先天性欠如歯は2007〜2008年に実施された全国調査によって、約10%の子どもに起こることがわかりました。
先天性欠如歯は放置すると、歯並びの悪化やむし歯などさまざまなリスクがあります。
そのため、当記事では先天性欠如歯を早めに発見する方法や治療法をお伝えします。歯の健康を守るためにも、読んで頂けると幸いです。
永久歯がない先天性欠如歯の治療
- 永久歯が足りない場合、治療法はありますか?
- 治療法は主に3つあります。永久歯のない部分を閉じる治療や乳歯をできるだけ長く使った後にブリッジやインプラントを使用した補綴治療、あるいはその両方を行う治療法です。どのような治療法が適しているかは、患者さんの年齢や歯の状況によって異なりますが、長期的な歯列矯正治療が必要になります。
- 先天性欠如歯の治療にはどのような方法がありますか?
- 先天性欠如歯の治療法は大きく分けて以下の3つです。
- ブリッジ
- 歯列矯正治療
- インプラント治療
ブリッジは両脇の歯に人工の歯を引っかける治療法です。メリットは保険が適用されるため、費用がほかの治療法に比べて安くなります。デメリットはブリッジを入れる周辺の歯を少し削る必要がある点です。歯は削ってしまうと、その分寿命が短くなります。
歯列矯正治療は専用の器具を用いて、永久歯が生えてこない箇所を閉じる治療法です。人工歯を使わないので、自分の歯だけで噛み合わせを改善できます。先天性欠如歯は小学生くらいの年齢で発見され、永久歯が揃うのを待ってから歯列矯正治療を実施するパターンがほとんどです。しかし、先天性欠如歯での歯列矯正治療は治療の難易度が高く、歯列矯正歯科医院でないと難しくなります。
インプラント治療は、歯が失くなった箇所の顎骨に人工の歯を埋める治療法です。固定式なので違和感が少なく、自分の歯と同じような感覚で噛めます。また、見た目も美しく、普通の歯と比べても見分けがほぼつかないほどです。しかし、保険の適用外なので費用が高くなります。
なお、インプラント治療は顎骨が成長途中の子どもは受けられません。一般的に女性は18歳、男性は20歳頃になって顎骨の成長が止まります。そのため、インプラント治療を受けられるのは成人のみです。
また、先天性欠如歯の本数や場所によって治療法は異なります。歯の状態によってはあえて治療しないケースもあります。東京歯科大学が発表した論文では、先天性欠如歯を発見したものの歯列として問題ないため、乳歯を保存した9歳男児の患者さんも紹介されていました。
- 治療後のケア方法を教えてください。
- 治療後のケア方法は治療法によって異なります。歯列矯正治療の場合は動かした歯がもとに戻ろうとする可能性があるので、治療後でも1〜3年は保定装置を歯に付ける必要があります。インプラント治療の場合は歯科医院での定期的なメンテナンスが必要です。
また、自宅での口腔ケアを怠ると、インプラントの周囲に細菌が侵入して歯周病のような症状が現れるリスクがあります。そのため、歯科医院で教わる口腔ケアを自宅でも念入りにする必要があります。
- 治療期間と費用相場を教えてください。
- 治療期間の目安は以下のとおりです。
- ブリッジは2〜3ヶ月
- 歯列矯正治療は1〜3年
- インプラント治療は3〜12ヶ月
ブリッジでの治療は手術などが必要ないので、短期間で済みます。歯列矯正治療の期間が1〜3年と長いのは器具を用いて、歯を動かすのに時間がかかるためです。インプラント治療の場合は1度目の手術をした後に3〜5ヶ月間の治癒期間が必要なため、治療期間が長くなります。
また、手術前にも念入りに検査する必要があります。ただし、上記で紹介した期間はあくまで目安です。治療期間は患者さんの年齢や歯の状態によって異なります。また、それぞれの治療費用の相場は以下のとおりです。- ブリッジは1〜3万円
- 歯列矯正治療は20〜100万円
- インプラント治療は30〜60万円
歯列矯正治療とインプラント治療は保険の適用外となるため、費用が高額です。しかし、先天性欠如の歯が6本以上の場合は厚生労働省が定めた特定の症状に含まれるため保険適用となります。
ただし、保険適用は指定自立支援医療機関の指定を受けている歯列矯正歯科医院や病院だけなので、注意が必要です。また、患者さんの年齢や治療が必要な歯の本数によって費用は大きく変動します。詳しい費用は歯科医院を受診してみないとわかりません。
永久歯がない先天性欠如歯が起こる原因や対処法
- 先天性欠如歯が起こる原因を教えてください。
- 先天性欠如歯が起こる明確な原因はわかっていません。しかし、両親から遺伝する可能性が高いとされています。
また、妊娠初期の時期に母親が喫煙しているかどうかも関わりがあります。論文では母親が妊娠初期に1日6本以上喫煙していた場合、先天性欠如歯が起こりやすいと発表されました。しかし、上記で説明した原因はあくまで可能性の1つです。先天性欠如歯が起こる原因ははっきりとは特定されていません。
- 永久歯がないと気付いたときにできる対処法はありますか?
