インプラント

インプラント治療後は雑菌に注意!インプラント周囲炎の原因と対処法

インプラント治療後は雑菌に注意!インプラント周囲炎の原因と対処法

インプラントは、人工歯根とアバットメント(連結装置)、上部構造からなる補綴装置で、その構造は天然歯にそっくりです。上部構造はセラミックで作られることが多く、見た目も天然歯に酷似しているため、本物の歯と同じように扱ってしまう人がいますが、インプラントはあくまで人工物であることを忘れてはいけません。インプラントは天然歯よりも雑菌による影響が受けやすく、インプラント周囲炎という歯周疾患のリスクもあります。ここではそんなインプラント周囲炎の原因と対処症について詳しく解説します。

雑菌とインプラント周囲炎の関係

はじめに、雑菌が影響することによって発症するインプラント周囲炎の基本事項を確認しましょう。

インプラント周囲炎とは何ですか?
インプラント周囲炎とは、インプラント特有の歯周疾患です。文字どおりインプラントの周りに炎症反応が起こり、さまざまな症状が引き起こされます。天然歯には、歯根周りに歯根膜という組織があるため、歯周病にかかっても病態が急速に進行することは稀なのですが、インプラントには歯根膜がないことから、細菌による感染がどんどん広がります。その結果、インプラントの脱落を招いてしまうことも珍しくありません。
インプラント周囲炎の主な症状を教えてください
インプラント周囲炎の主な症状は、一般的な歯周炎とほぼ同じです。歯茎の腫れや出血、顎の骨(歯槽骨)の破壊が見られます。そのなかでも特に注意すべきなのは、人工歯根と顎の骨との結合が失われる現象です。インプラントの人工歯根と顎骨とは、オッセオインテグレーションという現象によって結合していますが、インプラント周囲炎によって歯槽骨の破壊が進むと、その結合も自然に失われます。それはインプラントの動揺や脱落を招くことに直結するのです。
インプラント周囲炎になる原因は何がありますか?
インプラント周囲炎になる根本的な原因は、雑菌の繁殖です。インプラントと歯茎の境目に歯垢や歯石がたまり、雑菌が繁殖すると感染が起こります。ここでひとつ気になるのが、なぜ歯周炎とは呼ばずにわざわざインプラント周囲炎という特別な名前が付けられているのかです。実はインプラントは、歯と歯茎の境目の部分が天然歯と異なる形状をしています。具体的には、上部構造とアバットメントの連結部分の形状に問題があり、汚れがたまりやすく、雑菌も繁殖しやすいのです。加えて、歯根面に歯根膜が分布しておらず、雑菌を排除する免疫システムも機能しにくくなっています。こうした特別な構造を持っていることから、インプラント周囲炎は治療が難しく、進行も早くなっています。

インプラント周囲炎の治療

インプラント周囲炎の治療 次に、インプラント周囲炎のセルフチェック方法やセルフケア方法、治療方法について解説します。

インプラント周囲炎のセルフチェック方法はありますか?
インプラント周囲炎は、歯周病と同じ方法でセルフチェックできます。以下の症状に当てはまる場合は、インプラント周囲炎が疑われます。
  • 口臭が強くなってきている
  • 歯茎が赤く腫れて、歯磨きのときに出血する
  • 硬い食べ物が噛みにくい
  • 歯茎が下がった
  • アバットメントやインプラント体が露出している
  • 食べ物が詰まりやすくなった
  • インプラントがグラグラと動揺している

これらの症状は、インプラントの周りで雑菌が繁殖して、歯茎や歯槽骨に炎症を生じている可能性を示唆しています。ただし、あくまで可能性であるため、正確な診断は歯科医師に任せるようにしてください。

インプラント周囲炎は歯磨きをしていれば自然に治りますか?
インプラント周囲炎は、歯磨きをしているだけでは自然に治ることはありません。通常の歯周病と同様に、インプラント周囲炎も細菌による感染が原因で起こります。歯磨きは重要な予防策ですが、すでに発症している場合には不十分です。歯周病と同じように、インプラント周囲炎も適切な治療が必要です。
インプラント周囲炎の治療方法を教えてください
インプラント周囲炎の治療方法は、炎症の進行度に応じて異なります。初期の段階では、専門家によるクリーニングが行われ、プラークや歯石を除去します。これにより、細菌の数を減らし、炎症を抑えることができます。進行した場合は、抗生物質の投与や、レーザー治療、外科的手術が必要になることもあります。特に重度の場合は、インプラントを取り除いて再治療を行うこともあります。インプラント周囲炎の治療後は、正しい口腔ケアと定期的なメンテナンスが不可欠です。

