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インプラントの骨補填材とは?骨補填材の種類や骨造成などについて解説

インプラントの骨補填材とは?骨補填材の種類や骨造成などについて解説

インプラント治療の際に使用されることがある、骨補填材を知っていますか?
インプラント治療を実施する際には、人工歯根をしっかりと固定するために歯槽骨が十分にあることが必要ですが、骨補填材は歯槽骨が不足しているときなどに使用されます。
この記事では、骨補填材の仕組みや種類、使用におけるリスクやデメリットなどについて解説します。

骨補填材を使用して行う骨造成とは

骨補填材を使用して行う骨造成とは

骨補填材は、骨造成と呼ばれる治療を行う際に使用される材料です。
骨造成とは、その文字のとおり骨を作る治療で、歯科治療においては歯槽骨の分量を補って、インプラント治療の補助や、口腔環境の改善を目的として行われます。
まずは骨造成について詳しく説明します。

骨造成の仕組み

骨造成は、簡単にいえば人の身体の組織が治癒する仕組みを利用して、新しく骨が作られるのを補助することによって行われます。
人の身体はさまざまな細胞によってできています。当然骨も細胞の一つで、骨は骨芽細胞という細胞の働きによって作られています。この骨芽細胞が働きやすい環境を整えつつ、新しい骨が必要な場所に対して活発に働くように誘導することで、骨造成は行われます。
そして、この骨造成の働きをサポートするものが、骨補填材と呼ばれるものです。

骨補填材とは

骨補填材は、骨芽細胞の働きをサポートしたり、誘導したりするものの総称です。

身体のなかで骨が新しく作られていく仕組みは、破骨細胞と骨芽細胞という二つの細胞の働きによって行われます。破骨細胞が古くなった骨を溶かし、骨芽細胞は骨にカルシウムなどを補強して、新しい骨を作ることによって、入れ替わっていきます。この働きをリモデリングと呼びます。
骨補填材は、このリモデリングの働きによって少しずつ治療を受けた人の骨に置き換わっていき、新しい骨が作り出されることによって、骨の量を増やすことができます。

骨補填材には自分の身体から採取した骨が使用されたり、科学的に合成されたものが使われたりと、さまざまな種類が存在しています。

骨造成の流れ

インプラント治療における骨造成の流れは、治療法の種類によっても詳細は異なりますが、大まかにいうと、歯槽骨に骨補填材を入れるスペースを作り、そこに骨補填材を入れて蓋をして、新しい骨ができるまで一定期間待つという方法で行われます。
骨補填材を注入してから新しい骨が作られるまでの期間は数ヶ月から1年と治療法によっても幅が広く、骨の不足している分量などに応じて、適切な治療法が選択されます。

骨造成はどのようなときに行われる?

骨造成が行われるのは、主にインプラント治療を希望している方の歯槽骨の厚みや高さが不足していて、そのままでは適切なインプラント治療が行えない場合です。

インプラントは歯を支えている骨でもある歯槽骨にチタンなどでできた人工歯根を埋め込み、しっかりと固定された人工歯根に白い人工の歯をかぶせるという方法で行います。
しかし、歯槽骨は加齢や歯周病などによって分解されて体内に吸収されてしまっているケースもあり、この場合はそのままインプラント治療を行っても、歯を十分な強度で固定することができません。
そこで、あらかじめ骨造成によって歯槽骨を補強するか、インプラント治療と同時に骨造成を行うことで、歯槽骨を強化して十分な安定性のある治療を目指すのです。

なお、歯槽骨が分解されてしまうことによる問題という点では、歯周病によって骨が減り、歯肉の退縮などが生じて、歯がグラついてしまうというような状態も考えられます。
この場合も骨造成を行えば回復ができそうに感じますが、自身の歯をしっかりと固定するためには、骨を支えている歯槽骨だけではなく、歯と骨をつなげている組織である歯根膜も再生する必要があります。通常の骨造成では歯根膜の再生はできないため、歯周病の治療を目的とする場合は、歯周組織再生療法という治療が必要です。

骨造成によるメリット

骨造成を行うことで、歯槽骨の量が減ってしまっている方でも、インプラント治療を受けることができます。

そもそもインプラント治療は何かしらの原因で歯を欠損してしまった場合に行う治療ですが、歯を失う原因はむし歯と歯周病が2大要因です。
むし歯の進行によって歯を失ってしまった場合は歯槽骨はしっかりと残っているケースも多いですが、歯周病は歯槽骨が減少していく病気なので、歯周病によって歯が抜けるということは、歯槽骨が大幅に減ってしまっている状態です。
そのため、歯周病で歯を失うというケースの場合は、そのままではインプラント治療を選択できず、入れ歯やブリッジの治療を行うしかありません。
しかし、骨造成を併用すれば減少してしまった歯槽骨を回復させることができるので、天然の歯と同じような噛み心地を実現しやすいインプラント治療も利用できるようになります。

