歯があまり残っていない方の場合、どのような治療があるのでしょうか。オールオン4は歯があまり残っていない方に適した治療法です。それでは、オールオン4は両顎とも治療することはできるのでしょうか。
この記事では、オールオン4の治療の流れやメリット・デメリットについて詳しく解説します。気になる費用についても紹介するので、両顎のオールオン4を検討されている方、これから治療を受ける方の参考になれば幸いです。
両顎の歯があまり残っていない場合の治療法
両顎の歯があまり残っていない場合、どのような治療法があるのでしょうか。治療法ごとに分けて解説します。
両顎をオールオン4で治療する
両顎の歯があまり残っていない方が歯の機能を補う場合、両顎をオールオン4で治療できます。
オールオン4は前歯から奥歯までがつながった人工歯を装着する治療法で、両顎それぞれのすべての歯の治療が可能です。オールオン4は歯があまり残っていない方に適した治療だといえます。
治療には手術を伴いますが、一度に両顎の手術ができ、当日または翌日に仮歯を装着するため、1日か2日ですべての歯の治療がほとんど完了します。総入れ歯に不満がある方や短期間で審美性と機能性を回復させたい方におすすめの治療法です。
オールオン4と総入れ歯を組み合わせる
オールオン4と総入れ歯を組み合わせて治療することもできます。片顎はオールオン4、反対側が総入れ歯というパターンです。予算や残存歯の本数、顎の骨の量などにより、片顎だけをオールオン4にする患者さんも珍しくありません。
総入れ歯では上顎の部分を入れ歯が広く覆ってしまいます。入れ歯を安定させるために必要な部分ですが、上顎の粘膜部分を覆うと食事の温度や味がわかりづらくなったり、発音しにくくなったりする点がデメリットです。
上顎をオールオン4にすると、これらのデメリットを解消できます。また、人からよく見える上の歯を美しく整えることが可能です。そのため上顎のみオールオン4で、下顎は総入れ歯という組み合わせをする方もいます。
しかし、オールオン4治療では上顎のインプラントを埋め込むときに注意するべき箇所があるため、リスクが高いです。
下顎はオールオン4を含むインプラント治療で成功率が高く、下顎をオールオン4にするという選択肢も1つの方法です。 費用や、上顎下顎それぞれのオールオン4治療について歯科医院からの説明をよく聞いて、納得して治療法を選ぶことが重要です。
オールオン4以外の治療法
オールオン4以外で、両顎の歯がほとんど残っていない場合の治療法は、総入れ歯を使う治療が一般的です。手術を避けたい方や、費用を押さえたい方は総入れ歯での治療がよいでしょう。
保険適用の総入れ歯は、オールオン4よりも治療期間が短いです。
ほかにも、総入れ歯を少数のインプラントに被せるインプラントオーバーデンチャーと呼ばれる治療法もあります。埋入するインプラントの本数が少なく、総入れ歯より安定感がある治療法です。
また、残せる歯が複数ある場合はブリッジやインプラント、部分入れ歯などの選択肢があります。
オールオン4について
オールオン4を含む治療のなかでどの治療法がよいか考える際に、オールオン4治療について理解しておくことも大切です。ここからはオールオン4について、どのような治療なのか、またどのような流れで治療するのかを解説します。
オールオン4とは
オールオン4とは、4本のインプラントですべての人工歯を支える治療法です。オールオン4の人工歯は前歯から奥歯までがブリッジのようにすべてつながった作りになっています。
これまでは、ほとんど歯がない方がインプラント治療をする場合はそれぞれの歯にインプラントを使わなければならず、負担が大きくなっていました。
しかし、オールオン4の治療ができるようになってからは埋入するインプラントを抑えることができ、患者さんの身体的・経済的負担を軽減できるようになりました。
また、オールオン4は抜歯・インプラント埋入・仮歯の装着までが1日で完了するという治療が簡潔である点も大きな特徴です。
オールオン4の治療の流れ
オールオン4の治療の流れは以下のとおりです。
- カウンセリング
- 検査・型取り
- 手術・仮歯装着
- 消毒・抜糸・経過観察など
- 義歯装着
- メンテナンス
カウンセリングでは、患者さんのお口の状態や、持病などを詳しく確認します。また、オールオン4の治療内容や特性について説明もあります。不明な点は歯科医師に質問して、不安を取り除いておきましょう。
