歯の問題は老若男女問わず全ての方が気になっているのではないでしょうか。特に欠損した歯の治療は、見た目の改善だけでなく、日常生活の過ごし方にも大きく影響を与えます。インプラントを検討したことがある方は多いかもしれませんが、インプラントとブリッジの併用治療については聞いたことがあるでしょうか? 歯科治療の中でも人気が高まっているこの方法について、今回は徹底解説します。
どんな場合に併用治療が適しているのか、そのメリットとデメリットは何なのか、そして、費用についても考慮してお伝えします。読者の皆さんが少しでも歯の治療に関する不安を解消できるよう、具体的に説明していきます。
インプラントとブリッジの基本知識
歯の欠損は、見た目だけでなく機能面でも問題が生じることがあります。食事をしたり水分を摂ったりする度に不快な思いをしたり痛みが走ったりしたら、健康な生活を続けるのが難しく思えてしまいますよね。それだけに今や多くの治療方法がありますが、特にインプラントとブリッジによる治療はよく知られています。併用治療について詳しく説明する前に、まずはそれぞれの治療法について基本的な情報をご紹介します。
インプラントとは
インプラント治療は失った歯を人工の歯で補う治療法であり、人工の歯根に似たインプラント体を埋め込む方法であることから、この名がついています。この治療法では欠損した歯の部分にインプラント体を埋め込み、その上に人工の歯を取り付けることで自然な見た目と機能を取り戻すことができます。インプラントはしっかりと体に埋め込まれているので、食べ物を問題なく噛むことができるようになり、食事の楽しみも取り戻すことができます。
インプラント治療は特に、根本から歯が失われた際や大きな虫歯により歯の大部分を失った場合に有効な治療方法です。大きな虫歯で歯の多くを失ってしまった際にインプラント治療を選ぶ患者さんも多いと言われています。
さて、インプラントの概要をこれまでご説明しました。次に、この治療法のメリットとデメリットをまとめてご紹介します。
・インプラントのメリット
- 自然な見た目に仕上がる
- 噛み心地が良い
- 歯を削る量が少ない
・インプラントのデメリット
- 手術が必要
- 費用が高額
- 治療期間が長い
特に、自然な見た目に仕上がる点が重宝され、比較的費用は高額になるものの人気の治療法であると言えるでしょう。
ブリッジとは
ブリッジ治療は欠損した歯の部分を隣の健康な歯を支えにして人工の歯で補う方法です。支えとなる健康な歯に被せ物を取り付け、その間に人工の歯を挟むことで空いた部分を埋める構造をしています。健康な歯で橋渡しするように取り付けるので「ブリッジ」と考えると分かりやすいかもしれませんね。ブリッジ治療は、欠損した歯の両隣の歯が健康である場合に特に有効とされています。
ブリッジのメリットとしては、手術が不要な点、治療期間が比較的短い点、インプラントに比べて費用が抑えられる点が挙げられます。一方、デメリットは、支えとなる歯を削る必要があることで、それにより、むし歯でない歯でも、歯がしみる症状が出たり、最悪の場合は抜髄しなければならなくなるリスクが生じます。 支えとなる歯を削る必要がある
インプラント2本とブリッジの併用治療
歯が欠損してしまうと、食べる楽しみだけでなく、笑顔にも自信が持てなくなることがあります。しかし、インプラントとブリッジの併用治療は、そんな悩みを解消するための魅力的な選択肢となることがあります。
この治療法は、欠損した歯の数や位置に合わせて、インプラントとブリッジを組み合わせることで、より自然な見た目と機能を取り戻すための方法です。これからその詳細をじっくりとご紹介していきますので、あなたの悩みに合った解決策が見つかることを願っています。
インプラントとブリッジが併用できる場合
欠損した歯が3本の場合には、端の2本をインプラントにして、そのインプラント2本を支えにブリッジする方法が一般的です。これは、三脚のカメラスタンドのように、両端をしっかり固定して、その間をしっかりつなぐイメージと言えるかもしれません。
一方で、インプラントとブリッジが併用できない場合ももちろんあります。 欠損した歯が1本の場合や4本以上の場合には併用できないことが多いです。1本の場合は、単純に併用する必要がありません。インプラントを一本入れるかブリッジをかけるだけにするか、どちらかを選択するだけになるでしょう。逆に、4本以上の場合は、多くの歯を支える必要がありすぎて、インプラントとブリッジの併用では対応が難しくなります。あたかも長い橋を少ない柱で支えようとするような状態になってしまうのです。
併用治療のメリット
インプラントの良い点は、自然な見た目と感触を取り戻せることです。一方で、ブリッジは隣接する健康な歯を活用して空いた部分を埋めることができます。この2つの治療法を組み合わせることで、自然な見た目を保ちつつ、隣接する健康な歯を十分に活用することができるため、まるでパズルのピースがぴったり合うように、欠損した歯の部分に適した治療を提供できるのです。
また、欠損した歯が2本の場合も3本の場合もどちらもなのですが、全てインプラントにして治療するのと比較すると費用が抑えられるという点も大きなメリットであると言えるでしょう。インプラントと比較するとブリッジの方が費用がかからない傾向にありますので、1本でもブリッジにすることによってトータルの費用が下がるのです。
ブリッジのみで治療する場合と比較すると、健康な歯を削る必要がなくなるというのも併用治療のメリットと言えるでしょう。インプラントをブリッジの両端の土台として使用するため、自分の歯を削ってブリッジ用の土台にする必要がなくなります。欠損部分を補うためとはいえ、わざわざ健康な自分の歯を削ることに抵抗がある方も多いかと思いますので、併用治療することで自分の歯に施術しないで済むことは大きなメリットであるといえそうです。
