インプラント治療は、歯を失った際に自然な噛み心地と見た目を取り戻せる方法です。しかし「何歳くらいでインプラント治療を受ける?」「年齢による影響はある?」と気になる方もいるのではないでしょうか。 本記事ではインプラント治療を受けるのは何歳が多いのかについて以下の点を中心にご紹介します。
- インプラント治療を受け始めるのは何歳が多いのか
- インプラント治療の適正年齢とは
- インプラント治療のメリット・デメリットとは
インプラント治療を受けるのは何歳が多いのかについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
インプラント治療を受け始めるのは何歳が多い?
インプラント治療を受ける年齢層は、40〜60代が多いようです。インプラントは中高年の方が選択する治療というイメージがありますが、これは必ずしも若い世代には向かないという意味ではありません。40〜60代の患者さんが多いのには、理由があります。
インプラント治療を受ける患者さんの平均年齢は50代以上が中心ですが、20代や30代で治療を受ける人も一定数います。若い世代でも事故やむし歯、歯周病などが原因で歯を失った場合、インプラントを選択するケースがあります。
年齢に関係なく、歯を失った際にインプラントを選択することは珍しいことではありません。重要なのは、年齢よりも口腔内の状態や健康状態に合った治療を選ぶことです。インプラント治療を検討する際は、年齢だけで判断せず、自身に合った治療法を歯科医師と相談しながら決めることが大切です。
インプラント治療の適正年齢とは
インプラント治療が適用される年齢は、20歳前後からとされています。インプラントが顎の骨に直接埋め込まれる治療であるため、顎の成長が完了していることが重要であるためです。
天然の歯は、成長に伴う骨格の変化に適応しながら位置を調整していきますが、インプラントは一度埋め込むとその位置が固定されるため、成長途中の段階で治療を行うと歯並びや見た目に影響を及ぼす可能性があります。
16歳頃には親知らずを除いた永久歯が生え揃いますが、顎の骨の成長はそれ以降も続くため、治療のタイミングは歯科医師の診察を受けて慎重に判断することが大切です。
また、インプラント治療に年齢の上限はありません。しかし、インプラントは外科手術を伴う治療のため、全身の健康状態や体力が十分であるかが重要な判断基準となります。高齢者の場合、持病の有無や術後のメンテナンスが難しくなる可能性を考慮し、治療を受けられるかどうか慎重に判断する必要があります。70歳以上の方がインプラントを検討する場合は、歯科医師と相談のうえ、体調や生活環境を含めて総合的に判断するのがよいでしょう。
そもそもインプラント治療って?
インプラントとは、体内に埋め込む人工物全般を指す言葉ですが、歯科医療における”歯科インプラント(デンタルインプラント)”のことを指す言葉でもあります。
歯科インプラント治療は、歯を失った際に、顎の骨に人工歯根を埋め込み、その上に上部構造を装着することで、自然な噛み心地と見た目を取り戻す治療法です。これは、従来の入れ歯やブリッジと異なり、インプラント体まで補うことで、より安定した機能を発揮できる点が特徴です。
インプラントは3つの主要パーツで構成されています。
・インプラント体
顎の骨に埋め込まれる部分で、チタンまたはチタン合金で作られています。サイズは直径3〜5mm、長さ6〜18mm程で、骨と結合しやすい特性を持っています。
・アバットメント
インプラント体と上部構造をつなぐパーツで、チタンやジルコニアなどの素材が用いられます。
・上部構造
実際の歯の部分にあたる部分で、セラミックやレジン、合金などの材料で作られます。
インプラント治療は、見た目の自然さや機能性の高さから、さまざまな方が取り入れている治療法ですが、外科手術を伴うため、診断と計画が重要です。
治療を検討する際は、歯科医と相談しながら、自身に合った方法を選択することが重要です。
インプラント治療のメリット
インプラント治療のメリットは以下のとおりです。
天然歯と近い使用感
インプラントにすることで、自身の歯と同じような感覚でしっかり噛めるようになります。入れ歯を使用すると、違和感を覚えたり、食べ物が挟まることで「しっかり噛めない」と感じる方も少なくありません。しかし、インプラントは失った歯の根の代わりに顎の骨に埋め込まれ、その上に上部構造を装着するため、天然の歯のような使用感を得られます。