雑菌ケアとインプラント周囲炎の予防

雑菌ケアとインプラント周囲炎の予防 続いて、雑菌のケア方法とインプラント周囲炎を予防する方法を解説します。

インプラント周囲炎にならないために気をつけることはありますか?
次の3つの点に配慮することで、インプラント周囲炎は予防しやすくなります。

◎定期的なメンテナンスを欠かさず受ける
インプラント治療後は、定期的な歯科医院でのメンテナンスが重要です。専門的なクリーニングと検診を受けることで、インプラント周囲の健康状態を常にチェックし、インプラント周囲炎の予防や早期発見が可能になります。

◎セルフケアを徹底する
患者さん自身のセルフケアも欠かせません。正しい歯磨き方法を習得し、インプラント周囲の清潔を保つことが大切です。デンタルフロスや歯間ブラシなどを使用して、プラークの蓄積を防ぎましょう。ただし、誤った方法でセルフケアを頑張っても、逆効果となるため、その点は十分な注意が必要です。正しいセルフケア方法は、定期的なメンテナンスの場でも学ぶことができます。

◎禁煙する
喫煙はインプラント周囲炎のリスクを高めます。タバコの煙は免疫力を低下させ、治癒力を妨げるため、インプラント周囲の炎症が悪化しやすくなります。喫煙者の方は禁煙することを強くおすすめします。

もしインプラント周囲炎が起こってしまったらどうすればいいですか?
インプラント周囲炎が起こった場合、できるだけ早く歯科医院を受診し、適切な治療を受けることが重要です。初期段階で治療を開始することで、炎症の進行を抑え、インプラントの保存が可能になることがあります。進行した場合は外科的処置が必要になることもあります。インプラントを撤去しなければならないケースもあるので、早期発見と早期治療が鍵となります。
インプラント治療中に雑菌を入れないためにできることがあれば教えてください
インプラントの治療期間は数ヵ月に及ぶのが一般的です。その間、以下の2点に注意することでインプラントに雑菌が入りにくくなります。

◎日々のセルフケアを充実させる
インプラント治療中に雑菌の侵入を防ぐためには、日々のセルフケアが重要です。歯磨きを正しく行い、歯とインプラントの周囲を清潔に保ちましょう。補助的清掃器具を使用して、歯ブラシだけでは届かない部分のプラークを取り除くことも重要です。特に、歯と歯茎の境目やインプラント周囲は念入りにケアするよう心がけましょう。

◎インプラントに負担がかからないように配慮する
インプラント治療中は、インプラントに過度な負担をかけないように注意が必要です。硬い食べ物や粘着性のある食べ物を避け、インプラント周囲の組織にストレスを与えないようにします。また、歯ぎしりや食いしばりがある場合は、歯科医師に相談して適切な対策を取りましょう。適切なセルフケアと負担の少ない生活習慣を維持することで、インプラントの健康を保ちやすくなります。

編集部まとめ

今回は、インプラントに雑菌が入り込むことで生じるインプラント周囲炎の原因と対処法、予防法について解説しました。インプラントは、歯茎との境目が天然歯と異なる構造をしており、歯根面には歯根膜が分布していないことから、雑菌の侵入が起こりやすくなっています。そのためインプラント治療中やインプラント治療後は、セルフケアを徹底し、喫煙や歯ぎしりといった歯周疾患のリスクを引きあげる習慣を取り除くことが大切です。当然ですが治療後のメンテナンスも定期的に受けるようにしてください。インプラント周囲炎にかかってしまった場合は、できるだけ早く主治医に診てもらうことが大切です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
大津 雄人医師(医療法人社団GLANZ大津歯科医院 副院長 / 東京歯科大学インプラント科 臨床講師)

大津 雄人医師(医療法人社団GLANZ大津歯科医院 副院長 / 東京歯科大学インプラント科 臨床講師)

東京歯科大学歯学部 卒業 / 東京歯科大学大学院歯学研究科(口腔インプラント学) 卒業 / 現在は大津歯科医院勤務 / 東京歯科大学インプラント科臨床講師 / 専門は口腔インプラント

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