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ジルコニアインプラントとは?チタンとの違いやメリット・デメリットを解説

ジルコニアインプラントとは?チタンとの違いやメリット・デメリットを解説

顎の骨に人工歯根を埋め込むインプラントといえば、純チタンやチタン合金を使った治療法というイメージが広く根付いていますが、チタン以外の素材を使ったインプラントもあります。それが今回のテーマであるジルコニアインプラントです。ジルコニアは、詰め物・被せ物治療にも使われているセラミックの一種で、とても強度が高い材料であることは皆さんもよく知っていることでしょう。ここではそんなジルコニアを使ったインプラント治療の特徴やチタンとの違い、ジルコニアインプラントのメリット・デメリットなどを詳しく解説します。

ジルコニアインプラントとは

ジルコニアインプラントとは はじめに、ジルコニアインプラントの基本事項とチタンインプラントとの違いについて確認しておきましょう。

ジルコニアインプラントの概要

ジルコニアインプラントとは、セラミックの一種であるジルコニア製のインプラント体です。人工歯根に当たるインプラント体は、本来、生体親和性が高く、顎の骨と結合する性質を備えたチタンで作られますが、ジルコニアを使用することも可能となっています。ジルコニアは、金属に匹敵する硬さを備えたセラミックで、チタンと同様、生体親和性が高いです。そのため主にチタンインプラントが使えない症例に適応されます。もちろんジルコニアインプラントは、チタンアレルギーがない人に使うこともあります。

ジルコニアインプラントとチタンインプラントの違い

ジルコニアインプラントとチタンインプラントは、素材の性質に根本的な違いが見られます。なぜならジルコニアは非金属材料で、チタンは金属材料だからです。

◎アレルギーリスクの違い

ここでまず強調しておきたいのがアレルギーリスクの違いです。非金属材料であるジルコニアで金属アレルギーを起こす可能性はゼロです。また、ジルコニアがアレルゲンとなってアレルギー症状を発症するリスクも限りなくゼロに近いといえます。実はチタンも生体親和性が高く、金属アレルギーを起こしにくい金属材料ではあるものの、一定の割合でチタンアレルギーを持っている人が存在しているのも事実です。その点において、ジルコニアインプラントは、チタンアレルギーを持っている人の適切といえる選択肢となり得ます。

◎見た目の違い

チタンインプラントは、金属色がむき出しとなった人工歯根です。上部構造との連結装置であるアバットメントもチタン製を採用することが少なくないので、見た目があまり良くないという欠点があります。一方、ジルコニアインプラントは白色を呈しており、アバットメントにもジルコニアを使うケースがほとんどなので、本物の歯のように見えます。このようにチタンインプラントとジルコニアインプラントには見た目にも大きな違いが見られるのです。

◎骨との結合のしやすさ

ジルコニアインプラントとチタンインプラントには、顎骨との結合のしやすさにも違いが見られます。人工歯根と顎骨とが結合するオッセオインテグレーションは、インプラント治療の成否を決める重要な要素です。この現象が適切に進まないと、人工歯根が顎の骨に固定されず、インプラント治療そのものが失敗に終わります。そんなオッセオインテグレーションは、ジルコニアインプラントよりもチタンインプラントの方が正常に進みやすいです。

チタンはデンタルインプラントのみならず、人工関節にも古くから活用されている材料で、骨としっかり結合することがわかっています。実はジルコニアも同様の現象が起こるのですが、チタン程の高い効果は期待できません。とはいえ人工歯根として活用する範囲では支障をきたさないことから、ジルコニアインプラントを選択したとしても、治療の成功率が大きく下がるわけではないといえます。

ジルコニアインプラントのメリット

ジルコニアインプラントのメリット 次に、ジルコニアインプラントのメリットについて解説します。

審美性に優れている

ジルコニアは、審美性に優れた材料です。それはジルコニア製のインレーやクラウンを見ても明らかです。ただ、ジルコニアというと純粋なセラミックよりも透明感に劣るという欠点があるため、そこに不安を感じている人もいるかもしれませんが安心してください。そもそもインプラント体やアバットメントというのは、天然の歯根に当たる部分であり、透明感のあるエナメル質が分布していません。均質な色の象牙質で構成されていることから、むしろジルコニアの方が審美面において天然歯に近いといえるでしょう。しかも近年のジルコニアは、色調のバリエーションも豊富なので、患者さんそれぞれの歯の色に合った素材を選択することが可能となっています。

