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ショートインプラントのデメリットは?向いている方や注意点を解説

ショートインプラントのデメリットは?向いている方や注意点を解説

ショートインプラントとは、顎骨の高さが不足している場合に利用されるインプラント治療の一種ですが、従来のインプラント治療と比べてどのようなデメリットやメリットがあるのでしょうか? 本記事では、ショートインプラントについて以下の点を中心にご紹介します。

  • ショートインプラントについて
  • ショートインプラントのデメリットとメリット
  • ショートインプラントが向いている方や注意点

ショートインプラントについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。

ショートインプラントとは

ショートインプラントとは

ショートインプラントとは、歯の欠損を補う歯科治療法であるインプラント治療のひとつで、従来のインプラント治療よりも短い長さのインプラント体を使用した治療方法です。

インプラント治療は十分な骨量がある場合に行われますが、顎の骨が十分でない場合、骨移植などが必要になることがあります。一方、ショートインプラントは短い構造であるため、骨の量が少ない場合でも使用可能な点が特徴です。

ショートインプラントは、骨量不足の患者さんにおすすめの選択肢となり、従来のインプラント治療に比べて手術時間が短く、負担が少ない利点があります。

また、骨移植を必要としないため、治療期間を短縮できるケースもあります。ただし、すべての患者さんに合うわけではなく、歯科医師による適切な診断が必要です。

ショートインプラントのデメリット

ショートインプラントのデメリット

ショートインプラントにはどのようなデメリットがあるのでしょうか? 主なデメリットを、以下で詳しく解説します。

すべての症例に適応していない

ショートインプラントは、顎の骨の高さが十分でない患者さんにも対応できるため、骨移植を行わずにインプラント治療が可能な場合があります。しかし、すべての症例に適応しているわけではありません。

ショートインプラントは顎骨の状態によっては安定性が確保しにくい場合もあるため、骨の質や量に応じて慎重な判断が必要です。すべての患者さんに対して有効な治療法ではなく、個々の症状に合わせて適切な治療法を選択することが求められます。

表面加工と細菌リスク

ショートインプラントのデメリットの一つが、表面加工に関する問題です。ショートインプラントは従来のインプラントよりも長さが短いため、歯と顎骨の結合部分の表面積が少なくなります。このため、インプラントの安定性を保つために、表面加工技術が重要になりますが、適切に加工されていない場合、結合が弱くなるリスクがあります。

もう一つのデメリットとして、細菌感染のリスクが挙げられます。インプラントの周囲に細菌が侵入すると、周囲の骨や歯茎に悪影響を及ぼし、インプラントが脱落する恐れがあります。ショートインプラントは長さが短いため、従来のインプラントよりも感染に対する抵抗力が弱い可能性があります。

インプラントの本数が増える場合もある

ショートインプラントのデメリットは、インプラントの本数が増える可能性がある点です。ショートインプラントは従来のものよりも短いため、負荷がかかりやすく、1本あたりが支えられる力が限られます。そのため、噛む力が強い場合や、負荷を分散させるために、標準よりも数を増やして(連結させて)インプラントを埋め込む必要が生じることがあります。

また、インプラントの本数が増えることで、手術の時間や費用が増加する可能性も考慮しなければなりません。複数のインプラントが必要な場合は、術後のケアやメンテナンスが重要となり、治療の計画段階でこれらのリスクを十分に踏まえて検討する必要があります。

ショートインプラントのメリット

ショートインプラントのメリット

ショートインプラントには、従来のインプラントと比べてどのようなメリットがあるのでしょうか?
主なメリットを、以下で詳しく解説します。

骨造成を避けられる

繰り返しになりますが、ショートインプラントのメリットの一つは、骨造成手術を避けられる点です。

従来のインプラント治療では、顎骨が不足している場合、人工的に骨を増やす骨造成手術が必要になることがありますが、ショートインプラントは骨の高さが十分でなくても設置可能なため、手術の負担を軽減できます。

また、骨造成手術を省略できるため、治療期間が短くなり、患者さんにとって治療の負担が軽減されます。さらに、手術の回数や侵襲が少なくなることで、術後の回復が早まる可能性もあります。

血管や神経を傷つけるリスクの低減

ショートインプラントは、従来のインプラント治療に比べて、血管や神経を傷つけるリスクが低いメリットがあります。

従来のインプラント治療は十分な顎骨の高さが必要ですが、ショートインプラントは短いインプラント体を使用するため、顎骨の高さが不足しているケースでも適応できる点が特徴です。このため、上顎洞や下顎の神経に近い部位でも、ショートインプラントを選択すれば、重要な血管や神経を避けた安全性の高い治療ができます。

