インプラント

歯を失った場合の治療法と、歯がないことによる健康への影響を解説

歯を失った場合の治療法と、歯がないことによる健康への影響を解説

一生涯、歯を一本も失わずに済む人はごく稀だといわれています。つまり多くの人は、さまざまな理由で歯を失っていってしまうものなのです。それ自体は仕方のないことですが、歯を失った状態を放置することは基本的に良くありません。

歯がない状態は口腔や全身にさまざまな影響を及ぼすからです。ここではそんな歯を失った場合の治療法と、歯がないことによる健康への影響についてわかりやすく解説します。

歯を失ったままにしておくリスク

歯を失った状態で放置するとどのようなリスクがありますか?
歯がない状態を放置すると、次に挙げるようなリスクが生じます。

リスク1:口元のコンプレックスになる
歯がない状態は不自然であることから、口元のコンプレックスになりやすいです。歯がない部分を見られたくないため、人と会話をするときに口元を隠すのが癖になってしまう人も珍しくありません。

リスク2:そしゃく能率が落ちる
歯を1本でも失うと、全体のそしゃく能率は低下します。失った本数が多くなるほど、食事のときに噛みにくさやストレスを感じやすくなることでしょう。

リスク3:歯並び、噛み合わせが悪くなる
私たちの歯は、歯列内に隙間があると、そこに向かって移動する性質があります。その結果、全体の歯並び、噛み合わせが悪くなってしまうのです。

リスク4:顎の骨が痩せていく
歯がない部分を放置していると、顎の骨が退化していきます。歯茎も下がっていってしまうことでしょう。

リスク5:むし歯や歯周病になりやすい
歯列内に不要な隙間があると、清掃性が悪くなります。汚れがたまり、むし歯や歯周病のリスクが高まります。

治療することによってどのようなメリットがありますか?
歯を失った状態を歯科治療で改善すると、次に挙げるようなメリットが得られます。

  • 口元に自信が持てるようになる
  • 食べるときに不自由を感じることがなくなる
  • 歯並びや噛み合わせの悪化を防げる
  • 歯磨きしやすくなる

歯を失った場合の治療法

歯を失った場合の治療法

歯を失った場合の治療法はどのような選択肢がありますか?
失った歯の治療法としては、インプラント、ブリッジ、入れ歯の3種類が挙げられます。それぞれの特徴は以下の通りです。

・インプラント
歯がない部分にチタン製の人工歯根を埋め込む治療法です。現状、失った歯を歯根から回復できるのはインプラントだけです。保険が適用されないため費用が高くなります。

・ブリッジ
ブリッジは、インプラントと同じ固定式の装置です。歯がない部分の両隣の歯を大きく削り、支台歯とすることで、治療が可能となります。見た目や噛み心地は入れ歯より優れています。

・入れ歯
入れ歯は、人工歯と床(しょう)、クラスプからなる装置です。歯がない部分にすっぽりとはめるタイプの装置で、着脱は患者さんが自由に行えます。費用も安く、手軽に作れる反面、審美性や機能性、耐久性は、ブリッジとインプラントに大きく劣ります。

治療法の中でも、インプラントが推奨されやすいのはなぜですか?
インプラントには唯一、人工歯根があるからです。天然歯というのはそもそも歯の根っこの部分(歯根)と歯の頭の部分(歯冠)の2つから構成されています。ブリッジや入れ歯は、そのうちの歯冠(しかん)しか回復できないため、天然歯の持つ機能を十分に再現できないのです。インプラントは歯根から回復できる装置なので、硬いものでもしっかり噛むことができますし、見た目も自然で美しいです。噛んだ時の力を歯根と骨で受けとめることができるため、顎骨が痩せる現象も最小限に抑えられます。

インプラント治療について

インプラント治療について

インプラント治療を受けるまでの流れを教えてください。
インプラント治療は、次のような流れで進行します。

STEP1:カウンセリング
インプラントに関する説明を受け、疑問や不安に感じる点を解消するための場です。

STEP2:精密検査、診断
問診、視診、レントゲン撮影、CT撮影、写真分析などを行い、診断が下されます。

STEP3:治療計画の立案、説明
診断結果をもとに治療計画を立てて、説明が行われます。

STEP4:術前治療
歯周病などの異常が認められた場合は、それらの治療を優先的に行います。

STEP5:人工歯根の埋入手術(1次手術)
顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込む手術です。

