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インプラントが原因で副鼻腔炎になる?インプラントと鼻腔の関係、副鼻腔炎のリスクを回避する方法を解説

インプラントが原因で副鼻腔炎になる?インプラントと鼻腔の関係、副鼻腔炎のリスクを回避する方法を解説

インプラントと鼻腔の関係をご存知ですか?インプラント治療は上顎の骨に埋め込む際、副鼻腔に影響を及ぼすことがあります。
本記事ではインプラントが原因で副鼻腔炎になるのかについて以下の点を中心にご紹介します。

  • インプラントが原因で副鼻腔炎になるのか
  • インプラント治療によって歯性上顎洞炎が起こる場合
  • インプラントによる副鼻腔炎を避けるには

インプラントが原因で副鼻腔炎になるのかについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

インプラントが原因で副鼻腔炎になる?

インプラントが原因で副鼻腔炎になる?

インプラントの治療後に、副鼻腔炎を発症するケースがあります。
特に上顎の奥歯にインプラントを行う際などは、上顎洞と位置が近いため、治療中に副鼻腔を傷つけたり細菌が侵入することで炎症が発生するリスクが高まるといわれています。

また、インプラント体を埋め込む際、顎骨の厚みが足りない場合には骨造成治療を行うことがあり、この治療でも上顎洞を傷つけるリスクがあります。さらに、インプラントの手術中に粘膜が破れてしまった場合、細菌感染が進み、副鼻腔炎が発症するケースがあります。

副鼻腔炎と歯性上顎洞炎について

副鼻腔炎と歯性上顎洞炎について

副鼻腔炎と歯性上顎洞炎の関係について、以下でみていきましょう。

副鼻腔炎とは

副鼻腔炎は、鼻腔の周囲にある副鼻腔が炎症を起こす病気です。
副鼻腔は顔の左右に4つずつ、合計8つの空洞があり、鼻腔と小さな穴でつながっています。
風邪やアレルギー、細菌やウイルスの感染によって副鼻腔の粘膜が炎症を起こし、膿や粘液がたまることで、鼻づまりや顔面の痛み、黄色く粘り気のある鼻水などの症状が現れます。

副鼻腔炎には、急性と慢性の2種類があり、急性は短期間で治癒することが多いようですが、慢性副鼻腔炎は3ヶ月以上続き、治療が難しい場合があります。特に好酸球性副鼻腔炎は、アレルギー反応に関わる白血球が原因となりやすく、再発を繰り返すため、ステロイド治療が主な治療法となっています。

適切な治療を受けることで症状を軽減し、慢性化を防ぐことができますが、症状が長引く場合は早めの受診が推奨されます。

歯性上顎洞炎とは

歯性上顎洞炎は副鼻腔炎の一種であり、特に歯の問題が原因で発生します。以下で詳しく解説します。

歯性上顎洞炎の原因

歯性上顎洞炎とは、歯に関連して発生する上顎洞の炎症です。上顎洞は副鼻腔の一部で、上顎の奥歯と密接しています。
歯性上顎洞炎の原因には、むし歯や歯周病が挙げられます。むし歯が進行して歯根の先に膿がたまると、これが上顎洞に広がり、炎症を引き起こします。また、歯周病による歯槽骨の破壊が進むと、膿が上顎洞に到達し、同様に上顎洞炎を引き起こします。

また、抜歯やインプラントの治療が原因となって上顎洞に穴が開くケースもあります。上顎の奥歯の骨は薄いため、これらの手術や治療が上顎洞に影響を与える場合があり、炎症を引き起こすことがあります。

歯性上顎洞炎の症状

歯性上顎洞炎の症状は、主に鼻や歯の周辺に現れます。
まず、鼻詰まりや黄色や緑色の鼻水が典型的な症状として見られます。これらの鼻水は上顎洞内に溜まった膿が原因で、膿が溜まることで顔や頬に圧迫感や痛みが生じることもあります。
また、歯に関連する症状としては、歯茎の腫れや痛み、噛む際に歯が浮いているような違和感を感じることがよくあります。
さらに歯性上顎洞炎では、鼻だけでなく歯やその周囲の痛みが特徴的であり、症状が進行すると顔面全体に痛みが広がることもあり、慢性的な場合症状が長引くことが多いといわれています。放置すると痛みが増すだけでなく、炎症が広がり、ほかの病気を引き起こすリスクもあります。

インプラントによる歯性上顎洞炎について

インプラントによる歯性上顎洞炎について

歯性上顎洞炎がインプラント治療によって起こる場合について、以下で解説します。

インプラント体が迷入した

インプラント治療が原因で歯性上顎洞炎が発生する場合、その原因のひとつがインプラント体の迷入です。
インプラント治療では、顎の骨にインプラント体を埋め込む手術が行われますが、特に上顎の場合は、骨が薄いことが多いとされているため、インプラント体が誤って上顎洞に入り込んでしまうことがあります。これは迷入と呼ばれ、粘膜を傷つけることで、細菌が入り込み、副鼻腔炎や上顎洞炎を引き起こすリスクを高めます。