- 永久歯がないと気付いたときは、早めに歯科医院を受診しましょう。先天性欠如歯は患者さんご自身や家族の方で対処することは難しいとされています。通常であれば、6〜12歳くらいには乳歯は永久歯へと生え変わります。もし永久歯がなければ、速やかに歯科医院を受診しましょう。
- 先天性欠如歯の好発部位を教えてください。
- 先天性欠如歯の好発部位は前から5番目と2番目の歯です。これは日本小児歯科学会が行った全国調査で明らかになっています。また、上顎だけに欠如がある場合は2.5%、下顎だけにある場合は5.7%、上下の顎両方にある場合は1.9%です。
- 永久歯が足りない状態を放置するリスクを教えてください。
- 永久歯が足りない状態を放置すると、ほかの歯の成長を妨げて歯並びが悪くなるリスクがあります。また、むし歯のリスクが通常よりも高くなります。乳歯は永久歯よりもエナメル質が薄く、耐久性が低いからです。
さらに、歯の根も短いので成人してから抜けてしまうこともあります。歯が抜けた状態を放置していると、徐々に歯並びが悪化し、顎関節症にもつながります。そのため、永久歯が足りない状態は放置せずに速やかに歯科医院を受診しましょう。
先天性欠如歯の早期発見方法と予防方法
- 先天性欠如歯を早期発見するためのチェックポイントを教えてください。
- 先天性欠如歯を早期発見するには、歯科医院にてパノラマX線写真を撮ることが有効です。日本臨床矯正歯科医会では、お子さんが7歳になるまでにパノラマX線写真を撮ることを勧めています。また、幼少期にパノラマX線撮影で乳歯の生えかわりや顎の骨の成長に異常がないかがわかるので、お子さんの歯を健康に保つのにも役立ちます。
- 先天性欠如歯の予防は可能ですか?
- 先天性欠如歯を完全に予防することは不可能です。理由は先天性欠如歯は遺伝的な要因が高いとされているからです。例外として、妊娠時であれば禁煙することでお子さんの先天性欠如歯の予防につながります。しかし、出産後だと完全な予防は不可能です。そのため、7歳までに歯科医院でパノラマX線写真を撮影して早期に発見することが重要です。
編集部まとめ
先天性欠如歯は日本人の子どもの約10%に現れる状態です。
8〜10歳頃に先天性欠如歯が発見された際は、抜歯した後に歯列矯正治療で歯列を閉じることがほとんどです。
また、歯列矯正治療の後は歯がもとに戻るのを防ぐため、1〜3年間は保定装置を付ける必要があります。
対して、インプラント治療は顎骨が未発達だと実施できないため、成人の患者さんにしか行えません。インプラント治療の後は歯科医院での定期的なメンテナンスが必要です。
先天性欠如歯が起きる原因は両親からの遺伝や母親の妊娠初期の喫煙が挙げられています。しかし、明確な原因は特定されていません。
そのため、先天性欠如歯は完全に予防するのが不可能です。日本臨床矯正歯科医会では7歳までにパノラマX線写真でお子さんの歯の状態をチェックし、早期発見を推奨しています。
参考文献