STEP6:治癒期間
人工歯根と顎の骨が結合するのを待ちます。標準的なケースでは、3~4ヵ月の治癒期間が必要となります。

STEP7:アバットメントの装着手術(2次手術)
人工歯根と顎の骨が結合したら、アバットメントを装着します。アバットメントは、人工歯にあたる上部構造の土台となるパーツです。

STEP8:歯型取り
アバットメントを装着した状態で歯型取りを行います。それを元に模型を作り、上部構造を設計します。

STEP9:上部構造の製作、装着
上部構造を製作したら、アバットメントに装着してインプラント治療は完了です。

STEP10:定期的なメンテナンス
インプラント治療後は、メンテナンスを定期的に受けます。メンテナンスはインプラントを装着している限り、続けていかなければなりません。

インプラント治療にかかる期間と費用を教えてください。
顎の骨が正常で、特別な処置を必要としないインプラント症例は、4〜5ヵ月程度で治療が完了します。費用はインプラント1本あたり30万円〜40万円程度かかるのが全国的な相場です。顎の骨が不足している症例では、骨造成が必要となることから、治療期間は3〜9ヵ月ほど長くなり、費用も5万円〜10万円程度高くなることでしょう。
インプラント治療は誰でも受けられますか?
インプラント治療は、一部の人を除いて、ほとんどのケースで適応可能です。インプラント治療が受けられないのは、以下のような人です。

  • 妊娠中の女性
  • 成長期の子ども
  • 顎の骨の状態が悪い人
  • 重篤な全身疾患にかかっている人

顎の骨の状態が悪くても、骨造成によって改善が見込める場合は、インプラント治療も可能となります。重篤な全身疾患も治療によって症状がきちんとコントロールされていれば、問題なくインプラント治療を行えるケースも少なくありません。具体的には、糖尿病、骨粗しょう症、高血圧症などは十分な注意が必要といえます。それらの病気で内科にかかっている場合は、主治医との連携が必要になる点も忘れてはいけません。喫煙習慣は、インプラントの成功率を大きく低下させることから、治療前はもちろんのこと、治療後も原則として禁煙する必要があります。

治療後のメンテナンスや注意点を教えてください
インプラントは、治療後のメンテナンスが必須となっています。メンテナンスの受診を怠ると、インプラント治療についている保証が受けられなくなるだけでなく、装置の破損などに気づくのが遅れます。

また、インプラント特有の歯周疾患であるインプラント周囲炎のリスクも高まることから、治療後のメンテナンスは必ず受けるようにしましょう。以下に、インプラント治療後の注意点をまとめます。

【インプラント治療後の注意点】

  • 定期的なメンテナンスを欠かさず受ける
  • インプラントは歯周病リスクが高い
  • 上部構造やアバットメントが破損することがある

編集部まとめ

今回は、歯を失った場合の治療法と歯がないことによる健康への影響について解説しました。1本でも歯が失われた状態は正常ではありませんので、早期に歯科治療を受けることが大切です。

その際の選択肢としては、インプラント、ブリッジ、入れ歯の3つが挙げられ、それぞれに異なるメリットとデメリットがある点に注意が必要です。インプラントに関しては、歯を失った場合の治療法として優れている点が多いことから、多くのケースで推奨されやすくなっています。

参考文献

この記事の監修歯科医師
坪光 玄義医師(地挽歯科医院)

坪光 玄義医師(地挽歯科医院)

鶴見大学歯学部 卒業 / 平成24年歯科医師免許証 取得 / 現在は地挽歯科医院、蕨にしき町歯科・口腔外科(いずれも非常勤)

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坪光 玄義医師(地挽歯科医院)

鶴見大学歯学部 卒業 / 平成24年歯科医師免許証 取得 / 現在は地挽歯科医院、蕨にしき町歯科・口腔外科(いずれも非常勤)

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