オールオン4治療は歯がなくなってしまったり、多くの歯を失ってしまったりした場合に行われる、歯を補填するための治療法です。
本記事ではオールオン4治療にかかる医療費の相場と、メリット・デメリットについて解説します。
「歯科医院によって医療費が異なるのはなぜ?」「相場より安い歯科医院は本当に安全?」などの疑問に、本記事でお答えします。
これらをもとに今後のオールオン4の治療方針と歯科医院を選ぶ参考にしていただけると幸いです。
オールオン4治療の費用相場
インプラント治療の費用相場は1本あたり300,000~550,000円(税込)です。片顎にインプラントを12本埋め込む場合、費用は3,600,000~6,600,000円(税込)です。両顎の場合はその2倍の金額がかかります。
対してオールオン4治療の手術費の相場は、片顎あたり3,000,000円(税込)前後です。両顎の場合は、前述と同様に2倍の費用が必要となります。
オールオン4治療では従来のインプラント治療と比較すると安価で治療を受けることが可能です。
先述の費用に加えて、レントゲン検査・CT検査・血液検査といった術前に必要な検査の費用も別途で発生します。
また、オールオン4治療を行うために必要な顎骨の量が少ない場合、骨造成が必要です。骨造成には以下の5つの治療法があり、費用がそれぞれ異なります。
- GBR法:100,000~150,000円(税込)
- サイナスリフト:50,000~300,000円(税込)
- ソケットリフト:30,000~130,000円(税込)
- ボーングラフト:50,000~300,000円(税込)
骨増設を行う場合は上記の費用が追加で必要です。つまり、治療費は片顎あたり3,000,000円(税込)が相場と説明しましたが、実際はそれ以上の費用が必要であることを把握する必要があります。
オールオン4の費用に影響する要素
相場は片顎あたり3,000,000円(税込)です。
しかし、同じオールオン4治療であっても歯科医院によって治療費が変わります。要因として以下の4つが挙げられます。
治療範囲
オールオン4は、むし歯や歯周病などで多くの歯を失った方や歯が1本もない無歯顎の方が対象で、上顎または下顎全体の治療を行います。
場合によっては両顎にオールオン4治療を行う場合もあります。なお、オールオン4治療を行う部位に歯が残っている場合は抜歯が必要です。
また、歯周病がある場合は事前に治療を行います。
自費診療
自由診療となる理由は、総入れ歯やブリッジ治療でも失った歯の機能性・審美性をある程度回復することができるからです。
オールオン4治療はそれらの治療以上に審美性・機能性を追求した治療です。
そのため、医療保険の適用となる必要最低限の治療に当てはまらないため、自費診療となっています。しかし、以下のような例では保険適用となります。
- 事故によって顎骨の広範囲に損傷を負った場合
- 先天的な異常で顎骨の1/3以上を失っている場合
- 顎骨骨髄炎や腫瘍などの疾患に対して骨移植を行った場合
このようなケースは稀です。基本的に歯周病やむし歯などで歯を失った場合、術前検査・手術・骨移植の費用は全額自己負担となります。
被せ物の種類
被せ物として使用される人工歯には以下の4種類があります。相場も以下のように素材により違いがあります。
- オールセラミック:80,000~180,000円(税込)
- ハイブリッドセラミック:40,000~120,000円(税込)
- ジルコニアセラミック:120,000~180,000円(税込)
- メタルボンド:80,000~150,000円(税込)
オールセラミックは機械的強度が高く、自然歯に近い審美性を保つことができます。金属が含まれていないため、金属アレルギーを起こすリスクはありません。
一方でハイブリッドセラミックはオールセラミックと比べて機械的強度と審美性が劣るものの、コストパフォーマンスがよい素材で、治療費を抑えられることがメリットです。
ジルコニアセラミックは人工ダイヤモンドと呼ばれるくらい機械的強度が高い素材です。
噛む力が強い方や、就寝中で無意識に歯ぎしりをしたり、食いしばったりしてしまう方に選ばれます。表面はセラミックで覆われているため、審美性が高いこともメリットです。
メタルボンドは金属フレームの表面にセラミックを焼き付けたもので機械的強度が高く、臼歯に使用されます。表面がセラミックであり審美性にも優れています。
しかし、金属アレルギーがある方には使用できません。理由は経年劣化でセラミックの表面が破損し金属フレームが剝き出しになったとき、金属アレルギーの症状が出てしまうからです。