金属アレルギーの心配がない

繰り返しになりますがジルコニアはセラミックであるため、金属アレルギーを発症するリスクはゼロです。インプラントの寿命は長く、ケースによっては一生涯、身体のなかに入っている装置なので、アレルゲンとなるかどうかは極めて重要な要素といえます。もちろん、チタンの金属のなかではアレルゲンになりにくい素材なのですが、現実としてチタンアレルギーを発症する人は一定数存在するため、そのリスクをゼロにできることは長い目で見た場合、極めて大きなメリットとなることでしょう。

強度が高く耐久性にも優れている

ジルコニアはセラミックの一種ではあるものの、強度の高さにおいては金属に匹敵します。インプラントに対して極端に強い力がかかったとしても割れることはまずありません。この点はチタンインプラントに遜色がないといえます。また、ジルコニアは安定性も高い材料なので、長年使っていても素材の一部が溶け出したり、浸蝕を受けたりするようなことはありません。

生体親和性が高い

ジルコニアは、金属アレルギーはもちろんのこと、ジルコニアアレルギーを起こす可能性の限りなくゼロに近いです。これはジルコニアが生体親和性に優れた材料だからです。おそらく皆さんもジルコニアインレーやジルコニアクラウンなどで身体に異常が生じたという話を聞いたことがないでしょう。ジルコニアインプラントの場合は、顎骨のなかに直接、埋入することになりますが、これまで深刻な健康被害が起こったという報告もされていません。

電磁波の影響を受けにくい

大きな病気やケガをしたときには、MRI検査を受けることがあります。強力な電磁波によって身体の中の状態を三次元的に写し出す装置で、検査の性質上、金属による影響を強く受けます。そのためMRI室に入る前には、金属製の時計やネックレス、ピアスなどを必ず取り外さなければなりません。また、身体のなかに金属が入っていると、画像に歪みが生じることがあるため、チタンインプラントでは不安に感じている人もいます。その点、非金属であるジルコニアは、電磁波の影響を受けることがないため、インプラント治療後も気兼ねなくMRI検査を受けられます。ただ、チタンインプラントの場合も基本的にMRI検査が受けられなくなったり、画像診断に深刻な悪影響が及んだりすることはありませんので、その点を誤解しないようにしましょう。

ジルコニアインプラントのデメリット

ジルコニアインプラントのデメリット ジルコニアインプラントを用いた治療には、次に挙げるデメリットを伴います。

治療費が高い

ジルコニアインプラントは、チタンインプラントと比較した場合、費用がやや高くなります。なぜならジルコニアインプラントのほとんどは、歯科医院それぞれが海外から個人輸入する形となるからです。ジルコニアインプラントを提供しているインプラントメーカーも一部に限られるため、費用も自ずと高くなります。ですから、インプラント治療で経済面を重視する場合は、ジルコニアインプラントではなく、標準的なチタンインプラントがおすすめといえます。

顎の骨への負担が大きい

ジルコニアはとても硬い素材であるため、顎の骨に大きな負担がかかりやすいです。顎の骨の状態が悪かったり、噛み合わせなどに問題を抱えていたりする人は、この点に注意しましょう。

上部構造の種類が限られる

上述したように、ジルコニアインプラントを開発・提供しているインプラントメーカーはそれ程ありません。また、チタンインプラントとは異なる性質や構造を採っていることから、選択できる上部構造の種類も一部に限定されます。

ジルコニアインプラントを選ぶ際の注意点

ジルコニアインプラントを選ぶ際の注意点 ここまでの説明で、ジルコニアインプラントの特徴やメリット・デメリット、チタンインプラントとの違いは理解できたかと思います。そのうえであらためてジルコニアインプラントを選ぶ際の注意点をまとめておきます。

  • インプラント治療にかかる費用が高くなる
  • 提供しているインプラントメーカーが少ない
  • 対応している歯科医院が一部に限られる
  • 骨との結合はチタンインプラントの方が有利
  • 顎に大きな負担がかかる場合がある
  • 上部構造の選択肢が少ない

