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心臓病でもインプラント治療は可能?全身疾患に対するリスク・手術可能なケースを解説

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インプラントは自分の歯を失った方には大変有用な義歯ですが、手術を伴うために持病からの影響・制約を受けるなど一定のリスクが付きまといます。

心臓病もインプラント治療にはリスクとなる全身疾患ですが、必ずしも決定的な障害ではありません。この記事では心臓病の方でもインプラント治療が可能なケースを解説します。

そして、インプラント治療が心臓病やその他の疾病に与えるリスクも紹介します。持病があってインプラントを考えている方はぜひ参考にしてください。

インプラント治療の心臓病・全身疾患に対するリスク

聴診器

心臓病でもインプラント治療は受けられますか?
インプラント治療の障害となる要素は多々あり、心臓病もその一つです。ただ、心臓病の方はインプラント治療ができないのではなく、一定の条件の下であれば治療が受けられます
心臓病には心筋梗塞・不整脈・狭心症などさまざまな種類があり、治療可能な条件もそれぞれで違ってきます。例えば発症からの経過期間や、症状の重さ・薬剤によるコントロールの状態などです。
インプラント治療を始めるにあたっては、持病の状況を把握するために事前の問診や各種検査を行います。ただ、インプラント治療を行う口腔外科では一般的に内科的な検査ができないため、内科の主治医との連携が必要です。
主治医から歯科医師に心臓病の治療履歴や現状・薬剤の情報を正確に伝え、治療を委ねることになります。
心臓病はインプラント治療にどのようなリスクをもたらしますか?
心臓病のうち心筋梗塞は、インプラント治療時に止血困難のリスクをもたらします。
多くの方が発作予防目的で抗凝固薬などを投与されていて、手術時に出血が止まらなくなるリスクがあります。
従来服用を止めるのが通例でしたが、それでは脳梗塞の再発を招くリスクがあるため、近年では服用継続が標準的です。その場合は症状を把握している内科医師の承認と連携が必須になります。
歯科医師側でも止血管理の徹底や、多数本の埋入を避ける配慮が必要です。
狭心症によるリスクでは、手術時の麻酔薬や骨を削る刺激によって血圧上昇や頻脈が発生し、発作をおこす可能性があります。そのため、手術時には狭心症薬の準備が必要です。心臓弁膜症や不整脈によるリスクでは感染症があります。
人工弁やペースメーカーを装着している方におこりやすい、インプラントからの歯周病菌による感染性心膜炎を発症するリスクです。術後は清潔な口内環境を維持し、定期的に歯科医師のチェックを受けることが大切です。
心臓病以外にインプラント治療が受けられない疾患はありますか?
インプラント治療ができない主な疾患は以下のとおりです。
  • 1型糖尿病:傷の治りが遅く、免疫力も低いため歯周病・感染症リスクがあります。また、骨との結合が弱く失敗リスクが高い病気です
  • 白血病・血友病など:血液疾患では出血しやすく止まりにくいため、インプラントは禁忌です
  • 脳梗塞発症から6ヵ月以内:この時期では、手術中の血圧上昇で再発する可能性があります
  • チタンアレルギー:インプラント本体はチタン製なので、この金属アレルギーがある方は治療ができません
  • 重度の骨粗しょう症:骨密度が低く骨折リスクが高いので、治療できない場合があります
  • 重度の歯周病:細菌感染によりインプラント周辺組織が破壊されるため、歯周病の治療が先決です
  • リウマチなど免疫疾患:治療に使われるステロイドの影響で、手術の刺激で重いショックのリスクがあるほか、骨吸収が早く骨造成しにくいため不向きな疾患です
  • 重度の腎臓病:透析を受ける程の腎臓病では、免疫力低下で歯周病・感染リスクが高いほか、骨がもろくインプラントには不向きです
  • 重度の肝疾患:肝硬変などではアルブミン・凝固因子の合成ができず止血が困難なほか、薬剤代謝が悪く肝機能低下の恐れもあって不向きな疾患です

対象が広範囲にわたるため、インプラント治療の前には持病のチェックが必要です。

持病がなくてもインプラント治療が受けられないことがありますか?
以下の方はインプラント治療が推奨されません。
  • 未成年
  • 高齢者
  • 喫煙者

インプラント治療を行った部分は、骨の成長が妨げられます。そのため成長途中の18歳未満の未成年の場合は治療が推奨されません。
高齢者では手術の影響が強く出る可能性があるので、事前に十分な検査が必要です。明確な基準はありませんが、70歳を過ぎると配慮が必要になります。
喫煙者ではタバコの影響で口腔内の血流が悪く、インプラントが固着しにくいうえにインプラント周囲炎になりやすい状態です。失敗リスクが高いので、禁煙できない方は治療が難しくなります。

