方法は金銭的にも身体的にも負担が大きいため、現実的には主に下記の2つの方法が主な選択肢として挙げられます。一つ目は、オールオン4、またはオールオン6という方法です。
これは、上顎または下顎に4本または6本のインプラントを埋め込み、そこにすべての人工歯を固定する方法です。
少ないインプラント(土台)ですべての歯を固定することができるため、手術の負担や費用を抑えることができます。手術当日に仮歯を装着できる場合が多く、見た目の回復が早いといったメリットもあります。二つ目は、インプラントオーバーデンチャーです。
これは、数本のインプラントを埋め込み、その上に総入れ歯を固定する方法です。
総入れ歯がインプラントによって固定されるため、従来の総入れ歯よりも安定感があり自然に近い噛みごたえをえることができます。
総入れ歯を取り出して清掃することができるため、お口の中の衛生管理がしやすいというメンテナンス性が高いメリットがあります。
- インプラントオーバーデンチャーとはどのような治療法ですか?
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インプラントオーバーデンチャーは、インプラント(人工歯根)と入れ歯(義歯)を組み合わせた治療法です。
インプラントの安定性と、入れ歯のメンテナンス性との、両方のメリットを組み合わせたような治療法で、顎の骨に数本のインプラントを埋め込み、その上に入れ歯を装着することで、入れ歯の安定性を高め、快適な噛み心地を実現します。
- すべての歯をインプラントにする際の治療期間はどのくらいですか?
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すべての歯をインプラントにする際の治療期間は、患者さんの口腔内の状態や選択する方法によって異なります。
オールオン4やオールオン6の治療の場合、治療期間は約6ヶ月から1年程度です。
手術当日に仮歯を装着できる場合が多く、見た目の回復も早めに達成できます。インプラントオーバーデンチャーでの治療の場合は、3ヶ月〜1年程度で治療が行えます。
インプラントが骨に定着するまで、少なくとも数ヶ月間は待つ必要があります。歯を失った箇所一本一本をインプラントにする多数歯インプラントも可能ですが、インプラント治療は身体への負担も大きいため、すべての歯を一度に治療するということは現実的に難しいといえるでしょう。
仮にすべての歯のインプラント治療を行っていった場合、数本ずつ治療しては回復を待つという流れになるため、1年以上の治療期間が必要となることが推測されます。
- インプラント治療を受けられない人はいますか?
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インプラントは、失われた歯の機能を回復する有効な手段ですが、すべての方が受けられるわけではありません。
インプラント治療を受けられない可能性のある方の条件を確認してみましょう。重度の糖尿病や、免疫不全疾患
治癒能力の低下や感染リスクの増大により、インプラント治療の成功率が低下してしまう可能性があります。
糖尿病の方はすべてインプラントが受けられないわけではなく、血糖値をコントロールできる方の場合は受けられることもあります。インプラント治療前にはかかりつけの内科と、インプラントを受けようとしている歯科医院で必ず相談の上治療してもよいかどうか判断を仰ぎましょう。重度の骨粗鬆症
骨密度が低下していると、インプラントと骨の結合が困難になる場合があります。かかりつけの医師に相談するか、自分が骨粗鬆症かどうか気になっているという段階であれば整形外科などを受診して検査し、問題ないか確認しましょう。
重度の心疾患や呼吸器疾患がある方
インプラントは外科的な手術が必要になります。このような疾患を持っている方は手術によるリスクが高まる可能性がありますので、注意が必要です。
出血性疾患がある方
手術時に出血が止まりにくくなる可能性がありますので、注意が必要です。
重度の歯周病
歯周病が進行していると、インプラントを支える骨が失われ、インプラントの安定性が損なわれます。
顎の骨の不足
インプラントを埋め込むための十分な骨量がない場合は、骨造成手術が必要になることがあります。
未成年者
顎の骨の成長が完了していないと、インプラント治療は成長が終わるまで待つ必要があります。
その他にインプラント治療が受けられないケース
ヘビースモーカーや妊娠中などインプラントに限らず手術自体にリスクがあるような要因がある場合は治療が受けられない可能性があります。
ただし、これらの条件に当てはまる場合でも、状態によっては治療が可能な場合や、ほかの治療法が選択できる場合があります。歯科医院では、インプラント治療が適用できるかどうかの精密な検査と診断をしたうえで治療に進めますので、まずは自分がインプラント治療ができるかどうか歯科医院に相談してみるのがよいでしょう。
インプラントの費用
- すべての歯をインプラントにする場合、費用はどのくらいかかりますか?