このような素材のうち、どれを組み合わせて使用するかによっても治療費が変わります。
歯科医院の立地・設備など
歯科医院の立地や設備が、オールオン4の費用に影響することもあります。
立地がよい場所は一般的に固定費が高く、維持費がかかるため、その分オールオン4などの自由診療の費用が高くなる傾向です。
加えて検査・治療技術を保証するために採用している設備の維持費、医師やスタッフの人数に応じた人件費といったコストも施設ごとに異なります。
上記を踏まえ、歯科医院を経営していくためには採算を得なければなりません。これにより同じ治療でも費用に違いが発生する側面があります。
オールオン4のメリット
オールオン4治療を受けることには以下の4つのメリットがあります。
治療期間が短いので通院の負担が少ない
オールオン4治療は1回の手術で4本のインプラント体を埋入します。手術は1時間程度で済み、痛みや腫れなどが少ないのが特徴です。インプラント体はフラップレスで顎骨が十分にある部位へ埋入されます。
フラップレスとは、歯肉パンチで穴をあけ顎骨へインプラント体を埋入する方法です。
これにより低侵襲でインプラント体を埋入することができるため、創部の治癒期間をあけることなく1回の手術で仮歯を固定することが可能になっています。
従来のインプラント治療のように手術を2~3回に分けたり、手術の間に治癒期間を挟んだりせずに済むため、その分だけ治療期間が短縮できます。
また、骨移植の手術が必要になる可能性が低いため、こういった点でも治療期間の短縮につながる可能性が高いです。
埋入本数が少ないので身体への負担が小さい
オールオン4治療では、埋入するインプラント体は片顎につき4本で済みます。また、
先述のとおりフラップレスでインプラント体を埋入することもあり、従来のインプラントに比べて顎骨への負担や口腔内への侵襲が少ないです。
埋入本数が少ないので費用を抑えられる
インプラント体はチタン合金製のため高額であり、本来のインプラント治療では1本の歯に対して1本のインプラント体の埋入が必要です。上顎、下顎のいずれかにインプラントを12本埋入するならインプラント体も12本必要です。
それに対してオールオン4治療では、12本の歯を4本のインプラント体で固定できるため、8本分の費用を節約できます。それによってインプラント治療よりも安価な治療が実現しています。
顎の骨が薄い方でも治療しやすい
顎骨が薄い方でも、インプラント体を4本埋め込むことができるだけの骨量が確保できる部位があれば、オールオン4治療は可能です。
従来のインプラント治療では顎骨が痩せていて難しい場合でも、インプラント体を埋入する部位の顎骨の量に問題なければ、オールオン4治療を受けることができます。
オールオン4のデメリット
オールオン4治療は先述のようなよいことばかりではなく、以下の2点のデメリットがあります。
健康な歯を抜くケースがある
オールオン4治療でインプラントを埋入する場所に歯が残っている場合、健康な歯であっても抜歯を行います。
理由はインプラントの歯12本が連結しているため、残っている歯をまたいで入れることができないからです。
たとえ健康な歯であったとしても、歯を残す選択をした場合はオールオン4治療ができません。歯を残すのであれば、入れ歯かインプラント治療などを選択することになります。
インプラント治療を選択する場合は、1本ずつ失った歯の数だけインプラント体を埋入する必要があり、以下のような身体面のリスクが発生します。
- 手術時間が長くなる
- 2~3回に手術を分けなければならない
- 骨増設の手術が必要になる可能性が高まる
その他、抜歯を行うか検討するポイントは審美性です。健康な歯の横にインプラントや入れ歯がある場合、金具の有無・歯の長さ・歯並びの調和がとれなくなる可能性があります。
もちろん健康な歯を抜歯することは健康面にプラスの効果はありません。しかし、オールオン4治療をする場合、健康な歯を1本残すより、抜歯した方がメリットは大きいでしょう。
これらの検討から抜歯を行うことを戦略的抜歯と呼びます。
一方でむし歯や歯周病で問題のある歯に関しては抜歯することによってオールオン4治療の成功につながる場合があります。
抜歯後は時間経過に伴い骨や粘膜が薄くなってしまうことが懸念点です。そのため抜歯した部位に感染がなくインプラント体を埋入するうえで適している骨量であれば、抜歯と治療を同日に行うケースがあります。
治療できる歯科医院が限られる
インプラント治療を実施している歯科医院のすべてがオールオン4治療ができるわけではありません。
理由は、この治療を適切に行うことができるだけの経験・実績のある歯科医師がいなければできない特殊な治療法だからです。
