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即時インプラントとは?適応条件やメリット・デメリットも解説!

即時インプラントとは?適応条件やメリット・デメリットも解説!

即時インプラントは、従来のインプラント治療と何が違うのか、どのような方が適応するのかなど気になりますよね。
本記事では即時インプラントとは?について以下の点を中心にご紹介します。

  • 即時インプラントについて
  • 即時インプラントの適応条件について
  • 即時インプラントのメリットとデメリット

即時インプラントとは?について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

即時インプラントとは

即時インプラントとは

即時インプラントとは、歯を抜いた直後に、その抜歯した穴(抜歯窩)にインプラント体を同時に埋め込む治療方法です。従来の方法では、抜歯後に一定期間、骨の治癒を待ってからインプラントを埋入するため治療期間が長くなりますが、即時インプラントはこの期間を短縮できます。また、抜歯後の骨吸収を抑えられる点もメリットです。

ただし、すべての患者さんに実施できるわけではなく、感染リスクや骨の状態などを考慮した慎重な診断と、高度な技術を持つ歯科医師の施術が求められます。適応条件については、次に詳しく解説します。

即時インプラントの適応条件

即時インプラントの適応条件

即時インプラントの適応条件について以下で解説します。

重度の歯周病がない

即時インプラントを行う際には、重度の歯周病がないことが重要な適応条件となります。重度の歯周病では、歯茎の炎症や骨の減少が進んでいるため、インプラントを埋め込んでも安定しにくく、感染や脱落のリスクが高まります。なかでも、歯周病菌がインプラント周囲の組織に感染すると、インプラント周囲炎という疾患を引き起こします。

インプラント周囲炎は、歯周病よりも早く進行して骨や歯茎を破壊するため、せっかく設置したインプラントが抜け落ちる原因となります。そのため、即時インプラントの前には歯周病の治療をしっかり行い、歯周病が改善された状態であることが必要です。

顎などの骨量が十分にある

即時インプラントを長期的に安定させるためには、顎の骨量が十分にあることが大前提となります。具体的には、抜歯した後の穴(抜歯窩)周囲の骨が一定の厚みや高さ、密度を持ち、インプラント体がしっかり固定されることが必要です。

骨の量が不足している場合、インプラントが骨と結合せず脱落のリスクが高まるため、骨の再生療法や移植を行い、骨量を補う処置が求められます。

全身疾患がない

即時インプラント治療を安全に行うためには、患者さんの全身状態が良好であることが重要な適応条件の一つとなります。特に、糖尿病や高血圧、心疾患、脳血管疾患、血液疾患、骨粗しょう症などの全身疾患に罹患している場合、これらの病気が術後の感染リスクを高めたり、傷の治癒を遅らせたりする可能性があります。

例えば、糖尿病では血糖コントロールが不十分だと細菌感染が起こりやすく、治療の成功率に影響を与えるとされています。また、骨粗しょう症の治療に用いられるアレンドロン酸やリセドロン酸を服用している方は、顎骨の血流障害を引き起こし、手術後の骨の治癒が妨げられるリスクがあるため、即時インプラントの適応を慎重に判断する必要があります。さらに、重度の心疾患や肝疾患、免疫抑制状態にある患者さんは、外科手術自体のリスクが高まるため、インプラント治療を行うかどうかの慎重な評価が求められます。

加えて、喫煙習慣は即時インプラントの成功に大きな影響を及ぼします。ニコチンには血管を収縮させる作用があるため、喫煙によって血流を悪化させることで歯茎や骨の再生が妨げられます。その結果、インプラントと骨がしっかり結合しにくくなり、術後の炎症やインプラント周囲炎といった合併症のリスクも高まります。したがって、喫煙者の場合は治療前後の禁煙が強く推奨され、禁煙できない場合は即時インプラントそのものが適応外となることもあります。

このように、即時インプラントは抜歯、埋入、治癒といった複数の過程を同時に進めるため、患者さんの全身の健康状態や日常の生活習慣が成功の鍵を握ります。治療を受ける際には、ご自身の持病や服用している薬について正確に歯科医師へ伝えることが大切です。 また、必要に応じて医科の担当医師と連携し、血糖値や血圧の管理を徹底するなど、全身管理を行いながら治療を進めることが重要です。