併用治療のデメリット
しかし、併用治療のデメリットとしては、それぞれの治療法の専門的な技術や時間が必要になるため、治療期間が長引くことがあります。インプラントは手術が必要なため時間がかかり、ブリッジは隣接する健康な歯との調和を取る必要があるため慎重な作業が求められます。これは、あたかも高級な時計を組み立てる際に、精密な部品を一つ一つ丁寧に組み合わせる作業に似ており、時間とコストがかかるのです。
インプラント2本とブリッジを併用する場合の費用
歯を失った場合に、その空間を埋めるための方法としてインプラントやブリッジがあることを紹介してきました。特にインプラント2本とブリッジの併用は、機能と美しい見た目を両立するための選択肢となっています。
しかし、費用についての情報は分かりにくいものです。歯の治療は思ったよりも費用がかかることが多く、費用が気になっている方も多いのではないでしょうか。少しでも節約できれば、他のことにお金を使えて嬉しいですよね。ここでは、その費用に焦点を当てて詳しく説明していきます。
インプラントとブリッジを併用する場合の費用相場
インプラントとブリッジを併用する場合、費用はいくつかの要素によって変動します。一般的に、インプラント1本あたりの費用は30万~50万円の間、ブリッジの費用は15万円から25万円の間であることが多いようです。もちろん医師の技術や使用する材料、地域によっても価格が異なるため、事前にクリニックでの相談が必要です。
また、ブリッジの治療は保険適用できる場合もあるようです。全ての場合で保険適用できるわけではなく一定の条件を満たす必要はありますが、先ほど説明した費用の3割の実費負担で治療を受けられる可能性が高いでしょう。
ここでは分かりやすさを重視するために、インプラント1本あたりの費用を30万円、ブリッジの費用を保険適用を前提として5万円として考えてみましょう。
・欠損した歯が2本の場合
この場合、インプラントとブリッジをそれぞれ1本ずつ実施することになります。
費用の計算式は、(インプラント1本 × 1) + (ブリッジ1本 × 1) = 30万円 + 5万円 = 35万円 となります。
・欠損した歯が3本の場合
こちらは、端の2本をインプラントにして、そのインプラント2本を支えにブリッジすることになります。
費用の計算式は、 (インプラント1本 × 2) + (ブリッジ1本 × 1) = (30万円 × 2) + 5万円 = 65万円 となります。
費用の観点で考えてみると、インプラントを何本入れるかによって費用全体がかなり大きく上下することが分かるのではないでしょうか。
他の治療方法との費用比較
先ほどはインプラントとブリッジを併用した場合の費用について、概算でご紹介しました。ここでは他の治療法と費用面で比較してみましょう。分かりやすく費用の比較をするために、欠損した歯が3本の場合でかんがえてみることにしましょう。先ほど計算した通り、インプラントとブリッジの併用治療では65万円ほどの費用がかかると考えられます。
・全てインプラントにした場合
欠損した3本の歯を全てインプラントにする場合です。
この場合の費用の計算式は、
インプラント1本 × 3 = 30万円 × 3 = 90万円 となります。
併用治療と比較するとかなり高額な印象になるのではないでしょうか。
・全てブリッジにした場合
上記と異なり全ての欠損歯をブリッジにした場合も考えてみましょう。
この場合の費用の計算式は、
ブリッジ1本 × 3 = 5万円 × 3 = 15万円 となります。
インプラントと併用する場合などとくらべてかなり安価な印象になるのではないでしょうか。ただし、ブリッジはインプラントと比較すると耐久年数が短く、都度コストがかかり続けてしまうことには注意が必要です。また、左右の健康な歯を土台にして3本分の欠損歯にかかる負荷を受け止めることになるので、健康な歯の部分が割れてしまう可能性も高い方法です。
・部分入れ歯にする場合
インプラントもブリッジも使わずに、入れ歯を使うという選択肢もあるでしょう。 部分入れ歯もブリッジと同様に保険適用される場合とされない場合があるようですが、条件を統一するために保険適用される場合で考慮すると、1万円程度で作成できる場合もあるようです。
単純に費用面だけで考えれば、部分入れ歯にしてしまうのがもっとも費用を抑えられる方法であると言えるかもしれません。
本章では様々な治療法の費用を比較しましたが、分かりやすい数字を提示するために計算方法や治療単価をかなりシンプルに設定しています。実際の費用は患者さん個人個人の症状や、治療を提供する医院によって大きく上下すると思われますのでご注意ください。
インプラントブリッジによる治療が推奨される場合とは
3歯以上連続した歯を失った場合には、インプラントを両端に埋入して土台にするインプラントブリッジという治療を行うことができます。通常のブリッジのように健康な歯に負担をかけたり、削ったりする必要がなく、失った歯すべてをインプラントにするよりも費用を抑えられる利点があります。
ただし、原則として天然歯とインプラントのブリッジを行うことはできない点に注意しましょう。天然歯には歯根膜があり、インプラントには歯根膜がないので微小に差が生じてしまい、天然歯にむし歯を作ったりなどのトラブルが起こりやすいためです。
まとめ
歯が抜けてしまった状態では、美しい笑顔が失われるだけでなく、食事が満足に取れないなど日常生活の質にも多大なる悪影響を抱えることになります。インプラントとブリッジの併用治療は、欠損歯が2本や3本の場合、入れ歯の違和感を避けたい場合、費用を考慮したい場合など、様々な状況で効果的な治療法となることをご紹介してきました。自然な見た目と機能の回復はもちろん、費用面でのメリットも期待できることがあるため、この治療法は多くの人々にとって魅力的な選択肢と言えるのではないでしょうか。
参考文献