インプラント

インプラントもむし歯になる?インプラントで注意すべき病気や長く保つためのケア方法について解説!

インプラントもむし歯になる?インプラントで注意すべき病気や長く保つためのケア方法について解説!

見た目や噛み心地が天然歯にそっくりなインプラント。構造も天然歯とほぼ同じであることから、むし歯になるのか不安に感じている方もいらっしゃるようです。せっかく高いお金と長い時間をかけて装着したインプラントがむし歯になってダメになるのは避けたいものです。ここではそんなインプラントがむし歯になるのか、また注意すべき病気・トラブル、長く保つためのケア方法などを詳しく解説します。

インプラントもむし歯になる?

インプラントもむし歯になる? 結論からいうと、インプラントがむし歯になることはありません。なぜならインプラントには、むし歯菌によって溶かされるエナメル質や象牙質がないからです。人工歯根やアバットメントはチタンで作られており、上部構造はセラミックや金属で構成されているのが一般的です。いずれも細菌が作る酸によって溶けるような材料ではないことから、むし歯になるリスクはゼロといっても間違いではありません。

インプラントで注意すべき病気

インプラントで注意すべき病気 上述したように、インプラントがむし歯になることはありませんのでご安心ください。だからといって、インプラントのケアを疎かにしてよいわけではありません。インプラントの周りが不潔になれば、以下に挙げるような病気のリスクが高まるからです。

歯周病

インプラントは人工物ですが、その周りは生きた組織で構成されていることを忘れてはいけません。具体的には、歯茎や歯槽骨などの歯周組織は、細菌による攻撃を受けやすいです。口腔衛生状態が悪くなると歯周病菌が繁殖して、歯周病を発症します。

歯周病は、歯茎に炎症や出血をもたらすだけの病気ではなく、歯槽骨を破壊して、最終的には歯そのものを失う原因にもなりえます。口腔内で繁殖した歯周病菌が歯茎の血管に入って血流に乗ると、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、認知症などの深刻な全身疾患を誘発する可能性があることも知っておいてください。

インプラント周囲炎

インプラント周囲炎は、インプラント特有の歯周疾患です。これは、歯周病に似たような症状です。

天然歯の歯根の周りには、歯根膜という軟らかい組織が分布しており、血管から酸素や栄養素、免疫細胞が供給されるようになっています。そのため外からやってきた細菌と戦うことができます。インプラント手術で埋入するチタン製の人工歯根には、当然ですが歯根膜が付随しておらず骨とは直接的に結合するため、プラークによってインプラント周囲の粘膜が炎症を起こすと歯周病のような状態になります。

また、インプラントは天然歯よりも汚れがたまりやすく、細菌が繁殖しやすい環境にあることも知っておきましょう。天然歯は、歯の頭の部分である歯冠と根っこの部分との境目が滑らかに連なっていますが、インプラントの場合は上部構造とアバットメントがやや不自然な形で連結しています。そこに歯垢や歯石がたまると、むし歯にはならないものの、インプラント周囲炎のリスクがあります。

インプラント周辺のむし歯

繰り返しになりますが、インプラントがむし歯になるリスクはゼロです。けれども、周辺の天然歯は、むし歯になります。インプラントはむし歯にならないと油断して、口腔ケアを怠っていると、周辺の歯にむし歯菌が感染してしまうため、十分な注意が必要です。

インプラントで気をつけるべきトラブル

インプラントで気をつけるべきトラブル インプラント治療では、上述した病気以外にも気をつけるべきトラブルがあります。そのなかにはインプラントを喪失するほどの深刻なトラブルも含まれるため、これからインプラント治療を受ける人や受けたばかりの人は気をつけてください。

顎のトラブル

インプラントに伴う顎のトラブルといえば、インプラント周囲炎による歯槽骨の吸収です。歯周病菌によって歯槽骨が破壊されていくことは、上段でも解説しました。実はそうした顎の骨の吸収は、インプラント周囲炎や歯周病以外でも起こり得ます。 インプラント周囲炎にかかっておらず、普段から噛み応えのあるものを食べているにも関わらず顎の骨が痩せてきた。そんな症状が認められた場合は、全身疾患が背景に隠れているかもしれません。そんな時はまずインプラントの主治医に相談したうえで、適切な医療機関を受診するとよいでしょう。