続いてCTなどの検査や、仮歯の型を取ります。仮歯は手術当日に装着可能です。手術は麻酔をして行われるため手術中の痛みは心配しなくてよいでしょう。
手術日に抜歯・インプラント埋入・仮歯装着まで一気に進みます。手術後、しばらく休憩してから事前に作っておいた仮歯を装着します。
所要時間はおおむね片顎の場合で半日、両顎の場合は1日です。入院の必要はありません。
手術後の状態により、仮歯の装着が翌日になることがあります。翌日の消毒や約1週間後の抜糸など、通院しながら経過を見ていきます。インプラントと歯の結合や傷口の状態が問題なければおよそ6ヶ月後人工歯の装着を行い治療は完了です。
人工歯の装着後、歯が安定していてもメンテナンスがとても重要です。歯科医師の指示通りに通院しましょう。
オールオン4のメリット
両顎をオールオン4で治療する場合、以下のようなメリットがあります。
治療期間・手術時間が短い
オールオン4治療は通常のインプラント治療に比べて短い期間で完了します。通常のインプラント治療では1次手術、2次手術など工程が多く期間も長くなりがちです。
しかし、オールオン4では通常、手術の日当日に抜歯・インプラント埋入・仮歯装着までが完了し、その後は調整などの通院になります。また、手術時間もオールオン4の方が短時間で終了するでしょう。
オールオン4では片顎に4本のインプラントを埋入しすべての歯を支えますが、通常のインプラント治療の方法で片顎すべての歯にインプラントを1本ずつ埋入すると相当な時間を要し現実的ではありません。
さらに両顎ともオールオン4治療を考えている場合は、手術前の検査や型取り、手術などが両顎同時にできるため、上顎・下顎と分けて行うよりも一度に行う方が治療期間が短縮できるでしょう。
顎の骨が少なくても治療を行える
通常のインプラント治療では1本の歯に1本のインプラントを埋め込む必要があり、インプラントを支える箇所の骨の量が重要になります。
しかし、オールオン4では片顎につき4本のインプラントで全体を支えるため、顎の骨がしっかりしているところを選んでインプラントを埋め込むことができます。インプラントを埋め込む場所がある程度選べるわけです。
しかし、全体的に顎の骨が薄い場合や必要な場所の顎の骨が少ない場合は、骨を作る治療を追加で行う必要があります。ごく稀ですが、極端に骨が少なく、骨を作る治療を行ってもうまくいかないことがあり、その場合はほかの治療法を検討します。
費用が抑えられる
両顎をオールオン4で治療する場合、通常のインプラント治療と比べて費用をかなり抑えられます。通常のインプラント治療では1本の歯に1本のインプラントが必要になり、両顎すべての歯にインプラントを埋め込むと28本も必要です。
対してオールオン4では前歯から奥歯までつながった人工歯を両顎各4本、合計8本のインプラントで支えられるため、インプラントの本数を3分の1以下に抑えられます。
インプラントの必要な本数が減ると材料費や治療費用も抑えられます。また通常のインプラント治療に比べ、治療工程が少なく、通院回数も少なく済むでしょう。
毎回の診察代や交通費も軽減されます。オールオン4では検査・治療を両顎同時に進められる点でも費用の軽減につながります。
オールオン4のデメリット
両顎をオールオン4で治療する場合、以下のようなデメリットが考えられます。
治療を行える歯科医院が限られる
オールオン4治療は広まってきていますが、質の高い治療が受けられる歯科医院は限られているのが現状です。オールオン4について正しい知識と豊富な経験がある歯科医師は、早期にリスクを見極め、治療を成功につなげられます。
また、オールオン4は新しく緻密な治療になります。医院の設備や機器が充実していることも歯科医院選びの重要なポイントになるでしょう。
例えば、精密検査ができる歯科用CTや、手術中の感染予防のための衛生環境が保たれた独立した手術室があると、安全性の高い治療を受けられます。
質の高い治療が期待できる歯科医院は、オールオン4治療の症例数が多く経験が豊富であるため、事前によく調べて歯科医院を選ぶようにしましょう。
抜歯が必要なことがある
オールオン4治療で装着する人工歯は、すべての歯がブリッジのようにつながっているため、歯が残っている場合は抜歯の必要があります。
手術当日までは残っている歯や使っている義歯などを普段通り使い、手術時の麻酔をした後に抜歯を行います。
