前歯を歯周病や不慮の事故で失ってしまい、日常生活に不便を感じている方がいるのではないでしょうか。
前歯はスマイルラインといわれ、笑顔の大切な一部です。その前歯をインプラントで取り戻して人生をより豊かに過ごしてみてはいかがでしょうか。
しかし、前歯のインプラント治療は失敗しやすいイメージをお持ちの方が少なくありません。失敗しやすいといわれるその原因・対処法を質問形式でお答えします。
インプラント治療の失敗の原因
- インプラント治療とはどのようなものですか?
- 歯がない部分の顎の骨にインプラント(歯根)を埋め込み、そのインプラントに義歯を付ける治療方法がインプラント治療です。
歯根は体に馴染みやすいチタンやチタン合金などで作り、義歯はセラミックやジルコニアなどで作ります。インプラント治療は1本の歯を失った場合から全部の歯を失った場合まで対応が可能です。
むし歯や歯周病や外傷によって歯を失ったり、先天的に歯がなかったりする方もいます。その失った歯に変わって噛み心地や見た目を回復するための治療でもあります。インプラント治療により諦めていたことが可能になり、生活に豊かさが増えるのではないでしょうか。
- インプラント治療のメリット・デメリットを教えてください。
- インプラント治療は、義歯をしっかり固定できて第二の永久歯と呼ばれる程の利点がありますが、その反面欠点もあります。まずは、メリットを紹介します。
- しっかりと強く咬める
- 自信を持って笑える
- 左右でバランスよくかめる
- 取り外す面倒がない
- 食事をおいしく味わえる
- 自分の天然歯にかかる負担が減って長持ちする
- 歯ごたえのある食事の食感が楽しめる
- 隣の歯を削る必要がない
- 発音が安定して会話を楽しめる
- インプラントはむし歯にならない
- 見映えのいい仕上りが可能
次にデメリットを紹介します。
- 咬む感覚が自分の天然歯と違う
- 治療期間が長めである
- 状況により見た目が天然歯と異なる場合もある
- 食べ物が詰まりやすくなる場合もある
- ほかの歯が抜けて義歯を入れる場合は義歯のデザインが制限される
- 外科処置に伴う痛み・腫れ・出血・合併症を起こす可能性がある
- お手入れ次第で感染する場合がある
- 治療費が高めである
以上のようにインプラントには、メリット・デメリットがあります。インプラント以外の歯が抜けてしまい義歯を入れる場合、インプラントにフックをかけるとダメージになります。
ですから、装着する義歯のデザインも慎重に検討しなくてはいけません。インプラント治療を検討の際は、口腔環境も含めて歯科医師とインフォームドコンセントをしっかり行い理解し納得してから治療を受けてください。
- インプラント治療は失敗することがありますか?
- 歯科医師は治療中は失敗がないよう行いますが、口腔環境によって対処できない場合がないとはいえません。また、治療終了後10年以上インプラントを維持されている方は少なくありませんが、維持できていない方もいます。いくつかある失敗例のうち、4つ程ご紹介します。
- インプラントを埋入したが固定されない
- インプラントが細菌に感染した(インプラント周囲炎)
- 腫れ・痛み・しびれなどの症状が長期的に続いている
- 人工歯が破損する・外れる
4つの失敗例をあげましたがインプラントを装着後に細菌に感染したり人工歯が破損したりと長期的にみた失敗もあります。原因を把握し予防することも大切です。
- よくある失敗の原因を教えてください。
- 失敗例のうち少なくない4つの例の原因をご紹介します。
- インプラントが固定されない
- 細菌に感染した(インプラント周囲炎)
- 腫れ・痛み・しびれなどが長引く
- 人工歯が破損・外れる
1つ目は、インプラントが固定されない場合です。埋め込む位置や深さが適切でないとか、インプラントが顎の骨を貫通してしまっているとかでうまく骨と結合されていない場合です。
また、顎の骨に穴を開ける際に骨の硬さを考慮せず、骨にダメージを与えてしまった可能性もあります。
2つ目は、細菌に感染した(インプラント周囲炎)場合です。治療を行う環境の徹底した衛生管理が必要ですが、歯科医院によって異なります。
そして、インプラント治療に入る前に歯周病治療をしっかり行っていないとその細菌がインプラントに感染する場合も否めません。治療終了後のメンテナンスも不十分だと感染リスクを高める原因の1つです。
3つ目は、腫れ・痛み・しびれなどが長引く場合です。インプラントが適切に埋入されていないと神経を損傷したり、ほかの歯の歯根に触れて痛みが生じたりする場合があります。
また、細菌に感染していると感染症により炎症が起きて痛みや腫れなどが生じます。
4つ目は、人工歯が破損・外れた場合です。アパットメント(土台と人工歯の接合部)の締め付けが不十分だと、人工歯が緩んだり外れたりする場合があります。また、噛み合わせの調整も重要で、適切に調整されていないと人工歯が破損したりほかの歯に負担をかけたりする場合もあります。噛み合わせが悪いと細菌感染のリスクを高める場合もあるので適切な調整が必要です。
前歯のインプラント治療は失敗しやすい?