オールオン4の費用負担を抑えられる医療費控除
医療費控除とは、その年の1月1日~12月31日までで100,000円以上の医療費を払った場合、所得控除を受けることができる制度です。
これにより確定申告を行った際に所得税の一部が還付されるケースがあります。
本人だけでなく、本人の配偶者や親族の医療費であれば対象です。その分を治療費へ補填できるため、確定申告時に申請することをおすすめします。
医療費控除と所得税の還付金の目安は以下の式で計算されます。なお医療費控除額の上限は2,000,000円です。
- 医療費控除=支払った医療費-保険金の補填額-100,000円
- 所得税の還付金額=医療費控除×所得税率
年収4,000,000円の患者さんがオールオン4治療を受け、年間総額3,000,000円(税込)の医療費を支払った場合(保険金の補填なし)を例に計算します。
医療費控除は2,900,000円となりますが上限にて2,000,000円です。そして還付金額は所得税率の20%が適用され、400,000円となります。
還付金を治療費に補填できるため今後支払う医療費を抑えられます。治療を受ける際はこういった制度を活用することがよいでしょう。
オールオン4の治療費用が安い場合の注意点
オールオン4治療の相場は3,000,000円(税込)と説明しましたが、なかには相場以下の1,000,000円台で受けられる歯科医院もあります。
安価で受けられるほど、費用面での負担は軽くなります。しかし、安全面のリスクが懸念される場合もあります。
相場よりも安い治療費である場合、以下のようなことに注意が必要です。それぞれ詳しく解説します。
安全性に疑問を持たざるを得ないケースがある
オールオン4治療には高度な技術と、豊富な治療経験が要求されます。理由はインプラントを入れる位置、インプラント体の埋入する角度によって噛む力のバランスをコントロールする繊細な技術を必要とするからです。
安全性に対して疑問視されるケースとして、無計画に治療が行われたり、保証・アフターケアが不十分であったりすることがあげられます。
オールオン4治療を安価で行う際に必要な検査が省略されているケースがあります。
これによるリスクは、充分な診察・診断がないまま無計画に手術が行われるため、結果として審美性・噛み合わせに問題が生じ再治療になってしまうことです。
保証を行っていなかったり、インプラントを埋入した患者さんのアフターケアが充分に行われていない場合があります。
アフターケアを充分に行っている方に比べ、行っていない方のインプラントの残存率は低く、インプラント周囲のトラブルが発生する可能性が高まります。
インプラントの品質に問題がある
インプラントには多数のインプラントメーカーが存在していて、100社を超えます。もちろん信頼性が担保されていて、国内のさまざまな歯科医院が採用するメジャーなインプラントが多数あります。
しかし、すべてのインプラントに安全性が担保されているわけではありません。なかには安全性の低いインプラントもあります。
そのような安全性の低いインプラントを使用し、安価で提示している場合があるため注意が必要です。
追加費用がかかる場合がある
価格表示から追加費用を省くことで安価に見せている可能性があります。
手術費以外にも検査費用や被せ物の素材の総額がいくらなのかを必ず確認することをおすすめします。
まとめ
治療費の相場は片顎あたり3,000,000円(税込)です。しかし、実際にかかる治療費はこれだけでなく、検査費用や場合によっては骨移植の費用がかかります。
また、費用に影響する要素は以下のとおりです。
- 治療範囲:治療範囲は片顎のみか両顎に及ぶか
- 自費診療:全額自費診療になる・医療費控除による還付金で軽減できる場合がある
- 材質:被せ物に使われている素材ごとに相場が違う
- 立地や設備:立地条件による賃料・設備の管理費・人件費といった施設側のコスト
このほかにも患者さんの口腔内疾患や抜歯の有無によっても治療費が変わってきます。
オールオン4治療の相場は先述のとおりです。しかし1,000,000円台と相場以下の価格を提示している歯科医院もあります。
ただ、相場以下の値段で安く治療できる方が必ずしもよいとは限りません。理由は以下のとおりです。
- 充分な検査・診断がないまま無計画に手術を施行される
- 信頼性に乏しいインプラントを使用している
- 意図的に安さを演出する価格提示をしている場合がある
もしオールオン4治療を検討している場合は、コストパフォーマンスではなく信頼性を重視して歯科医院を選ぶことをおすすめします。
参考文献