また、顎骨を大きく削る必要がないため、治療時の侵襲が少なく、回復が早いのもメリットです。なかでも、高齢者や顎骨が薄くなっている方にとって、ショートインプラントは身体的負担を軽減し、合併症のリスクを抑えた治療が期待できます。

さまざまな負担の削減

これまで述べてきたように、ショートインプラントはほかのインプラントよりも長さが短いため、顎骨の量が少ない方でも骨移植をせずに治療が可能となる場合があります。その結果、骨移植に伴う手術の負担やリスクを避けられ、治療期間も短縮されます。

また、手術自体の時間も短く済むため、体への負担が少なく、回復も早いのが特徴です。高齢の方や全身疾患を抱えている方でも、従来のインプラント手術に比べてショートインプラントの方が負担が少ないことが期待されています。

さらに、ショートインプラントは治療のコストも抑えられることが多く、患者さんにとって経済的なメリットも大きいです。治療の選択肢として、顎骨の量が限られている方や、手術の負担を減らしたい方にとって、ショートインプラントは有効な方法です。

インプラントに骨の厚みが必要な理由

インプラントに骨の厚みが必要な理由

インプラント治療で、顎の骨の厚みは重要な要素です。インプラント治療は人工の歯根を顎の骨に埋め込む治療法であるため、十分な骨の厚みがないと、インプラントがしっかりと固定されません。

そのため、顎骨が薄い場合や不足している場合、インプラントが安定せず、長期的な使用に耐えることが難しくなります。また、顎骨が足りないと、インプラントが顎骨を突き破り、神経や血管にダメージを与えるリスクも高まります。

顎骨が少ない方でも、骨移植や骨造成などの治療を行えば、インプラントの設置が可能なケースもあります。これらの方法で骨を再生させることで、インプラントがしっかりと固定され、安定した治療結果が期待できます。インプラント治療を検討する際には、顎の骨の状態を事前に確認し、適切な治療法を選ぶことが大切です。

ショートインプラントの成功率

ショートインプラントの成功率

医学論文に基づく研究では、ショートインプラントの成功率はとても高く、従来のインプラント治療とほぼ同等の予後が期待できるとされています。

また、ショートインプラントは、インプラント体が短くても予後に悪影響を及ぼすことが少ないとされています。顎骨の状態や治療計画に応じて、適切な長さのインプラントを選ぶことで、安定した結果を得られるため、顎骨が不足している患者さんにも有効な治療法です。

最終的には、患者さんの状態や担当の歯科医師の判断によりますが、ショートインプラントは骨移植を避けたい方にとって、有効な選択肢となる治療法です。

ショートインプラントが向いている方

ショートインプラントが向いている方

ショートインプラントは、従来のインプラント治療が難しい方に有効な選択肢です。なかでも、顎の骨が薄くなっている方や骨の高さが不足している場合に有効です。

従来のインプラントでは骨の再生治療や骨移植が必要になることが多いようですが、先述したように、ショートインプラントではこれらの治療を避けられる可能性があります。

また、高齢者や持病を抱えている方など、骨再生治療のリスクを避けたい方にも向いています。手術の負担が軽減されるため、治療期間も短くなり、身体への負担が少なくなる点が大きなメリットです。

さらに、神経や副鼻腔にダメージを与えずに治療を進められるメリットから、上顎の副鼻腔が大きい方や、下顎の神経の位置が近い方も、ショートインプラントが適応されることがあります。

このように、ショートインプラントは、顎の骨量が限られている方や、手術の負担を軽減したい方に向いた治療法です。

ショートインプラントの注意点

ショートインプラントの注意点

ショートインプラントを選ぶ際に、どのような注意点があるのでしょうか?