- 前歯のインプラントは失敗しやすいと聞いたのですが本当ですか?
- 前歯のインプラント治療は、難易度が高く困難な場合があります。
そのため、失敗しやすいイメージをお持ちの方が少なくありません。それは、前歯の骨がほかの部位より薄く、審美性を求められる治療だからです。
- 前歯のインプラントが失敗しやすい理由を教えてください。
- 前歯の上顎の骨が薄いとインプラントを安定させることが難しく、審美性を高めるために位置や角度も適切である必要があります。これが、前歯のインプラント治療は難易度が高く困難な治療といわれる理由です。
経験の豊富な歯科医師に相談し、適切な検査・治療計画を立てて十分な情報をえることで成功率を高めることが可能です。また、装着後の定期的なメンテナンスとホームケアも失敗しないための重要なポイントになります。
- 前歯のインプラントの失敗例を教えてください。
- 難易度の高い前歯のインプラントでの、失敗例を3つ程紹介します。
- 前歯が長くなった
- インプラント周囲炎によりインプラントが脱落した
- 歯茎が黒ずんだ
前歯は機能性と審美性の両方の要求が求められるため、難易度の高い治療となります。
- 失敗してしまった場合はどうすればよいですか
- まずは、担当歯科医師に相談をしてください。そのうえで不安があり納得できない場合は、セカンドオピニオンを検討してください。セカンドオピニオンは、患者さんの権利です。
セカンドオピニオンを受診したい歯科医院が見つかりましたらまずは、その歯科医院に連絡をしてセカンドオピニオンが可能かどうかの確認をして来院してください。その際は、担当歯科医師にセカンドオピニオンを受診することを伝えてください。
とても伝えにくいと思いますが伝えることで、これまでの治療歴や検査方法や結果などの資料を渡していただけます。そうすると、セカンドオピニオンを受診する歯科医院での新たな検査を省くことができ費用も軽減できます。セカンドオピニオンを受けたからといって転院をする必要はありません。
しかし万が一、資料の受渡しに抵抗がみられたりセカンドオピニオンでの結果とかけ離れた内容だったりした場合は、転院も検討してみてはいかがでしょうか。
前歯のインプラント治療の失敗を防ぐための対処法
- 前歯のインプラント治療の失敗を防ぐための対処法を教えてください。
- 失敗を防ぐにはいくつかの対策がありますので4つ程ご紹介します。
- 事前の検査と診断が重要
- ご自身にあった適切なインプラントの選定
- 装着後の定期的なメンテナンスとホームケアによる良好な口腔環境の維持
- 経験の豊富な歯科医院の選定
まず、口腔内の状態をしっかり把握して治療計画を立てることはリスクを抑えるために重要です。知識と技術を持つ経験の豊富な歯科医師により、患者さんの骨や口腔内の状態にあったインプラントを選び治療を行うと失敗のリスクを減らせます。
装着後の定期的な歯科医院でのメンテナンスとホームケアも長期的な成功をもたらし、前歯のインプラント治療の失敗を防ぐポイントになります。
- 失敗しないための歯科医院の選び方を教えてください。
- インプラント治療を行うために歯科医院を選ぶポイントを6つ程紹介します。
- 院内が清潔である(掃除が行き届いている・物が整頓されている)
- 設備が整っている(手術をする場所が整備されている・X線写真が見やすい)
- 検査が念入りである(インプラントする部分だけでなくお口全体の検査を行う)
- インプラントする部分だけでなくお口全体の治療のスケジュールを考えてくれる
- インプラント治療を行う際に体の状態もしっかりヒアリングしてくれる
- インプラントのメリットとデメリットの説明やインプラント以外の治療法の選択肢の提案や治療費用や治療期間など丁寧な説明がある(インフォームドコンセント)
以上のポイント以外にも、専門知識や技術を定期的にアップデートするため研修などが義務付けられている専門の医師もいます。専門の医師が在籍している歯科医院を選ぶこともポイントの1つです。
編集部まとめ
この記事では、失敗しやすいイメージのある前歯のインプラントのメリット・デメリットや失敗といわれる原因や対処法など、歯科医院の選び方も合わせて質問形式でお答えしました。
前歯は笑顔の一部です。前歯のインプラントでたくさんの笑顔で人生をより豊かなものにしてください。
そして、失敗しやすいイメージのある前歯のインプラントですが、ご自身にあった信頼性の高い歯科医師を見つけて納得した治療を受けることが大切です。
参考文献