歯茎のトラブル

インプラント治療では、歯茎のトラブルもよく見られます。特にインプラント手術を実施した直後は、歯茎の腫れや出血、痛みなどのトラブルに見舞われる可能性が高いため、十分な注意が必要です。インプラント手術後の歯茎は、外傷を負った状態と同じあり、傷口が癒えるまでは腫れと痛みが続きますが、再び出血したり、日に日に痛みが強くなったりするような場合は細菌感染などの異常が疑われるため、早急に主治医へ報告しましょう。

そうした歯茎のトラブルを防ぐためには、歯科医師の指示通りに術後の生活を送ることが大切です。具体的には、熱い湯船に浸かる、激しい運動をする、お酒を飲む、辛いものや熱いものを食べる、などの行動を控えるようにしてください。口腔衛生状態を清潔に保つことも、術後の歯茎のトラブルを防止するうえで重要です。

インプラントの損傷や脱落

インプラントは、上部構造・アバットメント・人工歯根の3つから構成されており、そのすべてが丈夫な素材で作られています。けれども、不適切な習慣があったり、外傷を負ったりした際に損傷や脱落が起こることもあります。たとえば、セラミックで作られた上部構造は、歯ぎしりや食いしばりの習慣によって割れてしまうことがあります。

上部構造とアバットメントがネジで連結されているタイプでは、時間の経過とともにネジが緩むこともあるでしょう。それによってインプラントの噛み合わせが悪くなったり、装置の脱落につながったりするトラブルも考えられることから、インプラント治療後の定期検診・メンテナンスは欠かさず受けるようにしてください

インプラントはいつまで使えるのか

インプラントはいつまで使えるのか 続いては、インプラントの寿命と交換についてです。インプラントは上述したトラブルに見舞われることで、交換を余儀なくされる場合もあります。その際の手順や費用などについても説明します。

インプラントの寿命

インプラントの平均的な寿命は、10〜15年程度といわれています。保険診療の入れ歯の平均寿命が4〜5年、ブリッジが7〜8年といわれていることを踏まえると、インプラントは単純に2〜3倍の寿命を持っていることになります。それでも外科手術を行って、高い費用と長い期間をかける治療としては寿命が短いのでは?と感じるかもしれません。

実際、インプラント治療から10〜15年経過したらまた新しいインプラントに交換しなければならないのなら従来法を選ぶ人もたくさんいるかと思います。そこで強調しておきたいのが「10〜15年」の数字はあくまでインプラント寿命の目安であり、個別のケースを見ると20年、25年と使い続けている人も少なくない点です。

インプラントが開発された当初に治療を受けてから、亡くなるまでの40年、問題なく使い続けた人もいるのは有名です。つまり、治療後のケアやメンテナンスを行っていれば、インプラントで大きなトラブルに見舞われるリスクも低く抑えられます。その点も踏まえたうえでインプラントと向き合うことが大切です。

インプラントの交換

歯周病や外傷、その他のトラブルによってインプラントが寿命を迎えた場合は、新しいものに交換する選択肢も用意されています。インプラントの交換の手順は基本的に初回の手術と大差はありませんが、顎の骨の状態が悪い場合は、骨造成などの再生療法が必要となります。また、インプラントが寿命を迎えた原因を根本から取り除かない限り、新しいものに交換してもまた同じようなトラブルに見舞われかねないため、その点も注意が必要です。

インプラントの交換にかかる費用

インプラントの交換にかかる費用は、ケースによって大きく異なります。まず、インプラントの保証条件が満たされていれば、無償で交換の手術を受けられます。インプラントの5年保証や10年保証には、具体的に次のような条件が課されています。

  • 保証期間内
  • 指定された頻度でメンテナンスを受けている
  • 破損や脱落の原因が日常生活の範囲内
  • 歯科医師から指示された禁煙などのルールを守れている

ケースによっては、さらに細かい条件が課されているため、詳細は主治医に確認してください。いずれにせよ患者さん自身の過失によってインプラントが破損、脱落した場合は、交換の治療を無償で受けられなくなります。その際にかかる費用は、通常のインプラント治療とほぼ同じです。骨造成の手術が必要になる場合は、さらに高い費用がかかります。