心臓病でもインプラント手術が可能になるケース

説明

心臓病でもインプラント治療を受けるメリットを教えてください
インプラント治療への評価では、日本口腔インプラント学会が出した1,520人の患者さんへの調査資料があります。それによると、治療後の感想で大変満足・満足と回答した方は1,492人・98%でした。
満足した理由は、よく噛める・入れ歯がいらなくなった・見た目がよい・健康になったなどです。この調査結果からは、治療前に比べて生活の質が大きく向上したことがうかがえます。
こうしたメリットに対し、デメリットである心臓病のリスクでは狭心症発作の可能性・抗凝固薬による止血困難の可能性などです。ただし、いずれも内科主治医との連携で対応できるので、治療を受けるメリットを評価すべきでしょう。
心臓病でもインプラント手術が可能になる条件を教えてください
心筋梗塞の既往歴がある方は、治療から6ヵ月経過していて健康状態に問題がなければインプラント治療が可能です。
狭心症では、薬物による症状のコントロールができていれば治療できます。ただし、当日は発作対応の薬物の準備が必須です。抗凝固薬・抗血栓薬を使っている場合は従来休薬が条件でしたが、近年では内科主治医と連携して承認があれば休薬せずに治療できます。
歯科医師側でも多数のインプラントは避ける・適切な止血を徹底するなどの配慮が必要です。心臓弁膜症・不整脈などで人工弁・ペースメーカーの使用時でも、症状を把握している内科主治医の承認・指導があれば治療が可能です。
いずれの疾患でもインプラント治療には内科医師との情報共有・連携が大変重要なファクターになります。
インプラント治療を受けることを心臓病の主治医に相談すべきですか?
心臓病の方がインプラント治療を受けるのは、条件付きで可能です。
その条件は心臓病の主治医でないと確認できない事項なので、きちんとインプラント治療を受けることを相談してください
順序として、歯科医師の方から治療に必要な条件の内容を呈示してもらい、それを主治医に示して条件を確認・了承してもらいます。その回答と心臓の治療状況を歯科医師に伝える手順です。実際には医師同士で直接やりとりしてくれるかもしれません。
インプラント治療を受けるためにどのような準備が必要ですか?
心臓病の方は条件付きのインプラント治療なので、手術までは条件を外さないようにしておく必要があります。
抗血栓薬を休止する場合は1週間前から止めてください。休薬しない場合は、発作が起きないようにきちんと服用しましょう。また、普段から飲んでいる薬は忘れずに続け、安定した状態を維持してください。
心筋梗塞の方も狭心症の方も症状が安定していることが治療できる条件です。歯科医師と内科主治医の連携は先生方におまかせし、検査などを要請されたら指示に従ってください。

心臓病でインプラント治療を受けた場合のアフターケア

治療

自宅でのメンテナンスのポイントを教えてください
心臓病でインプラント治療を受けた場合、細菌感染による細菌性心内膜炎を警戒します。
持病に影響するので、腫れ・炎症があればすぐに医師に相談してください。
その他は一般的なアフターケアです。手入れを怠ると、インプラント歯周炎などでせっかくの歯を失います。自宅でも医師の指示を守ることが重要で、衛生面に配慮しながら丁寧な歯磨きを心がけてください。
指示に従ってやわらかいブラシ・歯間ブラシ・フロス・洗口液を使い、傷つけないように丁寧に歯垢を取り除きます。口内全体を清潔に保つことを意識しましょう。
歯科医院でのメンテナンスは必要ですか?
インプラントを長持ちさせるには、歯科医院でのメンテナンスが欠かせません。インプラントには神経がなく異変に気付きにくいので、歯科医師による定期的なチェックが必要です。
少なくとも6ヵ月ごと、できれば3ヵ月ごとに定期検診を受けてください。インプラントやほかの歯・歯茎の清掃状態を専門家の目で見てチェックし、新たな歯周病やむし歯を早期発見できます。適切な対処で口内が清潔に保たれ、長期にわたるインプラント使用が可能です。

編集部まとめ

インプラント

心臓病の患者さんがインプラント治療を受けるには、心臓病を悪化させるさまざまなリスクがあります。

しかし、症状が安定しているなど、条件によってはインプラント治療が可能です。ただ、実際に治療するには、心臓病の治療を担う内科主治医と歯科医師の間で情報共有と連携が欠かせません。

無事にインプラントが装着できた後は、メンテナンスが必要です。自宅で行うだけでなく、定期的に歯科医のチェックも受けて初めて長期使用が可能になります。

心臓が悪くてインプラントをためらっている方は、この記事を参考に前向きに検討してみましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
山下 正勝歯科医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

山下 正勝歯科医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

国立大学法人 鹿児島大学歯学部卒業 / 神戸大学歯科口腔外科 勤務 / 某一般歯科 7年勤務 / 国立大学法人 山口大学医学部医学科卒業 / 名古屋徳洲会総合病院  呼吸器外科勤務 / 専門は呼吸器外科、栄養サポートチーム担当NST医師

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