麻酔がきいているため痛みはなく手術と同時にできて患者さんへの負担は大きくありません。ただし、健康な歯が残っていたとしても抜歯することになります。
健康な歯を抜歯して、オールオン4治療を行うことは可能です。しかし、残っている健康な歯が複数本ある患者さんには、オールオン4ではない別の治療法が提案されることもあります。
患者さんの希望によりますが、歯科医師とよく相談して、さまざまな治療法から納得できるものを選択しましょう。
オールオン4の費用相場
オールオン4はほとんどの場合が、保険適用外の治療です。保険がきかないため、費用が気になる方も少なくないのではないでしょうか。ここではオールオン4の気になる費用について、片顎の場合、両顎の場合の目安を紹介します。
オールオン4を片顎だけ行う場合
片顎のオールオン4の治療費用は主にCTなどの検査費用、手術費用、義歯の費用が含まれます。
オールオン4に必要なCT検査は約20,000~40,000円(税込)です。手術費用の目安は約1,800,000(税込)で、義歯の費用は素材により異なり、レジンでは660,000円(税込)程度、ジルコニアでは1,650,000円(税込)程度です。
手術とジルコニアの義歯を合わせた費用が約2,700,000円(税込)という歯科医院もあります。
診療費用は各医院でばらつきがあるため、治療を受ける歯科医院でよく確認しましょう。
オールオン4を両顎行う場合
両顎のオールオン4治療を行う場合も検査費用は変わらないでしょう。
両顎一度に手術できますが、手術費用と義歯の費用は片顎分の2倍になるのが一般的です。手術中、静脈内鎮静法で行うなら、両顎で2倍の時間がかかるため静脈内鎮静法の費用も2倍になります。
オールオン4を含む自費診療では医院により価格にばらつきがあるため、両顎の治療をする際は費用の差が大きくなるためよく検討することをおすすめします。
また、費用が極端に安すぎる場合は、義歯の素材がよくないケースもあるため注意が必要です。
オールオン4治療の注意点
オールオン4は優れた治療法ですが、治療を受ける際に注意点があります。以下で注意すべきことを解説します。注意点を理解し、よりよい治療が受けられるようにしましょう。
手術前後で禁煙が必要
オールオン4治療では手術前後に禁煙が必要です。煙草に含まれるニコチンは血流を悪くする作用があり、術後の傷の回復やインプラントと骨の結合に悪い影響を及ぼします。
さらに口腔内が乾燥しやすくなり、細菌が増えやすくなります。術後の傷口から感染を起こすとインプラント周囲炎につながりかねません。このようにオールオン4治療を受ける方にとって喫煙は多くのリスクを伴います。
歯科医院により前後はありますが、少なくとも手術の1週間前から術後2ヶ月は禁煙するべきとしているところが少なくないです。
しかし、喫煙は全身の健康状態に悪影響を及ぼします。オールオン4治療をされた方はインプラント周囲炎のリスクを下げるため、オールオン4治療を機会に禁煙してみてはいかがでしょうか。
セルフケアと定期的なメンテナンスが必要
オールオン4治療が完了し、無事にインプラントが定着してもセルフケアと定期的なメンテナンスが必須です。
人工歯やインプラントはむし歯にはなりませんが、インプラントの周囲が炎症を起こすことがあります。初期には自分では気付きにくいため、早期に異常を見つけるためには歯科医院で定期検診を受ける必要があります。
また、セルフケアだけではどうしても磨き方の癖などがあり、十分なケアができていない可能性もあるでしょう。治療完了後の定期検診は、初めは1~3ヶ月間隔が多いようですが、問題なければ半年に1度程度の検診になることがほとんどです。
歯科医院で指導された毎日のケアを適切に行い、あわせて歯科医院でのメンテナンスと検診を受けることで、オールオン4をよい状態で長持ちさせられるでしょう。
まとめ
残っている歯があまり残っていない方にはオールオン4は有効な治療法です。総入れ歯に不満がある方もオールオン4で問題を解消できる可能性があります。
治療できる歯科医院が限られていることや抜歯が必要な可能性などのデメリットと注意点には注意が必要です。しかし、それらを理解したうえで治療を行えば両顎をオールオン4で治療することは優れた治療法です。
美しく快適な歯を手に入れた後は、よい状態で長持ちさせるために丁寧なセルフケアと定期的なメンテナンスを忘れないようにしましょう。
参考文献