また、インプラントの主な材料として使用されるチタンは、骨と結合しやすく、耐久性がよいため、しっかりと固定され、強い力が加わっても安定した状態を保てます。
さらに、インプラントは本来の歯のように機能するため、違和感が少なく、食事の際にしっかり咀嚼できます。また、自然な発音で会話を楽しめます。日常生活においても快適に過ごせるでしょう。
人工歯根が顎骨にしっかりと固定される
インプラントは顎の骨と結合する治療法であるため、上部構造がしっかりと固定されます。結果、天然の歯と同じような咀嚼力が期待でき、食事をより快適に楽しめるでしょう。入れ歯では噛むのが難しい硬い食べ物でも、インプラントならば自然に噛めるため、食事の満足度が大きく向上します。
また、天然歯の歯根は顎の骨に埋め込まれており、それが刺激となって骨を健康に保っています。しかし、歯を失うとその刺激がなくなるため、顎の骨は次第に痩せてしまいます。
インプラント治療では、人工歯根を直接顎の骨に埋め込むため、噛むたびに骨に刺激が伝わり、骨の吸収を防ぐ効果が期待できます。
残存する歯に負担をかけない
部分入れ歯は、クラスプ(留め具)を残存している歯に引っかけて固定するため、支えとなる歯に負担がかかります。また、ブリッジの場合は固定源となる歯を大きく削る必要があるため、健康な歯にダメージを与えてしまいます。インプラントは周囲の歯を削ることなく独立して埋められるため、ほかの歯に負担をかけずに治療できます。
ブリッジや入れ歯を選択すると、残った歯を削る必要が生じるため、長期的に見ると歯の寿命を縮める可能性があります。しかしインプラントは、周囲の歯を支えにしない治療法のため、健康な歯を維持しながら歯を補えます。残っている歯への影響を抑えたい方にとって、インプラントはよい選択肢の一つといえるでしょう。
審美性が高い
部分入れ歯は金属の留め具を使用するため、お口を開けたときに目立ちやすいというデメリットがあります。また、ブリッジも保険診療のものではプラスチックや金属が使われることがあり、見た目に違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれません。
一方で、インプラントは金属の留め具を必要とせず、上部構造にはセラミックやジルコニアが使用されるため、見た目が自然です。
インプラントの大きな魅力のひとつは、審美性がよい点です。保険適用の差し歯は、色味が天然歯と異なり、不自然に見えてしまうことがあります。また、入れ歯では笑ったときに金属の部分が見えることもあります。しかし、インプラントは天然の歯に近い色や質感を再現できるため、美しく自然な仕上がりを実現できます。
インプラント治療のデメリット
インプラント治療のデメリットは以下のとおりです。
費用が高い
入れ歯やブリッジには保険が適用される種類もあるため、費用を抑えた治療が可能とされています。一方、インプラント治療は基本的に自費診療となるため、1本の治療であっても費用は決して安くはありません。
そのため、インプラント治療を検討する際は、治療費用や支払い方法について事前にしっかり確認し、納得したうえで相談することが大切です。歯科医院によっては分割払いや医療ローンなどの選択肢もあるため、費用面についても相談するとよいでしょう。
治療期間が長い
インプラント治療は、入れ歯やブリッジと比べて治療完了までに時間がかかるという特徴があります。手術後にインプラント体と骨がしっかり結合するまでの期間が必要となるため、治療全体の期間が長くなる傾向があります。
治療にかかる時間は患者さんの口腔内の状態や骨の状態によって個人差があるため、事前の診察を通じて治療期間を確認しておきましょう。インプラントを検討されている方は、治療の流れや期間についても歯科医師と相談しながら進めましょう。
手術が必要
インプラント治療では、人工歯根を顎の骨に埋め込むための手術が必要になります。手術中は麻酔を施すため、痛みを感じることはほとんどないとされていますが、身体への負担がまったくないわけではありません。
そのため、糖尿病などの全身疾患がある方は、手術のリスクを考慮し、慎重に判断する必要があります。事前に歯科医師と十分に相談し、体調や持病の管理を含めた治療計画を立てることが大切です。
治療後に定期的なメンテナンスが必要
インプラント治療が完了した後も、長く快適に使い続けるためには定期的なメンテナンスが欠かせません。メンテナンスでは、インプラントの定着状態、かぶせ物(上部構造)の適合、噛み合わせのバランスなどをチェックし、必要に応じた調整やクリーニングを行います。