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インプラントは自費診療であるため、すべての歯を治療する場合の費用は、クリニックによって差が大きく、また患者さんの口腔内の状態や選択する治療法、そして使用する素材などによっても大きく異なります。
大まかな目安の費用として、オールオン4やオールオン6の治療では、上顎、または下顎どちらかで200万円から400万円程度、両顎で400万円から800万円程度がかかります。
次にインプラントオーバーデンチャーでは、インプラントの本数により異なり、インプラントの本数が多いほど費用は高くなります。
インプラント4本の場合では、上顎、または下顎どちらかで50万円から150万円程度、両顎で100万円から300万円程度が目安です。そして、インプラントを1本1本治療していく多数歯インプラントの場合、1本あたり25万円程度とすると片顎20本で500万円程度、両顎で800万円から1000万円程度となり、費用はインプラントの本数が多いほど高くなります。
また、インプラント治療費のほかに、骨造成手術が必要な場合は追加費用がかかる場合もあります。
その他、インプラントでは人工歯の素材(セラミックやジルコニアなど)によっても費用が変わったり、CT撮影や診断に必要な費用も別途かかることがあります。
上記はあくまで目安であり、実際の費用は歯科医院によって大きく異なりますので、まずは歯科医院で直接治療の相談を行うことが必要です。
インプラント治療はいずれにしても高額な治療となるため、事前に複数の歯科医院で見積もりを取り比較検討するとよいでしょう。費用だけではなく医師の技術や経験、そしてアフターケアなども考慮して、信頼できる歯科医院を選ぶようにしましょう。
- インプラントの治療費用を抑える方法はありますか?
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インプラントの費用を抑える方法としては、医療費控除の利用が考えられます
医療費控除は年間に支払った医療費が一定の金額以上の場合に、その金額を所得から控除することができるという制度で、その年の所得税からの還付や、翌年の住民税の減税といった対応を受けることができます。
インプラント治療は医療費控除の対象となるため、いったんは必要な治療費を支払いますが、税金からある程度の還付を受けることができる可能性があります。
医療費控除を受けるためには、年末調整や確定申告の際に領収書が必要になりますので、大切に保管しておきましょう。
ただし、美容目的のインプラント治療は対象外となる場合があるので注意が必要です。治療前に歯科医院に相談してみましょう。
- インプラントを部分的に行うよりすべての歯を一度に治療する方が費用を抑えられますか?
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数本の歯をインプラントにするよりも、オールオン4やオーバーデンチャーといった治療を行うことで、治療費用を抑えられる可能性はあります。
ただし、それぞれの治療にはメリットやデメリットがありますので、まずは自身にどのような治療が適しているのか、さまざまな治療法を取り扱う歯科医院で相談してみるとよいでしょう。
すべての歯を治療する方法
- 総入れ歯とはどのような治療ですか?
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総入れ歯は、上下どちらかの顎の歯がすべて失われた場合に用いられる治療法です。
総入れ歯は、床(しょう)と呼ばれる土台部分と、人工歯と呼ばれる床の上に並べられた人工の歯とで構成されています。
一般的な総入れ歯の治療は保険適用で行われ、床と人工歯の両方が歯科用レジンで作られます。この場合は費用を抑えることができる一方、装着時の違和感が出やすかったり、安定感が得にくくしっかり噛む力が発揮しにくいというデメリットがあります。総入れ歯にはさまざまな種類があり、インプラントオーバーデンチャーもその一つです。
自費診療では入れ歯の素材や固定の方法などもさまざまで、治療法によってはしっかりとした噛み心地が実現しやすいものや、見た目が自然なもの、使用時の違和感が少ないものなども作ることができます。
- インプラントより総入れ歯が向いているケースはありますか?
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インプラントと総入れ歯は、どちらも失われた歯の機能を回復する治療法ですが、それぞれに特徴があり患者さんの状況によってどちらが適しているかは一概にはいえません。
しかし、顎の骨の状態が良くない方や、そもそも健康状態が悪くインプラント治療がそもそも難しいようなケースでは、総入れ歯の治療が向いているといえます。
また、経済的な負担を抑えたい場合や、なるべく治療期間を短くしたい場合も、総入れ歯の方が適している可能性が高いといえるでしょう。
ただし、患者さんの状態によって適切な治療法が異なり、インプラントと総入れ歯、どちらが適しているかは、歯科医師が、口腔内の状態や全身的な健康状態、経済状況、ライフスタイルなどを総合的に判断して、適した治療法を提案してくれますので、まずはいろいろと相談してみましょう。
編集部まとめ
すべての歯をインプラントにする治療法は、口腔内の状態やライフスタイルによって異なります。
インプラント治療は、高額な治療となるため、費用だけでなく、歯科医師の技術や経験、アフターケアなども考慮して、信頼できる歯科医院を選ぶことが大切です。
この記事を参考に、歯科医師とよく相談し、ご自身にあった治療法を見つけてください。
参考文献