このように、ジルコニアインプラントはチタンインプラントのような感覚で気軽に選べるものではありません。見た目が良く、金属アレルギーのリスクがないという理由だけでジルコニアインプラントを選ぶと、治療後に後悔する可能性が高まるため、慎重に検討する必要があります。例えば、チタンアレルギーがあったり、審美性の高さをとことんまで追求したかったりする場合は、ジルコニアインプラントを優先的に選んでもよいですが、それ以外の場合では、チタンインプラントでも問題はないかと思います。

ジルコニアインプラントの費用

ジルコニアインプラントの費用 チタンインプラントによる治療では、1本あたり300,000〜500,000円程度の費用がかかります。一方、ジルコニアインプラントの場合は、1本あたり500,000〜700,000円程度かかるのが全国的な相場です。ケースによっては、チタンインプラントの倍以上の費用がかかることもあるため、その点は事前に正しく理解しておく必要があります。

ジルコニアインプラントの治療の流れ

ジルコニアインプラントの治療の流れ ここでは、ジルコニアインプラントの治療の流れを解説します。

診査・診断(カウンセリング)

インプラント治療のはじめのステップは、詳細な診査と診断から始まります。患者さんの口腔内の状態を確認し、噛み合わせのチェックを行います。レントゲンやCTスキャンを使用して、顎の骨の状態やインプラントを埋め込む位置を正確に把握します。また、患者さんの健康状態や治療に対する希望をヒアリングして、適切な治療計画を立てます。

手術(1次手術)

診査・診断が終わり、治療計画が決まったら、次に行うのが1次手術です。1次手術では、インプラントを顎の骨に埋め込みます。手術は局所麻酔で行われ、ほとんどの場合、日帰りで対応可能です。手術の際には、患者さんの噛み合わせを考慮し、インプラントの位置を正確に調整します。手術後は、軽い腫れや痛みが生じることがありますが、通常は数日で治まります

治癒期間・経過観察

インプラントが顎の骨としっかり結合するためには、治癒期間が必要です。この期間は一般的に3ヵ月から6ヵ月程度かかります。治癒期間中は、インプラントが正しく結合しているかどうかを確認するために、定期的に経過観察を行います。また、患者さんはこの期間中、口腔ケアを徹底することはもちろん、噛み合わせのバランスを保つことが重要となります。

2次手術・アバットメント(支台)装着

治癒期間が終わり、インプラントが顎の骨としっかり結合したことを確認したら、2次手術を行います。この手術では、インプラントの上部にアバットメントと呼ばれる支台を装着します。アバットメントは、人工歯を固定するための重要な部分です。手術は割と簡単で、局所麻酔で行われるため、患者さんへの負担も少ないです。アバットメント装着後は、再び短期間の治癒期間が必要です。

型取り・上部構造(人工歯)装着

2次手術後の治癒期間が終わったら、型取りと上部構造(人工歯)の装着を行います。型取りでは、患者さんの噛み合わせを正確に再現するために、精密な印象材を使用します。その後、歯科技工所で患者さんの口腔内にぴったりと合った人工歯を作成します。完成した人工歯をアバットメントにしっかりと固定することで、失った歯の審美性や機能性を回復できます。人工歯の装着後は、しっかりと噛むことができ、食事や会話も快適に行えます。

定期検診・メンテナンス

インプラント治療が完了した後も、定期的な健診とメンテナンスがとても重要です。定期検診では、インプラントや周囲の歯茎の状態をチェックし、問題がないかを確認します。また、噛み合わせのバランスが崩れていないかを確認し、必要に応じて調整を行います。インプラントは天然の歯と同様に、定期的なクリーニングと適切な口腔ケアを継続することで初めて、正常な状態を維持できます。

まとめ

まとめ 今回は、ジルコニアインプラントの特徴やメリット・デメリット、チタンインプラントの違いについて解説しました。

参考文献

この記事の監修歯科医師
大津 雄人医師(医療法人社団GLANZ大津歯科医院 副院長 / 東京歯科大学インプラント科 臨床講師)

大津 雄人医師(医療法人社団GLANZ大津歯科医院 副院長 / 東京歯科大学インプラント科 臨床講師)

東京歯科大学歯学部 卒業 / 東京歯科大学大学院歯学研究科(口腔インプラント学) 卒業 / 現在は大津歯科医院勤務 / 東京歯科大学インプラント科臨床講師 / 専門は口腔インプラント

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