また、歯周病によって歯を失った方ではなくても、歯が抜けてからしばらく入れ歯やブリッジなどで対応していた場合は、歯が抜けている部分の歯槽骨に噛む際の刺激が伝わらなくなることから、歯槽骨が減少しやすくなってしまいます。
そのため、いざ入れ歯やブリッジからインプラントに入れ替えようと思っても、やはり骨の量が不足していて、治療を受けられないというケースがあります。このような場合でも、骨造成を併用することでインプラントが利用できるようになるため、治療の幅が広がって、理想的な噛み心地を実現しやすくなります。

骨造成の術式

骨造成には、さまざまな術式があります。それぞれ治療の内容や治療にかかる期間、適応となる骨の状態が異なりますので、現状や目的に応じて適切な治療法を選択することが大切です。

骨誘導再生法(GBR)

骨誘導再生法は、英語でGuided Bone Regenerationと記載され、この頭文字をとってGBR法とも呼ばれます。
この方法はインプラントの埋入の前後同時に行われ、インプラントと一緒に歯槽骨周囲に骨補填材を充填します。
また、このときにGBR法ではメンブレンと呼ばれる人工膜で骨補填材の周囲を覆って、その上から歯肉の縫合を行います。
これは、歯槽骨の周囲には骨芽細胞だけではなく線維芽細胞という歯肉のコラーゲンなどを作り出す細胞なども存在していて、骨補填材を充填した場所に線維芽細胞が入り込んでしまうと、骨形成が阻害されてしまう可能性があるために必要となります。
メンブレンで線維芽細胞が入り込むのを防ぐことで、しっかりと歯槽骨が再生されやすくなり、骨の再生に伴ってインプラントも十分に固定されます。

通常のインプラント治療であれば、埋め込んだインプラントがオッセオインテグレーションという働きで骨に固定されるまでに3ヶ月から半年ほどの期間が必要となりますが、GBR法を併用する場合は、歯槽骨が再生するまでに半年から1年の期間が必要です。
歯槽骨が再生し、インプラントがきちんと固定されたら、後はアバットメントや上部構造を取り付けて、インプラント治療が完了となります。

上顎洞底挙上術(ソケットリフト法)

上顎の奥歯の上部分には、上顎洞と呼ばれる空洞(副鼻腔の一つ)があります。歯を支えている骨の量が不足していると、この上顎洞の底が低くなり、骨の高さが足りなくなってインプラント治療が行えなくなります。
そこで、骨の高さを回復させて上顎洞底を引き上げるという治療が、上顎洞底挙上術と呼ばれる骨造成の治療法です。

上顎洞底挙上術にはソケットリフト法と呼ばれるものと、サイナスリフト法と呼ばれるものがあり、ソケットリフト法は残っている骨の高さが3~4㎜以上という場合に適応になります。

ソケットリフト法はインプラントの埋入と同時に行われます。
具体的には、まず歯槽骨にインプラント埋入のための穴をあけ、その穴からソケットリフトを行うための専用の器具を挿入し、上顎洞底をたたくことで、歯槽骨の内側に空間を作ります。この空間に骨補填材を充填し、後はインプラントを埋入して治療が完了します。
GBR法が歯槽骨と歯茎の間に骨補填材を充填するのに対し、ソケットリフト法では歯槽骨の内側に骨補填材を重点するため、メンブレンで膜を作る必要はありません。
インプラントを埋入するための穴から骨補填材を入れるため、傷口や腫れ、痛みといったhく作用も小さく抑えることができる治療です。

上顎洞底挙上術(サイナスリフト法)

サイナスリフト法は、上顎洞底と歯槽骨の間に作ったスペースに骨補填材を入れるという点ではソケットリフト法と同じです。しかし、スペースの作り方は、頬側の歯肉を切開して直接上顎洞底粘膜を剥離する方法で行われ、治療方法がソケットリフト法と異なります。
また、サイナスリフト法の場合は、いったん歯槽骨の補強のみを行い、骨に十分な厚みができてから、インプラント治療を行うという2段階での治療になるため、治療の期間も長くなります。
サイナスリフト法は、骨の高さが1~4㎜ほどと少なく、ソケットリフト法での治療が行えないと判断されるケースに適応となります。

歯槽堤分割拡大術(スプリットクレスト)

歯槽堤分割拡大術は、スプリットクレストとも呼ばれ、骨の高さではなく厚みが不足している場合に行われる骨造成術です。
インプラント治療で埋入するインプラントは、細くても3㎜ほどの幅があるため、歯槽骨の厚みがこれより薄い状態では、十分に固定することができません。
そこで、歯槽堤分割拡大術では歯槽骨を特殊な器具を使用して分割して広げ、その隙間にインプラントを埋め込むと同時に骨補填材を充填することで、厚みの不足している歯槽骨でもインプラント治療を可能にする治療法です。
歯槽堤分割拡大術を行うためには、インプラントを埋入したい部分の歯槽骨が3㎜程度は残っていることや、骨の中に骨髄が存在していることなどが必要です。