推奨されるメンテナンスの頻度は3ヶ月に1回程度ですが、治療を受ける方の口腔状態によって異なるため、歯科医師の指示に従うことが大切です。また、インプラントだけでなく、健康な歯を守るためにも、定期的な歯科検診を受ける習慣をつけることが望ましいです。
インプラントは、正しいケアを継続することが重要な治療法です。日々の歯磨きをしっかり行い、定期的に歯科医院でメンテナンスを受けることで、インプラントの寿命を延ばし、トラブルを未然に防ぎます。
口腔ケアに対する意識がしっかりしていないと、せっかくインプラントを入れても長く快適に使うことが難しくなる可能性があります。今あるご自身の歯も含めてしっかりケアしていくことができる方にインプラント治療は向いています。
もしメンテナンスを怠ると、インプラントの固定部分が緩んで外れてしまうことや、歯磨き不足による歯肉炎・インプラント周囲炎(インプラント周囲の骨が吸収される炎症)を引き起こすリスクが高まります。
高齢者のインプラント治療のリスク
高齢者のインプラント治療のリスクは以下のとおりです。
体力の低下で手術が難しい場合がある
インプラント治療は、歯茎を切開し、顎の骨に人工歯根を埋め込む外科的な処置を伴う治療です。抜歯と同程度の負担とされていますが、高齢になると全身の健康状態や体力の低下により、手術の負担が大きくなる可能性があります。
高齢者は糖尿病や高血圧、心疾患などの持病を抱えているケースがあり、服用している薬の影響によっては手術が困難になることもあります。また、術後の回復が遅くなったり、身体的・精神的な負担が増すことも考えられるため、慎重な判断が必要です。
そのため、インプラント治療を検討する際は、事前に全身の健康状態を確認し、歯科医師と十分に相談したうえで治療計画を立てることが重要です。場合によっては、インプラント以外の選択肢(入れ歯やブリッジ)を考慮することも大切です。
インプラントと顎骨が結合しない
高齢者でも、全身の健康状態や顎の骨に問題がなければインプラント治療を受けられます。しかし、若い方と比べると、インプラント体と顎の骨が結合しにくい傾向があることを理解しておく必要があります。
インプラント治療では、歯茎を切開し、顎の骨を削った後にインプラント体を埋め込み、骨と結合させる工程が欠かせません。しかし、高齢になると免疫力の低下や骨の代謝が遅くなることにより、傷の治りが遅くなり、インプラント体と骨がしっかり結合しない可能性があります。
インプラントと骨の結合が不十分な場合、インプラントが安定せず、噛む力に耐えられないため、再手術が必要になることもあります。そのため、高齢者がインプラント治療を受ける際には、骨の状態を十分に確認し、治療計画を慎重に立てることが大切です。場合によっては、骨の再生治療(骨造成)を行ってからインプラントを埋入する方法も検討されます。
細菌に感染しやすい
高齢者がインプラント治療を受ける際に注意すべき点の一つが、細菌感染のリスクが高まることです。インプラント治療では、歯茎を切開し、顎の骨を削って人工歯根を埋めるため、手術後の傷口から細菌が侵入する可能性があります。
高齢になると、免疫力の低下により傷の治りが遅くなり、細菌感染を引き起こしやすくなります。感染が進行すると、インプラント周囲の組織に炎症が起こり、インプラント周囲炎や顎の骨の吸収などの問題を引き起こす可能性もあります。
インプラント治療は、年齢を重ねるにつれて必要性が増す治療ですが、細菌感染のリスクを十分に理解し、口腔ケアを行うことが重要です。
まとめ
ここまでインプラント治療を受けるのは何歳が多いのかについてお伝えしてきました。要点をまとめると以下のとおりです。
- インプラント治療を受ける年齢層は40〜60代が多いが、若い世代には向かないという意味ではない
- インプラント治療が適用される年齢は、顎の成長が完了している20歳前後から
- インプラント治療のメリットは、自然な見た目で自身の歯と同じような感覚でしっかり噛めること。デメリットは、手術のリスクや自費診療のため高額であること
インプラント治療を受ける年齢層は40〜60代が多いですが、顎の成長が完了する20歳前後から、健康状態が良好であれば高齢者でも治療を受けられます。しかし、年齢が上がるにつれて、手術の負担や骨の状態、細菌感染のリスクなど、考慮すべき点が増えることも忘れてはいけません。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。