タバコはやめる

ショートインプラントの治療を成功させるためには、タバコをやめることが重要です。タバコに含まれるニコチンやその他の有害物質は、血管を収縮させるため、歯茎や顎骨への血流が減少し、インプラントの定着に悪影響を及ぼす可能性があります。

ショートインプラントは、従来のインプラントよりも長さが短く、顎骨との接触面積が少ないため、定着に十分な条件が必要です。喫煙者の場合、インプラント周囲の炎症や感染リスクが高まり、治療の成功率が下がるといわれています。

また、タバコを吸うことで免疫力が低下し、傷口の治癒が遅れる可能性もあります。その結果、術後の回復が長引くことや、インプラントが不安定になり、脱落するリスクが高まります。こうした理由から、そもそも喫煙者のインプラント治療を行っていない歯科医院もあります。

ショートインプラントを行う際は、手術前から禁煙を開始し、術後もタバコを控えることが推奨されます。成功したインプラント治療を維持するためにも、禁煙の継続が重要です。

骨の幅が重要

ショートインプラントは、従来のインプラントに比べて短い長さの歯根を使用するため、顎骨の高さが十分でない患者さんにも適用できる治療法です。しかし、ショートインプラントを成功させるためには、顎骨の幅が十分に確保されていることが重要です。

インプラントは周囲の顎骨にしっかりと支えられる必要があり、顎骨の横幅が不十分だと、インプラントが安定せず、長期間の使用に影響を及ぼす可能性があります。

顎骨の幅が足りない場合、事前に骨移植や骨造成などの手術が必要になることもあります。また、ショートインプラントは従来のインプラントよりも表面積が小さいため、顎骨にかかる負担が大きくなる場合があり、適切なケアと管理が求められます。

1回法で行う

ショートインプラントの1回法は、手術の際にインプラントを埋入する工程と、アバットメント装着までを一度に行う方法です。1回法を用いることで、手術回数が少なくなり、患者さんの負担が軽減されるメリットがあります。

従来の2回法では、インプラントを埋め込んだ後に一度傷口を閉じ、数ヵ月後に再度開いてアバットメントを装着しますが、1回法ではこの二度目の手術が不要となります。

また、1回法は治癒までの期間が短縮されるため、早い段階で日常生活に復帰しやすいです。しかし、1回法は適応できる条件が限られているため、患者さんの顎骨の状態や口腔内の状況によっては、2回法が推奨される場合もあります。

どちらの方法が合うかは、担当の歯科医師とよく相談し、慎重に決定するのが大切です。

メンテナンスをしっかり行う

ショートインプラントを長期間快適に使うためには、定期的なメンテナンスをしっかり行うことが重要です。ショートインプラントは従来のインプラントよりも歯根が短いため、負荷が集中しやすい特徴があります。そのため、歯周病やインプラント周囲炎のリスクを抑えるために、口腔内の清潔を常に保つことが求められます。

ショートインプラントは、周囲の顎骨や歯茎に与える影響が大きいため、日常の歯磨きだけでなく、歯科医院での定期的なチェックと専門的なクリーニングが欠かせません。定期的なケアを行うことで、トラブルの早期発見や予防が可能になります。

また、噛み合わせのバランスが崩れるとインプラントに負担がかかるため、メンテナンス時には噛み合わせの調整も必要です。定期的なメンテナンスを行うことで、インプラントの寿命が延び、長期間にわたって快適に使用し続けられるでしょう。

まとめ

まとめ

ここまでショートインプラントについてお伝えしてきました。要点をまとめると以下のとおりです。

  • ショートインプラントとは、従来のインプラントよりも短いインプラント体を使用する治療法を指す
  • ショートインプラントのメリットは骨移植が不要な場合が多く、デメリットは従来のインプラント治療に比べて安定性が劣る可能性がある点
  • ショートインプラントが向いているのは顎骨の高さが不足している方で、注意点は症例に応じた適切な診断が必要となること

ショートインプラントによる治療方法は、成功率が従来の方法と比較して遜色ない良い結果が得られるとされています。適応する顎骨の骨の質などの状態によっては適応が難しい方もいらっしゃいますが、高齢の方や骨造成を避けたい方がより安心して治療が受けられる事が期待されています。

ショートインプラントのデメリットとメリットを理解したうえで、歯科医師と十分に相談をして、ご自身に合う治療法を選択しましょう。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
大津 雄人医師(医療法人社団GLANZ大津歯科医院 副院長 / 東京歯科大学インプラント科 臨床講師)

大津 雄人医師(医療法人社団GLANZ大津歯科医院 副院長 / 東京歯科大学インプラント科 臨床講師)

東京歯科大学歯学部 卒業 / 東京歯科大学大学院歯学研究科(口腔インプラント学) 卒業 / 現在は大津歯科医院勤務 / 東京歯科大学インプラント科臨床講師 / 専門は口腔インプラント

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