インプラントを長く保つためのケア方法

ここまではインプラントで注意すべき病気やトラブル、破損・脱落する原因などを解説してきました。インプラントが保証期間内の問題による交換が必要となる場合、無償で再治療を受けられるのであれば、経済的負担は回避できるものの、心身への負担は大きくなります。それだけにインプラントはできるだけ長く持たせたいものです。ここではそんなインプラントを長く保つためのケア方法を3つ紹介します

定期的なメンテナンス

定期的なメンテナンス インプラントを長く保つうえで欠かすことができないのは定期的なメンテナンスです。インプラントを入れた後に何もせず放置していると、上部構造の欠けやアバットメントの緩み、インプラント周囲炎の発症に気付けないことが多いです。数ヵ月に1回のメンテナンスを受けていれば、そうした病気やトラブルを早期に予防できるだけでなく、予防もしやすくなるでしょう。万が一インプラントが脱落して交換を余儀なくされた場合も定期的なメンテナンスを受けていれば、無償で再治療できる可能性が出てきます。

正しい方法による歯磨き

インプラントのケア方法は、基本的に天然歯と同じです。歯磨きで食べかすや歯垢を取り除くことで歯周病を始めとした病気を予防できます。ただし、インプラントと歯茎の境目付近は、天然歯と異なる構造をとっていることから、上手に磨くにはコツをつかむ必要があります。やみくもにゴシゴシと磨いていると、上部構造やアバットメントを傷つける恐れがあるため、正しい歯磨き方法は歯科医院で学ぶようにしてください。定期的なメンテナンスで通院していれば、インプラントの歯磨き指導も受けられます。

デンタルフロスやワンタフトブラシの使用

インプラントと隣の歯との間の汚れは、デンタルフロスで除去するようにしてください。デンタルフロスには、持ち手がついたホルダータイプと適切な長さに千切って使用するロールタイプの2種類がありますが、自分で使いやすい方を選ぶとよいでしょう。

ホルダータイプは初心者でも扱いやすい反面、細かい部分を磨くのに適していなかったり、コストが高くなったりするなどのデメリットを伴います。ロールタイプは、上手に使えるようになるまでに時間がかかるのですが、緻密なフロッシングが可能であったり、コストが安かったりするなどのメリットを伴います。

インプラントとアバットメントの境目付近に汚れが残りやすい人は、ヘッドの部分が一束しかないワンタフトブラシを使うとよいです。普通の歯ブラシでは磨けない部分まで、ていねいに清掃できます。

編集部まとめ

今回は、インプラントがむし歯になる可能性や注意すべき病気、インプラントを長く保つためのケア方法などを解説しました。本文でも述べたとおり、インプラントは歯冠から歯根まですべて人工の材料で構成されているため、むし歯になることはありません。

だからといって口腔ケアを怠っていると、歯周病やインプラント周囲炎、隣の歯がむし歯になるなどのトラブルに見舞われることから、インプラント治療前と同じように歯磨きをする必要があります。また、インプラントには破損や脱落、歯茎のトラブルも起こりやすいので、定期的なメンテナンスも欠かさず受けるようにしましょう。インプラント治療後も歯科医師の指示通りに生活していれば、再治療が必要になった場合も無償でインプラントを交換してもらえる可能性が高くなります。

参考文献

この記事の監修歯科医師
菱川 敏光医師(ひしかわ歯科院長)

菱川 敏光医師(ひしかわ歯科院長)

長崎大学歯学部卒業 愛知学院大学大学院歯学研究科修了 愛知学院大学歯学部歯周病学講座講師(2020年3月まで) 愛知学院大学歯学部歯周病学講座非常勤講師 ひしかわ歯科 院長

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菱川 敏光医師(ひしかわ歯科院長)

長崎大学歯学部卒業 愛知学院大学大学院歯学研究科修了 愛知学院大学歯学部歯周病学講座講師(2020年3月まで) 愛知学院大学歯学部歯周病学講座非常勤講師 ひしかわ歯科 院長

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