天然歯のような噛み心地や高い審美性のあるインプラントですが、人工歯が入るには一定の期間が必要です。
歯がない状態に不便を感じたり、見た目が気になったりする人もいるでしょう。
即日(1DAY)で行えるインプラント治療であれば、手術当日に仮歯まで装着できます。そのため、見た目だけでなく、食事面でも不自由を感じにくいでしょう。
本記事では、即日(1DAY)インプラントのメリット・デメリットをはじめ、治療の流れを解説します。インプラント治療を検討している人は参考にしてみてください。
即日(1DAY)インプラントとは?
- 一般的なインプラントの治療期間はどのくらいですか?
- 一般的なインプラントの治療期間は、埋め込みから上部構造(人工歯)装着までに3ヵ月〜1年近くかかります。治療が長くなるのは、埋め込んだインプラント体と顎骨との結合に時間がかかるからです。
上顎・下顎で異なるものの、上顎の場合は5ヵ月前後、下顎の場合は3ヵ月かかります。仮歯の装着は、インプラント体と顎骨が結合してからです。歯周病やむし歯などの治療を必要とする人や、骨が足りず骨造成を行う人はさらに治療期間を要します。
- 即日(1DAY)インプラントとはどのような治療ですか?
- インプラント手術を行ったその日に仮歯を装着する治療法です。歯が部分的にない、もしくは歯をすべて失った人が対象のオールオン4も同じで、4本のインプラント体を埋め、手術当日に仮歯を装着する治療法になります。
なお、治療を行うための検査やカウンセリング、上部構造の装着期間は含まれていません。
即日(1DAY)インプラントのメリット・デメリット
- インプラント治療を即日で受けるメリットを教えてください。
- インプラント治療を即日で受けるメリットは、次の点が挙げられます。
- 治療期間の短縮
- 歯のない期間がない
- 手術当日から食事が可能
- 見た目への影響が少ない
仮歯ではあるものの、手術当日に装着できる点は食事面はもちろん、見た目や会話にも大きく異なります。特に人目に触れる機会の多い前歯の場合、仮歯があるのとないのとでは影響が違います。
食事もやわらかいものであれば、手術当日から可能です。また、治療期間が短縮するため、治療回数を減らしたい方にはメリットが大きい治療といえるでしょう。
- インプラント治療を即日で受けるデメリットを教えてください。
- インプラント治療を即日で受けるデメリットは、次の点が挙げられます。
- 手術時間が長い
- 骨の状態によっては治療できない場合もある
- 食事制限がある
手術から仮歯の装着までを1日で行うので、手術時間は長くなります。そのため、身体への負担は大きいといえます。
骨量が十分になければ、即日(1DAY)インプラントの治療はできません。骨量が足りないと判断されれば、通常のインプラント治療になる可能性があります。
このほかに、食べられるものが限られます。手術当日から食事はできますが、インプラントに影響を与える硬いものは食べられません。
- 即日(1DAY)インプラントのリスクがあれば教えてください。
- 即日(1DAY)インプラントは一般的なインプラントとは異なり、治療経過を予測して治療を行わなければなりません。そのため、リスクもあります。
- 術後の感染
- 結合がうまくいかない
衛生面を徹底しインプラント治療を行うものの、感染リスクをゼロにすることは不可能です。抗生剤にて対応するものの、それでもよくならない場合はインプラント自体を外さなければなりません。
即日(1DAY)インプラントは顎骨としっかり結合してから仮歯を装着しないので、食いしばりや歯ぎしりなどの悪影響を受けやすいです。インプラントが結合せず、不安定のままだと、最悪の場合インプラントごと抜け落ちてしまいます。
このほかに、インプラント周囲炎にも気をつけましょう。歯周病菌がインプラント治療を行った部位に入り込み、炎症を起こし出血や膿が出て、最悪な場合はインプラント体が抜け落ちます。インプラント周囲炎は口腔内不良が主な原因であるため、定期的にメインテナンスをし、口腔内を清潔に保ちましょう。
即日(1DAY)インプラントの治療方法・費用
- 即日(1DAY)インプラントの治療はどこの歯科医院でも受けられますか?
