インプラントのなかでも、少ない土台で多くの人工歯を入れられるオールオン4は、入れ歯からインプラントに切り替えたい患者さんにおすすめです。
一般的なインプラント治療よりも身体的、経済的負担を抑えられる治療法ですが、年齢によっては適用が困難だとご存じでしょうか。
今回はオールオン4の治療に関心がある患者さんに向けて、年齢制限や治療の注意点に関する質問に回答します。
正しい知識を身につけて、インプラント治療選びのヒントにしてください。
オールオン4の年齢制限
- オールオン4は何歳から受けられますか?
- オールオン4(All–on–4)はインプラント治療の一種で、少ない土台を支えに複数の人工歯を取り付ける治療法です。具体的には、4本のインプラントを土台にして12本までの人工歯を支えることが可能です。
また、一般的なインプラントのように、入れたい人工歯ごとにインプラントを立てる必要がないため、コストや身体的負担も抑えられます。インプラント体を埋める顎骨の位置も調整しやすいため、骨が足りずインプラント治療を受けられなかった患者さんも、オールオン4を受けられるケースがあります。
オールオン4にはメーカーが規定する年齢制限はありません。何歳からオールオン4治療を受けられるかは、治療をする歯科医院が定めています。
多くの歯科医院では、オールオン4の治療は20歳前後以上としています。
- 高齢者は受けることができますか?
- 高齢の患者さんも、骨や身体の状態などの条件が合えばオールオン4を受けられます。
患者さんが手術できる健康状態であり、顎骨にインプラントを立てられるボリュームと強度があるならば、何歳でもインプラント治療は可能です。
特にオールオン4治療は骨がしっかりしている部分を選んでインプラントを埋め込むことができるため、一般的なインプラント程、骨のボリュームが必要とされません。
骨を増やす治療(骨造成)が不要でインプラント治療を受けられるケースも多いようです。
- 年齢制限がある理由を教えてください
- 先述したようにオールオン4には年齢制限はありませんが、歯科医院ごとに年齢制限を設けています。骨の状態によって治療が適さない患者さんがいるためです。
とくに顎の骨が成長段階である10代はインプラント治療をしていない歯科医院が少なくありません。骨が成長段階で変化しやすいため、オールオン4およびインプラント治療を受けられないケースがほとんどです。
また、一般的に10代で全ての歯を失うことは少ないことから、若年者のオールオン4は行われていないでしょう。
年齢以外でオールオン4を受けられない理由
- オールオン4を受けられない場合を教えてください
- オールオン4には年齢制限以外にも、治療を受けられない条件があります。
以下のような持病がある場合、オールオン4の治療が受けられない場合があります。- 骨粗しょう症
- 高血圧
- 糖尿病
- 歯周病(重度)
- 不整脈
オールオン4は骨にインプラントを埋め込む外科手術です。まずは歯科医師に持病について相談を行い、必要に応じて医科歯科連携などを行うことが重要です。
- 喫煙者はオールオン4を受けられますか?
- タバコはインプラント治療の成功率を下げるため、多くの歯科医院では禁煙を強く推奨しています。タバコに含まれるタールやニコチンなどの有害物質が以下のような悪影響を及ぼすためです。
- 傷の治りを遅くする
- 感染リスクを上げる
- インプラント体と骨の結合を阻害する
- 長期的な予後を悪くする
喫煙はインプラント治療だけでなく、歯周病や口腔癌などのリスクとなり、お口の健康にさまざまな悪影響をおよぼします。インプラント治療の有無に限らず、お口の健康のためには禁煙が望ましいでしょう。
- 妊娠中でもオールオン4を受けられますか?
- 妊娠中の患者さんへのオールオン4治療、およびインプラント治療は可能ですが、リスクが高いためおすすめできません。患者さんが妊娠中の場合、以下のようなリスクがあります。
- レントゲン写真での被ばくが胎児に影響する
- 治療中の仰向けの体制が母子の負担になる
- 使用できる薬剤が限られる
歯の治療と妊娠ケアの同時進行は、母子のリスクと負担が大きくなります。オールオン4治療は妊娠期間中を避けるほうが望ましいでしょう。
- 金属アレルギーの人はオールオン4を受けられますか?
- 金属アレルギーの患者さんでも、金属の種類を選べばオールオン4を受けられるケースがあります。
多くのインプラントは、身体への親和性が高く、アレルギーを起こしにくい金属、チタン製です。
チタンアレルギーが心配される場合は、事前にパッチテストや血液検査で確認しておきましょう。
オールオン4を受けるときの注意点
- 若年者がオールオン4を受けるときの注意点を教えてください。
- オールオン4治療の注意点を理解しておけば、歯科医院で受ける検査や治療の心配や不安を軽減できます。
若年の患者さんがオールオン4を受けるときは、骨の成長が止まっているか確認する必要があります。歯科医師の指示に従い、必要な術前検査を受けましょう。
なお、インプラント治療の術前検査で行う骨の検査は、レントゲン検査やCT検査です。
- 高齢者がオールオン4を受けるときの注意点を教えてください。
- 高齢の患者さんがオールオン4を受けるときは、全身の健康状態の管理に気を使いましょう。
特に高齢の患者さんは免疫力や傷の回復力が低下していることが少なくなく、感染を起こしやすい状態にあります。
インプラント治療前には、担当の歯科医師の十分なカウンセリングを受けましょう。歯科医師と患者さん、および患者さん家族がリスクを理解したうえで、治療を開始することが重要です。
- 費用はどのくらいかかりますか?
- オールオン4治療にかかる費用の相場は、片顎あたり3,000,000円(税込)前後です。
人工歯に対して1本ずつインプラント体を埋める必要がないため、入れられる人工歯に対するコストは低くなります。
しかしオールオン4はインプラント治療の一種であるため、一般的には保険適用外です。しかし医療費控除の対象になる可能性は高いため、ぜひ活用してください。
編集部まとめ
オールオン4は4本のインプラント体を土台にして、総入れ歯のように複数の人工歯を一度に入れられるインプラント治療です。
多くの歯を失った患者さんにおすすめできる、身体的、経済的負担を抑えた治療法となっています。
オールオン4には、メーカーが設ける明確な年齢制限はありません。しかし、多くの歯科医院では20歳前後以上と年齢制限を設けています。
その理由は10代の患者さんの骨はまだ成長途中で、インプラントを埋めるには不安定であるためです。
オールオン4を受けられる年齢の上限はありません。
患者さんの健康状態が外科手術に耐えられ、顎骨にインプラントを埋められる強度があれば、高齢の患者さんでも治療を受けられます。
若い患者さんも高齢の患者さんも、オールオン4を受ける場合はリスクが隠れている可能性があります。
歯科医師の指示に従って、術前の問診や検査をしっかり受けましょう。
参考文献