インプラント体が迷入した場合、鼻詰まりや膿性の鼻水、顔面の痛み、頭痛といった副鼻腔炎の典型的な症状が現れることがあります。

上顎洞挙上術が失敗した

インプラント治療によって歯性上顎洞炎が発生する場合のひとつに、上顎洞挙上術(サイナスリフト)が失敗したケースが挙げられます。
上顎洞挙上術は、上顎の骨が薄い患者さんに対して、インプラントを埋入するために骨を増やす手術です。この手術では、上顎洞を持ち上げて人工骨や自家骨を移植しますが、手術中に上顎洞の粘膜が損傷したり、移植した骨が感染を引き起こすと、歯性上顎洞炎のリスクが高まります。

また、手術後の管理が不十分であると、感染が起こりやすく、上顎洞の炎症が慢性化する可能性も高まります。このようなケースでは、鼻づまりや顔面の痛み、膿性の鼻水といった副鼻腔炎の症状が現れることがあります。

骨造成で上顎洞が傷ついた

インプラント治療において、骨造成を行う際に上顎洞が傷つくことで歯性上顎洞炎が発生する場合もあります。
特に上顎の骨量が不足している患者さんに対しては、インプラントを支えるための骨を増やす骨造成が必要です。この際、上顎洞に隣接する部分に対して手術が行われるため、慎重な操作が求められます。

しかし、骨造成中に上顎洞の粘膜を損傷してしまうと、そこから細菌が侵入しやすくなり、感染症や炎症を引き起こすリスクが高まります。これが歯性上顎洞炎として発症し、鼻づまりや顔面の痛み、膿性鼻水などの副鼻腔炎に似た症状が現れます。

インプラント周囲炎を発症した

インプラント治療において、歯性上顎洞炎の原因のひとつとなるのがインプラント周囲炎です。インプラント周囲炎は、インプラントの周囲の組織が歯周病菌に感染して炎症を引き起こす病気で、進行すると顎の骨を溶かし、最終的にはインプラントが脱落するリスクも伴います。この炎症が上顎洞まで広がることで、歯性上顎洞炎が発症することがあります。

インプラント手術後は周囲の組織に細菌が侵入しやすく、メンテナンスやセルフケアが不足している場合、インプラント周囲炎が発生するリスクが高まります。初期段階では自覚症状が少なく進行が速いため、気付かないうちに上顎洞に炎症が広がることがよくあります。これにより、鼻詰まりや膿性鼻水、顔面痛などの副鼻腔炎の症状が現れます。

インプラントによる副鼻腔炎の治療方法

インプラントによる副鼻腔炎の治療方法

インプラントによる副鼻腔炎の治療方法には、主に以下の3つが挙げられます。

  • 薬物療法 初期の副鼻腔炎の場合、抗生物質や抗炎症薬の投与を行うことにより、上顎洞内の感染を抑制し、炎症の軽減を目指します。症状が軽度であれば、この薬物療法のみで改善することが多いようです。
  • インプラントの除去または修正 インプラントが不適切に埋入され、上顎洞に影響を与えている場合、インプラントを除去したり、位置の修正が必要となる場合があります。この処置により、炎症を引き起こしている原因を取り除き、感染が広がるのを防ぎます。
  • 外科的治療 上顎洞の炎症が進行している場合に行う上顎洞根治術や上顎洞洗浄術などの外科的処置により、蓄積した膿や感染部位を物理的に取り除き、副鼻腔の機能を回復させます。

インプラント治療による副鼻腔炎は、早期の発見と治療が重要です。
歯科医院での定期的なメンテナンスと術後のフォローアップをしっかりと行い、問題が発生した場合には速やかに対処しましょう。

インプラントによる副鼻腔炎を避けるには

インプラントによる副鼻腔炎を避けるには

インプラント治療による副鼻腔炎を避けるには、どのようなことに気をつけたらよいのでしょうか。以下に解説します。

花粉症やアレルギー性鼻炎のある時期は避ける

インプラントによる副鼻腔炎を避けるためには、花粉症やアレルギー性鼻炎のある時期を避けることが重要です。
特にアレルギー性鼻炎や花粉症の症状がある時にインプラント手術を行うと、上顎洞炎のリスクが高まります。アレルギー性鼻炎では、アレルゲンが原因で鼻や副鼻腔の粘膜が炎症を起こし、上顎洞が不安定になります。その結果、細菌が侵入しやすくなり感染リスクが上がってしまい、手術後に炎症が治まらずに長引く可能性があるといわれています。

こうした理由から、花粉症やアレルギー性鼻炎が悪化しやすい時期を避け、症状が出にくい時期にインプラント手術を計画しましょう。事前にアレルギーの季節や鼻の健康状態を考慮し、適切な時期を選ぶことが、術後の合併症を防ぐことにつながります。