歯ぎしりや食いしばりの癖がない

即時インプラントの治療を行う際には、歯ぎしりや食いしばりなどの癖がないことが重要な適応条件となります。
インプラントが骨としっかり結合するには一定の期間が必要ですが、歯ぎしりや食いしばりがあるとインプラントに過度な力がかかり、動いたり破損したりするリスクが高まります。さらに、被せ物が割れてしまうことも少なくありません。そのため、これらの癖を持つ方は即時インプラントの適用には慎重になる必要があります。

なお、ご自身で気付きにくい場合もあるため、歯科医院で専門的にチェックしてもらうことをおすすめします。また、必要に応じてナイトガードを装着するなどの対策を講じることで、リスクを軽減できる場合もあります。治療前にしっかり相談し、適切なケアを行うことが大切です。

即時インプラントのメリット

即時インプラントのメリット

即時インプラントには、さまざまなメリットがあります。ここでは、主なメリットを4つ解説します。

身体的な負担が少ない

即時インプラントは、抜歯とインプラント埋入を同時に行うため、外科手術の回数が減ります。そのため、歯茎の切開や処置による身体的な負担が軽減され、手術後の腫れや痛みなどが少なくなります。

また、手術回数が少ないことで、術後に安静が必要な期間も短縮され、日常生活への影響が抑えられる点も大きなメリットです。患者さんにとって身体的なストレスが減るため、治療への精神的な不安も軽減しやすくなります。

骨の吸収が抑えられる

歯を失うと、その部分の顎の骨は噛む刺激がなくなるため、時間の経過とともに骨量が減少しやすくなります。骨量が減ると、インプラントの安定性が損なわれ、場合によっては骨を増やすための追加治療が必要となることもあります。

しかし、即時インプラントでは、抜歯直後にインプラントを埋め込むことで、骨への刺激を早めに維持できます。よって、早期から骨吸収の進行を抑制します。その結果、骨量がしっかりと保たれ、インプラントが安定しやすく、長期にわたり良好な状態を維持しやすくなるのです。

治療期間が短い

繰り返しになりますが、抜歯即時埋入は、抜歯とインプラント埋入を一度に行うため、従来の治療法と比較して手術の回数が減り、治療全体の期間が短縮されます。

従来のインプラント治療では10ヶ月程度かかることもありますが、即時インプラントなら4ヶ月程度で完了するケースも少なくなく、より早く噛む機能や見た目を回復できます。

術後の支障が少ない

抜歯からインプラント埋入までの期間が長いと、歯茎や骨がやせてしまい、術後の回復に時間がかかるだけでなく、むし歯や歯周病のリスクも増加します。即時インプラントでは抜歯後すぐに処置を行うため、歯茎や骨の状態を良好に保つことができ、傷口の治りも早い傾向があります。

これによりこれまでに述べてきたような痛みや腫れが軽減されるほか、感染症のリスクも抑えられ、患者さんが術後に感じる不快感や生活の制限が抑えられ、結果として、術後の生活の質を保ちながら治療を進められます。

即時インプラントのデメリット

即時インプラントのデメリット

即時インプラントには、さまざまなメリットがある一方で、デメリットも存在します。ここでは、主なデメリットを4つ解説します。

適応できない場合がある

即時インプラントは、すべての患者さんに適応できるわけではありません。
繰り返しになりますが、骨量や骨質が十分でない場合、インプラントを安全に埋入できず、即時埋入が適用できないことがあります。

特に、抜歯窩の大きさがインプラントに適合しない場合や、骨の厚みや幅が不足している場合は、骨造成などの事前治療が必要になるため、従来の段階的なインプラント治療を選択せざるを得ません。

また、重度の歯周病やむし歯がある場合も即時埋入は行えません。さらに、歯ぎしりや食いしばりの癖、噛み合わせの問題がある方は、埋入直後にインプラントに過度な負担がかかり、骨との結合が妨げられるリスクがあるため、適応外となるケースがあります。

このように即時インプラントは適応条件が設けられており、全身の健康状態や口腔内の状況を総合的に評価したうえで判断されます。希望する場合は、早めに歯科医師に相談し、自身の状態で適応可能かを確認することが大切です。

対応しているクリニックが限られている

即時インプラント治療は、高度な技術と専門的な設備が必要となるため、対応可能な歯科医院が限られているというデメリットがあります。

即時インプラント治療は抜歯直後の埋入や荷重を伴うため、感染リスクが高く、繊細な判断や精密な手術技術が求められます。

そのため、すべての歯科クリニックで行えるわけではなく、知識と技術があり、経験豊富な専門の歯科医院を探す必要がありますが、即時インプラントに対応している歯科医院自体が少なく、患者さんが対応している歯科医院を見つけるのに苦労する場合もあります。