骨造成を伴う場合のインプラント治療の期間

骨造成を伴うインプラント治療は、その治療法によっても期間が異なります。
ソケットリフト法や歯槽堤分割拡大術の場合は、骨造成はインプラントをしっかりと固定するためのサポートとしての役割になるため、通常のインプラント治療と大きな差がなく治療を進めることができます。
一方でGBR法では骨造成がしっかりと行われるのを待つ必要があるため、治療期間が通常のインプラントと比べて数ヶ月間長くなります。
また、サイナスリフトについては骨造成が終わってからインプラント治療が開始される場合もあり、その場合はインプラントにかかる期間が1年程度と、長期間に及ぶ可能性があります。

骨補填材が持つ機能の詳細

骨補填材が持つ機能の詳細

骨補填材には、大きくわけて3つの機能があります。それぞれについて解説します。

骨形成能

骨形成能は、新しい骨を作り出す機能のことで、骨芽細胞が持つ性質です。
骨補填材として自家骨(自分の骨)を使用した場合は、骨補填材自体に骨芽細胞が含まれることになるため、骨形成能を持ちます。骨再生能と呼ばれることもあります。

骨誘導能

骨を作り出す骨芽細胞を誘導して集め、骨組織を作り出す性質が骨誘導能です。
骨誘導能を持つ骨補填材を使用することで、充填した場所に素早く新しい骨を作り出すことができます。

骨伝導能

すでにある骨組織に沿って、骨を増強させていく性質が骨伝導能です。残っている歯槽骨を強化し、骨を増加させていくことで骨造成を行います。

インプラントの骨補填材の種類

インプラントの骨補填材の種類

骨補填材には、下記のような種類があります。

自家骨

自分の骨を採取し、それをミキサーなどで細かく砕いて使用するものが、自家骨による骨補填材です。
自分自身の骨から作るため、骨を作り出す骨芽細胞が含まれていて、素早く新しい骨を作り出すことが可能となります。
また、自分自身の骨が材料であるため、感染などのリスクを心配する必要もありません。
骨補填材を作るために骨の採取を行わなければならない点がデメリットとなります。
骨形成能、骨誘導能、骨伝導能というすべての能力を持ちます。

他家骨

自分以外の人の骨を材料としたものを他家骨または同種骨といいます。
人の骨が材料であるため、骨誘導能、骨伝導能の能力を持っていて治療効果は高い一方、わずかながら感染などのリスクもあります。
しかし、基本的には感染が起こらないような加工が行われ、安全性に配慮された状態で使用されるため、過度に心配する必要はありません。

人工骨

人間の骨の構造に似せた、人工的に作り出された化学製品が人工骨です。
主に骨伝導能を持ち、安全に使用しやすい一方で、効果が安定しない点がデメリットです。

異種骨

人以外の骨を加工して作られた移植材です。主に牛の骨が利用されています。
骨伝導能を持ち、扱いやすい性質ですが、人体に吸収されにくいため感染などのリスクが高まるというデメリットがあります。

骨補填材を使用する治療のリスクやデメリット

骨補填材を使用する治療のリスクやデメリット

骨補填材を使用した治療では、ウイルスの感染などがリスクとして考えられます。
いずれの骨補填材についても、感染を予防するためにしっかりと処理が行われているのですが、それでもやはり絶対に安全とは言い切れず、感染症の原因となってしまう可能性があります。
自家骨を骨補填材として使用する場合は感染などのリスクはないといえますが、骨を採取するための場所でも手術を行う必要が生じるため、身体への負担が大きくなってしまうという点がデメリットとして挙げられます。

まとめ

まとめ

年齢や歯周病などによって骨の高さや厚みが不足してしまっている場合でも、骨補填材を使用した骨造成を行えば、インプラント治療を受けることができる可能性があります。
骨補填材にもさまざまな種類があり、骨造成の方法も骨の状態などによって適切な内容が異なりますので、歯槽骨が減ってしまってインプラントができないと言われた方は、歯科医師とよく相談して、適切な方法での骨造成を検討してみてはいかがでしょうか。

参考文献

この記事の監修歯科医師
遠藤 眞次歯科医師(グランメゾンデンタルクリニック)

遠藤 眞次歯科医師(グランメゾンデンタルクリニック)

長崎大学歯学部を卒業後、東京と群馬の歯科医院で分院長を歴任。臨床のかたわら、歯周治療やインプラント治療についての臨床教育を行う「Dentcation」の代表を務める。他にも、歯科治療のデジタル化に力を入れており、デジタルデンチャーを中心に、歯科審美学会やデジタル歯科学会等で精力的に発表を行っている。

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長崎大学歯学部を卒業後、東京と群馬の歯科医院で分院長を歴任。臨床のかたわら、歯周治療やインプラント治療についての臨床教育を行う「Dentcation」の代表を務める。他にも、歯科治療のデジタル化に力を入れており、デジタルデンチャーを中心に、歯科審美学会やデジタル歯科学会等で精力的に発表を行っている。

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