CTなどの設備が整った歯科医院を選ぶ

インプラントによる副鼻腔炎を避けるためには、CTなどの設備が整った歯科医院を選ぶことも重要です。
CTスキャンは、インプラント手術前に上顎洞や血管、神経の位置を正確に把握するために欠かせない検査で、正確なインプラント埋入位置や角度を計画するのに役立ちます。適切な診断が行われないと、インプラント体が上顎洞を損傷し、副鼻腔炎やほかの合併症を引き起こすリスクが高まります。
さらに、無菌環境やモニタリング機器など、手術に必要な設備が整っていることもポイントです。充実した設備の歯科医院では、術後のメンテナンスやアフターケアがしっかりしており、副鼻腔炎のリスクを抑えることができます。安全性の高いインプラント治療を受けるためには、CTや設備が充実した信頼できる歯科医院を選ぶことが、副鼻腔炎予防の第一歩です。

医師の経験を確認する

インプラントによる副鼻腔炎を避けるためには、医師の経験を確認することも重要です。
インプラント手術は技術が求められるため、経験の浅い医師が行うと、上顎洞の粘膜を傷つけるリスクが高まり、副鼻腔炎を引き起こす可能性があります。特に、上顎洞に近接した部位へのインプラント手術では、正確な位置と深さにインプラントを埋め込む必要があり、これには豊富な経験が必要です。そのため、インプラント治療を受ける際には、医師の治療経験、特に上顎洞に関連する手術の症例数などを確認するとよいでしょう。

また、信頼できる医師を選ぶためには、インプラント専門医が在籍しているか、過去の症例を公開しているかなども医院選びのポイントとなります。信頼できる医師に治療を任せることが副鼻腔炎のリスクを抑えるための大切なステップです。

インプラント治療後副鼻腔炎にならないために

インプラント治療後副鼻腔炎にならないために

インプラント治療後、副鼻腔炎にならないためにはどのようなことに気をつけたらよいのでしょうか。以下に解説します。

定期的なメンテナンスを受ける

インプラント治療後の副鼻腔炎を防ぐには、定期的なメンテナンスが重要です。インプラントはむし歯になりませんが、周囲組織が細菌に感染しインプラント周囲炎が起こるリスクがあります。この炎症が上顎洞に広がると副鼻腔炎の原因となるため、歯科医院での定期的なチェックが必要です。
適切な歯磨き方法やフロッシングで細菌の繁殖を抑え、術後に処方された薬を指示どおりに服用して、予防につなげましょう。

症状が出たら

インプラント治療後に副鼻腔炎の症状が現れた場合、速やかな対応が重要となります。
鼻詰まり、膿性の鼻水、顔の痛みなどの症状がある場合、まずはインプラントを受けた歯科医院や耳鼻咽喉科をすぐに受診しましょう。早期の対応が、副鼻腔炎の悪化を防ぎ、適切な治療を受けるために欠かせません。 医師による診断を受けることで、必要に応じて抗生物質の処方や、さらなる治療が行われます。

また、治療後に定期的なチェックアップを行うことにより、問題が大きくなる前に早期に発見し、迅速に対応できるでしょう。 日常的なケアや定期的な診察を怠らず、異変を感じたら早めに医師に相談することで、インプラント治療後の副鼻腔炎の予防につながります。

まとめ

まとめ

ここまでインプラントが原因で副鼻腔炎になるのかについてお伝えしてきました。
インプラントが原因で副鼻腔炎になるのかの要点をまとめると以下のとおりです。

  • インプラント治療では、上顎の奥歯にインプラントを埋め込む際に副鼻腔を傷つけたり細菌が侵入した場合・骨造成治療で上顎洞を損傷した場合・インプラント手術中に粘膜が破れてしまった場合などに副鼻腔炎が発症するケースがある
  • インプラント治療によって歯性上顎洞炎が起こる場合には、インプラント体が迷入した・上顎洞挙上術が失敗した・骨造成で上顎洞が傷ついたなどの原因が挙げられる
  • インプラントによる副鼻腔炎を避けるには、花粉症やアレルギー性鼻炎のある時期は避けること・CTなどの設備が整った歯科医院を選ぶこと・医師の経験を確認することがポイントである

インプラントは自然な見た目や噛み心地が魅力ですが、副鼻腔炎を引き起こすリスクもあります。信頼できる歯科医院での治療と定期的なメンテナンスで、納得したうえでリスクの少ないインプラント治療を受けたいですね。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
竹本 竜太朗医師(北海道大学病院歯科診療センター(歯科矯正科) 大学院生)

竹本 竜太朗医師(北海道大学病院歯科診療センター(歯科矯正科) 大学院生)

北海道大学歯学部 卒業 / 現在は北海道大学病院歯科診療センター勤務 / 専門は歯科矯正科

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