感染症のリスクがある

即時インプラントは、抜歯直後の傷口が回復していない状態でインプラントを埋め込むため、細菌感染のリスクが高まる点がデメリットとして挙げられます。なかでも、抜歯の原因が歯周病などの感染症に起因する場合、抜歯部に残った細菌が増殖しやすく、手術後に感染を引き起こす可能性があります。

感染が発生すると、痛みや腫れなどの症状が現れるだけでなく、インプラントと顎の骨がしっかり結合しないこともあり、その場合は再治療が必要となるリスクも伴います。

一方で、近年は炎症部位の徹底的な除去や高水準の滅菌処理技術が進歩しており、適切な感染対策を実施することでリスクを軽減することが可能といわれています。ただし、従来のインプラント手術に比べると感染リスクは相対的に高いため、十分な説明を受けて治療法を理解したうえで、慎重に治療法を選択することが重要です。

その他に考えられるデメリット

即時インプラントには、治療費用が高額になるというデメリットがあります。インプラント治療は保険適用外のため、保険適用の入れ歯やブリッジに比べて費用負担が大きくなることを理解しておく必要があります。

また、即時インプラントでは手術当日に仮歯を装着できる場合もありますが、インプラント体と顎の骨がしっかり結合するまでの一定期間は、硬いものを避けるなど食事に制限がかかります。これはインプラントに過度な負荷をかけず、安定した結合を促すために必要な措置です。こうした食事制限は患者さんの日常生活に影響を与える可能性があるため、事前にしっかりと理解し、納得したうえで治療を進めることが大切です。

即時インプラントの治療の流れ

即時インプラントの治療の流れ

即時インプラントの治療の流れについて解説します。

  1. 検査・診断
    まずは問診を行い、歯周病やむし歯の有無を確認します。加えて血液検査やレントゲン、歯科用CTの検査を実施し、顎の骨の状態や全身の健康状態を詳細に調べます。これにより、即時インプラントが適応可能かどうかを判断します。
  2. 抜歯
    局所麻酔をかけた後、治療対象の歯を丁寧に抜歯します。抜歯の際は周囲の組織をできるだけ傷つけないよう配慮し、治癒を促します。
  3. インプラント体の埋入
    抜歯後にできた穴(抜歯窩)を整え、そこへインプラント体を埋め込みます。インプラントが安定するように慎重に位置を調整します。
  4. 骨補充材の充填と仮歯の装着
    インプラント体と骨の間に隙間ができる場合は、骨補充材を用いて埋め、骨の再生を助けます。その後、見た目や機能を保つための仮歯を装着します。
  5. アバットメントの装着
    インプラント体と骨がしっかり結合する2〜4ヶ月後に、アバットメントと呼ばれる上部構造の土台部分を取り付けます。
  6. 上部構造の装着
    最後に患者さんの噛み合わせや見た目に合わせた上部構造を装着し、治療が完了します。

まとめ

まとめ

ここまで即時インプラントとは?についてお伝えしてきました。即時インプラントとは?の要点をまとめると以下のとおりです。

  • 即時インプラントとは、歯を抜いた直後に、その抜歯した穴(抜歯窩)にインプラント体を同時に埋め込む治療法
  • 抜歯即時インプラントの主な適応条件は、重度の歯周病がない、顎などの骨量が十分にある、全身疾患がない、歯ぎしりや食いしばりの癖がないこと
  • 即時インプラントのメリットは、身体的な負担が少ない、骨の吸収が抑えられる、治療期間が短い、術後の支障が少ないことで、デメリットは、適応できない場合がある、対応しているクリニックが限られている、感染症のリスクがあるなど

即時インプラントは、短期間で歯を回復できる魅力的な選択肢ですが、リスクや条件もあります。治療を検討する際は、歯科医師と十分に話し合い、正しい情報をもとに選択をしましょう。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

出身大学:福岡歯科大学 / 経歴:1989年福岡歯科大学 卒業 1991年松浦明歯科医院 開院 2020年医療法人松栄会まつうら歯科 理事長就任 / 資格:厚生労働省認定研修指導医 日本口腔インプラント学会認定医 ICOI (国際インプラント学会)Fellowship認定医 / 所属学会:ICOI(国際口腔インプラント学会) 日本口腔インプラント学会 日本臨床歯科学会(SJCD) 福岡支部 理事 日本顎咬合学会 会員 日本臨床歯科CAD/CAM学会(JSCAD)会員

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