- その日に仮歯まで一気に行う手術であるため、限られた歯科医院でしか受けられません。顎骨に直接インプラント体を埋め込むため、顎骨の状態や神経の位置を正確に把握する必要があります。三次元的に口腔内を正確に分析できる歯科用CTをはじめとした精密機器や、衛生管理が整っている歯科医院で受けましょう。
また、インプラント治療に対しての経験や知識が豊富な歯科医師が在籍している歯科医院を選びましょう。特に即日(1DAY)インプラントは、一般的なインプラント治療より高い技術を要する治療法になります。
経験や知識が豊富な歯科医師であれば、治療経過だけでなく、事前の説明やリスクへの対処法、メインテナンスなども的確に行ってもらいやすいです。事前に歯科医院のホームページで、症例件数や導入設備、衛生面などを確認してください。
- 即日(1DAY)インプラントの治療は誰でも受けられますか?
- 誰でも受けられるわけではありません。下記の条件を満たす患者さんであれば、治療は受けられます。
- 顎骨の硬さや厚みなどがある
- 食いしばりや歯ぎしりなどの癖がない
- 口腔状態がよい
- 心疾患や糖尿病などの基礎疾患がない
その日に仮歯まで装着することから、顎骨がしっかりしていなければ、インプラント自体に影響を及ぼす可能性があります。また、歯ぎしりや食いしばりなど、インプラントに影響を与える癖のある人も即日インプラントはおすすめできません。
このほかに、喫煙の習慣がある人もよいとはいえません。これは即日インプラント治療に限らず、インプラント治療すべてにいえることです。煙草に含まれるニコチンが血流を悪くし、インプラント体と顎骨の結合に悪影響を及ぼすという研究結果があります。
インプラント治療を成功させるためにも、インプラント治療をきっかけに禁煙を検討してみてください。
- 即日(1DAY)インプラントの治療の流れを教えてください。
- 当日にインプラントと仮歯まで装着する方法では事前の準備が非常に重要です。施術を担当する歯科医師側は手術のシュミレーション、手術用のガイド作製、仮歯の材料準備などがあります。患者さん側は体調の管理、スケジュールの管理、術後に必要なケア(食べやすい食事)を準備しておく必要があります。
治療の流れとしては、まず、口腔状態や顎骨の状態などの詳しい検査やカウンセリングを行います。神経や顎骨の状態などを把握するために歯科用CTやX線を使用し、患者さんと相談しながら慎重に治療計画を相談します。計画が決まれば、次は手術です。
麻酔を行い、埋入する部位の歯肉を切開し、ドリルで顎骨に穴をあけインプラント体を埋め込みます。埋め込んだ後、歯肉を縫合し仮歯を作るための型取りを行います。型取りができたら、仮歯を作成しインプラントの上に装着させ、噛み合わせを調整したら治療は完了です。
インプラント体と顎骨が結合できたのを確認後、本歯である上部構造を装着したらすべてのインプラント治療は終了となります。
- 保険は適用されますか?
- 一般的に、即日(1DAY)を含むインプラント治療には保険は適用されません。むし歯や歯周病などにより歯を失った・加齢により顎の骨が減り歯を失ったなどは、保険治療の範囲で日常生活を送るのに十分な噛む機能を回復できると考えられているからです。
噛み心地を解消したい・見た目をよくしたいなどは最低限の機能回復の範囲外であるため、保険が適用されません。しかし、平成24年4月から一部の症例で保険適用になりました。- 腫瘍や顎骨骨髄炎、外傷などにより顎の骨が1/3以上欠損した
- 疾患や外傷などにより顎骨を切除後に骨移植した
- 生まれつき顎の骨が1/3以上欠損している
- 生まれつき顎の骨が形成不全と診断された
- 生まれつき歯が6本以上ない
保険適用になったからといってかかりつけの歯科医院で治療を行えるわけではありません。入院できる・医療体制や医薬品が整っているなどの施設条件があります。
- 費用相場はどのくらいですか
- 個々の口腔状態や歯科医院が扱うメーカーにより費用は異なるものの、一般的なインプラント治療とほとんど変わらず、1本あたり300,000〜500,000円(税込)程度です。オールオン4の費用は1,800,000〜2,400,000円(税込)程度です。
編集部まとめ
手術を受けたその日に仮歯まで装着できる即日(1DAY)インプラント治療は、食事だけでなく見た目への影響も少ない治療法です。
しかし、顎骨がしっかりしていない・喫煙習慣があるなど結合に影響を与えるため、治療ができない場合もあります。
また、高い技術力を要するため、どこの歯科医院でもできるわけではありません。
メリット・デメリットをよく理解のうえ、信頼できる歯科医師による治療を検討してみてはいかがでしょうか。
参考文献